「世の無常」「秀吉 vs. 光秀」
「座敷わらしを通してのほんわか物語」「身近にある幸福、それを気づかせてくれる座敷わらし♪」「思わずにやける、最後の一行」「お勧めです 座敷わらしがとてもキュート!」「続編で再び座敷わらしに会いたいなぁ」
「長い線路のような二人。」「幼児殺害事件のお話と思ったら…!?」「誰かと話し合いたくなる作品」「罪と罰と幸せと」「ぐいぐい引き込まれました。」
「面白かったです」「バランス感覚」「まさに新境地」「今までの作品と比べて、、、」「あれ?」
「おじさま作家が描く30代女性たち(笑)」「恋まじない、熊本にて」
「不快でない混乱」「相変わらず、冴えてます」「またもや奇想炸裂」「これが「物書き」なのだと思う。」「不条理とユーモア」
「音のない世界が炙り出す、話し言葉と書き言葉の差異」「「悪人」以前、「悪人」以後」「春に住む」「大丈夫が大丈夫じゃなくなる瞬間」「シンミリせつないです。」
Xωρα(ホーラ)―死都 (詳細)
篠田 節子(著)
「妖しい幻想」「生き方」「篠田節子にしてはパンチが弱いか?」「ホーラとホラーと宗教」
「少し純文学」「こういう小説が好き」「事件の顛末は?」「西加奈子の新境地」「う-ん」
「見えない家族の絆」「感情を大きく揺さぶられた小説でした」「泣かせて頂きました。」「ありきたりだが…」「夫婦の絆に感動」
「意地の向こう側の真実」「相変わらずの重松節」「ヤスさんの不器用さは疲れる、長すぎた」「父親を題材にしたノンフィクション的作品」
戸村飯店青春100連発 (詳細)
瀬尾 まいこ(著), 小池アミイゴ(イラスト)
「家族の距離感」「永遠のテーマ:兄と弟!」「素晴らしき兄弟愛」「題名ばっちり」「家族について」
「こんなストーリーがあっても良い。」「いったい何度死ぬ?」「新鮮な趣向で面白い」
「面白かった。」「ヘリ、自衛隊、使命、そして、、、」「ガッカリ」「江戸川乱歩賞、おめでとうございます。」
人くい鬼モーリス (ミステリーYA!) (詳細)
松尾 由美
「多倖感を伴う、ファンタジックミステリー」「心優しき異形のものと、孤独な美少女の物語」「久々のヒット」
「産婦人科医療!」「タイムリーなお話です!!」「現代医療体制への憤り」「視点」「現時点での海堂氏の最高傑作」
「大人の余韻」
「身近な存在の猫だけに…リアルです。」「猫がこわいです。」「猫VS人間」
「親のために」「伊集院版ゴルゴ13」「浅草観音は何を語る?」「もう少し説得力があれば、」「壮大なドラマなのに…」
「ジェットコースターに乗せられたような気分」「とにかく面白かった」「刺激的」「次々に連なるエピソードで読み進められる作品です!」「これはジャパニーズハリウッド」
「ロックはロール?」「しっとり となれます」「教師とは」「「先生」を軸にした8編の短編ストーリー。」
「現代エンタメの最高峰=超一流シェフの最高級料理」「久々に最高レベルの面白さ」「文字通り“すべての東野作品を越えた”」「爽快感」「「最大の誤算は妹の恋心だった。」」
モーニング Mourning (詳細)
小路 幸也(著)
「しみじみとした想い出話」「語り合える仲間のいる幸せ」「切なさにウルッと来る作品です。」「本当の親友とは」「過ぎた時は戻らない」
「ブラックユーモアの極致」「最後まで一気に読ませる作品」「日本人を見つめる視線の確かさ」「とにかく笑えた」「多くの男性に囲まれた女性の人間の心理描写がたまらん」
「みずみずしい。」「ピュアさが今までと違うスタイルで新鮮でした」「かつて少女だった自分を思い出す秀作。」「大人への入口、戸惑う少女達の物語」「直木賞作品とのギャップが気になるところ」
● 読書日記4
● 0810,11
● 9月に読んだ本
● ちちんぷいぷい 本屋さんのコーナーで紹介された本 H20.2.28〜
● 2008/11
● 7月に読んだ本
● 好きな小説乱雑!
● 心をえぐる小説
● これ好き!!
● お勧めの本
● 2008年購入本
・「世の無常」
下巻での、大きなトピックスは、信長の残虐性、光秀の信長に対する憎悪、秀吉の天運、そして、何より、世の無常だ。
光秀が、信長に対して、憎悪を深めてゆく様が、克明に描かれている。そこでは、多くの資料を駆使し、中国大返しの謎にも迫っている。
また、教養面では、圧倒的に秀吉をしのぐ光秀であるが、それが、根底から、突き崩されると感じる下りがあり、大変興味深いし、これぞ、真の下克上だ。
最後は、本能寺の変へと、突き進む。
相変わらず、信長の残虐性には、開いた口が塞がらない。非戦闘員である女子供まで、容赦無く、大量虐殺するが、忠臣秀吉でさへ、嫌悪感を感じる様になる。随風に至っては、信長は阿修羅か、と評す。
それにしても、歴史上、秀吉程の、天運を備えた人物は、珍しいのではないか。秀吉の決断、および、行動のすべてが「当たり」なのだ。
しかし、印象的な下りがある。天海が秀吉を評して、旭日そのものの秀吉が、いつか落日となる、と呟く。
かように、本書の、戦乱の世では、無常を強く感じさせる。さらに、激動の昭和史、平成史もまた、無常である事にも、想いを馳せた。
・「秀吉 vs. 光秀」
秀吉の出自に対する新しい説を基にしたその前半生と、信長の政策をめぐって光秀が本能寺へと追い詰められていくあたりが白眉。もちろん小説なのだし、本当のところは今となっては誰にも分からないのですが、この二人の残された動静を見ていると、その心模様は本書の通りであったとしか思えなくなります。私もいつの間にか司馬遼太郎の創作を史実と思い込んでいたところがありますから。小説の力というのはある意味で恐ろしくもありますね。
・「座敷わらしを通してのほんわか物語」
出世の見込みもなく家での居場所もない父。子育てと姑そして家を顧みない夫に不満を持っている妻。父との関係も悪く、本当の友達がいない長女。喘息を持病に持ち過保護に育てられた 長男。夫の死後、認知症の症状が出て来た祖母。どこの家庭でもあるような問題を抱えた家族が、父の仕事の都合で田舎の昔の家に引っ越すことに…。しかし、そこにはかわいい座敷わらしがいて…。★ほんわかとして荻原さんの作品では好きです。★今、どこのお家でも抱えているような問題を持つ一家が座敷わらしを通して一致団結してゆく姿がとても微笑ましかった。★座敷わらしが、とてもかわいらしくってちょっと怖いイメージがあるけれども我が家にもぜひ来てちょうだいと思えるほどしでした(爆)。★座敷わらしの本当の意味を初めて知った時は、切なくウルッと…。童謡『しゃぼんだま』の本当の意味と遭い重なってジーンとしてしまいました。★幸福を招くを言われている『座敷わらし』は、高橋一家に家族の意味をきちんと残してくれたことでしょう。
・「身近にある幸福、それを気づかせてくれる座敷わらし♪」
読んでいる途中で、必要以上の描写にダラダラとした感じを抱いたが、それを補って余りある内容だった。家族の心がバラバラになりかけていたときに現れた座敷わらし。晃一・史子夫妻、娘の梓美、息子の智也、そして晃一の母澄代。それぞれの抱える問題は、いつしか和らいでいく。座敷わらしは福をもたらすと言われているが、福をもたらすのではなく、身近にありすぎて気づかない幸福に気づかせてくれる存在なのではないかと思う。高橋家の人たちもそれに気づいたとき、再び家族の絆を取り戻す。「私たちは、大切なものを犠牲にしたリ、失くしたり、忘れたりしながら毎日の生活を送っている。」そのことを強く感じずにはいられない。座敷わらしの生まれたいきさつにはホロリとさせられたが、全体的にほのぼのとした心が温まる作品になっている。ラストの1行は絶妙!輝いている♪
・「思わずにやける、最後の一行」
最後の一行には、思わず、にやっとしてしまった。著者により最近発表された作品「明日の記憶」や「千年樹」は、大変重いテーマを扱っているのに対し、本作品は、著者が本来得意とする、軽妙かつユーモアにあふれた文体で、ある種の幻想が、テンポ良く著されている。
その内容は、本文中の言葉を引用すると、常識を疑い、固定観念を捨てろ、と要約する事が出来る。頭から、座敷わらしなんて、存在する訳がない、などと考えると、話が始まらない。座敷わらしは、最初から最後まで、見え隠れし、その存在そのものが微妙だ。しかし、本作品を読むと、その存在を、強く信じたくなる。
本文中で説明されている、座敷わらしの由来は、大変悲しい。しかし、座敷わらしは、その家に繁栄をもたらせてくれるらしい。
本作品では、繁栄がもたらされたのは、家に対してではない。必ずしも、物質的では無いが、家にではなく、この家族に色々なものをもたらせた。
座敷わらしを通して、家族そのものを問う、大変充実した作品だ。
・「お勧めです 座敷わらしがとてもキュート!」
最近この作家の本を読み始めました。この作品は彼の中でもベストではないでしょうか?皆さんお書きになられているようにラストも見事ですが、家族が再生して行く姿も中々楽しく読めました。座敷わらしに関する作者の話は本当なのでしょうね、少し胸が詰まりました。読み手によって登場人物の誰に一番自己投影をするのかも夫々で家族で違った読み方が出来るかもしれません。それにしても東京の名所が六本木ヒルズはともかく原宿ハンジローが出てくるのに時代の流れを感じました。作者もかなり時代に敏感なんですね。
・「続編で再び座敷わらしに会いたいなぁ」
この本は読み進めるうちに、座敷わらしをいつの間にか心待ちにしてしまっている。座敷わらしは、誰かを恨んだり怒ったりしないし、褒めても喜びもしない。「ふわぁ」と風の音に似た小さな吐息とそのしぐさで、こちらまで心を奪われてしまう。急な転勤で東京から東北の田舎の古民家に越してきた家族5人の悩みも、可愛い座敷わらしがうろちょろするうちになんとなく上手くいくようになっていく。座敷わらしに会いたいから、続編出してほしい。
・「長い線路のような二人。」
レビューを読むと賛否両論のようですが、わたしは面白く読みました。はっきりいってそれは、わたしが全くの部外者だからです。もし被害者や加害者そのどちらか、または近親者に同じ様な境遇の人がいたらそうではなかったと思います。なので、これを単純に物語として読んだ場合限定ですが、切ないな、深いなと思いました。
被害者がいくら過去を消そうと思っても、噂はずっと付いて回る。加害者は”何故あの時あんな事をしてしまったのだろう”と後悔ばかりが残る。その後の生活が平静であればあるほど、汚点となって、消すことが出来ないのはどちらの立場でも同じだと思いました。主人公・俊介は、自分の罪を一生背負って生きていくしかないし、誰といても癒されない被害者の女性はさみしかったから、なんとかして自分の居場所を見つけたかった。そういう点で、この二人の選択は、仕方がない事だった気がします。
この物語は、マイナスの二人を足して、何とか「0」にした感じがしました。でも決して「1」や「2」にならないという、つらい結末です。
・「幼児殺害事件のお話と思ったら…!?」
幼児殺害事件…。そこから隣人の過去があばかれて行く!?☆大学時代のレイプ事件の加害者と被害者という設定からして後味が悪いです。そして、人が思いもよらぬ衝撃の事実!?☆それぞれの立場からやるせない過去が告白されて行くのですが、加害者がその後も罪の意識を持っているという点では救われました。「不幸」「幸せ」とななんだろうと考えさせられます。相手を幸せに出来ない、そして相手を不幸に落とそうとする辺りからもう自分自身を不幸にさせていますよね。☆ラストは、救われるものがあったかな。☆個人的には『悪人』よりも考えされられる事が多く良かったです。
・「誰かと話し合いたくなる作品」
このレビューには賛否両論あるようですが、私は個人的にはすごく好きです。『悪人』のときもそうでしたが、主人公達の「心の叫び」が文章から滲みでていて、自分の心の奥をふるふると揺さぶられます。主人公ふたりが一緒に暮らしているという状況に、普通は違和感を感じてしまうのでしょうが、思わず「そんなこともあるかもしれない」と読者に思わせてしまう文章力は、さすがの一言に尽きると思います。この二人の関係を、果たして「愛」と呼べるのかということについては議論が分かれるだろうと思います。私は単純な恋愛関係や、罪悪意識、利害関係を超えたところにある、ふたりの強い「絆」を感じました。それを「愛」の一言で表現してしまっていいのか、今でもまだ答えは出ていません。また俊介の献身的な姿、かなこの揺れる心があまりに切なく、悲しく、涙がとまりませんでした。いずれにしても、この本を読んだ人とこの本についてたくさん議論したくなる、そんな作品だと思います。
・「罪と罰と幸せと」
『悪人』と同様、ある犯罪をめぐる男女の出来事をややミステリー・タッチに描きながら、しかし最終的には普遍性の強い「愛」の物語へと昇華させていく手腕が凄い。あまりにも面白いので、最後まで一挙に読み終えた(『悪人』はページ数からして、さすがに一挙読みはできなかった…)。ただし、『悪人』とは異なり、物語の焦点をあまり拡散させずひたすら当事者ふたりの謎に満ちた人生へと集約し、また舞台も大きくは移動させず、ふたりが「さよなら」に至るまでの渓谷の事情をじっくりと表現している。なりゆきのように犯されてしまった罪となりゆきのようにやってくる罰があり、何の罪があるわけでもないのに受ける何らかの罰がある。そのようにしてふりかかる罪と罰を背負った人々は、どうしたら「幸せ」になれるのか。ふたりの事件に私的な興味をひかれて彼らを執拗に調べる雑誌記者の視点を借りながら、読者はこの問いを共に考えさせられることになるだろう。そして、ふたりの係わったような事件を体験したわけでもないのに、なぜか自身の「幸せ」のあり方を考えることになるだろう。それは、多くの人間が自己の性に対する多少の罪悪感を抱えており、また、誰もが幸せになりたくてでも幸せではないか、あるいは幸せだと信じきることのできない存在であるから、なんだろう。
・「ぐいぐい引き込まれました。」
「悪人」が衝撃的だったので、楽しみでもありつつ、「でも二番煎じになるのでは?」と過度な期待はしていませんでしたが…、ぐいぐい引き込まれ、一気に読み上げました。幼児殺人事件をきっかけに、過去の集団レイプ事件を紐解いていく(紐解かれていく?)様は、類似した実際の事件とリンクして、読み手に 文章以上の想像力を与えます。描写力も素晴らしいですよね。私の中では、各場面の風景や家の間取り等、イメージがハッキリ出来上がりました。
もう少し長編であってもいいですね。内容の深さに対して、ちょっとまとまり過ぎた感もあります。(それだけ面白く感じたということでしょうが)
後読感がスッキリしないところも、個人的には好きです。「何が幸福で、何が不幸かなんて、他人には理解できない。当人たちも本当のところは、解らないのかも…」と、考えさせられました。私の母も読んでいましたが、「これからのあの二人の事が心配だ…」と。
ただ、書店のポスターや帯にある「どこまでも不幸になるためだけに、私たちは一緒にいなくちゃいけない…。」という文章から受ける印象は、恋愛小説っぽくも感じ、本の本質とはちょっとズレているのでは?と思います。
●夜の桃
・「面白かったです」
週刊新潮で連載されていた時から面白いと思っていましたが、単行本化され最初から読み始めたら一気に読めてしまいました。本の帯にも「渾身の新境地」と書いてあったけれど、この小説で著者の恋愛、セックスを書ききったんじゃないか?と思うほど、著者のこの小説にかけるパワー、勢いが伝わってきました。(楽しんで書いているようにも思える)著者の等身大?かと思わせるこの40代主人公と、彼を取り巻く女性3人が妙にリアルに描かれていて、この女性達には共感するところが結構ありました。
仕事にも成功し、美しく貞淑な妻をとても愛しているが、30代の愛人も第二の妻のように大切に感じ、突如出現した20代の部下とも関係を持ってしまう主人公。いずれ終わりが来ることを承知しながらもこの部下に溺れていき、今までの恋愛はなんだったのかと思うほど衝撃を受ける。しかし、もう一人の愛人、妻ともうまくいっているところがこの物語の面白いところ。主人公は、妻と不妊治療の努力をしたけれど子供を授かることが出来なかった。ここは一つこの夫婦に同情、というか子供がいたらこんな事にはならなかったかも・・と思う。はたしてこの4角関係はどうなっていくのか?と興味津々で読み進めていくと、最後には想像以上の代償が主人公に降りかかる。
浮気、不倫にも色々あると思いますが、この主人公のような魅力のある男性の場合はなんだか憎めなくなってくるところが面白い。「娼年」ではコールボーイに対する見方が変わりましたが、この小説では浮気、不倫をする中年男性への見方が変わりました(笑)
余談ですが主人公の妻が著者の「眠れぬ真珠」らしき本を読んだシーンが出てきて笑えます。
IWGPシリーズのファンの方はちょっと違うな・・と思うかもしれませんが、著者の恋愛小説のファンの私はこの本が「娼年」と並びかなりお気に入りです。
・「バランス感覚」
恋愛、と言っても不倫であるが、それらと、ビジネスとのバランス感覚が問われている。この、なかなかリッチな主人公は、不倫に対しても、一定の価値観を構築している。あまり共感は出来ないが、この価値観の中で、物語が進行するのが、面白い。
帯には、著者の作家デビュー10年目での、新境地と書かれている。おそらく、これは綺麗事であって、作風を世間のニーズに応じて、変化させたのだと感じる。
もし、そうだとすると、その目論見は、かなりの部分で成功している、と思う。楽しく、すらすらと読めたし、登場人物達の言葉には、印象的なものも多い。
ただ、希望を言えるとすれば、恋愛問題を重視するよりも、もう少し、企業小説的であって欲しかった。その方が、サラリーマン受けが良いと思われるし、ネタの幅も広がると思う。
喪失感を伴う、終盤のゴタゴタも、なかなか秀逸。この様な内容なら、次回作も、発刊されれば、是非買いたい。
・「まさに新境地」
現代の青春小説の担い手としてのイメージが強い著者が、まさに新境地ともいうべき作品を仕上げた。
主人公は中年男性。それなりに成功も収めて仕事も順調。もちろん妻との生活にも満足している。
そしてその満足では飽き足らず、当然という形で愛人もいる。
妻と愛人。その関係を通じて、現代人の幸せの妙技を説く。
若干設定やストーリー展開に上手すぎるよなぁという感じは否めませんが、全編に渡りエロスを描ききった著者の新展開に今後にも期待がかかる。
・「今までの作品と比べて、、、」
正直、今までの作品に比べ、この作者の文体の持つ透明感や美しさが減ってしまったように感じました。色っぽい表現も迫力に欠け、以前の作品ほどひきこまれませんでした。このような作品ならば石田さん以外でも書けるのでは?ただ、やはり文章は上手で最後まで作品を引っ張る強さはあります。石田さんならもっと独自の世界に昇華できたのではということで、星3つ。
・「あれ?」
石田衣良の時代を切り取る眼は衰えていない…筈だが、この作品はいつもの「らしさ」が希薄。
性的な行為を描くことに迷いがないことは、近作の「逝年」あたりでも実証済みであるし、この作品でもキラリとした表現を散りばめてはいるのだが、全編を通じて澱んだ雰囲気が支配する。
とすると…実はこれは私小説ではないのかと勘繰ってもみたくなる。
一気に読了させられたものの、引っかかるものがあったので星は3っつ。
・「おじさま作家が描く30代女性たち(笑)」
仕事、結婚、病気の親…などに想いが揺れる30代の女性たちを中心に描いた梶尾作品ではちょっと異色の作品かも。 友情か愛情か、自分の人生か病身の親か…など誰しも抱えうる葛藤がSF要素をスパイスして絡み合ってます。
120%甘めのハッピーエンドではなく、切なさやほろ苦さの残る読後感です。
☆を5つにしなかったのは、過去作品で自分の中の「ピカイチ!!」がいくつかあるから(笑) それと、女性たちの描き方としてファッションや小物の描写に物足りなさを感じる人もいるかな〜と思ったので
お酒と食べ物の描写が細かいのは作者の趣味が出てるな〜とも思いますよ(笑)
・「恋まじない、熊本にて」
アイスマンとは、主人公の女性に与えられた、ニックネームだ。ファンタジックな話ではあるが、まじないにより、男女の恋を成就させたりする。
主人公は、三十歳を少し過ぎるが、病気の母の看病、友人との約束、そして、かなわぬ恋?と、悩みは尽きない。しかし、この主人公って、人情味あふれる人だけど、少々押しが弱いのが、難点か?
テンポ良く読み進む事の出来る文体、そして、恋愛感情も絡んだ、楽しい内容。また、何より楽しみなのは、著者の作品の常である、意外な結末だ。
物語には、紆余曲折は多いが、終盤に至るまで、少々平凡な結末に収束するものと、思われた。ところが、最終部分は、全く想像出来なかった内容となっている。やはり、「意外な結末」という予想は、裏切られなかった。
本書には、友情や親子の情愛、恋愛などがぎっしりと詰まっている。それらは、終始、熊本を舞台に描かれる。
焼肉屋で肉を注文する下りでは、カルビ、ロースなどに混じって、馬という文字も見える。食べ物の話題も豊富で、そこにも、熊本を感じさせてくれる。
余韻は、けっして悪くは無いので、ご安心を。
・「不快でない混乱」
全部で9つの作品が収まったこの本は、私達の知覚とは一致せず混乱を生じさせる。ただその混乱は不思議と不快なものではなく、その作品からの刺激を受け入れてしまえるのだ。本物の象がいる公園など、仕事で遅くなった日には私も立ち寄って語り合いたいと思う。個人的に一番印象に残ったのが、書き下ろし作品「同じ夜空を見上げて」だった。世の中の客観的性質と相容れなくても、自分の心の中だけ納得したらいいのじゃないかと共感できたし、聡史への区切りがついた解けた知恵の輪に「星がとってもきれいだから、一人で見るのはもったいなくって」と、キイワードになるこの台詞の使い方が好きだ。デビュー作「となり町戦争」より、私はこの本の方が面白く、かつ味わいも深い本だった。
・「相変わらず、冴えてます」
最初の1行を読んで、迷わず買った。相変わらずの三崎ワールドが広がっていた。短編一つひとつ、にやにやしながら読み進んだが、読後感は実に爽快だ。一見わけのわからない不条理なことが書いてあるようでいて、実はとても身近にあることだったりすることに気がつく。覆面をして出歩くことが許可される話などは、比較的わかりやすい方だろう。と、後で屁理屈をこねるのも楽しいが、そうでなくても筆力のある作家さんであるから、面白く読ませる。
・「またもや奇想炸裂」
第2短編集だが、本作も奇想が炸裂していて楽しめる。基本的に『バスジャック』と同じ作風だが、今回はアイデンティティの揺らぎが感じられて、ややP・K・ディック風な話になっている。小説内の物語空間での現実と我々のいる通常世界での現実とのズレ・ねじれが心地よい。独特な味の文章もプラスに働いている。
いままでの三崎作品のなかで本作が一番とっつきやすいかもしれない。三崎ワールドを初めて体験する人はこれを最初に読んだほうがいいかも。もっとも今回も相当ひねくれているけど。
あいかわらず変則的な話なので、合う人には合う、合わない人には徹底的に合わない作品ではある。私はこういう作風はドンピシャなので、充分楽しめた。ただ、そろそろマンネリの傾向があるので、作風を少し変化させたほうがいいとは思う。
・「これが「物書き」なのだと思う。」
やっぱりこのひと天才だ、と常々感じる。悲しくなるくらい、こういうひとが「物書き」なのだと思う。傑作であればあるほど、くらくらと眩暈を感じる。
9つの短編からなる本作。買ってからしばらくもったいなくて、寝かせておいたけど読み始めたらもうダメ。読まずにはいられない。そして、この気持ちを残しておかなくてはいけない気がする。
まず、全体のタイトルともなっている【鼓笛隊の襲来】から、血の気が引く。どうして?どうやったらこんな物語が書けるの?緩やかに鮮やかに、読む者に衝撃を与え、巻き込む。まさにストーリー通りに。
実は三崎作品は、短編も長編も登場人物のインパクトはさほど強くない。好きなキャラクターは、ときかれても困ってしまう。でも、誰もがしっくりとその世界にはまっていて、「秩序がある」という言葉がぴったりくる。
ひとつひとつの感想を述べるのは愚だ。
三崎の世界は自分で読むことでしか近づけないし、初めて読むその時の感動的とさえ言いたくなる、突き上げる気持ち・・・それを奪ってしまうことは例え書評・読書感想文であってもしてはいけない気がする。
わたしの好みでいうと、【鼓笛隊の襲来】の秀逸さは圧倒的だが、【覆面社員】【象さんすべり台のある街】も順当に好きだ。けどベスト3なら【同じ夜空を見上げて】と【遠距離・恋愛】だろう。後者は心がじんわりとあたたまるようのだけれど、ストレートにはやってくれない。こんなに短い話なのに、ひとつひとつだけでエピソードを作れそうな、どこまでも濃厚でなのにまったくそれを感じさせない、すとすとと通り過ぎるような読後感。前者の話は、似たような話を他の作者で、他の物語で読んだ事がなくはない、そんな物語ではあるのだけれど、泣いていいのか、微笑んでいいのか、実に読者を困らせる。心を、掴む。
発想だけ、ストーリーだけ、筆致だけなら、他にも類似の作者はいるかもしれない。だけど、それらを全て持ち合わせ、美しくタクトをふれるのは今のところ三崎がダントツだ。絶対に信頼して買える。裏切らない。そばにいて欲しい、そんな本。
・「不条理とユーモア」
20ページ程度の短編が9話。「鼓笛隊の襲来」でぐっと心をつかまれる。不条理な現象をもなんとか受け入れてしまう日常のしたたかさ。そこにユーモアがちりばめられ、絶品である。「彼女の痕跡展」は、純度の高い不条理劇。存在そのものの不確かさに不安になる。 その後も、たった一つの不条理事象が侵入した現実と日常とが描かれる。ただ、理屈や観念でまとめようとすると、少し浅くなる気がする。彼の作品は、むしろまとまりのない方が闇の深さを感じさせる気がする。
・「音のない世界が炙り出す、話し言葉と書き言葉の差異」
話し言葉っていうものは甘えや傲慢さを含んでいるものなのだと、この小説は教えてくれる。話し言葉には書き言葉にはないニュアンス、情報量が含まれていている。その“ニュアンス”を含めることが出来ない書き言葉であるメールの文章は、時に誤読を生む(顔文字はニュアンスを補完するための苦肉の策だ)。この小説の主人公の彼女、響子はしゃべることが出来ない(それにしても、この“響”という言葉は小説のテーマを象徴している)。主人公は、話し言葉、声、音といった情報が当たり前に存在する世界に暮らしていて、音のない世界に住む響子とのディスコミュニケーションに戸惑い、驚き、恐れを覚える。そして、響子と出会う前の日常が、いかにニュアンスに甘えたものであるのかを知る。まぁ、この小説の面白さは、話し言葉−書き言葉=ニュアンスあるいはノイズっていうものが、いかに豊かな情報であり、それを書き言葉、言語、文学に盛り込むことがどれだけ困難な作業であるかってことを、炙り出した点にあるんだと思うけど。ホットな話し言葉とクールな書き言葉は、まったく別のツールである、っていう。 それともうひとつ、響子が野良猫にハムを与える行為を、主人公は最初「偽善的」って捉えるんだけど、響子自身は「もしかしたらこの猫、神様かもしれない」って捉えている、そのコンテクストの差異。主人公はそれを「施してやる」「施させてもらう」って言葉に整理しているんだけど、これもニュアンスに頼って一方的に押し付けるのか、逆に少ない情報量からいかに相手の感情、表情を読み取るのかっていう、Push的なコミュニケーションとPull的なコミュニケーションの考え方の対置、相違を示しているんじゃないかな。 主人公は響子の世界を徐々に理解していくんだけど、小説の後半、仕事で自分しか見えなくなった主人公に甘えと傲慢さが芽生え、響子という存在を失ってしまう。結末はお楽しみだ。
・「「悪人」以前、「悪人」以後」
公園での女性との出会いのシーンから、芥川賞受賞作「パーク・ライフ」を思い出す。が、しかしその後、大切に積み重ねられて行く二人の時間の描写は、「悪人」以前にはなかった体温が感じられた。彼女の耳が聞こえないという設定により、二人の間に不用意な言葉のやりとりはない。メモ帳を介しての一言一言が、これまでの人との付き合いでは感じられなかったほどに重い。音を全く排除した結果、吟味された言葉でのみ繋がっている関係性の純粋さと、社会的関係に頼らないことの不確かさが、浮かび上がる。やはり「悪人」以後、舞台を都会に戻しても、以前のような乾いた作風ではなくなっている。人と人のつながりの不確かさを書きながら、しかし、繋いだ手を離さないぞという必死さを見せる主人公に、何となく作者の実生活を想像してしまうような純愛小説。
・「春に住む」
内容は、少々難解だ。まず、音の無い世界の不思議さに酔える。公園での激しい喧噪と、満開の桜の美しさという、両極端のものが同居し得る、という幻想性がある。
そして、野良猫に食べ物を与える、という、何気ない下りから、話題が神にまで及ぶのには驚かされた。この、神にまで言及するエピソードは、作品全体に、一定の意味を持たせている。
作品は、耳の不自由な女性との純愛や、番組制作のための海外取材を題材にしている。しかし、本質的な部分は、別次元のところにある。それは、目的意識の脆弱性だとも考える。
人の行動は、何らかの目的意識に、突き動かされて成される。そして、脇目もふらずに、それを遂行する過程で、目的意識が揺らぎ、いつの間にか、他の目的意識が成熟する。これは、番組取材の成功と、この物語の結末部分を読むと、なるほどと思う。
無音の世界の幻想の中で、人の心理のひたむきさを感じる。そして、出来るなら、春に住みたい。
・「大丈夫が大丈夫じゃなくなる瞬間」
最初この主人公がどうにも厭な男で、なかなか作品に入ってゆけなかった。タイトルにある「静かな爆弾」は主人公の彼女響子の耳が不自由だからだと思いながら読んでいたら、いきなりこの作品に落とされた。主人公が知っていたのに関心を持たないことにしていたことに気付く感覚が、こちらに伝染するのだ。大丈夫だと思えない気持ちの行方が心を揺さぶる本だった
・「シンミリせつないです。」
★公園で出会った耳の聞こえない女性と新聞記者との純恋愛小説です。★煩雑な新聞記者の彼と音のない世界で暮らす彼女の生活自体がとても対比的に描かれています。★一見して傍目から見れば2人の生活は、静かで穏やかそのものなのですが…。耳が聞こえ音がある生活になれている者にとって静の世界は、やはり気付かぬ内にとまどう部分も多く。もちろん彼女もそんな彼に内の心に気付いてゆくのが、シンミリと伝わって来ます。★離れてみて初めてその存在の偉大さに気付くことがある。それをシミジミと教えてくれるお話だと思います。それが物語で出て来る神様的な存在なのでしょうね。
・「妖しい幻想」
エーゲ海の小島にあるホーラは、過酷な歴史を背景とする「死都」だ。そこで繰り広げられる事象は、まるで幽霊話の様であり、現実と非現実の間を行き交う。それは怪奇きわまりなく、妖しい雰囲気に、引き込まれそうになる。主人公は、不倫関係にある日本人男女だ。
これらは、果たして幻想なのだろうか?本作品は、一本のヴァイオリンと、歴史や宗教を背景に、きわめて現実的な考察を行う。
その考察は、知的に、人生の後半を見詰めている。特に、キリスト教や仏教そのものについても、深く言及する。そのスタンスは、宗教を儀式の時に利用する程度の、宗教との弱い関わりを基調とする。
著者の人生を見詰める眼は、ことさら深い。それは、あたかも、生よりも死に重点が置かれている様だ。
現在文壇の、重鎮の一人に位置する著者の、知的エンターテインメント作品だ。
・「生き方」
バイオリニストとして活躍していながらも自らの才能の限界を自覚している女性が主人公。生活力はなくピアニストとしての才能に恵まれながらも、それを活かせない夫と自分にすがりつくばかりの老いた母親を足かせのように感じながら、力強く生き、家族を養う男性との不倫関係を継続し、旅行に出る。その旅先で起こる不可解な事象は、神の差し伸べた救いなのかホーラに邪な力なのか。神に救いを求めたい気持ちと自意識との狭間で主人公が見出すものはなんなののか。
篠田さんの他の作品にも見られる、生きるという事への明快な姿勢がそこにもあるように思いました。Xωρα(ホーラ)―死都
・「篠田節子にしてはパンチが弱いか?」
不倫旅行で訪れたパナリア島で,「ホーラ」という山上の廃墟に迷い込んだら,あるはずのない教会で,マリア様のような姿を女性の姿を目撃した・・・。 主人公は,バイオリニストの中年女性。彼女が,不毛な不倫関係から,いかに自分の生業(バイオリンを弾くこと)を取り戻すかという,一種の成長物語である。退嬰的な町・ホーラの伝説や,そのホーラが才能ある者を「招く」という,謎めいた現象を描写しており,それなりには楽しめた。 が,いつもの篠田節子にしては,ズシンという衝撃がなく,あっさりストーリーが終わってしまった,という感じ。せっかく「ホーラ」という魅力的な舞台設定があったのに,それが生かしきれていないような気がして,残念だった。
・「ホーラとホラーと宗教」
著者の作品には音楽家が主人公の作品が多い又海外の観光地を題材にした作品も多い。この作品もバイオリンニストとギリシャが中心の妖しいゴシック・ホラー。ホーラとは13世紀に起きた十字軍によるコンスタンチィノポリス略奪の後、パナリア島を支配したヴェネチア人によって作られた山上の都市。中世のこの美しい町は繁栄を極めたが17世紀の半ばにオスマントルコに攻められ町並みは破壊され、礎石や城壁の一部を除き建物は残っていないが廃墟の町から見下ろすエーゲ海は美しく、晴れた日には遠くロードス島やトルコ本土が望める絶好のピクニックコースになっている。(本文より抜粋)互いに家庭がありながら誰にも知られず十数年間不倫の関係を続けるバイオリンニストの亜紀と建築設計士の聡史は、8日間の不倫旅行にギリシャに出かける。アテネのホテルでは日本から7000キロも離れていても国際電話によって仕事と家族に関わる雑事としがらみから逃れられないと悟った二人はトルコの沖合い80キロに浮かぶパナリア島へさらに逃避する。人口3000人にも満たない小島の山上の廃墟ホーラの古い教会の跡地で、掌から血が流れ出すという体験をする。さらにレンターカーでホテルに帰る道で事故を起こし聡史は病院へ・・・たび重なる不可思議な出来事。それらは神の起こす奇蹟なのか、それとも不倫に対する罰か・・・。ギリシャの小島を舞台にした悲劇の歴史を織り交ぜたお金持ちの階層の不倫顛末話でした。
●窓の魚
・「少し純文学」
これまでの著者の作品は、少々ドタバタとした感があって、読み進むのが楽しかった。特に、人気作「さくら」の喧噪感は、読者をわくわくとさせてくれたし、「通天閣」では、独特の奇妙な世界が、面白かった。
本作品は、二組のカップルが温泉旅行をするという、単純な筋書きながら、わくわくとするどころか、読み進むのが怖い。
それぞれの登場人物の、どうしようもない孤独感が、しっとりと描かれている。その描写は、精緻かつ蜻蛉の様でもある。
最初の章「ナツ」の最終部分で、一つの事件が提示される。その当事者が誰なのか?、先を急いで読みたくはなく、ゆっくりと読んでいると、それぞれの人物の寂寥感に、深く接する事になってゆく。
本作品には、これまでの著者のものには、あまり見られなかった、純文学テイストさへ感じる。じっくりと味わって読みたいし、著者の新しい方向性を示す作品として、注目したい。
・「こういう小説が好き」
二組のカップルの一夜がそれぞれの立場で描かれている。同時進行で同じ出来事を共有するのに、心のうちは別々。他人が見てなぞる表面にはぼんやりとした影があるだけで、自分だけが知り、感じている裏側は生々しく切実だ。自分の歪んだ部分は、人に見せられないのに何より自分を支配していて苦しい。そんな感じ、とくにアキオの章を読んで吉田修一の『パレード』を思い出した。翌日起こった出来事の挿話も、実はそれぞれと奇妙に絡まって物語に引き込んでいく。後に引っ掛って残るような、今までの西加奈子の本とは違う読後感。
・「事件の顛末は?」
4人の男女。それぞれが恋人同士、といってもいい関係。1泊の温泉旅行。その一晩の出来事をそれぞれの視点から眺める。
そこで分かるものは・・・
お互いが一緒だと思いながら実はお互いがそれぞれのことを分かっていない、一緒にいながら実は一人ぼっちだという事実。
何だか淋しい関係を見せ付けられたような、そんな気分。
そして彼らの物語の中に挟まれるある事件の話し。一見繋がりのないような話だけれど、実はそれぞれが微妙に絡んでいたりする。その事件の顛末は明らかにされないのが不満であるのと同時に不思議な余韻を醸し出し、それでいて読む者が勝手に解釈できる余裕というものを作り出している。
4人の行く末が何だか明るくないような、そんな気がする。
西さんの作品で関西弁を使ってない作品を久しぶりに読んだ。これはこれでまたいい感じでした。
・「西加奈子の新境地」
これまでのイメージとは異なりしっとりと、ひっそりとした西加奈子の新境地です。
一緒に温泉に来たというのに誰一人、心から楽しんでいる者はなく、お互いのパートナーとさえ心はバラバラ、違う方向を見ている。楽しいはずの時間なのに、孤独で秘密に満ちている。誰かとつながりたい、でも自分を孤独にしている薄暗い部分がそれを許さない・・・。
翌日、宿で発覚した事件が微妙に絡まり、はたして彼らはそれに関係しているのかどうか明確な答えがない分、読者の想像を激しく刺激します。救いはないけど、ユラユラと漂うような孤独と葛藤が妙に心地よい不思議な作品でした。
・「う-ん」
あまりよくなかった。だからどうしたって感じです…。もっと黒白はっきりさせてほしかったです。
ストレス解消に読んだ本でしたがあまり解消にならずむしろ蓄積されました。頭や想像力を使いたい人ならいいのでは…。
・「見えない家族の絆」
物語は、多分にファンタジックだが、仕事と家庭とのバランスに関して、物語は多くの真理を語る。仕事を至上とする夫、仕事は生活の基盤であるのに、家庭生活に執着する妻、それから子。物語は、仕事ばかりに精を出しているお父さんにとっては、かなり耳が痛い。
それにしても、度の過ぎたおせっかい焼きの春子は、当初は不思議だ。何故、ここまで、父子に対して、口をはさむのか?
そんな疑問を抱きつつ、一刻も早く、先を読みたくなる。そして、一気に読み上げてしまった。
本書は、紐のしおりの無い、ソフトカバー本だが、一気に読み上げたので、しおりは不要だった。そして、感動的であり、しみじみとした、多くの余韻を伴う。
ファンタジックではあるが、著者の、人生を見つめる眼は、確かだ。
・「感情を大きく揺さぶられた小説でした」
あまりに「仕事第一」で家庭を全く顧みない夫:悟の「挫折を知らない人間の傲慢な考え方」の描かれ方は実に見事(一応、著者を褒めています)。読んでいるこちらも前半はこの悟に対し、本気で不快感を持っていました。
そして妻の死後、目の前に現れた妻の親友:宮前春子のあまりのおせっかいさも最初は理解できませんでした。しかしそんな春子を息子:裕太は何の抵抗もなく迎え入れ、悟の家事教育まで始めた段階では、「妻の親友という立場の人がなぜそこまで?」「そもそも何者?」という、春子への興味が沸々とわき、だんだんとページをめくる手が止められなくなりました。
そして結末を知った時、涙が止まりませんでした。「家族の絆」が心に突き刺さってきました。前半の「登場人物への不快感」から後半の「感動」と、感情がマイナスからプラスへと、ここまで大きく揺さぶられた小説は初めてでした。
・「泣かせて頂きました。」
最近仕事漬けの日々に久しぶり時間が出来たので本を読もうと、こちらの作品を購入しました。
主人公の悟が仕事しか考えれない気持ちがなぜか痛いほど分かり、最後の数十ページ涙がとまらず、自分の視界の狭さを実感させていただきました。
最近、仕事しか考えれず気が張っている方一度読んでいただきたいです。暖かな気持ちになれ、家族をもっと大切にしようと、再度考えさせられる話しでした。
・「ありきたりだが…」
話がありきたりのため、物語の序盤で大体のオチはわかります。しかし、最後まで読むと心が温まります。今までの山田作品とはまったく違った新しい作品です。私は楽しめました。
・「夫婦の絆に感動」
山田悠介さんの小説で感動作は初めて読みましたが、このような作品も良いですね。
家庭を顧みず子供を連れて奥さんに逃げられ、別居生活の主人公。ある日、夫婦にはゆかりもない福島で起きた大地震によって奥さんが亡くなってしまい、息子と2人取り残され、義理の両親に預けようと決めた時、亡き奥さんの友人と名乗る女性が居座ってから意外な方向にストーリーが進んで行きます。これ以上は書けませんが、奥さんの友人との出会いからストーリーが急展開します。
今迄の山田悠介さんの作風は期待しないで下さい。後半、多少ホラー的要素もありますが、感動作として読んで下さい。じわっと感動できます。
●とんび
・「意地の向こう側の真実」
実在の人物をモデルにした、実話なのかも知れない。たとへ、著者自身に、フィクションだと、言い切られてもだ。背景が妙に具体的で、かなりリアルであるばかりか、何より、本当に実在しそうな、登場人物達だ。
物語は、昭和37年生まれのアキラの成長と、その父ヤスさんを描いている。そして、長編物語なのに、序盤で既に、この様な展開とは!驚くとともに、非常に辛い。
トンビが鷹を生んだ、という筋書きにはなっている。しかし、主に描かれているのは、父親ヤスさんの、非常に微妙な心の揺れだ。ヤスさんは、あまりデリカシーは無さそうだが、その分、意地の向こうに真実をちらつかせる。
本作品では、ヤスさんと、周囲の人々の、不器用だけど繊細な、心の動きが、終始、鮮やかに示される。母をめぐる真実、野球部での事、大学受験のための上京と、それに伴う父親側の喪失感などが、主なところだ。
非常に深く共感出来る、文句無しの、著者渾身の長編作品だ。
・「相変わらずの重松節」
重松さんの得意の家族の物語。今作では父一人息子一人。舞台は昭和30年代から昭和も終わる頃から平成の時代へ向かう頃。何事にも不器用な父親、ヤスさんととんびが鷹を生んだと称されるほどの息子、アキラ。その二人の生活を温かく見守る人々。昭和の良き時代を見せ付ける作品だった。
帯から母親がすぐになくなってしまって父と息子が苦労しながらやって行く話しなんだろう、と安易に想像できるし、実際そうだった。相変わらずの重松節。良くも悪くも重松さんのパターン。分かっているのにそれでも涙がほほを伝ってしまうのは何故だろう?
小説なんです。フィクションのはずなのにリアリティがありすぎるんです。だからこそ、こんな家族が近くにいそうで誰かを想像しながらあるいは自分のことを振り返りながら自分と重ねてしまうから。
痛いところを突いてくる重松節に今回も泣かされました。
親子二人の生活もそうですが、その二人を温かく見守る周囲の人々の優しさ、厳しさ。ただの同情ではなくて、本当に人を思いやる心の温かさ。そんなものを読んでいくうちに感じることが出来た。
またしても、やられましたよ、重松さん。
・「ヤスさんの不器用さは疲れる、長すぎた」
鳶が鷹を生んだのとんび、妻の美佐子さんに先立たれ息子のアキラと2人で暮らすヤスさん、彼の一本気な性格からかこの親子を見守る人たちは多い、ヤスさんと同じ市営住宅に生まれ育った1つ年上のたえ子さん、ヤスさんの幼馴染薬師院の跡取り息子昭雲夫妻等々、アキラは幼い時からこれらの人の愛の中すくすくと育つ…いつもより過激な重松ワールド、もうこれは浪花節、ちょっとしつこかったか、ヤスさんの不器用さは疲れる、長すぎた
・「父親を題材にしたノンフィクション的作品」
とんびが鷹を生んだ。そのとんびであるヤスさんが一人息子アキラを男手一つで育てる。ヤスさんの人生を、まるで孫にあたる子供に親が言い含めるように語っているような本だった。もちろんだからこそ、話の中核になるのは愛情で、愛おしい人を1冊の中に残した感じだ。重松作品で同じように父と息子を描いた『流星ワゴン』と異なり、中核は父親で子どもを思う親の刹那さが所々胸をうつが、作品の描き方は『きみの友だち』と同じ描き方。小説を愉しむというより、父親へのノンフィクション作品を読んだ印象が残る。
・「家族の距離感」
瀬尾まいこってやっぱりいいなぁ。と思わされた作品。個人的に瀬尾まいこの書く「家族の距離」みたいなものがすごく好きだったのですが、最近の作品は家族離れしていたので久しぶりに「家族」を書いてくれて嬉しかったです。
弟はどこにでもいそうな関西の子。関西人なのにどこか関西に馴染みきらない兄。
弟視点から書かれていたときはお兄ちゃんを「こういう人いるよな」とちょっと距離を置いてみてましたが、兄視点になってどこにいてもしっくりこないと感じてきたお兄ちゃんに「どうにか頑張って!」とエールを送ってしまいました。
何気ない関西の日常、特別じゃない10代の日常、ゴールがあるとも正解があるとも限らない人生を自分の足で歩み始める戸村兄弟。
別段事件が起こるわけでも大恋愛が起こるわけでもないけれど人生っていろいろあるんだよなぁ。そんな人の人生を少し垣間見ることができる素敵な作品です。
・「永遠のテーマ:兄と弟!」
期待通りの1冊。一気に読んで「あー、おもしろかった!(パタン)」と満足して本をとじることができる1冊です。 私、大阪のことって全然わからないので、 きっと関西の方が読んだら、もっと「連れ」とか「なんでやねん」とかのニュアンスがわかるんだろうな。
戸村家の、高3ヘイスケと高2コウスケの話。 全然違う性格の二人が、章ごとに交代でそれぞれの視点で話すんだけど、それぞれの立場や言い分、性格がよくわかるように書かれています。 その感じが、夫と義兄の関係と端々で似ていて、また私の息子の、下の子が将来長男に嫉妬したりすることを想像させられて、とっても興味深く読めました。男兄弟ならではの、おもしろさがあるんだろうなって思えました。そして、男の子って将来について考える時、こんなことを悩んだりもするのかな?と、遠くない将来に長男が感じるだろうことも、見えてきそうな気になりました。
それにしても、お兄ちゃんに対する弟の「かなわないけど、超えてやりたい」みたいな気持ちって、女子には不思議に感じますねー。
・「素晴らしき兄弟愛」
「切っても切れないくされ縁?」まさしくその通り。血の繋がった兄弟は、どうあったって縁は切れないものなのです。
見た目も性格もまったく正反対のヘイスケとコウスケの戸村兄弟。年も一つしか違わないから、何かと比べられ、お互い気分よくない。自分は男兄弟の真ん中なので弟の気持ちも兄の気持ちも両方ともなんとなく分かる。
ヘイスケは高校卒業後大阪の家を出て東京へ。とにかく閉鎖的というか地元意識が強くて何にでも首を突っ込んでくる周囲の人間から離れたくて東京へ。コウスケはそんな何を見ながら、将来は自分が実家の戸村飯店を継がなくては、と思う。あ〜、分かる。二人の気持ち。だから両方応援したくなる。結局、行き着くべきところに行き着いたという感があってほっとした。
紹介には爆笑コメディーなんて書いてるけど、コメディーというより兄弟の成長物語、だな。いい感じで二人がたった1年で大きく成長してる。
なんだかんだ言いながらやっぱり兄弟でお互いのことをどこかしらで意識し合ってる。そんな兄弟の姿が微笑ましかったです。
・「題名ばっちり」
もうホント、青春100連発である。一つ違いの兄弟の反目。それぞれの友達との熱い交流、それぞれの恋人との微妙なもやもや。いいなあ。人間って、青春っていいなあ、読書って楽しいなあ…そんな本。実家が大阪の中華飯店っていう設定も素敵。いまどきこんな頑固親父いるかって感じ。平成の話なのに昭和チック。 長男の視点と次男の視点でうまく二人を描き分け、あったかい一つのストーリーを紡ぎ上げた。大阪と東京という対立軸が、いやみなく背景で機能している。
・「家族について」
大阪の中華料理店を舞台に、兄弟の二人を主人公に家族の姿を描く。大げさには描かれていない日常生活の中、ついと周りから仕掛けられる兄弟比較。
勝ち負けではないにせよ、子供心にはやはり相手を意識して、心中穏やかではない。
そして家族といえども、自分への理解について悩むこともある。
家族間の関係。その小さいけれども密度の濃い関係を上手に描いている。
●ステップ
・「こんなストーリーがあっても良い。」
ステージが10に分けられていて、ほぼ毎回撃たれて死んでしまう主人公。しかし次のステージは痛みを感じているものの生きている。ステージのはじまりは設定が毎回微妙に違っている。しかし記憶は続いて残っているので、どんどんストーリーの確信に迫っていく。周りで命を落とした人も再度生き返って登場することもしばしば・・・。ワクワクしながら読めました。 本書をテレビドラマ化すると、かなり面白いと思う。ストーりー展開が斬新で新しい。毎回期待させてくれる内容になるのでは?
・「いったい何度死ぬ?」
主人公のこの男、各章の最後で、必ず死ぬ。死ぬのは、主人公のみならず、アウトローの人間達や刑事なども含む。ところが、主人公は、死ぬ時に何故か、一日だけタイムスリップし、過去に戻る。これが、幾度となく、繰り広げられ、タイムスリップした後には、いったん死んだ人間も、蘇っている。
物語を貫く、一本の筋がある。それを、主人公は、何度も死んで、同じ一日を、繰り返し体験する事で、真実に迫る。タイムスリップする事は、非現実的ではあるが、同じ日を繰り返す事によって、浮き彫りになる事柄も多い。
作品では、バイオレンスと拳銃が多用され、物々しい。感傷に浸る間もなく人が死ぬが、ハードボイルドとはいえ、時にしんみりとさせられる。
同一の日を繰り返し体験して、段々と見えてくる。作品は、こういう部分が中核になっており、大変面白い。
何度も死ぬ主人公に、愛着を感じる。本作品は、傑作だ。
・「新鮮な趣向で面白い」
死ぬ度にタイムスリップして生き返る男。こんな不思議な話なのに、そこはさすが香納さん、ちゃんとハードボイルドになってます。
時間を遡って生き返る度に、前回の失敗を繰り返さないよう、より良い手段を採ろうとする主人公。主人公が前回と違う行動をすれば、当然相手の行動も変わってきてシチュエーションもその後のストーリーも前回とは違っていく。その中で徐々に今まで分からなかったことが分かってくる。だけどそれは新たな謎と新たな窮地を呼んで...。
そこに香納さんの作品らしい、主人公の忘れられない女性や忘れられない過去も絡んできて、さらにヤクザとの派手なアクションシーンで盛り上げてくれます。
主人公は生き返る毎に物事の真相へ深く関わっていく。そして主人公の心にも少しずつ変化が現れていく。
なかなか新鮮な趣向で面白かったです。最終的に主人公はこの窮地を脱して、不吉な輪廻を断ち切ることが出来るのか?自分自身と、愛する人たちを助けることが出来るのか?
香納さんの新たな世界を見られて満足しました。
●訣別の森
・「面白かった。」
物語の展開や人物に無理がありますが、面白かったです。映画になりそうなストーリーでした。西村寿行の初期作品に通じる作品です。買って損は無いでしょう。
・「ヘリ、自衛隊、使命、そして、、、」
江戸川乱歩賞受賞作には興味があり、毎回、該当作品が出版されると、購入して読んできた。まず感じた事は、今回の作品は、ミステリーである前に、ロマンが溢れている事だ。ロマンと言っても、恋愛というよりも、少年の様な心と使命感の方だ。
東北海道の広大さをイメージさせられながらも、ヘリなどに関する、細緻でメカニカルな描写も秀逸。派手な序盤に加えて、小出しに示される伏線も、面白い。
そして、一刻も早く先を読みたくなる様な、ダイナミックな展開。各章の最後に付けられた、付記と本編とのからみも興味深い。第一級の作品として、次回作にも期待したい。
ただ、この傾向の作品は、万人受けするかどうかは不明だ。ヘリ、メカ、自衛隊、使命、展開重視の小説、といった事に、ピンとくる方には、特にオススメです。
・「ガッカリ」
ドクターヘリの操縦者の槇村の個人的な話です。社会性や環境問題の一部におもきをおいた物語設定ですが、ハッキリいってつまらない。ドクターヘリに関する描写、自衛隊に関する無駄な表現が多すぎる。もっと完結にわかりやすくつくってほしかった。あとは人間の感情が全然読み取ることが出来ない。それでおいて無駄な情報の詳細が事細かで、全然ミステリーを読んでいる気がしなかったですよ。これが何故、江戸川乱歩賞なのかがわからないまま読み終えてしまいました。これを読む何日か前に文庫で薬丸 岳さんの「天使のナイフ」を読んだのですが、勝敗一目両全です。
・「江戸川乱歩賞、おめでとうございます。」
奥付の著者紹介をみると、アルバイトを続けながら、本賞への応募を繰り返したとあります。まずは、受賞おめでとうございます。 巻末の選評をみると、本作の受賞については委員間で議論があったようです。確かに、明朝体で書かれた主人公の再生とゴシック体での知床の自然保護のお話しとがなかなかかみ合わない上に、その自然保護の計画自体に飛躍があって現実感がなく、もどかしく感じました。 ただ、ダッシュの後の主人公を、「口を大きく開き、貪るように空気を肺に送り込もうとするが、もどかしいまでに呼吸器が機能せず、心臓が早鐘のように鼓動を繰り返す。そのまま荒い呼吸を繰り返し、放心したように天空を仰いでいた。」(わたしも市民ランナーのひとりなので、この状態はよく分かります。)と書く著者の筆力は、なかなかのものです。次作以降に、精進の結果が開花することを期待しています。
・「多倖感を伴う、ファンタジックミステリー」
私は、本書を、中断無しで、ぶっ通しで読みましたが、4時間余りを要しました。モーリスは死体のみを食べますが、けっして人や動物を襲ったりしない、おとなしい鬼です。モーリスは、別荘の近くにいるのですが、別荘と、その周辺には、多くの人々が滞在しています。という事は、事件が起こり、その犠牲者の死体が消えてしまうのではないか? という予感がすると思います。
その通りなのですが、多くの現象が、無駄無く、有機的に結びついています。また、読み進み易い、気取らない文体と、繰り返し説明される、登場人物のプロフィール。読者の便宜を、これでもかと図ってくれている、練り上げられた内容。さらに、探偵役まで、用意されています。
モーリスとは、ある条件でしか、対峙出来ません。そして、作品中には、モーリスと対峙出来る人間の中に、意外な人物もいます。
何とも言えない多倖感が後遺します。こんな結末は、良いですね。エピローグも秀逸です。
温かい、ファンタジックミステリーです。
・「心優しき異形のものと、孤独な美少女の物語」
表紙には帽子を被って振り向いた美少女。花や蝶に囲まれた白いワンピース姿が印象的。裏表紙には主人公のお姉さんの姿も・・・。あちこちのカットもそれらしくセンスが良いです。さすが理論社!!ですね。
しかし、その美しい装丁に似合わぬ「人くい鬼モーリス」という書名・・・これは曲者です!!
主人公は「村尾信乃」。再婚した母親との間にわだかまりを感じる高校2年生。夏休みのアルバイトに赴いたのは高級別荘地。家庭教師の触れ込みながら、実際は美少女「芽里沙」(10歳?)の遊び相手?採用の条件は・・・大人には見えない「人くい鬼モーリス」が見えること!!
読み始めは普通の女子高生の日常が語られますが、芽里沙が登場すると一変!!美少女です!!小生意気なガキです!!でも可愛いから許しましょう。(笑)
漂うのはセレブな雰囲気・・・そんな彼女の秘密のペット?が怪物「モーリス」・・・・!!??
緑豊かな高原の別荘地。美少女と怪物の交流。その有様に困惑しながらも、家族の愛を知らない芽里沙の孤独を知り、モーリスという不可思議な存在を徐々に 受け入れていく主人公。そんな二人と近所の別荘族の人々との交流を楽しむ日常の中で、突然起こる殺人??と死体消失事件!!??犯人はモーリス??戸惑う 二人の選択は!!??というお話ですね。
中々楽しめます。多数の登場人物がいますし、後半は犯人捜しの話になって展開に少し無理な部分が無くはないですが、その場に居ない芽里沙の母親や祖父の記憶の話も絡んで物語に深みを与えています。
心優しき異形のものに心通わす美少女、そしてその心に応えるモーリス・・・。
結末は・・・ちょっと切なく・・・静かな余韻をもって終わります・・・。
わがままそうに見えて純真な美少女と悩み多き女子高生。そんな二人と、人知を超えた切ない存在の交流・・・大人になることの悲しみも描かれています・・・。
・「久々のヒット」
高校生と小学生2人の少女が体験するひと夏の事件。
二人が過ごす別荘地で人が死んでいく。そこには『人くい鬼』と呼ばれる異形の者の存在が。人が死ぬだけでなく、その姿さえも消えてしまう。その犯人は、人くい鬼なのか・・・。
最後に謎は解けるけれど、ちょっと肩透かしかな、という印象を受ける。前半から中盤にかけてものすごい勢いで読ませる展開だっただけに最後失速したかな、と。あまりにも取ってつけたようなオチにちょっとがっかりしたのも事実ですが、ただ、子どもから大人になる、その変化の大きさ、悲しみはよく表れていたと思う。
・「産婦人科医療!」
いつも楽しみにしている海堂尊さんの新作は、婦人科医療。これまでの軽妙な語り口はそのままに、現代の産婦人科医療や不妊治療、代理母などの問題をクール・ウィッチと呼ばれる新キャラの女性医師が切れ味鋭く語ってくれます。これまでの「医療ミステリー」よりも、より「社会派もの」に傾斜してますが、ぐいぐい読ませてくれる筆力はさすがで、一気読みでした。最後の出産シーンは迫力。立会いの経験のある私は、震えました。お勧めです。
・「タイムリーなお話です!!」
東城大学医学部を卒業、帝華大学に入学した産婦人科医曽根崎理恵。彼女は、不妊治療を専門とし顕微鏡下人工受精のエキスパートであった。院長の息子の医師がお産中の予期せぬ事故で逮捕され拘留されてしまい閉院を間もなく迎えるマリアクリニックで彼女は、5人の妊婦のお産の担当医でもあった。19歳で父親も知れず中絶希望のユミ、そして34歳の第2子妊娠中の女性、共働きで命を授かり産むかどうかを悩んでいる女性、不妊治療5年目にして授かった39歳の女性、そして同じく不妊治療で授かった55歳の女性。新たなる生命誕生までのお話と代理出産等今話題の不妊治療の現状とは!?★今回ももちろん医療物です。★期せずして母になろうとしている女性、そしてその反対でやっと我が子を授かる事が出来るようになった女性。予期せぬアクシデント等はある中で母としての心情の変化に涙しました。★そして、発展して行く医療の現場…。それなのに古い旧体制の法律や厚生省の考え等、少子高齢化の今改めて考えなければいけない事をギュッと濃縮されていると思う。諏訪マタニティークリニックの院長を彷彿させる理恵のこれからの活躍に期待したいと読者として思う。
・「現代医療体制への憤り」
不妊治療や、代理母。若年層の妊娠や、中絶、羊水検査の是非。
・「視点」
最近産婦人科医療に関して、問題視はされてはいましたが、現場を知らない市民としてどこに視点をおいて解決していくべきかに対する現場のメッセージを受け取ることが出来、大変感慨深い作品でした。
また、同時に断片的でありながら、お茶の間に伝わるニュースと繋ぎより発展した意識をもつことができるように思います。
作品の内容も医療の現状と共に、生命誕生に際する母性と意欲が大きくうかびあがり感銘を受けました。
また、個人的には『デジタルでバーチャルな世界では、複製はオリジナルに極めて忠実だ。だが生物世界では違う。そこには必ずノイズが混じる。再現性という観点から見れば、ノイズは情報伝達の劣化にすぎないが、生物にとってはノイズの発現とは多様性の達成のための必須なステップだ。オリジナルに忠実なコピーしか生めない世界は衰退し、やがて消滅する。』といった単純な真理に関する記述で、論理に埋め尽くされて膨張したいまの社会に対する不安がおおきくよぎりました。
次回作も期待しております。
・「現時点での海堂氏の最高傑作」
2008年3月20日リリース。初出は『小説新潮』で2007年6月号〜12月号。海堂氏はいつも小説というメスで日本医療の患部はどこか、を白日の下に曝す。この作品では産婦人科医がなぜ激減したかだけでなく、明治時代のまま変わらない法律の矛盾や、アンケートばかりとっている厚生労働省の逼迫した現実への無反応・無為無策さ、名ばかりの少子化対策といったあらゆるものの問題点を全て提示している。
この作品でも惚れ惚れするような医者が登場してくる。この作品の主人公理恵の言葉は正に産婦人科の現場の言葉であり、現代の女性の言葉だ。そしてこの作品だけは主人公が女性である必要があったようだ。ラストに向かうほど『子供を産む』ということを、いろいろな立場の女性が考え、決断していく姿にかつてない感動を覚えた。
この作品は現時点で海堂氏の最高傑作だと思う。この作品を霞ヶ関の役人どもは読んで参考にするだろうか。『白鳥』のような役人がいて、霞ヶ関が根本的に変わらなければ日本なんてすぐ崩壊だな、と読了して思った。
・「大人の余韻」
主要登場人物は、ほとんどが、在日コリアンの人々だ。中華料理店を拠点に、クラブ、カフェバー、不動産業などを経営している。しかし、皆が行き当たりばったりの生活をし、経営もかなり放漫なので、営業成績は、あまり芳しくない。
まず、日本の仕事社会の、在日外国人に対する閉鎖性を、再認識するが、物語の主眼は、その部分ではない。行き当たりばったりながら、それぞれが、それぞれの自尊心を持って、懸命にあがいている。物語が中盤に差し掛かる頃から、大変スリリングな展開となり、手に汗握る。
物語は、意外な方向に展開し、重苦しい雰囲気の中で、恋愛感情が芽生える。そして、最後の一行は、自分自身を知るという点で、多くを語る。
展開の意外性も面白く、長編作品としての、読み応えは十分だ。読後は、しみじみと、大人の余韻に、浸る事が出来る。
・「身近な存在の猫だけに…リアルです。」
恋人の結婚を控えて新居に引っ越した志郎。そこは幽霊マンションが近くにあったりそして目の前の空き地もいわくありげだった…。人間の思考を持つ「新しい猫」と人間のお話。★朱川さんと言えば、もちろんホラーです。そしてこれもホラー。★猫って「化け猫」とかそういうちょっと怖いイメージもあるだけに、このお話はそれに結びついてゾクッとする部分がありました。★もちろん猫達の復讐劇の裏には、ちゃんとそれなりのワケがあるんですがね…。★ラストでスメラギの孤独な胸の内がシミジミと描かれていて…切ないです。★今まで朱川さんは短編ばかりでしたが、実は長編も魅力的です。
・「猫がこわいです。」
表紙は幻想的だったので、優しいファンタジー作品かと思ったら、これが全くの見当違いで、恐ろしい話でした。
結婚間近の恋人にも話せない隠し事をもつ、主人公・志郎が、ちょっとしたミスから、人間と同じ様な知恵を持つ猫たちの攻撃対象なってしまうお話です。いろいろな悩みを抱えながらも頑張っていた志郎が、我慢の限界で怒りを爆発させるシーンでは、人間の醜さが一気に表面に出て、なんだか人を信用できない気分にさせられました。また、次々と車で猫をひき殺す描写があまりに多く、志郎ではないですが、読んでいるわたしもかなり落ち込みました。猫好きの人にはお勧めできないかも。ただサイドストーリーの、子どもを無くした父親が猫のおかげで立ちなおるシーンは、感動的で涙ものです。
起承転結の”転”までは少し長く感じるかもしれませんが、後半はあっという間です。エピローグがちょっと蛇足に思え、締まりがなかったのが残念でした。
・「猫VS人間」
物語には、終始、たくさんの猫が登場する。その猫のボス的存在が、流麗な白色のスメラギだが、この銘々は主人公の志郎による。
構図は、猫VS人間であり、内容は、かなり壮絶だ。戦闘的場面は、あまりに壮絶過ぎて、本から眼をそむけたくなる程だ。加えて、人間の欲望の醜さが、鮮やかに描かれているが、悪いのは人間ばかりの様な気がしてくる。
また、長編作品としての、バランスに、少々難がある。特に、前半は、動きが少なく、緩慢な印象だ。
後味は、あまり良くない。ただ、著者が、人生を見つめる眼は、鋭い。
●羊の目
・「親のために」
昭和8年。夜鷹が産んだ一人の男児、神崎武美。彼は浅草の侠客、浜嶋辰三の下で育てられ、次第に日本の裏社会を代表する存在となっていく。
親のために身体を張る。親が誰かに狙われたりしたら、その相手を殺る。任侠の世界の掟を小さい頃に教えられた武美は、この教えに背くことなく生きていく。
裏切りを含めた、様々な辛い出来事にも遭遇するのだが、掟を守るという武美の軸はブレることがなく、彼は常に親のことを第一に考え、太く、大きくなっていく。ただ、決して曲げない信念を持った強い男でありながら、孤独や悲哀といった寂寥感も、この男からは感じ取ることが出来る。そして優しさも。
刑務所内やアメリカに舞台を移した話も盛り込まれ、楽しめる。文章も読みやすい。
・「伊集院版ゴルゴ13」
帯には「神とは、救いとは、伊集院文学の最高峰」となっているが、どうもそんな感じはしない。戦前に夜鷹に生み捨てられた主人公が、従軍して、網走とアメリカで懲役。バブル期の日本にやっと戻ってきて、長崎の離島で礼拝堂造り。いったい、何歳なんだろうか?東映映画の高倉健かゴルゴ13のような年齢不詳さ・・・。神、救いといったところも遠藤周作のような深さがない。やはり、伊集院の最高傑作は「でく」だと思う。
・「浅草観音は何を語る?」
本書の形式は、一見短編集の様に見えるが、物語は連続していて、一冊で一つの長編を成す。主人公の出生そのものも壮絶であるが、その後の、裏社会での生き様も、壮絶極まりない。
物語は、重く、そして、寂しい。復讐という、裏社会の掟が、主人公を徹底的に支配する。この様な、掟そのものが、そこはかとなく寂しい。
しかしそれは、主人公が選んだ道ではない。むしろ、夜鷹である母が、一定の願いを込めて、ある選択をした。そして、その結果が、本書の展開を導いた。
東京、浅草寺の観音様が、主人公と対峙する場面がある。夜鷹だった母が、観音様の姿を借りて、何かを語りかけている様にも思える。
表題が意味する事は、少々深い。どっしりと重い読み応えの本書は、様々な事を語る。
読後には、複雑な余韻が、交錯する。
・「もう少し説得力があれば、」
昭和初期に生まれたある男の一生を、生い立ちに関わる周りの人物から語り、徐々に主人公に移っていくのです。ヤクザの世界に身を置く主人公に、とても胆(タンとかキモとか、つまり度胸のある)のある男の。
物語は連作短編の形で、それぞれの章にそれぞれ主人公に近しい人物の主観で、いかに主人公が凄い男かを表現していきます。物語としては、それなりに楽しめました。が、どちらかというと、不満が残りました。
物語の流れとしては、かなり長く、広く、それなりの世界観があるのです。また描写も、新しくはありませんし、斬新でも、特徴あるわけでもありませんが、悪くもありません、とても読みやすいです。どうしても気になってしまうのが人物描写、人物の心理描写、さらに、そこに2重構造を使う事なのです。
たとえば、如何に凄いか?を表現するのに、出来事や、それを通しての心理描写なりを使い、読者が想像し、ある程度感情移入できたり、できなくても理解でき、また魅力あるキャラクターであるなら良いのですが、ちょっと直接的過ぎる表現なのです。如何に凄いか?=凄いから、凄い。という説明になっちゃっている部分を私個人は多く感じました。何だか「この登場人物はアレをアレするためのキャラクターなんだろうなー」が分かり安すぎるので、どうしても薄っぺらく感じてしまうのです。
その上、2重構造、そんな割合薄っぺらく感じてしまいやすい人物を使って、主人公の心理描写や人間性を浮き彫りにしようとすると、どうしてもちょっとわざとらしく感じてしまいます。主人公の周りを固める、幼少期の兄的存在、親分、刺客、逃亡先で知り合う娘、どれもこれもが、主人公を凄く見せるための行動をとってくれる、勝手に恐れ入ってしまっている様に写るのです。行動に説得力が、どうしてそこまでなのか?が私にはちょっと。
と、文句もあるのですが、作品として、もう少しキャラクターが上手く動いて、伏線も張れているなら、題材としては面白いとも思うのです。義理と暴力とヤクザの世界の男と、宗教的救いの交差。もう少し登場人物に魅力があったり、説得力があれば(私には)よかったのですが。ちょっと余韻も足りなく感じましたが、特に村上 龍さんの小説が好きな方にはオススメできるかもしれません。
・「壮大なドラマなのに…」
一人の侠客神崎武美の壮絶な人生を描いた長編小説。彼の行動の根底にあるのは自分を育ててくれた「父」への忠誠である。実際にはその「父」辰三は、自分のみを守るために武美を見放したり、売ったりするのだが、武美の人生は辰三への恩義が全ての人生なのである。夜鷹の母が武美を産み落とし、辰三に託すまでの冒頭の短編「牡丹の女」は人物描写も繊細で、今後の展開を期待させる傑作なのだが、そこから先は、どうも作者の筆があらすじをなぞらえるばかりで、表現も直接的で乏しい。もっと丁寧に丁寧に描いていけば、読み応えのある大作になったと思うのに、残念。
・「ジェットコースターに乗せられたような気分」
ちょっとマニアックな部分もありますが、そんなことはすぐに忘れてしまうスピーディで凄まじい物語の展開にハラハラドキドキ。これは、まさにジェットコースター・エンタテイメント小説。ぜひとも映画化してもらいたいですが、このスケールだとハリウッドじゃないと無理かな。
・「とにかく面白かった」
最初は中米の話とか飛行機の用語とか出てきてとっつきにくい感じがしましたが、100ページぐらいからつぎから次へと事件が起きて、その迫力に一晩で読んでしまいました。北朝鮮の核のこととか最近の国際情勢も巧みに取り入れていて、ドキュメンタリータッチな実にリアルなスリラーだと思います。おススメですよ。
・「刺激的」
ストーリーの展開の巧妙さもさることながら現実の航空機のオペレーションについても実にリアリティがあり興味を惹かれました。
・「次々に連なるエピソードで読み進められる作品です!」
スピーディーな展開で続きが気になり一気に読み進められました。女性パイロットの心理的推移も良く分かり航空小説とはまた違ったヒューマニズムな観点からも共感を得られる作品でした。女性にもお勧めです!
・「これはジャパニーズハリウッド」
絶対に映画化されます。飛行機の中で描かれるトラブルシューティング。ただそのトラブルは尋常ではない。ハイジャック、爆弾爆発、機長の負傷、機器の不具合、渦巻く各国の陰謀とハリウッド映画によくあるスピーディーな展開。日本でなら福井さんの小説(映画)風ねって、かと思ってたら、この作品のとった賞の選考してるし(笑)氏も絶賛。無論一気読みの面白さでした。航空機という特殊な空間と、飛行中の限られた世界、その物の描写も、そこに生きる人間の描写も素晴らしい。久し振りに活字で手に汗握りました。
・「ロックはロール?」
教師と生徒、および、生徒が大人になった、その後が描かれている、六篇の短編集。綺麗事ではない、厳しい現実が織り交ぜられながらも、温かい感性を伴って描かれている。
最初に配されている「白髪のニール」が示唆する事は多い。ニールとは、ロックのニール・ヤングの事で、ニールは歳をとる事を歌い、ロックはロール?らしい。ロックはロールとは、当初は、何の事だか分からないが、数十年の時を翔るこの作品は、白髪の先生がロールする。普段は無愛想な物理の先生が、生徒に習って、慣れないギターを練習奮闘し、ギターをかかえてニールでロールするのだ。ロールという言葉に、著者なりのメッセージが込められており、強く印象に残る。
著者は時々、野球部の話題を取り上げるが、五番目に配されている「泣くな赤鬼」は、野球部を舞台としていて、興味深い。ただ、この作品の舞台は、野球部よりも病院での比重も大きく、涙無しでは読めない。
表題作の「気をつけ、礼。」は、ごく短い作品だが、非常に秀逸だ。最後の数行に、先生の面影が色濃く投影され、哀愁と希望とが、交錯する。
著者の描く少年は、あたかも、著者自身のかつてであるかの様だ。
・「しっとり となれます」
学校の先生と生徒にまつわる短編集。どの物語も派手ではないが、じんわりと優しく染みこんでゆくような物語ばかり。特におすすめは 「泣くな、赤鬼」電車の中にもかかわらずに泣いてしまいました。
学校の先生ってやっぱり自分にとっても大切な思い出なんだなあと改めて実感させられました。
・「教師とは」
重松さんの新作は教師と生徒の関係を描いた短編集。
教師って完璧ではない。聖人君子でもないし、神様でもない。この作品に出てくる教師はどれもいい意味でも悪い意味でも一人の人間である。責めることは出来ないけれど、もう少しどうにかならないものか・・・と思う教師もいる。でも、振り返ったときに生徒と生徒の関係はどれも悪い思い出として残っていない。もちろん現実ではそういうことばかりではないけれど、自分の経験を振り返ってみても生徒のときはすごく嫌いだった先生でも今思い出すとなぜか許してしまえたりしている。
月日はいろんな意味で寛容なんだな。
重松さんらしく泣ける作品もある。腹の立つ作品もある。でもどれもいい作品である。
・「「先生」を軸にした8編の短編ストーリー。」
この人、本当にいい話書くなあ。 言葉が丁寧ですっとココロに染みる。 言葉選びもズバ抜けてセンスを感じる。
「先生」を軸にした8編の短編ストーリー。 前作の「ブランケット・キャッツ」が光とするならば、今作はまさに影の部分。 少し屈折した先生を軸にしたストーリーは、人間の嫌な部分ややらしい部分を描きつつも、どこか痛いほど共感できる。ここに描かれているのは理想の先生ではないけれど、本来の人間らしい姿で描かれていて、リアルな先生像を描いているような錯覚に陥ってしまう。
●流星の絆
・「現代エンタメの最高峰=超一流シェフの最高級料理」
「現代エンタメの最高峰」という帯の言葉にあながち嘘はないと思います。見事にからみあった伏線。いきもつかせぬストーリー。 100頁を過ぎるあたりからは、ぐんぐん加速する感じでいつのまにか物語の虜になっていました。キーパーソン三人の性格設定や書き分けも見事です。間違いなくドラマ化でしょうね。翌週が待ち遠しくてたまらない、高視聴率間違いなしの、話題作になると思います。 ただし残念なのは、やはり、良くも悪しくも「エンタメの最高峰」になってしまっているということです。ストーリーが面白すぎて、人間の深みや痛み、業のようなものを感じる「淀み」が感じられないのです。『白夜行』『手紙』や『秘密』などにはそれを感じられただけにそれだけが残念です。ないものねだりかもしれません。贅沢なお願いですね……。 この作品は、いわば、超一流のシェフが見事に作り上げた料理といった感じでした。美しくて工夫に満ちていて、きちんと王道を行っています。もちろん抜群の美味しさです。けれど、不器用なりに、懸命に作った家庭料理というのも、小説の魅力のひとつなのだと思います。 しかし、そんな「ないものねだり」は、星一つ減じるほどのことではありません。最高級の楽しみを堪能できました。五つ星です。
・「久々に最高レベルの面白さ」
個人差はあると思うが、ここ最近の東野作品に少しもの足りなさを感じていたのだが、これはいい!相変わらず文章が上手いのでスラスラと読んでしまい止まらなくなる。そして登場人物達の感情の描写が、、、(ネタバレになるので詳しくは書きませんが)とてもせつなくて胸が締め付けられました。「白夜行」「秘密」に並ぶ傑作だと思います。
・「文字通り“すべての東野作品を越えた”」
刊行されてすぐに購入し、ほぼ徹夜して二日で読み切った。それほどほんとに息をもつかせぬ展開で、東野作品ならではアッという間です。
とにかくラスト。まじで涙が出ます。
僕は「秘密」「容疑者Xの献身」より遙かに感動した。
三兄妹の「絆」、必見です。
・「爽快感」
ラストのもっていき方はさすが東野さんと言わざるを得ない。東野さん作品の特徴でもある謎めいた女性が今回も登場するが、今回の作品では従作品よりも人間味のある設定となっており、ストーリーのキーパーソンを巧く散りばめている。そしてサスペンス系を読み終えて爽快感が残った作品は私にとってこの一冊のみ!もう素晴らしいの一言。
・「「最大の誤算は妹の恋心だった。」」
この帯に惹かれて読んでみました。さすがは東野圭吾さん、これだけの内容がありながらも読みやすいし、テンポよく、読み手を先へ先へとどんどん引っ張っていくのは、いつもの作品と同様。すごいですね。一度読み始めたら止まらなくて、一気に読んでしまいました。
たしかに皆さんおっしゃられている通り、人間の持つ黒さ、憎悪、徐々に物語の真相に迫っていく焦燥感では同著者の「白夜行」の方が抜きんでていると思います。「流星の絆」も、過去の犯罪・復習のために罪に罪を塗り重ねていく…という点では、たしかに「白夜行」とは似た点もありますが…大事にされてるテーマは違うんじゃないかとも。
「流星の絆」はどのようにして犯罪を犯していくか、いかにして自分達の罪を隠すか、ではなく、傷を負った彼らがそこから生きていくか、に焦点をあてられている気がしますね。だから復讐劇、犯罪モノという先入観で読むと、展開があっさりしすぎているように感じていたり、物足りなさを感じたりするのかな、と。メインテーマは人間の心の闇でもなく、残虐な殺害事件の真相でもなく、あくまでも人と人との絆ですからね。あんなふうに大事にされる「シー」が羨ましかったり。
賛否両論あるようですが、文学の価値は一様ではないですしね。私としては、面白かったし、ドラマ化も非常に楽しみです。キャストを聞いて、功一役の二ノ宮さん、静奈役の戸田さんはピッタリだなと納得です。泰輔役の錦戸さん、とてもいい俳優さんだと思うんですが、とても落ち着いていて、眼力ある方なので、泰輔というよりは…どちらかというと錦戸さんは頭のキれる功一役の方が似合いますよね。
まあ、なにはともあれ、映像の中で、功一、泰輔、静奈の三人がどう生きてくれるか、とっても楽しみにしています。
・「しみじみとした想い出話」
5人全員が、1961年生まれで、かつて寝食を共にした、大学生時代の学友。その5人が4人となり、葬儀の帰途、4人が3人になるかも知れないという局面となってしまう。ここから、喪服での、とてつもない長距離の、ロングドライブが始まる。
作品は、学生時代の、想い出話を、延々と語る。その内容は、単なる青春物語では終わらない、壮絶さがある。車内で流される曲は、近い世代の人間には、懐かしいヒット曲ばかりだ。
社会人になってから、皆が初めて一同に集うのが、不幸にも、一人の葬儀の場となってしまった。だからこそ、故人も含めた、想い出話は、何にも増して、貴重だ。
物語の結末には、深く納得させられる。おそらく、この物語を読む方皆が、成程と思われると思う。
しみじみとした想い出話なのに、ハラハラとさせられる。男の友情とは、得てして、こういうものだ。
深く共感出来る事をもってして、文句無しの星5つとした。
・「語り合える仲間のいる幸せ」
1961年生まれの5人の男、大学時代の4年間同じ屋根の下に住み、バンドを組んで過ごした日々。20年ぶりの再会は、1人の仲間のお葬式。帰り際、残された仲間の一人がこれから自殺すると宣言、その理由を当てられたら自殺を思いとどまるという。九州から横浜までの自殺阻止のためのロングドライブがはじまった。
同年代として、とても懐かしいBGMの流れる車内で、ひたすら思い出話が続く。あの4年間の中にしか思い当たることが無いからだ。楽しく切なく、そして深い悲しみを全員が味わった捨てられない大切な4年間。
はたして、自殺を止めることは出来るのか。そして、あのころは語られることの無かった秘密も明かされていく。
文句なしに面白かったです。最後は2度驚かされました。そして、こんな素敵な仲間のいる5人がとても羨ましいです。
・「切なさにウルッと来る作品です。」
★大学時代の5人のメンバーの中の真吾が事故死した葬儀の後…。メンバーの一人だった淳平が自殺すると言い出した。淳平の自殺の原因は何なのか?過去を振り返りつつロングドライブが始まった…。★小路さんらしい切なさが残る作品で個人的には素敵な作品に仕上がっていると思います。★大学の頃、確かにあの頃って先の見えない将来に向かって頑張ることはあっても社会人となって感じる重荷ってなかったなぁ…とこの作品を読んでシミジミと思いました。仕事があったり家族を持ったり決して負の重荷ではないと分かってはいるけれども…。なんにも追わずに過去に戻れたらとやっぱり思う時ってあるなぁ…。
・「本当の親友とは」
大学時代の親友たちが20数年ぶりにそろう。仲間の一人の葬儀に出るために。それぞれがそれぞれの生活を抱え、全員が揃うのは亡くなった20年ぶりのことだった。もう全員が揃うことがない悲しみを抱えながら自殺をするという仲間の真意を探りながらのロングドライブ。
その結末はなるほど、と思わせるものだった。亡くなった人を偲ぶのは当然だけど、それぞれの生活があるがゆえにその偲ぶ時間も場所も限られてしまう。思い出してあげることが、話をすることが、最大の供養かも知れない。
自殺を言い出した仲間の真意は、本人にしか分からない。しかし、残された4人の気持ちを一つにするには十分だった。そして語られる大学時代の、青春時代の思い出話。40半ばになっても、その当時のこと色んな思い出を話すことができるそんな関係がうらやましくも思えた。
・「過ぎた時は戻らない」
優しくて清々しくてちょっと切ない小路幸也の世界。この人の本、大好き。
このお話は、45歳の男4人の青春ロードムービーって雰囲気。
長いドライブの間、淳平の自殺の理由を探ろうと、かつての思い出を語り合う4人。その昔話がとっても良いのだ。かつては同じことに笑い、同じことに怒り、同じ時間を過ごした仲間。今だってその仲間を大切に思っているけど、時がすぎ、それぞれ違う道を歩み、二度ともとには戻れない。
タイトルは「mourning(追悼)」。亡くなった仲間を悼むための時間。追悼の長いドライブの間だけ、かつての時間がよみがえる。
淳平が車内で i podから