チルドレン (講談社文庫) (詳細)
伊坂 幸太郎(著)
「伊坂流日常の謎」「子供の世界は、、、」「いいなあ」「笑いながら、気持ちがほっこりする本」「魅力的な登場人物」
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫) (詳細)
伊坂 幸太郎(著)
「優しくて切ない、それぞれが紡いだ想い出」「伊坂ワールド」「二年前と現在との交錯」「すげえ。」「軽快なやりとりがいい」
グラスホッパー (角川文庫) (詳細)
伊坂 幸太郎(著)
「気持ちよかった。」「ハードボイルド小説としてではなく」「一人の復讐者と三人の殺し屋」「以外に1番好き」「初めて読んだ」
「許すよ、俺は」「心が温かくなるような、寂しいような、悲しいような・・・。」「あきらめるな」「僕らと彼らの終末に」「心が温まりました。」
マドンナ (講談社文庫) (詳細)
奥田 英朗(著)
「心地よい中年男性の青春小説」「40代男性目線で捉えたサラリーマンの生き様―秀逸な作品群がここに集結!」「酒井順子の解説が泣かせる」「「笑い」と「泣かせ」のツボを押さえている」「共感!好短編集」
東京物語 (集英社文庫) (詳細)
奥田 英朗(著)
「ツボをおさえている」「文章それぞれに思い入れの残る」「中年にきっかけを与える一冊」「本書は青春小説でもあり時代小説でもある―作家・奥田英朗の誕生史!」「それぞれの「東京物語」(奥田版)」
「緊迫の医療サスペンス」「医者はいかなるときもその使命感を完遂できるのか?」「わかりやすい医療もの。」「「心」に突き動かされ、翻弄され、けれど「心」によって救われる。」「東野圭吾による「長編医学サスペンス」の傑作品がここに!」
「社会を斬る刃」「かなり個人的な考えを言います。」「殺人でしかなくても、復讐を遂げられることを祈ってしまう」「何のために何をすれば」「仇討ちと少年法の壁」
「2004年下半期、初の徹夜本」「最近では一番」「ワクワクしながら読む、それでいいんじゃないですか!?」「斬新!」「結末まで一気に読んでしまいました。面白かったです」
明日の記憶 (光文社文庫) (詳細)
荻原 浩(著)
「いまさらですが・・・」「消えた記憶の行く先は・・・」「素晴らしい小説」「さえきぶちょうはアルジャーノンですか?」「自分が自分でなくなっていくという恐怖」
誘拐症候群 (双葉文庫) (詳細)
貫井 徳郎(著)
「第1弾よりパワーアップ」「キャラクター」「エンターテイメント!」「殺人症候群を読む前に」「シリーズ第2弾もなかなか」
殺人症候群 (双葉文庫) (詳細)
貫井 徳郎(著)
「重くて、辛くて、切ない痛み」「正義のための殺人も悪なのか?」「あなたなりの答えを出してみてください!」「次回作は「テロ症候群」!?」「愛と復讐」
電子の星 池袋ウエストゲートパークIV (文春文庫) (詳細)
石田 衣良(著)
「石田衣良ファンならずとも同じみの、I.W.G.P。」「テーマが少し変わったかな?」「久々に」「なんだかビックリ。」「切っていいのはキャベツまで」
反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパーク〈5〉 (文春文庫) (詳細)
石田 衣良(著)
「4話それぞれのおもしろさ」「旬のテーマを切り取って」「明るく・軽く、週刊誌ののりで、現代の恥部や暗部」「佳作と駄作の混合短編集かな?」「標題作品は結構重い作品」
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>あ行の著者>その他
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>は行の著者>その他
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>さ行の著者>その他
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>な行の著者>貫井徳郎
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>な行の著者>その他
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・「伊坂流日常の謎」
『日常の謎』的な作品5本が収められた連作短編集です.
中心となる人物の言動や性格,やや気取った雰囲気など,登場人物や世界観がほかのそれらより丁寧に描かれていて,ただの『日常の謎』でおわっていないのが楽しいところです.
また,連作なのですが順に繋がっているのではなく,それぞれの作品の時間が前後しているのが特徴的です.とはいうものの,繋がりをややこしく感じることはなく,読んでいるうちに自然と気づき「ニヤリ」とさせられます.
ほかにも,全編をとおして絡んでくる父と子の関係や,盲目の成年をめぐる少しチクリとさせられるやり取りと,楽しいだけではない物語としての読みごたえもじゅうぶん.
短編ということもあって読みやすく,おすすめの1冊です.
・「子供の世界は、、、」
日々成長がある、そんな生活はみな違っていて同類的友達とがひきあいながら進んでゆく。ちょっとしたきっかけが、ちいさな謎をつくりまたちょっとしたことが物語をおおきくしてゆくきひきつけられる。大人が読むとなーんだのようだが、少年の心の動き周りの状況がつぎの短編へとみちびく。
たいへんにシンプルであり読みやすいが、なかにある主のジグソーパズルのようでもあり読後はさわやかだ。 一読推薦します。
・「いいなあ」
嘆息。昨日『オーデュボンの祈り』を読了し、今日この『チルドレン』を読了。伊坂作品4作目です。とにかく漂う空気がたまらなく心地いい。なんとなく嬉しくなります。特に理由はありません。「俺たちは奇跡を起こすんだ」
・「笑いながら、気持ちがほっこりする本」
4人の視点から見た陣内物語!登場した途端は、「なんだ、この男っ?!」って思いましたが、読み進んでいくにつれて、快感になっていくんです!お友達にいたら、迷惑することもあるだろうなと思いつつ、同時にこんな人がお友達にいたらいいなとも思いました。
ところで、回りがどう思おうと(どんなに迷惑しようと)自分がやりたいと思う事はやっちゃうところとか、ギターが巧いこと、傍若無人でありながら人の心にどこか温かさを残すところが、島田荘司の御手洗潔に似ていると思ったので、陣内が好きな人は御手洗も好きだし、逆も真なりと思ったのですが、これは私だけでしょうか?!(笑)
人間的には、目の見えない永瀬が素敵でした!そして、一番印象に残ったシーンは、彼がどこぞのおばさんに5000円を勝手に寄付された時のエピソードです!あのシーンの陣内の普通ぶりは見事でした。そして、永瀬はさぞや嬉しかっただろうと思いました。
図書館で借りた本でしたが、これは買います!「死神の精度」以上に気に入りました。
・「魅力的な登場人物」
2002年文春傑作ミステリーベスト10 5位。2005年度版このミス10 16位。第131回直木賞候補作品。
本当に、魅力的な登場人物を造型するのが上手な作者である。この作品では、陣内、陣内の大学の同級生鴨居、陣内と銀行強盗の際に知り合った盲目の青年永瀬、永瀬の恋人優子、陣内の職場の後輩武藤の5名が主要世登場人物であるが、特に陣内の人物造型が秀逸である。(自分の友人としては歓迎できないかもしれないが・・・。詳細は作品をお読み頂きたい) 作品は、陣内の学生時代と、家庭裁判所の調査官として勤務するおよそ10年後のエピソードを配した5編で構成される連作短編集である。いずれの作品も、作者の他の作品同様、ミステリーでありながら、暖かくそしてユーモアにあふれた作品になっている。
・「優しくて切ない、それぞれが紡いだ想い出」
伊坂幸太郎にあふれんばかりの感謝をしたい。個人としては伊坂のベストに推したい作品。正直、読後言葉を失った。
言うとすれば大いなる想い出の物語。最後のほうに、椎名がひょっこり現れただけ。だけど、椎名がいないとこの物語は完成しない。そこがまた大きなポイントになっている。
人と人との出会いや過ごした時間がどれだけ大きいか。出会ったらいつかは分かれてしまう。本作の登場人物の生き方はあまりにも個性的で、訴えるものがあって、残したものがある。完璧な人間なんていない。だからこそ、人と人との出会いがもたらすものは、かけがえのないものだ、と。解説の言葉を借りるなら、それぞれの人生が交差することでもたらされた奇跡か。
本作が何故爽快な読後感を残すかは、ドルジが関与しているのが大きいのだろう。そしてだからこそ、最後のどんでん返しにつながってくる。意味のないことなんで殆どないと思いながら読み進めないといけないくらい、伊坂はとんでもないトリックスターである。
全体的に、どの伊坂作品よりも優しさを感じる。現実なようで現実のようでない。文体のせいもあるだろうが、登場人物達のおかげでもあるだろう。彼らの会話戦はいつになく楽しい。ほんとに翻訳物を読んでいるかのように。それまでも小さな伏線にしてしまうのだから、全く気が抜けない。最後の最後に彼らの想いや意志がようやく分かる。そのとき、話とはまた別な感動が待っているだろう。彼らとの出会いに、読者も思わず感謝したくなる。素敵な物語を紡いでくれてありがとう。
『重力ピエロ』から繋がるような大事なことはあっさり言ってしまう、そんなスタンスが大好き。宗教を絡めてくるあたりがまた本作の巧さだろう。細かいことを気にしないで、どうせならポジティヴに生きてやろうじゃん。そうじゃなきゃ、前には進めない。だからこそ、生きることは楽しい。
・「伊坂ワールド」
小説の中だからこそ作れるミステリーという感じ。
現在と二年前のストーリーが交互に展開していって、それまでの不思議な行動や、些細な会話も全部納得できて、ストーリー的にもちょっと感動できるラスト。
伏線の張り方がさすがだなと思いました。なんとも言えない後味を残すのがすごい。
・「二年前と現在との交錯」
引っ越してきたアパートで出会った青年、河崎に、本屋襲撃の計画を持ちかけられる僕。その一方で、二年前の出来事が、河崎の元恋人、琴美を通して語られます。
現在にも二年前にも登場するのは河崎。“二年前”は、河崎にとっては終わっておらず、現在も続いています。本を読み続けていくうちに、現在と二年前がつながってきて、話の全貌が明らかになります。所々に話の謎を解くキーワードが散りばめられているので、細部にまで注意をして読みたい本です。
・「すげえ。」
すごい。その一言に尽きる。物語は現在の普通の大学生・椎名と、二年前の利発的な女性・琴美の間をカットバック形式で進んでいく。まったく違うような話でいて、河崎や麗子さんといった人物が共通して現れて、片方では本屋襲撃、また片方ではペット殺しとの遭遇といった事件が展開していく。理解しきれないまま後半に突入すると、急に現在の椎名が体験する奇妙な事件と、過去の現実味のあるスリリングな事件が結びつき始める。そして、冒頭に張られた伏線や二年前の「思い出」が、一気に収斂して行く。「アヒルと鴨」とは何のことなのか、書店襲撃の意味とは、、、。読了後、物語すべてを見つめた「神様」ボブディランの歌声が頭の中で渦巻いて離れない。
・「軽快なやりとりがいい」
2年前の話と現代の話が交互に展開されていく中で、それぞれの登場人物が交わっていく様子が分かりやすく、丁寧に描かれていた。本屋を襲うという突飛な発想もおもしろかったのだが、それ以上に河崎と琴美、ドルジの軽快なやりとりが好きだった。テンポがよいためスラスラ読めるし、ミステリーとしての事件も楽しめた。
・「気持ちよかった。」
伊坂さんの小説を読み始めて日が浅いですが、文章にとても味があり、読みやすいです。私は「グラスホッパー」が2冊目で、1冊目が「重力ピエロ」でしたが、この2冊だけで伊坂さんの文章に侵されてしまいました。
伊坂さんの文章は、思想家の著書を読んでいる気分になります。登場人物それぞれが、何かしらの「信念」というか「心の柱」を持っていて、会話の端々……どころか前面にそれを押し出してきます。この作品ではそれは亡き妻の言葉であったり、自分自身に課した取り決めであったり、しじみであったり、ロック歌手であったり、ロシアの有名小説であったりします。
けれど文章自体はゴタゴタしていなく、軽妙な会話や地の文のおかげで非常に読みやすい。エンターテインメント・娯楽として楽しむとしては確かに「重い」「くどい」感がありますが、文学作品として読むにはとっつきやすいです。
またエンターテインメントとしてみても、私は十分に楽しめるレベルにあると思います。登場人物の視点が頻繁に変わりますが、3人称だし、視点の切り替えが起きるときには文章間に人物名の判子が捺印(?)されているので混乱することはありません。視点の切り替えによるトリックなどのサプライズ的な要素は薄いですが、それぞれ別境遇にいる登場人物達が徐々に近づき始める様子は、「この先どうなるのか」という楽しみを否応なく演出してくれます。また先も述べたように登場人物全員が何かしらの信念を持っているので、キャラクターとしても非常に魅力的です。
文学作品とエンターテインメント、この二つを高い水準で融合した作品。これが、私の感想でした。
あと個人的に、渋いおじさんが多すぎて悶絶ものでした。生き方に筋の通った渋い野郎が好きな人にも楽しめるかと(笑)。
・「ハードボイルド小説としてではなく」
会社員の『鈴木』、殺し屋の『鯨』と『蝉』、この3人の物語がうまく絡み合っていき、最終的にひとつになったのは、本当に見事だと思いました。ただ、ハードボイルド小説として読むと、微妙かな・・・ということになると思うので1つの伊坂幸太郎の物語として読むのがいいと思います。
・「一人の復讐者と三人の殺し屋」
内容は重たい.人もバタバタ死ぬ.それなのにとても読みやすい.スイスイいける.これも著者のなせる文章技巧の妙だろう. 突飛な始まり,ぶれる時間軸,登場人物たちの意味深な発言,勧善懲悪的な倫理的収束.現在の作家の中で最も力のある一人なのも肯ける.今後の作品も楽しみにしたい.
・「以外に1番好き」
伊坂作品で一番好きな本です。伊坂ファンとしても。とてもダークな世界で多くの人が死にますが・・・でも終盤に行くとこの残酷な世界から離れたくないと思いいつまでも主人公の鈴木と漂っていたい気持になってしまいます。
伊坂作品の形容詞の洒脱さや爽快さはありませんし、かっこいいセリフもなく、ただ他作品にある妙に青春青春したわかーい感じがなく大人になった??ような気がしました。
主人公の鈴木の復讐劇という内容ですが亡くなった妻への思いが伊坂幸太郎にしか描けない優しさであふれているので多少残酷でも離れがたい世界となり、異質だけど好きです。
・「初めて読んだ」
伊坂幸太郎さんの作品をはじめて読みました。他の方々が書いてるように文章にセンスが光る。読みやすいし、特に蝉と岩西のやり取りとか、凄くいい。
正直最近は人が死んじゃう映画とか小説とかあんまり好きじゃないんだけど、これは文章にカバーされて全く苦にならなかった。疲れてるから電車とかでも最近は本が読めなくなってましたがこの本は読めました。しばらく伊坂作品読みます。
・「許すよ、俺は」
ヨカッタ。「生きる」ってことがこの作者のライフテーマなんだろうなと。作品を振りかえってみると全部「生きる」って話なのに驚いた。
テーマとしてはごくごくありふれたもので、この時代にそういう青臭いメッセージはどうかとも思うけど、この作者の場合、単なる楽観主義でもなく、シニシズムでもなく、残酷さをもって静かに書ききってしまうところがすごい。そして面白い。だから許せる。
気になったのは各章のタイトル。天体のヨールはどうなんだと思う。でも、お話としては一番好き。だから許せる。
あと、登場する女性がみな度量が大きいというかちょっと現実離れしてる感じはした。でもみんな斉藤和義のいくつかの曲に出てきそうな感じで魅力的。だから許せる。
・「心が温かくなるような、寂しいような、悲しいような・・・。」
一時期流行ったような「とにかく泣けます!」みたいな本ではないが、読んでいるうちに、あるいは読み終わったあとに、胸にグッとくるものがある。読み始めは設定にもなじめず、ふーんって感じだが、読めば読むほど伊坂マジックの術中にはまって、作品世界に同調していく自分を感じるようになる。自分自身もまた、舞台となっている仙台ヒルズタウンの住人のような気がしてきて、登場人物達が知り合いのように思えてくる。しかしそれならば(自分もまた作品世界の住人なら)、自分もまた3年後に死んでしまうかもしれないわけで、そうやって考えてみると、自分は今を精一杯悔いなく生きているだろうか?と考えさせられてしまう。何歳のひとが読んでも、そのひとなりに、生き方(逝き方?)みたいなものを考えさせられる本だと思う。
・「あきらめるな」
伊坂幸太郎の最近のパターンでもある、短編が連なり、8家族から残り3年の人々が浮かびあがる。伊坂幸太郎は、人間が弱くて、ずるくて、みっともないことを、逃げも隠れもせず、この作品でゆっくり呈示してくる。どんなに惨めでも、カッコ悪くても、恐くても、生きるしかない。私達が1日を大切に生きようとしないとき、流れたしまった時間の尊さを、伊坂幸太郎は覚えているような感じだ。余命3年の状況でも、進むべき生き方は、今でも同じだと語られている気になる。<あきらめるな>静かな闘志が、心を揺り動かす。
・「僕らと彼らの終末に」
伊坂ファンであり知り合いにその魅力を布教している者だが、正直いって近作の『魔王』と『砂漠』については紹介がしずらかった。だって、伊坂幸太郎風のおもしろさ(と、勝手に特定してしまうのは著者とその愛読者に失礼だが、まあ、ファンってのは不公正な思い込みがなければ成り立ちませんので…)があんまりなかったのだもの。とりあえず、これらは後回しにして『ラッシュライフ』とか『死神の精度』とかを先に読んで、その軽快な物語づくりや会話のセンス、いかにもフィクションな楽しさを味わいながら、でも「人生って何だろうね」をあまり深刻でなく考えられるすごさをどうぞ、ってな紹介をしていたわけだ。だから、やった。この作品の登場をもって、新作からいきなりすすめられるのである。また思い込みで恐縮だが、この作家の本質は相互リンクを前提とした連作短編である。一つの視点が長いとダレる。しかし一つの世界を複数の視点から構築していく才覚には舌を巻く。講談的でなく、落語的なのだ。お話の神様の視点からエピソードの全体を長々と語りとおすのではなく、実際にその場で生きている人々の声や視線やしぐさが交差しあう様をおもしろおかしく時にかなしく演じてみせる。今回はテーマは世界=私の人生の終末。まあ、理の必然として「死に照らされてこそ生は耀く」的なニュアンスが前面に出てくるわけだが、しかしもちろん、それだけではない。あと三年、という状況を想像力ゆたかにリアルに描写しつつ(基調としては、大混乱と大量死の嵐のあとの静けさ)、その日の前の異常な日常が、あちらではコミカルに、こちらでは社会風刺的に、全体を通してごく哲学的に(SFはいつも哲学的だが)、そして本作の最大のポイントかなと思うのだが、家族ドラマ的(「家族」はカッコつきがいいかな)にたんたんと語られる。楽しみながら、考えて。恐怖しながらやさしい涙を流して。そういう傑作である。
・「心が温まりました。」
伊坂幸太郎氏の著書として初めて手に取りましたが、傑作です!小惑星衝突を3年後に控えて、という状況設定にはムリがあるかもしれませんが、だからこそ“人がなぜ生きるのかどう生きるのか”ということを不純物を排除して考えることが出来るのかと思います。家族を持つ身だからこそ個人的にグッとくるものがあったかもしれませんが、小惑星衝突という背景に変に捉われずに読み進めることが出来ましたし、読後は心温まるものがありました。著者の作品を次も次も読んでみたい!と思います。
・「心地よい中年男性の青春小説」
40代男性サラリーマンの日常を描いた短編集。
妄想的な片思いに悩み、奔放な友人に振りまわされつつも憧れ、女性心理が理解できずイライラ、周りと折り合うか自分を貫くかに揺れ動き、父親との付き合い方に惑い・・・・・これは中年男性を主人公にした「青春小説」だなあと思いました。峰岸達氏のカバーイラストからも一層そんな雰囲気が漂います。
今、この年代を主人公にして、・泣かせでもなく・ハードボイルドタッチで哀感を漂わすでもなく・教訓めくこともなく純粋に心地よく読ませる「普通の」短編小説は少ないのではないでしょうか。久しぶりに肩のこらない、笑えてほっとできて、どこか品のある小説を読んだ気がしました。ラストの一篇でのおじいさんと主人公のやりとりなど、山田太一氏の作品を思い出させます。
この短編集を読んで、著者の作品が、「嫌いじゃない」→「好きかも」→「好き!」に変わりました。
・「40代男性目線で捉えたサラリーマンの生き様―秀逸な作品群がここに集結!」
痛快感と爽快感に満ちた圧巻の作品群が所収されている、これが私の紛れもない読後感だ。『ガール』という作品が女性目線で描かれた小説であったのに対して、本書はそれとは逆の男性目線で綴られており、余計に親近感が湧いた。40代という各作品に共通した年齢設定も面白い。会社での肩書きも「課長」や「部次長」であり、守るべき家族がいるといった、何かと「背負うべきもの」が増える年齢のようだ。本書にもたしかそんな文章があった。妻や子供、上司と部下の視点も盛り込まれ、どの世代でもアクセス可能であり、楽しく読めるのが本書の魅力である。
・「酒井順子の解説が泣かせる」
奥田先生には、筒井康隆のような作品を期待してしまう。しかし、この作品集はあまりにもまともだ。でも、面白い。なんだ、「書ける」じゃんと再評価させた作品集。個人的には、「ボス」の続きがとても気になる。
作品には直接関係ないが、酒井順子の解説がはまっている。こんなに作品にぴったりな解説もめずらしい。この本をうまく締めくくっている。
・「「笑い」と「泣かせ」のツボを押さえている」
怪作「空中ブランコ」で見事第131回直木賞を受賞した作家が、最初に直木賞にノミネートされた作品。この作品で獲ってもおかしくないというぐらい、面白い作品である。中年の課長の悲哀を描いた作品集だが、「笑い」と「泣かせ」のツボを押さえている。
作者の作品は、「最悪」「邪魔」の路線と、「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に代表される路線に大別されると思うが、本作品集は、後者のカテゴリーに入る。
・「共感!好短編集」
ミドルエイジの男の心理をとても上手に表現している。「マドンナ」は部下への恋心、「ダンス」は息子との断絶、「総務は女房」は出世とエリート意識、「ボス」は女性の先進的上司、「パティオ」は老親が切り口だが、それぞれ妻との関係、職場内の人間模様があわせて描かれており、ユーモラスな表現の中に、「ああ、そうなんだよなー」と共感をおぼえるフレーズがたくさんある。いずれも読後に少しやわらかく優しい気持ちになれる。
・「ツボをおさえている」
80年代の時代を背景に、名古屋から上京した田村久雄の20代を描く連作短編集。他の作品同様「笑い」「しみじみ」「泣かせ」のツボを押さえた作品である。
作者自身は岐阜県の出身であるが、その後のコピーライター、雑誌編集者という職歴をみると、半自伝的な部分はあるのかもしれない。
作者の作品は、「最悪」「邪魔」の路線と、「マドンナ」「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に代表される路線に大別されると思うが、本作品集は、後者のカテゴリーに入る。
・「文章それぞれに思い入れの残る」
文庫新刊の本作を早速読んでみたがこんなに人を描くのがユニークな存在だったか?と。「最悪」でも町工場社長の憂鬱を、「邪魔」でも主婦の細かい心情の移り変わりを書いてきたがそれこそ本当に一変している。というより、改めてその器用さを発揮した、そういう感じかも知れない。
主人公は田村久雄。大学中退でコピーライターに。80年代を東京で生きてきた中で彼がみたもの、感じたものは。文庫解説にある主人公≒奥田英朗でなく≠なのだという誤読を誘う要因とその理由は?そこから何を感じ取っただろう。個人的には感慨無量の連作短編集だと思う。全部読ませて初めて別の読後感を誘う連作という要素を上手についている。
本作は時制はばらばらだが1978年~1989年の話でその時の社会と照らし合わせながら書いている。だからこそ余韻を誘うのか、それは作家が上手いのか。作家と似ているからと言って上に書いたようにあくまでもイコールじゃないんだな。
最後のベルリンの壁崩壊も含めて話は始まりだったり終わりだったりすることが多い。どちらからも得る物は多いと思う。激しくも速く移り変わりゆく時代を生きてきた中で久雄が得てきたもの。
文庫解説で「川の深さは」の解説も書いていた豊崎由美は“小説において過去を活写するというこころみは、読み手に現状を寄り深く認識させるという意味でも有意義なんである”と述べている。更には大きな主題より、細部の積み重ね。魅力のある一行が小説には求められる、と。多分、色んな人にもたらしてくれるものがこれにはある。感じ方は別だとしてもあー、っとさせられる文章が詰まったもの。思い入れが残るものだ。それは時代を書いてきたからでもあるだろうが作家の上手下手で変わる。だから奥田英朗というのは希有な作家なんだと俺自身認識した。いい読み物をありがとう。
・「中年にきっかけを与える一冊」
80年代を青春時代としたわれわれ中年にとって、何かきっかけを与えてくれる一冊である。作者自身と思える主人公はわれわれと等身大であり、自分自身と重ね合わせて、あのころを思い出してもう一踏ん張りできるかなと思わせてくれる。40歳半ばの人間が読むのが一番なのだろうが、老若男女すべてにお薦めの一冊である。
奥田英朗って、好きな作家ベスト3には入らないが、好きか嫌いかと問われると必ず好きな作家に入っている作家だと思う。そういう立ち位置にいる作家の面目躍如の一冊。
できうれば、郷田で一冊書いてくれないかな。郷田をサブキャラにしとくのはもったいないと思う。
・「本書は青春小説でもあり時代小説でもある―作家・奥田英朗の誕生史!」
本書の主人公・田村久雄は、著者である奥田氏と同じ1959年生まれ。巻末の「解説」も指摘するように、主人公はある意味で著者自身である(決定的に異なるのは、久雄が岐阜市でなく名古屋市出身になっていること)。ゆえに本書は、1980年代を時代的背景として、作家である奥田英朗の誕生・形成史として読み進めることができる。90年代に大学に入学したわたしにとって、本書で描かれている6編に登場する話題にはピンとこないものもただあったが、それでも読んでいて懐かしい感覚に浸ることができる。「古き良き時代」をノスタルジックに想起するというわけではない。ただ、自分史において鮮烈な記憶がない諸事実を知ることで、思わず自分が詳しく知らない時代にタイプスリップしたような感覚になったのであろう。88年のソウル五輪の対抗地が名古屋市であったなんて、今までついぞ知らなかった。
時系列的にいえば、第2編の「春一番」が1978年4月4日で最も古く、締めの作品である第6編の「バチェラー・パーティー」が1989年11月10日で最も新しい。上京してから10年以上に及ぶ久雄の20代を多角的に描き出した一連の作品は、自らの青春時代とのズレがあったにせよ、多くの読者の心をくすぐるのではないか。地方から東京に「上京」すること自体、1つの大きなイベントである。6つの作品のなかで、特に印象に残ったのは、楽しくも淡い学生時代を綴った「レモン」、母親が強引にお見合い女性を連れてきたことから始まる濃厚な一日を扱った「彼女のハイヒール」の2作品。ここでいう学生時代とはむろん大学時代のことだが、この4年間というのは、人生において特別な意味を持っているように思う。卒業してすぐには分からないが、次第にその貴重さを実感できる。いずれにせよ、作家・奥田英朗が生まれるまでの一端を知りたい人は、本書を是非とも読まれたい。その息吹を感じることができる。
・「それぞれの「東京物語」(奥田版)」
地方から東京に出たことのある人ならこんな感覚わかるでしょう。読んだとき、そのときの感覚が湧き上がってきて、一人恥ずかしくなって身悶えてしまいました。そうです、なんかわからないけど未熟な自尊心といってしまえばそれまでですが、かっこわるいカッコツケをしてたなー。後半は就職して30を迎えるまでの物語となっています。しかし秀逸なのは前半です。青春物を愛する人は必読です。
・「緊迫の医療サスペンス」
凄まじい緊張感に、手に汗を握る。特に、終盤の、緊迫した場面は、著者ならではだ。
当初、本書のタイトルは、何を意味するのか、釈然としなかった。しかし、読み進むとともに分かって来るが、最後は「使命」について、考えさせられる。警官の使命、医師の使命、、、そして我々自身の使命についても。
現在の手術は、電気とは切り離しては、考えられない。電気メス、心電図モニター、レスピレーター、人工心肺装置などなど。ここに着目され、さらに、いくつかの人間模様がからめられ、大変面白い内容となっている。
ところで、別の患者のレスピレーターを動かすために、通電を要請される下りがある。病院では、停電用バックアップ電源に加えて、レスピレーターそのものも、バッテリーを搭載している。このバッテリー駆動時間は有限ではあるが、電源が尽きた場合は、手動でエアバックを操作する事が出来る。私は、勤務医であるが、長時間の停電のため、手動でエアバックを操作し続けた経験が1〜2度ある。この部分に少し違和感を感じたが、物語の本質とは別の問題だ。
しかし、電気が使えない状態で、あらゆる工夫が行われ、最大限の努力がなされた。これこそ医師の使命だと感じる。
使命とは、与えられた(限られた)条件下で、最大の努力を行う事だとも言える。病院の外でも、それぞれの使命を、この様に解釈する事も出来る。
著者もまた、作家という使命を全うしている。
・「医者はいかなるときもその使命感を完遂できるのか?」
ハズレのない作家であるが、この本も引き込まれてしまい、一気に読んでしまった。医者の倫理観が今回の大きなテーマで、自分の子供を間接的に事故死へ追い込んだ人間が患者となり、死亡するリスクもある困難な心臓手術を行うこととなった場合、医者は自分の使命を全うして患者を救うことができるのか、それとも手術の困難さに紛れて未必の故意にしろ患者を死なせたい誘惑に駆られるのかということを主人公であるインターンの女医が全編を通じて探っていく。導入部分でバラバラだったいくつかの伏線がクライマックスへ向けて一本の線に融合していくのは、本当に鮮やかな描写である。
・「わかりやすい医療もの。」
正直なところ、わたしは病院が舞台の小説は苦手です。用語を理解しようとするあまり、本筋がわからなくなってしまうからです。この本も最初は読むのをためらいましたが、主人公が女性なので比較的すんなり入り込むことが出来ました。
外科医・夕紀の父が亡くなった真相を解き明かす事がテーマの作品ですが、私としては事件を起こした穣治とその恋人・望の方に注目して読みました。
一見自信なさげで頼りない望が、思いの外芯が強く大変な働きをします。そして穣治もそんな望に心を動かされるのです。2人の距離感が次第に縮まって行くところが丁寧に描かれていて、そこがとても良かったです。最後の方の電話で話すシーンでは思わず涙してしまいました。
東野作品では久しぶりにラストがすっきり出来ました。
・「「心」に突き動かされ、翻弄され、けれど「心」によって救われる。」
まさか泣くとは思わなかったのだが、最後の数十ページは、涙が止まらなかった。
一つには、研修医・夕紀の、長年の孤独──ごく近しい人たちを心の奥底で疑いながら、そのことを誰にも打ち明けることができずに生きてきた、悲しい孤独と、その彼女の疑念を知りながら、ただ見守ることしかできずにいた、周りの人たちの愛と苦悩を思って。
もう一つには、初めは利用し利用されるだけの関係だったはずの穣治と望の間に、いつしか本物の愛情が芽生えてしまっていたこと、そしてそのことが穣治の良心をどうしようもなく目覚めさせてしまったことに。
結局、この物語の中には、根っからの悪人と呼ぶべき人間は一人も登場しなかった。
誰もが、目に見えない自らの「心」に突き動かされ、翻弄され、けれど最終的にはその「心」によって救われる。うまく言えないが、そんなふうに感じた。
文中に何度も登場する「使命」という言葉。人は誰もが果たすべき使命を持っていて、その使命を果たすことがかっこいい生き方であり、幸福な生き方なのだ、という人生観、人間観には共感を覚える。
この本のタイトルは、非常に風変わりであると感じる。「使命」という言葉が使われるのは分かるし、「リミット」も納得できる。ただ、もう一つの「魂」という言葉がなぜここで使われているのかは、もしかしたら著者から読者への一つの謎かけなのかもしれない。その理由を自分なりに考えてみるのも面白い。
直木賞作家の名に恥じない、堂々の力作であり、非常に完成度の高い、読み応えのある一冊だった。
・「東野圭吾による「長編医学サスペンス」の傑作品がここに!」
今年50歳になった東野圭吾は幅白い作風によって多くのファンを獲得している。東野圭吾による「医学サスペンス」というのは、私自身最初はピンとこなかった。しかしタイトルが心を揺さぶる。心臓血管外科の研修医である氷室夕紀が主人公=ヒロインだが、彼女の父親の口癖である「人間は生まれながらにして使命を与えられている」(105頁等)というのが本書を貫く主題だ。本書を「医学サスペンス」と書いたが、帝都大学病院で生じるさまざまな事件が1つの事件(いや復讐)に結実してゆくというシナリオであり、「使命」が鍵概念である以上、単なる医療のあり方のみを問うた作品では決してない。そうした意味でも本書は緊迫感に富み、私にはなかなかの好作品であった。
医学の知識には全く縁遠いゆえ、医学や手術のまつわる専門用語を織り交ぜた内容がどの程度の正確なものであるのかはわからない。しかしそのこと自体は大した意味を有していないと私は思う。医者は人間であって神様ではないのであり、本書は基本的には帝都大学病院を舞台にしているとはいえ、やはり醍醐味はそこで繰り広げられる熱い「人間ドラマ」であると思うからだ。自分の父親の手術に全力を尽くしたのか否か、そのことを自分の目で確認すべくその執刀医(西園教授)のもとで研修生活を送る夕紀。最後の「運命」のオペに立ち会った彼女は心から確信し、こう告げる。「あたし、先生のような医者になりたいと思います。尊敬します」(376頁)と。最後は執刀医を自分の父親としても素直に受け容れる。本書の内容は詳述できないが、一気に読み通させる、決して後悔のない作品と断言できる。
東野圭吾は大学で電気工学を学んだエンジニア。その知識が本書でも遺憾なく活用されている。彼にこうした作風の作品を書く能力があることを知っただけでも私には大きな衝撃があった。読了後、私はあらためて自分自答する。「自分の使命とは何であるのか」と。
・「社会を斬る刃」
主人公、長峰の復讐に賛成している自分がいた。犯罪を犯した少年たちを法律が裁ききることができない、加えて遺族の傷をないがしろにしている法律に強い憤りを感じてしまったためこのような気持ちが生じてしまったのかもしれない。「さまよう刃」この作品はとにかく最初からグイグイとその世界に引きずり込み気がつけばめくるペ-ジがないといったそんな感じであった。終始、主人公のやりきれない想いが痛いほど伝わってくる。いろいろな人物の角度から切り替わって事件をみていることもこの作品の地盤をより強固なものにし盛り上げていた。この人物がこの作品の中にいる、そこにはれっきとした理由があって人物にもまるで無駄がない。理不尽な少年たちの言動も実によく捉え表現していた。ラストは自分の望んでいた結末とは違ってしまって悲しい気もしたが間違いなく秀逸な作品であった。
・「かなり個人的な考えを言います。」
加害者の少年の描写が意図的におざなりにされており、世間というものが見る典型的な後先を考えない若者として作中で扱われている。が、作者が焦点を当てたいのは報復殺人をしようとする父親と、父親に対して同情しながらもそれを止めようとする警察、特に、捜査陣の中で父親に最も同情的だった若者だろう。彼自身が「さまよう刃」であり、それまでの展開、登場人物の言動がラストで意味を持つ。少年法に全ての責任を押し付けるといった短絡的な結論ではなく、問題提起を行う作家である東野圭吾らしい作品。「天空の蜂」が気に入った人ならこれも大丈夫でしょう。あくまでも中立的、だが感情的、さすが東野としか言いようがないです。
・「殺人でしかなくても、復讐を遂げられることを祈ってしまう」
高校生の一人娘を乱暴された上に殺された父親が、犯人の少年の一人を惨殺し、もう一人を追ってすべてをすてて復讐に走る。犯人は未成年だから、つかまったとしても数年で戻ってくるのだ。父親の視点、警察の視点、犯人達の仲間の視点、復讐に走る父親を助ける女性とそれぞれの心の動きを浮き彫りにしながら、物語は進行してゆく。
東野圭吾は本当に登場人物の心理描写が巧みで感情移入しやすい。犯人の仲間の小悪党の少年でさえものすごくうまく描かれていて、同情も覚えつつ憎しみも覚える。
そして復讐する父親については、何とか復讐が遂げられるよう祈りながら読んでしまう。復讐なんて認められないし、それは殺人でしかないのだが、それでもお願いだから彼の思いを晴らさせてあげてくれと、願ってしまうのは私だけではないはずだ。
・「何のために何をすれば」
最後に、“警察が守っているのは市民ではなく、法律の方だ。法律は絶対に正しいというものではない”という内容のくだりがあり、それがズシリと効く。主人公である父の気持ちがわからない人は居ないだろう。射撃した警察官は、本当に正しいことをしたことになるのか。正しいことには違いないが、正解なのだろうか。重いテーマだと思う。傑作だと思う。ドラマ化、映画化されておかしくない。されるべき作品である。
・「仇討ちと少年法の壁」
レイプの挙句に殺された娘の敵をとるために、父親(長嶺重樹)は娘を殺した少年を殺そうと策略し、それを実行しようとする物語である。要するに、復讐殺人をしようとしているのである。
私は父親の気持ちはわかるなあと思いながら読んでいました。復讐せずに、警察に任していたほうがいいのではないかという気持ちもある。しかし、未成年ということで、少年法が適用されて、時期がきたら犯罪者はまた社会に復帰することになる。少年が罪を犯す場合は、殺人を犯したという罪の重さと被害者が受けた心の傷とが全くつりあっていないように思える。それには、少年法というものがあるからである。罪の重さと心の傷がつりあうことはないとは思うが、成年の場合には、それなりの均衡点で罪が決まるのであろう。被害者の心の傷は、一生消えないのは確かだから。
最後のクライマックスシーンは、いろいろ考えさせられるなあという気がした。全てが解決したかといえば、解決したのであろう。私は、こういう結論もありだと思っている。しかし、被害者の父親のこと、正義のこと、警察の在り方、少年たちの在り方、かくまった女性のこと等いろいろ考えるところが多々でてきたなあと思う。被害者の父親は無念でならないなあという印象が強い。
最後の言葉が印象的だったかな。「警察は、市民を守っているのではない。警察が守ろうとしているのは法律のほうだ。」法律にがんじがらめになって、市民の幸せを守っていないという現状はあるかもしれない。
・「2004年下半期、初の徹夜本」
私にとって、2004年下半期、初の徹夜本。
幼児誘拐事件の捜査失敗の結果、マスコミの対応も誤り、閑職にとばされた巻島だが、6年後難航する新たな連続幼児誘拐殺人事件の捜査のため、特別捜査官として呼び戻される。
彼に与えられた任務は、テレビのニュース番組を使った、日本初の特別公開捜査であった。警察内での様々な思惑や、テレビ局間の視聴率争い、愉快犯など、様々な妨害の中、犯人「バッドマン」に行き着くことができるか。そして、巻島は事件の捜査を通して、6年前の事件とも向き合うようになる。
特別公開捜査という設定、ストーリーの展開、脇役も含めた魅力的な人物造型など、非常によくできたミステリーである。特に終盤、巻島が「犯人に告ぐ」シーンは、迫力にあふれていた。強いて難をあげるとすれば、「運」が結末を左右するところか?(これ以上かくとネタバレになるが・・・)
「虚貌」「火の粉」と作品のできの割には世間の評価が低かったと思うが、なにせこの作品は今をときめくミステリー作家・Y山H夫やI坂K太郎が本の帯で絶賛しており、ミステリーファンの注目を集める要素は整っている。年末のベスト10で彼らとともにランクインなるか?
・「最近では一番」
神奈川県警の警視,巻島史彦は県警本部捜査一課の特殊犯係の管理官である。赴任2年目の7月幼児誘拐事件が発生した。警視庁との合同捜査の中犯人に引き回された挙げ句,目の前で犯人を見逃したばかりか,被害者の幼児も殺害される・・・
物語は,上記の事件を責任から左遷された巻島が,その5年後に発生した連続幼児殺害事件の特別捜査官として県警本部でマスコミを使った劇場型捜査の陣頭指揮をとる話が本筋となる。最近読んだ本の中では群を抜いて面白い話であった。始めの誘拐事件の場面では昔読んだ小説を彷彿させる場面もあり既視感をもったが,その6年後に県警に再登場する巻島の描写の印象的な場面から,物語は急展開,マスコミを利用した捜査から,獅子身中の虫そして,6年前の誘拐事件との絡みと様々な要素を取り込み物語が進んでいく。やや中だるみする場面も感じられたが,読み終われば,それも後半の物語の一気の終末へ向けてのものであった。それぞれの登場人物も印象的であり,登場場面は少ないが津田長などは渋いキャラで特に印象的であった。
・「ワクワクしながら読む、それでいいんじゃないですか!?」
この作品は前評判が良かっただけにレビューへの投稿が多く、評価も賛否両論のようですね。ただ、読者を本の中に引きずり込む雫井氏の力は皆が認めているところだと思います。本を読むものにとって、ここが(先を早く読みたい読みたいと思うこと)一番大事なところで、同氏はその点で非常に優れた作家だと思います。雫井氏の作品で「犯人に告ぐ」を初めて読まれる方は、著名人があまりに絶賛しているために反対に物足りなさを感じられるだろうと思いますが、私はこれまでの同氏の作品同様、裏切られることもなく、楽しく読ませていただきました。細かいことを言ったらきりがありません。ワクワクしながら読む、それでいいんじゃないですか。そういった点でこの作品は「一押し」です。(作品の内容はレビューに皆が投稿されている通りです)このレビューに投稿されている千葉県のまりこさんの「映画化するとしたら主人公は役所広司がいい」という意見に全く同感です。巻島役にピッタリですよね。
・「斬新!」
なんとなく手に取った一冊だったのに予想外の面白さが待っていた。とにかく新鮮!犯罪小説は少しずつ犯人に迫っていく過程を楽しむものと思っていたが、この本に関しては最後まで犯人が形になってこない。読み終わっても犯人像があいまいなままだった。しかし、その犯罪小説の醍醐味をもってあまりあるのが主人公、巻島特別捜査官の魅力!それが全てだった。脇を固める登場人物達も味わいのある人ばかり。謎解きやスリルだけではなく描かれる人物像でグイグイ引っ張られた。主人公巻島のカリスマ性はとにかくすごい!ページが面白いように進む。とにかく面白い本を求めている人には必見の一冊!
・「結末まで一気に読んでしまいました。面白かったです」
2段組、300ページを超える長編にもかかわらず、一気に読んでしまいました。それくらい先が気になる小説でした。面白かったです。 劇場型捜査という試みの中で進んでいく人間模様。見えない犯人に向かって呼びかけていく。見えない犯人との駆け引き。と、ともに現実に向き合う目に見えるまわりとの駆け引き。そのやりとりが面白かったです。 何人かの方のレビューで拝見するように結末については、少々あっけない感じもするところはありますが、劇的な格闘の末逮捕されるのではなく、草の根のどろくさい形から解決していくことこそ、現実的なのかなとも感じました。ただ、犯人についてはちょっとステレオタイプかなという感じはしましたが。 それにしても、一気に読まずにはいられないくらい、読む時間を楽しませてくれる物語でした。
・「いまさらですが・・・」
文庫化してたんで速攻買って、ほんと今更ですけど読みました。「神様から一言」で萩原浩に触れた俺としては圧倒される思いです。合わせて「メリーゴーランド」も買って読んだんですが、軸がブレてない。そう思います。正直まったく別次元の話なのに芯は同じというか…
主人公に力があります。自分を哀れんだりした作品の書き方をしてない、主人公が悲劇のヒーローを演じてない。言い方が悪いかもしれませんが、自分の体が腐って土に返っていくのを客観的に見つめた。というような描き方、そこに事故憐憫はない。そこがまたこの作品をすごいものにしてると思う。
読者を泣かせるためにあえて泣かせるような描き方をしてないそんな作品なのにもかかわらず、電車ん中でラストまで読んだ俺は涙をこらえるの必死でした。
すごい
・「消えた記憶の行く先は・・・」
アルツハイマーの病により、記憶を失っていく主人公。それはどんなに努力しても確実に彼の大切な記憶を奪っていく…。この物語に、救いはあるのだろうか…。
・「素晴らしい小説」
2005年本屋大賞2位知り合いに勧めたくなるような素晴らしい作品である。若年性アルツハイマーにかかった主人公が徐々に記憶を失っていく様子を描いた作品。作品は一人称と三人称をうまく書き分け、たとえば主人公がつける日記の感じを徐々に減らす、誤字を書くなど、記憶が失われていく「時間軸」をうまく表現している。日常の些細なことや仕事上のことなど、「記憶を失う恐怖」を実感することができた。一方で、単なる病気の怖さを取り上げるだけではなく、本人を含め周囲の人間がとまどいながらも病気と向き合っていく姿が感動的であった。特にラストシーンは、美しい情景が目の前に浮かぶようで、久しぶりに素晴らしい小説を読んだと実感することができた。個人的には同年の本屋大賞1位の「夜のピクニック」より面白かった。
余談であるが、この作品を読んだ渡辺謙が感銘をうけ、みずから映画化の企画を映画会社に持ち込んだそうである。
・「さえきぶちょうはアルジャーノンですか?」
物語のラストシーンに特に心を打たれ、涙が溢れてしばらく止まらなかった。駅へと向かう奥多摩の山道の情景なのだが、『黄昏がこんなに美しいものだとは思わなかった。風に舞う山桜の花びらのひとつひとつまで黄金に変えていた。』という印象は、『夕日は刻々と色を変える。ついいましがたまでの黄金の光が茜色になり、あたりの風景は急速に色を失っていった。』と変化する。そして最後は、『太陽の最後の光が照らす道に、私と隣の女性、ふたつの影が寄り添って伸びていた。』で結ばれる。
荻原浩はただのユーモア作家ではないとは考えていたものの、こんなにも素晴らしい作品を手にして少し驚いている。ストーリーの潤滑油であった「笑い」の助けを借りずに、敢えて困難な心理描写のみで描ききった力量を評価したい。50歳を迎えたばかりの佐伯部長よりも年上の私にとって、この物語はある意味「スリラー」でさえあった。最近物忘れがひどくなってきているが、さほど大げさに考えることはなかった。いかに鈍い私でも今回ばかりは動揺してしまい、読み進むのが怖くなったことが幾度もあったほどだ。
レーガン夫人がアルツハイマー病で亡くなった夫の闘病の日々について、『長い長いお別れを言っているようでした。』と語ったそうだ。徐々に自分を失っていくことは本人にとって耐え難い恐怖であろうが、それを周りで眺め受け入れなくてはならない家族にとっても厳しい現実が待っている。佐伯部長が私にとってのアルジャーノンとならないことを、心から祈るばかりである。最後に、これからはもう少し家族に優しくしよう。
・「自分が自分でなくなっていくという恐怖」
50歳を前にした働き盛りのサラリーマンに突如襲った若年性アルツハイマー病。平穏な日々から一点、心と身体がアンバランスになっていく中で病に立ち向い家族と共に奮闘していく感動作。テーマは重いですが、家族愛や夫婦の絆の大切さも触れて説いているのだと思います。
・「第1弾よりパワーアップ」
『失踪症候群』に続く3部作の第2弾。基本的には謎と解決は本作で完結しているが、主要登場人物の説明や職業は最小限なので、続けて読むのがベストでしょう。
連続して起こる数百万の身代金の誘拐事件。そして“仕事人”たちのメンバーである托鉢僧・武藤を身代金受け渡し人に指定しての誘拐事件は、子供の殺害と身代金の焼却という最悪の結果に終わった。前者の事件には、自らの存在を隠して全てを操る<ジーニアス>の存在が…。
ネット時代の誘拐とはいかなるものか、徹底して考えられた計画が素晴らしい。<ジーニアス>の描き方もなかなか巧いです。<ジーニアス>を追いつめるために仕事人のボス・環がとった方法など、読後感は単純に爽快とは言い難いです。とはいえ、最後には“仕事人”が勝つというのはお約束かもしれませんが、救いといえるでしょう。
本格ミステリのエッセンスと小説の面白さが結実したエンターテインメント・サスペンスとでも言えるでしょうか。
・「キャラクター」
キャラクターが魅力的だ。仮の姿と真の姿と言うべきか、いずれも真の姿と言うべきか、固定観念を打ち破った、キャラクターである。作者のきめ細かい誠実な描写は、安心して読み進めることができる。
・「エンターテイメント!」
エンターテイメント作家貫井徳郎の特徴がいかんなく現れた作品。ともかくキャラがたっている。メールを使った犯罪は今では珍しくは無いが、98年当時では早いほうではなかったか。環の率いるチームは本来犯罪として現れる前の犯罪を扱う非正規のチームである。前回の「失踪」はだから環に「仕事」が舞いこんだ。しかし今度の「誘拐」は明らかに犯罪である。環たちの介入する余地はあるのだろうか。
ところが非正規チームだからこそ出来るやり方で、このやり方しかありえないようなやり方で環たちはこの犯罪を解決する。コンピューター犯罪小説として記憶に残る作品である。このシリーズ、本当に三部作で終ってしまうの?うーむ残念
・「殺人症候群を読む前に」
症候群三部作のニ作目。傑作である三作目をより楽しむ為にも読んでおいて損はない。それに失踪症候群よりは確実に面白い。殺人症候群での武藤の気持ちもこの作品を読んでおけば、理解できる。ただ先に、殺人症候群を読んでいた場合は拍子抜けするかも。
・「シリーズ第2弾もなかなか」
読みやすかった上、ラストは貫井徳郎らしい終わり方であるからファンにはたまらない。
当人が払える限界額の金を要求する誘拐が多発した。しかし警察沙汰にはならず。それとは別に、主人公で托鉢僧の武藤隆の知り合いの高梨の息子が誘拐され、たちまち武藤も疑われてしまう。同じ頃、最初の誘拐のほうで微妙に関わっていた咲子が、チャット仲間の「ジーニアス」を疑いはじめ、被害者の一人である田村公平に歩み寄る。
複雑と言えば複雑だが、それぞれ違う事件なので整理しつつ読めば簡単でもある。ハイテンポなので読みやすい。本格の犯人当てではなく、咲子や被害者の田村の心理サスペンスであり、武藤や環の挑戦ものである。色んな要素がある上憎めない環のようなキャラがいるからそれだけで小説を盛り上げてくれる。
パソコン、特にインターネットを使ったハイテク犯罪。遠い場所から人を操り、犯罪までも実行してしまう謎の人物「ジーニアス」。探してみれば中学生でもハッキングが出来る世の中だからいるかもしれないが、ここまで完璧にやらされると読み応えがある。従ってか、捕まえる為の環のやり方には武藤同様反対しがち。私立探偵がそこまでやっていいのだろうか、と。逆に、他に方法がないというのは「ジーニアス」の完璧さを更に伺わせる。結局最後はちょっとした駆け引きだったようだ。
ミステリーの要素としてはタイトルの症候群にあるように、誘拐の連続。事件的なつながりはないとは言え、それを繋げていく感じは読んでいて面白かった。
・「重くて、辛くて、切ない痛み」
「症候群三部作の完結編! きっと今回は倉持の過去が・・・いや、今回かなりぶ厚い本だから環の過去も書かれていたりして。わくわく〜〜〜」・・・・・・なんて読み始めたら、いきなり書かれていたのはショッキングな犯罪とそれに引き裂かれる被害者の家族の悲惨な姿。最後は巨大な悪の組織が相手かと思ったら、法律で無罪になる犯罪と臓器移植がテーマとは・・・。「まずい、このまま進んだら、絶対前ニ作のように“犯人を捕まえてハッピーエンド”でなんて終わるはず無い」と、思いつつ、読むのを止められませんでした。だんだん胃が重くなって、痛くなって・・・・。そして、「読まなきゃよかった!!」と思いつつ読了してしまいました。読まなければ、あのチームはいつまでも不協和音を奏でつつ一緒に事件を追いかけている存在として覚えていられたのに・・・・。
残されたのは、きっと現実にたくさんいるであろう罪にならない犯罪の被害者とその家族たちの心の痛み。いや、そんな事言ったら『おまえにゃ、わからないよ』と言われるんだろうな。
「復讐は正義か」なんて、結論なんて誰にも出せない。ただ、復讐を夢見ないと生きることができない人間の弱さが、切ない。
・「正義のための殺人も悪なのか?」
未成年というだけで、精神を病んでいるというだけで、殺人を犯してもたいした罪には問われない。数年の後には社会復帰して、何食わぬ顔で普通の生活をする。そんな加害者の姿を見たら、被害者の家族はいったいどう思うのだろうか?まして、加害者側の人間に反省の色が見えないとしたら?おそらく憎しみでいっぱいになるに違いない。それは、相手を殺したいほどの憎しみかもしれない。「法が裁いてくれないのなら、自分の手で。」愛する家族を失った者がそう考えたとしても、それは無理のないことだ。この作品に登場する人たちの心に残る深い傷。それを死ぬまで抱えなければならないつらさは想像を絶する。もし自分がその立場になったなら、「復讐のための殺人はいけない。」とは言えないだろう。何が悪で何が正義か?この作品が読者に問いかけるものは、あまりに大きすぎて重すぎる。とても深く考えさせられる作品だった。
・「あなたなりの答えを出してみてください!」
精神異常、未成年。こんな理由でもしあなたの大切な人を殺した犯人が釈放されていたら、どんなふうに感じますか??
警察に彼らの情報を問い合わせても、個人情報の保護という名目で教えてもらえない。「ただ、加害者に謝ってほしい、遺族の気持ちを分かってほしい。」そう思って裁判を起こせば、「慰謝料目当ての卑しい家族」というレッテル。踏み倒されて支払われない慰謝料。そして、長い裁判によって精神的・肉体的にボロボロになっていく家族…そんなときにあなたの代わりに加害者に裁きを与えてくれる「職業殺人者」がいたら、あなたはどうしますか??
この作品は、「不起訴処分になった殺人犯に復讐することは許されるか、否か?」という大きな問いを軸に話が展開していきます。
また、前作「失踪症候群」で姿を現した環と他のメンバーたちの遺恨も、今回の話の展開上重要な要素になります。興味をもたれた方はぜひ、前作・前々作を先に読むことをオススメします。
相変わらずの貫井ワールドの素晴らしさ!社会への大きな疑問の提示、「追う側」「追われる側」「殺す側」「殺される側」という様々な視点からの繊細な描写、そしてユニークな「解説」(笑)
極めつけは、あのラスト!!僕にとっては、貫井さんなりの、法という名の絶対正義に対する挑戦状に思えてなりません!「この人はやってくれたよ!」って感じです(^^)
・「次回作は「テロ症候群」!?」
やっと文庫本が出ました。一気に読んだ。解説子が言っているように、この小説に限っては第一作「失踪症候群」第二作「誘拐症候群」を読んでから、この三作目に入ったほうがよろしかろうと思う。
設定自体がまるで現代の「仕掛け人」なのであるが、三作目に至ってはまるで仕掛け人VS仕掛け人。というエンタメ性と、最愛の人を殺されたのに、加害者は法の網をくぐりのうのうと生きている。果たして彼らに復讐することは許されないことなのだろうか。という重厚性とが上手くブレンドされている。重い問いに対して、安易に倫理的な理屈を持ち出して解決しようとしていない。そこがいい。
いつもながら、視点が次々と変わることによる、「何かある」と思わせる構成。傑作です。長い間待っていた甲斐がありました。
ところで私、この本は三部作で完結したことになっているらしいのですが、わたしはぜひとも四作目をつくってもらいたいと思います。なぜなら主要登場人物で、ひとりだけ過去が明らかになっていない人がいるということがひとつ。失踪、誘拐、殺人、とだんだんと犯罪性が高くなってきたなら、最後まで行かないといけないでしょう。というのがひとつ。今回ひとつの罪の根源に迫ったのだとしたら、次に「敵」として相対するのは「国家」でしょう。だとすれば次の題名は決まりです。「テロ症候群」。
・「愛と復讐」
東京駅の本屋で、表紙のデザインのみで買ってしまいましたが、東京-新大阪間の新幹線で、トイレにも行かず、いっきに読みきってしまいました。登場人物の男達は哀しく、優しく、強く描かれていて、昔のハードボイルドが好きだった人に特にお勧め。家族持ちの中年男性は泣いちゃうかも。
・「石田衣良ファンならずとも同じみの、I.W.G.P。」
今回は、「東口ラーメンライン」「ワルツ・フォー・ベイビー」「黒いフードの夜」「電子の星」4つのエピソードを収録。
「東口ラーメンライン」は、ドラマでGボーイズがラーメン店をやるという話があり、そのベースになっているのかもしれない。
それ以外は、ドラマのシナリオで使われていないと思う。
シリーズ当初に比べ、マコトのキャラクターが定着し、落ち着いてきたように思える。
小説の中だから。。。と言えないようなエピソードたち。
面倒なトラブルと解っていても、立ち入らずにいられないマコト。
トラブルが解決した時に、依頼人だけでなくマコトも成長しているそういう構成もわるくないと思う。
石田衣良著書には、はずれがない。
・「テーマが少し変わったかな?」
今回の石田さんの作品は、今までの池袋シリーズとはちょっと雰囲気が違う気がする。けど、時代によって変化している、というとり方もできるかな。
今までは青年っぽさがあふれていたけど、今作は少し成長してる感じがした。
全体的なイメージでは、「夜」っぽいイメージが沸きました。
・「久々に」
マコトの活躍が読めて楽しかったです。池袋といえばラーメンがすっかり有名ですが、そんなのもしっかり取り入れてるこのシリーズはなんだかすごくリアルに感じます。いままでさりげなく登場していた双子の名前も初登場!レギュラーメンバーは皆悪ぶっててもけっこう優しいのも読んでて嬉しくなります。題材的には暗くて重いものを扱ってるのに読後感がさっぱりしてるのは登場人物の魅力が大きいのでしょうね。
・「なんだかビックリ。」
面白かった。物語のテンポよさが読む気にエンジンをかけそのままストーリーに乗ってしまった。そんな感じです。
都会の裏舞台こんな人も世の中いるんだよな〜え!マジで…;何か厳しいな…など。
とにかく読んでいて自分の感情もコロコロ変えさせられる内容でした。
・「切っていいのはキャベツまで」
一般の人達には無縁ではあるが、物理的な距離としては決して離れていないアンダーグラウンドな世界が存在する。それがテーマとして取り上げられ、マコトとともに巻き込まれてしまうところがIWGPの魅力の一つではないだろうか。
最後まで読み終えると、ラーメンラインは平和だったなあと妙に感慨にふける。
音楽家の視点でIWGPを分析する千住明さんの解説が新鮮。
●反自殺クラブ―池袋ウエストゲートパーク〈5〉 (文春文庫)
・「4話それぞれのおもしろさ」
4つ話が掲載されているが、どれもなかなかおもしろくて、満足できる内容。このシリーズの良さは絶妙な「軽さ」。話には様々な現代社会の問題がちりばめられているんだけど、それをあまり深刻に捉えず、フリー探偵者のごとき主人公の解決ストーリーという形で、さらっと軽く描いているのがいいんだと思う。
4話の中でもページを割かれている反自殺クラブが、特におもしろかったんだけど、それを取り上げることで、自殺はいけないだとか自殺サイトの存在を糾弾するとか、そういう強いメッセージは敢えて投げかけず、登場人物がそれぞれの立場での言い分を述べながら、物語が終わっていくので、いろいろな解釈が読者によってできるし、読後感がさらっとしていていい。
たとえば同じ問題を山崎豊子が取り上げられたら、これでもかというぐらい問題の暗部を見せられ、絶望的な気分になったりするのかもしれないけど、そういう「重い」本ってなかなか読みづらいのが本音だとすると、こういう軽さで社会問題をなんとなく意識させる手法って、ある意味では、時代に合った有効な手法であるような気がする。それに物足りないと感じる人もいるかもしれないが。
私は山崎豊子の重さも好きだけど、石田衣良の軽さもすごく好き。読みやすいのでおすすめの本です。
・「旬のテーマを切り取って」
すぐに古くなってしまう雑誌のような、今が「旬」のテーマを扱う「IWGP」シリーズ。だからこそいつも新鮮で、読むたびに池袋の街を訪れたい衝動に駆られてしまう魅力がある。
今作も楽しみにしていたのだが・・・少しマンネリ気味か?4編収録されているのだが、細かいオチはともかく「どういう方向へ進むか」というオチが読めてくるのだ。私は推理小説なんかを推理せず、謎解きまで読んで感心するタイプなのでその私にも先が読めるということは・・・わりと多くの人にとって、先の読める展開なんじゃないかと思う。それが悪いわけじゃない。ただ、その「オチ」へ行くまでの展開もパターン化してきているような気がする。山が何度かあって、最終的にハッピーエンド・・・というような展開じゃなく、山は一度きり。その後何かあるんじゃないかとドキドキしながら読み進めると、あっさり終わってしまう。「サル」と「姫」の話のときのようなスリル感が無いのだ。扱っている内容としては、相変わらず「旬」のもので料理の仕方も上手い。考えさせられる内容も多い。だからこそ、今度は長編でやってみて欲しい・・・と思うのだが、難しいのだろうか。
・「明るく・軽く、週刊誌ののりで、現代の恥部や暗部」
池袋ウエストゲートパークシリーズの5です。
現代の風俗のうわっつらをおもしろおかしく書くのが得意の、石田さまらしい1冊。
あ、悪口ではないですよ。
明るく・軽く、週刊誌ののりで、現代の恥部や暗部を解説してくれます。
とにかく読みやすいしね。
読んだあとは、少し世の中に詳しくなったような気分になれます。
そういえば、週間新潮かな?
石田様、すんごいエロ小説連載していたよね。
あれ・・・なんか読んでいて、すんごく恥ずかしかった。
エロが恥ずかしいのではなく、なんていいうか・・・
生々しかったのよね。
なんつーか、石田さまの自意識過剰なところが、ある意味、好きです(笑
・「佳作と駄作の混合短編集かな?」
IWGPシリーズの中では、少しネタ切れ感が否めない作品集だと思います。その中で、佳作は表題作「反自殺クラブ」ですが、これとて出足からすぐ「オチ」が判る構成で、限られた登場人物で今日的な話題・テーマを照らし生きることの意味を語りかける作風も、ややシンドイ感じがしました。駄作は敢えて書きませんが、リアリティをフィクションに上手く絡ませる作者が、流石にこの世界はリアリティが飛び過ぎていて、読み出しから石田衣良さん最高の駄作となる確信を持って読みました。ヒント:世界的な大企業って、そんなに軽くも甘くもないですよ。多分、この動きをマコトにさせちゃうと死んじゃわないとオカシイのに、そんな大団円って・・・。未読の方は、軽い気持ちでどうぞ。ただ、一気に読ませる筆力はサスガです。で、星4つ。
・「標題作品は結構重い作品」
全体的に短編としてはまとまった作品であるが、昔のように勢いがある作品が少ない。
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