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▼影響を受けた本 80年代後半編:セレクト商品

虹の理論 (新潮文庫)虹の理論 (新潮文庫) (詳細)
中沢 新一(著)

「まあなんと」「難解だが魅力はある」「虹の存在、自分の存在」


異邦人 (新潮文庫)異邦人 (新潮文庫) (詳細)
カミュ(著)

「異邦人…。」「みんな孤独」「凝縮力をもった名作」「生きることへの違和感に素直に生きる男の話」「白い以上に白い、と語ることは虚偽である」


パンツをはいたサル―人間は、どういう生物か (カッパ・サイエンス)パンツをはいたサル―人間は、どういう生物か (カッパ・サイエンス) (詳細)
栗本 慎一郎(著)

「こんな面白い著作をありがとう」「三部作の第一巻」


悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス) (詳細)
レヴィ=ストロース(著), Claude L´evi‐Strauss(原著), 川田 順造(翻訳)

「20世紀を代表する一巨人の人間理解への旅の記録」「優れた紀行文学として、気軽に読める」「ブラジル文化及び民族を考察したフランス人人類学者の手記」「本書の人間社会の悲惨への考察は今でも決して古いものではないだろう」「意図せぬ最高品質の文学」


ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫) (詳細)
リチャード P. ファインマン(著), Richard P. Feynman(原著), 大貫 昌子(翻訳)

「読まないと損をする自伝の傑作」「素晴らしい!!」「やりたいこと、好きなことを徹底的にやる!」「卓越した科学者の楽しい人生」「ファインマンさん,大好き」


赤と黒 (上) (新潮文庫)赤と黒 (上) (新潮文庫) (詳細)
スタンダール(著)

「切なくなります。」「心理描写の密度が濃い」「恋せずに生きる価値がありまして?」「魅力的な主人公」「真実の愛」


かんたん科学マジック決定版―すぐにできるオモシロ科学手品 (バウハウスムック)かんたん科学マジック決定版―すぐにできるオモシロ科学手品 (バウハウスムック) (詳細)
ナイスク・サイエンスクラブ


ノルウェイの森 上 (講談社文庫)ノルウェイの森 上 (講談社文庫) (詳細)
村上 春樹(著)

「見方を変えて」「wish you were here.」「高校生の時に読んで」「感覚的に」「説明困難の不思議な魅力」


桃尻娘 (講談社文庫 は 5-1)桃尻娘 (講談社文庫 は 5-1) (詳細)
橋本 治(著)

「80'sに贈る」「今の橋本治についていけないアナタでも」


科学的思考とは何か―地球学の方法 (PHP文庫)科学的思考とは何か―地球学の方法 (PHP文庫) (詳細)
竹内 均(著)


スティル・ライフ (中公文庫)スティル・ライフ (中公文庫) (詳細)
池澤 夏樹(著)

「砂漠で見つけたミネラルウォーターのよう」「音のない音楽」「星」「色あせない読後感」「静かな小説」


ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)ドグラ・マグラ (上) (角川文庫) (詳細)
夢野 久作(著)

「いやー」「ただ圧倒。」「10年ぶりに再読しましたが,やっぱりすごい作品です.」「傑作です。」「これ翻訳できるんでしょうか?すごすぎます。」


後宮小説 (新潮文庫)後宮小説 (新潮文庫) (詳細)
酒見 賢一(著)

「大真面目に書かれた面白すぎるホラ話」「哀しさから生まれるユーモアを風通しの良い文章で描いた作品」「意見は真っ二つ。私は面白いと思う」「虚構の幸せ」「笑える!ありえる!?」


谷川俊太郎詩集谷川俊太郎詩集 (詳細)
谷川 俊太郎(著)

「詩集たるもの、こうでありたい」


新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫)新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫) (詳細)
宮沢 賢治(著)

「日本文学史上に残る傑作です。」「永遠に。。。」「循環と賢治の宇宙」「本当に素晴らしいです。」「「ほんとうの幸せとは何だろう」と考えさせる賢治の代表作」


▼クチコミ情報

虹の理論 (新潮文庫)

・「まあなんと
ロマンチックな書き出しだろう久しぶりに読み返してそう思いました

寂しくてたまらないとか恋をしてしまったとかそういう普通じゃない心の状態のとき読むとかなり効きます

学生の頃ぼろぼろになるまで読みました今読むとすこし気恥ずかしいですでも素敵です

・「難解だが魅力はある
内容は虹そのものを扱った科学の解説書などではなく、”虹”の概念に基づいた様々な哲学的理論を、宗教的な味付けをして紹介するものです。はっきり言って難解です。このテの話が好きな人にしかお勧めできません。ただし分かる人には、たまらなく魅力的な話が詰まった本だと思います。

個人的には霊魂と霊魂の決闘の話が強く印象に残りました。こんな不思議なお話が現代にもまだ、あるんですね。

・「虹の存在、自分の存在
精神世界など、目に見えない世界に興味があればきっと面白い本です。お釈迦様関連の本、「空」の理論、「スッタニパータ」を読んで、「ヴタの理論」をよむと、うならずにいられません。本を読んでから、しばらくして ダイヤモンドヘッドに登る機会があり、頂上で偶然(必然?)虹をみました、本の内容と、子供のころ見た虹を思い出しながら。旅に深みが増しました。

虹の理論 (新潮文庫) (詳細)

異邦人 (新潮文庫)

・「異邦人…。
 カミュ自身、「異邦人」の英語版に寄せた序文で、次のように語っている。

「お芝居をしないと、彼が暮らす社会では、異邦人として扱われるよりほかにないということである。ムルソーがなぜ演技をしなかったのか、それは彼が嘘をつくことを拒否したからだ」

 これが答えなのである。若いうち、特に青少年期にこの本を読めば、なぜムルソーがこれほどまで無関心でいられるのか、おそらくわからない。だが、成長する過程での長い時間と経験こそが、カミュの言わんとしたことを理解する手助けとなるのである。

 私も去年身内を亡くしたが、どれだけ絆の深いものでさえ、その死に直面してしまうと意外に淡白に感じられるものだ。葬儀や火葬、お通夜など、肉親の死であるというのに、冷徹かつ客観的に眺めている自分の姿がある。これは何も感受性に乏しくなったということではない。これが人間というものなのだ。

 その場所でのお悔みや親戚縁者の慰めなど、その場にいた私にとっては何の意味もなさぬものだった。それが泣きじゃくった司祭の姿を通してみればわかるだろう。神の祝福も懺悔も、ただの芝居にすぎぬことを。だからこそムルソーをいらだたせる。

 ただ淡々と進む別れと過去の思い出を頭の中で反芻し、そして自分なりに解釈を付けて死者を送り出す。だが、その情景は曖昧で繊細なものなのだ。ムルソーの、一見すれば主体性がないかのような受動的に見える思考や振る舞いも、それを如実に物語っている。そして、いずれは私もそのように送られることだろう。

 殺人を犯したのは「太陽のせい」と語った。しかしそう語る彼をだれが嘲笑うことができよう。地球上に降り注ぐ強烈な日の光こそが、彼が彼足りえる原動力となっていたのだから。

・「みんな孤独
キリスト教というひとつの価値観を強要される世界に対するムルソーの窮屈な気持ちは日本人の私にも十分理解できる。

母の葬式に対するリアクションひとつにも人それぞれの形があっていいように、世のあらゆるものに対し自分なりの価値観で行動しよう。ムルソーはそんな自分で考え、行動する自立した人間だ。

しかしそのため価値基準が曖昧かつ不安定であり、彼の行動は一見すると支離滅裂な脈絡のない判断の連なりだ。それゆえの社会との不一致が彼を破滅に導いていく。

多様な価値観にあふれる現代で、逆に何を良しとして、基準として生きれば良いのかわからなくなるときがあると思う。だから今、ムルソー的な感覚を持つ人は実は多いのではと思う。しかしムルソーが社会で孤独であったように、その感覚は分かり合えても結局孤独感をぬぐうことはできないことがつらいと思った。

・「凝縮力をもった名作
所謂古典的名作と言われる作品には、そう呼ばれるだけの内容がある。カミュの「異邦人」は、中学生の頃読んでみたのだがさっぱりわからなかった記憶がある。あれから20年以上たった今読むとさすがにわかる。不条理に生きることの窮屈さが身にしみた年齢になったからだろうか。私も主人公同様20年ほど前に母親を無くしたが、長いこと一緒に住んでいなかったこともあって、あまり悲しくなく、葬式でも涙の一滴も出なかった。人間などそんなもので、自分の肉親の死よりも、飼い犬の死のほうが悲しかったりするものだ。主人公にとって、神や死後の神の祝福などは何の意味も持たない。死ねば死にきりなのだ。それを全うして生きられる人間は強い。翻訳もなかなか格調高いが、もうすこしこなれた日本語に出来るような気がする。

・「生きることへの違和感に素直に生きる男の話
異邦人を読んでいると、あることに気が付く。どこか、世界とムルソーとの間に隔たりがあるように思われるのだ。ムルソーは身に起こる多くのことに対し無関心である。ただ、淡々と目の前の問題に対処をしているだけだ。その代わり、彼は些細な自分の嗜好にとても実直である。彼は、よく眠り、よく食べ、よくタバコを吸う。隣人の恋のトラブルに対し興味を抱き、老人の小さな孤独の物語に同情をする。太陽に心地よさを感じ、そして、恋人との情事を喜ぶ。しかし、恋人が彼に自分を愛しているか。と聞かれると彼はわからない、と言い、結婚を求められてもお決まりの文句、<Cela m'etait egal.(どちらでも同じさ)>と受け流してしまう。彼は自分の人生に対する関心に欠けている。

シャンピニーは「異教徒の英雄論」の中で主張する。一方に、偽善的慣習や約束事によって成り立つ社会や宗教の「芝居的世界」があり、これはアンチ・ピュシス(反自然)でり、また一方では本来的な自発性に属するピュシスの世界があり、ムルソーはそれに従って生きている。「芝居的世界」を受け入れることを拒否するムルソーはそのために異邦人とみなされ、罪人の烙印を押されて死刑を宣言される。

物語のクライマックスであり一番の盛り上がりの部分である、アラブ人殺人の場面はあえて語らず、他のレヴュアの方に任せようと思う。フランス語の原文で読むとねちねちと皮膚に張り付いてくるような文体がこの場面の緊!張感をひしひしと高める。

私はカミュの特徴はその精緻な描写だと思う。読者は物語の始まりの部分からその孤独な老婆たちの描写に驚かされることであろう。この本は私がフランス語で読んだはじめての本であるが、フランス語で読むとまた、違った面白さが発見できると思う。作品自体そう長くはないし、フランス語も簡単なので試してみる価値はあると思う。

・「白い以上に白い、と語ることは虚偽である
白を黒と言うことはもちろん虚偽だが、白い以上に白い、と語ることも虚偽である。ムルソーは、私たちの言う意味で、母親や恋人を愛していないのではない。ただ、愛している以上に愛している、と口にすることを拒否しているだけだ。ムルソーは、過激なほどに、誠実に生きようとしている。

ムルソーは社長にパリ行きをすすめられるが、関心を示さない。彼にははじめから世間的な出世や野心などないのだろう。でもこれは私には、白くない以上に白くない、と語っているように見える。

カミュは貧民階級の出身である。幼い頃に父親を亡くし、母親は耳が遠くて文字を読むことはおろか日常会話にも不自由した。この母親に代わって子供たちを育てた祖母は、教育のためにムチを使った。カミュ少年は幼い頃から我桊??することを覚えさせられた。ーーただ貧しいだけで後ろめたい思いをすることを、貧しさを知らない人たちにどう伝えればいいのだろう、とカミュはどこかで言っている。

この、やがて時代を代表することになる感受性豊かな少年は、自分には世間並みの希望を持つことさえも禁じられていることを知っていた。イソップの有名なキツネは、高くて手の届かないところにあるブドウをスッパイのだ、と言う。カミュ少年は、手に入らないものは最初から欲しくなかったのだ、と考えることに慣れていた。

「言葉」には限界がある。つまり、言葉にすればすべて嘘になる現実がある。白くない以上に白くない、と語ることは、白い以上に白い、と語ることと同様、虚偽、である。だが、詩人たちはこの白を伝えるために言葉を捜し、画家たちはその色をキャンバスに移すために絵具を混ぜる。

天才とは嘘をつくことがもっとも苦痛な種族だ、と定義した人がいる。

異邦人 (新潮文庫) (詳細)

パンツをはいたサル―人間は、どういう生物か (カッパ・サイエンス)

・「こんな面白い著作をありがとう
面白くて仕方がない!---------感想を一言で言え!と迫られたら,こんな陳腐な表現しか出てこない。まだ明治大学法学部に在職していた栗本氏が30代までに考えた知的雑念を平易な表現でまとめあげた著作だ(著作発表時40歳)。

俎上に上げられるのは,「おカネ」(第2章),「パンツ」(性,第3章),「神経症」(第4章),「法律」(第5章),「道徳」

(第6章)だが,論理は整理されているというより,蛇行している。斯界の権威=阿部欣也という重要だが少数の例外を除けば,彼が学術層に人気がないのはこういった甘く杜撰な論理展開にあると思う。

初読のときこういった"欠点"に気付くほど私は成熟してはいなかったけれど,それでも知的に刺激的な"大学教授の文章"にすることのできた興奮は,残念ながら大学紀要に掲載する文章しか書いていない(これはこれで立派な業務だけれど)そこいらの教授には与える能力など皆無だろう。

経済学者という分類だが(同氏は慶應大学経済学部卒),文学や批評の造詣に深いことは,『鉄の処女---現代思想の総批評』で読み取ることができる(蓮見重彦や柄谷行人丸山圭三郎や中村雄一郎について平凡な経済学者がここまで突っ込んだコメントをして公表できるだろうか)。こういった知的捕獲網の幅広さこそが,若きマルキストだった彼をして経済人類学者へと転換させた背景であるに違いない。

本書で栗本を知って以来,私は親しくなった友人や知人に強く推薦してきた(自分で買ったものを除いて,ウソ偽りなく4冊は売上に貢献している)。知的関心の旺盛な高校生からヒマでヒマで仕方のない大学生に至るまで,男女を問わず知的若年層に推したい。20年前の栗本先生よ,こんな面白い著作をありがとう。これで一読者としての恩返しができたでしょうか?

・「三部作の第一巻
三部作の第一巻。バタイユを援用して生産ではなく消費中心の視点を提示。しかしポランニーの原始共同体の理論が現在以降には当て嵌まらないと吉本隆明に批判され(相対幻論)、彼はサブカルチャーの方に傾斜してゆく。その後二巻で病を中心とした快感進化論にうつってゆく。そして恐らく地球や宇宙における人類の他の生命形態に対する位置づけが、未だ語られぬ最後のテーマとなるに違いない。

パンツをはいたサル―人間は、どういう生物か (カッパ・サイエンス) (詳細)

悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)

・「20世紀を代表する一巨人の人間理解への旅の記録
 『悲しき熱帯』の翻訳にはこの川田順三氏版が定評があるので本書を手にした次第である。本題は<1>というよりもむしろ<2>で展開されているので、<2>だけでも読んでおくとよいと思う。 本書の内容は、構造主義で名の知られるレヴィ=ストロースの南米を中心としたフィールドワークを随筆風に記したものである。その記述内容は、民族誌的描写にとどまることなく、人間に対するさまざまな考察が、脱線もしつつ、ルソーやヒュームなどの先人の知見なども引用しつつ展開されているために平易ではない。しかし、彼の人間の根本的価値とその社会機能と構造についての考察は卓越したものがある。この思考は本書を通じて述べられているが、私は特に第九部「回帰」"一杯のラム"に集約されているのではないかと感じる。 われわれの視点から見て、一見不合理・不条理と思われる習俗・社会組織をもつどのような社会でさえも、視点を変えることにより、その中にきわめて合理的な様相を見て取ることができるのである。レヴィ=ストロースはこの証明を、もっとも「未開」状態にあるに思われるようなナンビクワラ族の社会構造の分析などから明快に提示している。本書を読むことによって、<文化>というものは西洋諸国をはじめとしたいわゆる「文明国」の尺度から図るべきものではない、ということが理解できるだろう。

・「優れた紀行文学として、気軽に読める
構造主義の文化人類学者の書いた本、というとなんだか堅苦しく思いますが、実際には「良く出来た紀行文学」としてけっこう気軽に楽しめます。「私は旅と探検家がきらいだ。それなのに、いま私はこうして、私の海外調査のことを語ろうとしている。」…いきなり冒頭からこの調子なんですから、これではハートをぐわしっと鷲掴みされてしまいますね。そうして読むうちに構造主義について興味をもったなら、たとえば橋爪大三郎著『はじめての構造主義』なんていうわかりやすい入門書もあります。とにかくまずは気軽に手にとって、レヴィ=ストロースの「語り」の世界の波間を漂ってみてください。そしてそこから文化人類学や構造主義、言語学なんかへの関心が芽生えたら、こんどはそちらを辿ってみてください。

「知」は冒険である、そんなことが実感できる優れた古典的名著のひとつです。

・「ブラジル文化及び民族を考察したフランス人人類学者の手記
訪れる者に強烈なインパクトを与える熱帯。その熱帯が、なぜ悲しいのだろうか?とつい、手にしてしまった本である。フランス人はかくも物事を深く考える人種なのだろうか。否、ユダヤ人の血を引くレヴィ=ストロースがペシミストなのだろうか。第二次世界大戦中、青年時代に長年住み、その大学で教鞭を取ったのにもかかわらず、ブラジル政府に亡命を拒否されたという体験に起因するものなのだろうか。本書は、ブラジルに渡ることとなったきっかけ、ブラジルへの旅路、同じ熱帯地方のインドとブラジルとの比較、そしてリオ・デ・ジャネイロ、サン・パウロ、開拓地帯について、さらには奥地のパラナ、パンタナル、メリーケと原住民を求めて、実施調査をすべく探索する様子が書かれている。実際に本書を読んでみると、人類学者が書いた論文というよりは、小説の様な繊細な文章がいたる所で見受けられた。全体的に言って、とてもすばらしい作品である。

・「本書の人間社会の悲惨への考察は今でも決して古いものではないだろう
「私は旅が嫌いだ」という一文から始まる本書は,紛れもない紀行文である.著者レヴィ=ストロースは文化人類学者であり,構造主義を標榜した現代思想の担い手のひとりであるが(ソーカル事件の対象にはなっていない),本書はブラジル時代に行ったブラジルの内陸部を横断する長期調査,すなわち未開民族のフィールドワークの回想である.ブラジルへと渡るまでの経緯,インディオのフィールドワークおよび彼らの習俗について、さらに後述の亡命を経て第二次大戦後フランスに帰国する頃までの体験のいくつかが印象的に語られる.

文化人類学者としてのフィールドワーク,および観察は非常に興味深い.この過程において,後に構造主義と呼ばれる彼の思想の萌芽を見て取れる.そして,彼らの描く文様もそうであるが,なりより特に未開民族の婚姻の構造(親族構造論)は後にアンドレ・ヴェイユによって群論を用いた解析の対象になるなど,僕には人間の持つ構造化・システム化の要求はこのような未開状態にも見られるのかと,大変驚きを覚えたのである(もちろん,ソーカルに言わせると化学や生物学にすら顔を出さない深遠な数学的概念が社会科学に奇跡的にも関係する、というような話は疑ってかかるべきであるが).

また,本書にちりばめられる人間社会の悲惨への考察は今でも決して古いものではない.アジア,特にインドを旅したときのエピソードがしばし挿入されるが,いかに高成長を遂げつつある現代のインドにおいても,このエピソードは通用すると思われる.そして,本書の最後に語られる人類学者と社会,つまり彼の属する社会と,彼が観察すべき未開社会(レヴィ=ストロースは未開社会をエキゾチックだと述べていることもある)との関わり,その乗り越えるべき矛盾についての吐露は秀逸である.

僕は必ずしもレヴィ=ストロースの主張に与しない.特に,仏教と砂漠の宗教(キリスト教・イスラム教)との対比は同意できない(ただし,これは彼がヨーロッパ人であり,僕が無宗教ながらも幼い頃から仏教に触れていることによるだろうが).しかしながら,強引にグローバリズムが推進され,いくつもの民族.文化・言語が消滅の危機にある今(これは国外だけの問題ではない,日本の問題でもある.しかしながら,日本人はそのことについてあまりにも鈍感だ),本書を今一度めくることは価値のあることだろう.

なお,本書は文学としても傑作である.本書の出版後,ゴンクール賞を選定するアカデミー・ゴンクールから、小説でないために『悲しき熱帯』を受賞作にできないのは非常に残念だという旨のコミュニケが発表されたという.ただ,残念なのはやや訳文がこなれておらず,全体的に読みにくいということだ.やはり名文は母国語で味わうべきだろう.

・「意図せぬ最高品質の文学
人類学者・社会学者のレヴィ=ストロースの随筆・紀行文だが、随所に文学的な性質を帯びている。私はそれほど多くの本を読んでいるわけではないが、本書は今まで読んだ本の中でも最高の部類に入るものだった。それなりのボリュームがあるのだが、ボリューム以上の質が底には宿っていて、読み手の洞察力・理解力に応じた教訓を返してくれる。私は残念ながら文化人類学的素養に乏しいので、理解できない部分も多々あったが、それでもレヴィ=ストロースの知見が卓越したものであることはすぐに分かった。小説ではないので、意図せぬと言わざるを得ないが、最高品質の文学作品であることに疑いはない。是非一読をお勧めしたい。

悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス) (詳細)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

・「読まないと損をする自伝の傑作
自らを語って一片の自惚れも自虐もなくこれほど澄明なユーモアに満ちた文章も珍しいのではないか。時にこのユーモアは抱腹絶倒の笑いに発展し、例えば徴兵検査で精神科医の検診を受けたさいの面白さはさながらウッディアレンの喜劇である。自分のことをまるで他人事のように語る筆遣いは欧米人によくあるスタイルの一つだけれども、この本のそれはちょっと一味違うように感じられる。それは自分自身の今に至る軌跡を面白おかしく描きながらも微動だにせぬ目で観察する科学者の視線といったものだろうか。沸騰する笑いと冷厳な観察眼その微妙なバランスがこの本の魅力を生み出しているのかもしれない。決して短くはない内容だが読み始めて気が付けばいつのまにか終章に至っており、そして読後感は実に爽やか!である。

・「素晴らしい!!
 ファインマンは、くりこみ理論で朝永振一郎と一緒にノーベル物理学賞をとった物理学者。でも、その話はぜんぜん出てこない。出てくるのは、ちょっとしたことへの着眼と興味、筋道だったアプローチ。それは物理にとどまらず、女の子だったり、絵画だったり、音楽だったりする。 わたしが、「努力」とよんで歯を食いしばってやることを、難しい面倒だといってあきらめてしまうことを、この人は眼をきらきらさせて、おもしろい!といって、わらいながらやってのける。 きっと、人生というのは、何も考えずに楽しく過ごすものではなく、広く深く考えれば考えるほど楽しいものなんだ。

・「やりたいこと、好きなことを徹底的にやる!
いくつになっても好奇心でいっぱい!ファンキーな物理学者ファインマンさん!「やりたいこと、好きなことを徹底的にやる」っていう姿勢を生涯貫いているのがかっこいい!

・物事は暗記ではなく、理解することによって学ぶ・人がどう思おうと、ちっとも構わない・驚異の心をもたない人間は、消えたろうそくも同然だ。・とにかく何かにアッと驚き、なぜだろう?と考える心を失わないこと。 そして、いいかげんな答えでは満足せず、納得がいくまで追求する。 わからなければわからないと、正直に認めること。

下巻+「困ります、ファインマンさん」まで一気に読めます!!

・「卓越した科学者の楽しい人生
ノーベル物理学受賞者として有名なファインマン博士(故人)の自伝。「ご冗談でしょうファインマンさん」の原書です。戦前、戦中、戦後にわたる物理学者としての目覚しい成果の一方、恋物語から金庫破りまで、私生活を楽しむ一個人の側面が描かれています。仕事一辺倒の生き方を再考させられる一冊です。

・「ファインマンさん,大好き
中学時代に恩師の推薦図書として知ったのが最初.何度も読み返している.型破りな発想と実行力で,数々のいたずらやとんちを繰り広げるファインマンさん.物理に関する記述はないものの,発想や理屈はやはり研究者らしい.弱者のことも理解でき,自分を優者とは見ていないところが一番の魅力であり,見習うべき点であると思う.

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫) (詳細)

赤と黒 (上) (新潮文庫)

・「切なくなります。
フランス文学の不朽の名作、スタンダールの『赤と黒』 です。

レナール夫人(ルイーズ)と主人公ジュリアン・ソレルのどんどん燃え上がる恋の炎が見物です。

初めは駆け引き(使命感?)のつもりでルイーズを誘惑していたジュリアンでしたが、彼女の魅力に触れ、次第に本気で愛するようになります。

しかしここは不倫の恋ですから、2人には辛く悲しい別れが待っています。

何年か前に読んで以来、この本は私の愛読書です。何度読んでもどきどきします。

新潮社の『赤と黒』の訳は比較的読みやすいと思うので、初めて読む方にもおすすめです。

・「心理描写の密度が濃い
大傑作!この小説を読むと、やれ芥川賞だ〜、やれ直木賞だ〜などと言っている今の作家の小説など読む必要がないことがよくわかる。登場人物の心理がAからBに変化するとき、その間の過程が10段階あるとすると、スタンダールは、その10段階全てを克明に書いている。しかし、今の作家の本を読んでも、せいぜい2〜3くらいしか書いていない。スタンダールは、心理描写の密度が圧倒的に濃いのである。凡庸な作家の本を読む暇があったら、スタンダールを読もう。

・「恋せずに生きる価値がありまして?
訳がいいのかもしれませんが、この勢いのある読みやすさはきっとスタンダールならではのものなのでしょうか?ディケンズは好きになれない私ですが、スタンダールは読むたびに、ドラマとはこうあってほしいなあとおもわせてくれます。恋のない人生なんて生きる価値があるの?

スタンダールの墓碑には「生きた。愛した。書いた。」と

書いてあるようです。そうした勢いのある彼の代表作。必読です。

・「魅力的な主人公
この小説を最後まで読ませるのは、主人公ジュリヤン・ソレルの魅力、それに尽きると思います。強い上昇志向、そして、屈折した内面。「赤と黒」を読むと、彼が生き生きと心の中で動き回る気がします。

・「真実の愛
真実の愛とはわからないもので遊びに思ってた女の子があとから気づいてみれば最愛の女性になっていたりなんてことも世の中には多いですが利用するための不倫からいつのまにか真実の愛に到達してしまった悲しきジュリアン・ソレルのお話です。フランス文学の傑作です。

赤と黒 (上) (新潮文庫) (詳細)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

・「見方を変えて
以前は村上春樹の事があまり好きではありませんでした。しかし、外国人の友人がたびたび彼の作品について聞いてくるので、約15年ぶりに本書を読み返しました。読むにあたって、1.登場人物中誰が一番好きか?(はつみさん)2.誰が一番悲しい人物か?(ワタナベくん)3.誰が一番自分に近いか?(ナガサワ)とあらかじめ自分自身に課題と設けました。マーラーや、グレートギャツビー、マルボーロといった、少し不自然な小道具にも気付きましたが、見方を変え、ある意味、分析するように読み返してみると、(年齢を重ねたせいもあるでしょうが)本書は実に悲しい物語である事に気付きました。この物語を悲しくさせた一番の理由は、ワタナベ君と直子との恋が成り立たないことは始めから解りきっているからです。恋とは努力して成就させるものではないことは誰もが知っているはず。そのワタナベ君の努力は義務感から来るもの。そういった意味では、二人の間には始めから恋愛感情など存在しなかったのかもしれない。そういう物語を久しぶりに読み返して、15年前とは違った印象を持った。

・「wish you were here.
やはり優れた作品だと思う。一握りの人々の青春を書くことで、普遍的な時代精神が見事に表現されている。成熟するということは、醜悪な現実と闘う為の「仮面」や「よろい」を身に付けることだ。これは思春期の純粋性を捨て、自分自身が醜くなることでもある。これを易々と実行できる人(永沢)もいれば、できない人(レイコさん)、懸命にメタモルフォーゼしようともがく人(小林緑)、断固、成熟を拒否するひと(直子)に分かれる。これはいつの時代でも同じことなのだが、60年代は人類全体の思春期ともいえる特殊な時期だ。個人の思春期と集団的な思春期とが交錯している。その終焉時に成熟を拒否すればシド・バレットのように狂うか、ジム・モリソンのように自己破壊するよりほかはない。個人の力で乗り越えることはできない。こうして直子をはじめ登場人物の心の動きは、一個人を超えて時代病の相貌を帯びてくる。そもそも自殺衝動は病原菌のように外部から来るものではなく、人間が生まれつき心の底に有しているものだ。死は生の一部なのだ。ふだん見えない湖の底が旱魃期に露呈するように、思春期の終わりのような転換期のストレスで心に穴が開くと、水位が下がり、死への意志が浮かび上がってくるものなのだ。そして登場人物達が遭遇するのは、個人を超えた60年代という巨大な思春期の終焉なのだ。この作品は一つの青春を語ることによって、万人の青春と、今現在まで続く時代病とも言うべきものを見事に表現している。

・「高校生の時に読んで
受験前の18歳の時、(80年代後半)ただ、当時ベストセラーになっていた話題の作品というだけで読みました。最初は「受験勉強の合間にちょっと読んでみよう」そんなつもりで購入したのに半日で一気に読み終えてしまいました。この本を読んだ後に襲ってきた虚無感のようなものは・・今でも正確に言葉で言い表せません.何度も読み返しますが、歳を重ねるごとに微妙に感じ取るものは違ってくるけどまさしくパーフェクトな作品だと思っています。

18歳の時に読んだときはとにかく3日ほどは学校にも行けず、誰とも話したくなかった。(別にもともと引きこもり気味ということもありませんでしたが)自分を形づくっていた「何か」がすっぽりとなくなってしまったようなそんな感じ。子供の時から現在でも年間かなりの量の本を読みますが読んだあと、あんな風になったのはこれっきりです。村上春樹の本は全部読んでいますが他の作品を読んでもそうはならない。ついでに言うと最近よく「ベストセラーになった恋愛小説というだけで」比較される「世界の・・・」も読みましたがもちろんあの読後感はありませんでした。世界・・が悪いというのではなくって。また、全然違うものなので比較すること自体いかがなものかと思いますが。

余談ですが、村上春樹好きの人には「象が平原に還った日」がお勧め。ノルウェイの森についても思わず納得の解読がされています

・「感覚的に
 この作品が「面白いか」と聞かれたら、私は面白いと答える。だが、もっと突っ込んで「じゃあ、どのあたりが面白いか」とか「どんな話なのか」と聞かれたら上手に答える自信はない。つまりはこの作品はそういう作品なのだと思う。 例えば、村上龍のような作家の作品(コインロッカー・ベイビーズ、愛と幻想のファシズムなど)ならば、作品を理性的に捕らえることができる。「この物語は、このようなことを言っている」といったようなことが、解り易く、的確に述べられている。だが「ノルウェイの森」はそうはいかない。 無理に言葉にしようとすると、実にくだらないものになってしまう。こういう類の作品は、理解しようとするのではなく、その作品の世界に浸ればいい、つまりはただ単に「感じればいい」と思う。

・「説明困難の不思議な魅力
どこで読んだかは忘れたが、村上春樹は自身が飲食店を経営していたときに得たノウハウとして「飲食店が繁盛するコツ」をエッセイに書いていた。曰く「10人のお客さんが来たとして、10人全員にそこそこ気に入られるより、9人に嫌われても良いので1人に猛烈に気に入ってもらえたほうが良い。」とのこと。その猛烈に気に入った一人はその店のリピーターとなり、さらに口コミで人を連れてくる。口コミで店に来た人の何人かは、またさらにリピーターとなるらしい。

「繁盛=ベストセラー」を意識しているかどうか不明だが、彼の作品は明らかに「多くの人は拒絶反応を示すが、一部は猛烈に好きになる」と言った類のものだろう。そう言う私も、この「ノルウェイの森」をきっかけに春樹リピーターとなった1人だが、拒絶反応を示したレビューが予想以上に多いことも興味深い。

確かに村上春樹の何が良いかを説明するのは難しい。逆に「良くないところ」を説明するのは簡単だ。物語に脈略がない、簡単に人が死ぬ、意味不明なセックス、、等々。それにしても、私を含めた多くの人が魅せられるのか?

ひとつ確実に言えるのは、流れるような文章表現力だろう。例えとしては苦しいが、音楽を楽しむように我々は読解を楽しんでいるのではないか。音楽にも歌詞やメッセージがあるが、それよりも心地よい音の流れそのものを楽しんでいるはずだ。同じように私たちは、物語やメッセージよりも村上春樹の心地よい文章の流れを楽しんでいるのではないだろうか。

ノルウェイの森 上 (講談社文庫) (詳細)

桃尻娘 (講談社文庫 は 5-1)

・「80'sに贈る
これを読んだのは新入社員だった、十数年前。当時、活字嫌いだった自分が一念発起して、ヒマな通勤時間に本読もうと思い、友人に「これなら、ヒマつぶしになるし、お前でも平気」と薦められた一冊。

登場人物達は、自分と世代がほぼ一緒で、恋愛やファッション、学校の事、そして将来に対して、不透明な部分を背負い続けているトコが、妙に自分とシンクロして、そのまま深みにはまりました。活字嫌いに最適。自分にとって、80年代が栄光のDECADEと思う人にも良い。

・「今の橋本治についていけないアナタでも
約10年かけて完結した桃尻娘シリーズ6部作の第一作。主な登場人物はみな高校生で、学園小説、あるいは青春小説と見なしていいかと思われる。これを読んだ頃の私も高校生だった。当時はケラケラ笑いながら読んでいた。20回以上読み返した作品だが、今読み返すとかなり苦く、恥ずかしい。

いいかどうかは別として、今の橋本治に比べるとはるかに文体が軽く、読みやすい。これに続く2作目"その後の仁義なき..."も同じタッチである。3作目以降はストーリーが冗長化してゆき読むのがつらい。

若い人がサラッと読むにはお奨めだと言える。オッサン/オバサンの自覚がある人は読んでも共感できずに"あ、そう"で終わる可能性が高い。

桃尻娘 (講談社文庫 は 5-1) (詳細)

スティル・ライフ (中公文庫)

・「砂漠で見つけたミネラルウォーターのよう
『スティル・ライフ』と出会ったのは高校生の受験勉強の時でした。現国の問題集の問題としてとりあげられていて(抜粋は雪のシーンだったと思うけど)、その文章を読んでその清清しい新鮮さ、文体の透明感に感動し、完成された小説として今すぐ読みたいという思いに駆られ、勉強の手を止め夢中で本屋までその本を探しに自転車で走りました。受験勉強中ということもあったのか、関係ないのかは不明だけど必死に本屋で見つけて読んだ文庫の『スティル・ライフ』はすごく心を潤してくれました。読んでいる途中も読み終わった後も喉だけでなく、精神的にもまるで清らかな水で癒されたような錯覚がしました。今もその時初めて買った文庫本を持っていて、(8年も前に買ってもうボロボロになっているけど)毎年2回くらいは読み返しています。何十回読んでも毎回新鮮な気分にさせてくれます。

・「音のない音楽
「音のない音楽を聴いている」というのがふと浮かんだ印象です。

池澤夏樹氏の著作を読むのは恥ずかしながらこれが初めてなんですが、とても印象的でした。なんといっても「スティル・ライフ」の書き出しの2ページでググッと彼の世界に引き込まれた気がします。とはいえ、決して強引に読者を引き込もうと無理をしているわけでもなく、どちらかと言えば淡々と静かに物語が進んでいく感じに強い印象を受けました。

特に冒頭の部分や、途中で出てくる風景の描写の部分(「スティル・ライフ」の雪の描写や「ヤー・チャイカ」のテレシコワの宇宙飛行の描写など)がとても印象的で、読み終わっても何度も何度も読み返し、声に出してみたりしていました。

・「
耳元をかすめる冬の風、雪のにおい、星のまたたき。理科の教科書の天体観測の章、あの感じです。しし座流星群があたまの中で降ってきます。何よりもきれいな言葉、しつこくない文章はほかの池澤作品に比べても完成されているように思います。池澤入門にはもってこいではないでしょうか?

・「色あせない読後感
発刊された10年以上前に読み、また読みかえしたくなりました。

池澤夏樹らしい、視線。飾り気のない語り口。すごくドラマチックなことが起こるわけでもないのですが、その中に描かれている世界感が凛とした空気を持っています。十余年たっても色褪せない、まっすぐなかんじがいいです。

今まで読んだ数々の池澤作品の中で、おすすめの一冊。

・「静かな小説
「スティル・ライフ」中に、海に降ってくる雪についての記述があります。静かで落ち着いた文章から、しんしんという雪の音が聞こえてくるようでした。謎が謎を呼ぶなんて事も特になく、本当に淡々と進んでいく短い話です。何度でも読みたくなります。

個人的には後半に収録されている「ヤー・チャイカ」の方が好きです。中学校の教科書で読んだ方も多いのでは?教科書では随分限られた部分しか引用されていませんでしたが、あれを読んだ時の強い感動は忘れられません。当時はショックとしか感じませんでしたが・・・この話も心に染み入ってきて、事あるごとに思い出します。

スティル・ライフ (中公文庫) (詳細)

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)

・「いやー
賛否両論あるようだがかなり面白かった。確かにあらゆる視点や考えからすると頭がおかしくなりそうなほど混乱をきたす。と言うわけで私は此れをおおまかに進めていって理解していったわけです。しかしここまで面白いことを考えれる作者はそうそういないと思う。まさに夢想家。まさに夢野久作である。

表現がそして面白い。これは文で表現しきれないので是非読んで欲しい

後半は少々グロイ表現もあるので、そういうのが苦手だと言う人にはお勧めしない。

・「ただ圧倒。
「胎児よ 胎児よ 何故踊る 母親の心がわかって 恐ろしいのか」

1ページ目をめくると、「冒頭歌」と称して上の一文が載っている。この一文を読んだだけで、この小説の神秘性に引きずり込まれるだろう。

全編を通して異様な雰囲気の中、不気味なまでに軽快な語り口。推理小説などというジャンルにはめ込む事のできない、圧倒的なスケール。夢野久作が10年間推敲に推敲を重ねて完成した作品で、怪奇小説の中でも異端児と言っていいと思う。

「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来す」とまで評されている。しかし、たとえ精神に異常をきたしたとしても、一生に一度は読んでおきたい作品であることは疑いない。

途中まで読むのがしんどくても、後半はスイスイ読める。そしてその結末には、誰もが必ず圧倒されるだろう。クセはあるが、ハマると何度でも読み返したくなる、麻薬的一作。普通の小説には飽きたという人は、是非ご一読あれ。

・「10年ぶりに再読しましたが,やっぱりすごい作品です.
 真夜中,どこかから聞こえてくる時計の鐘の音で目が覚めた「私」は、すべての記憶を失くしてしまっていた. 隣の部屋には少女(どうやら自分の許婚らしい)がわめき散らしているのだが、自分には全く身に覚えがない。 もう一度眠りについた「私」は、やがて朝になり再度目を覚ますのだが,そこに九州帝国大学医学部長を名乗る紳士がやってきて(どうやら「私」は九州帝大病院の精神科病棟の一室にいるらしい)、その紳士に連れられて失くした記憶を取り戻しに出かけるのだが...。

 人により評価が真っ二つに分かれる作品です。 分厚い上下二巻組の作品であり、途中に「胎児の夢」と題する論文などが挿入されているので、読んでいて辛くなるかもしれません。 しかし、それを我慢して読み進めていくと、私と同じようにその結末にきっとあなたも圧倒されることになるでしょう。

 結末のインパクトが失われてしまいかねないので、深く突っ込んで書けず申し訳ないのですが、世界に誇れる作品に仕上がっているということだけは言っておきます。

 あなたがこの作品について、少しでも気になったことがあるのなら、一度手にとってみることを強くお勧めします。 そしてその時に,途中で放り出してしまいたくなるかもしれませんが、ぜひ最後まで頑張って見てください。この作品の世界観は、きっとあなたを大きく変えてしまうでしょう。

 それでは御健闘をお祈りします.

・「傑作です。
絵でいうなら、だまし絵。音楽でいうなら、FAUST、COIL,NWW。フロイドのいう、夢の作用。作家はあえてつじつまを合わせようとせず、背後にある、読者の深層心理を刺激します。読む人によって、感想という以上に、何が論点になるかすらもはぐらかせられます。現実という足場を完全に踏み外した、正に異端の文学。しかし、途中でDNA的な記述は先端なのか、作家の先見なのか、無茶苦茶面白いです。

・「これ翻訳できるんでしょうか?すごすぎます。
この上巻を読み終えるまで相当きつかったです。というのも、本当に気がおかしくなりそうで、読むのを何度やめようかと思ったことか。。。なんなんですかね、この本。夢野久作は狂っているか、天才かのどちらかです。しかし、なんとか上巻を読み終えたら、びっくりするくらい下巻も制覇できます。ミステリー小説としてもおもしろいんです。でも、この本を全巻読み終えたときには、今までとは違う脳の構造が出来上がっているような感覚です。正直、この本を読んで以来、ちょっと頭がおかしい感じです。。。(まじです)「胎児の夢」という考え方、妙に共感してしまいました。夢野氏は、真理をついている気がします。皆さん書かれてますが、80%の人は頭おかしくなるんじゃないか?というくらいの強烈作。この本読んで、頭がおかしくならない人に会ってみたいです。ヤバイヤバイ!まじやばいけど超オススメ!

ドグラ・マグラ (上) (角川文庫) (詳細)

後宮小説 (新潮文庫)

・「大真面目に書かれた面白すぎるホラ話
『腹上死であった』という有名?な書き出しで始まる面白すぎるホラ話。中国史に疎い私は、はじめてこの小説を読んだとき、ある程度は事実に基づいた作品なのだと思ってしまった。

大真面目かつ哲学的に語られる下ネタ、主人公の少女銀河や彼女を取り囲む登場人物の魅力やおかしさ、そして、自分で作ったホラ話を作品の中で解説する作者、それらが、不要な句点が少なく格調高い(あるいは漢文的な?)が、どこかとぼけた文体で描かれている。落語の「下げ」みたいなラストもいい。そして、著者の文庫本の楽しみは下手なエッセイより面白いあとがきである。

中国の歴史というか思想を下敷きにしながら、ここまで面白い小説を“創作”できる作家はそういないのではないか。そして、その面白さは、前述の特長を持つ著者の文体によって倍増するのである。

著者の代表作といえる「陋巷に在り」も読んだら止まらないが、全13巻と長いので、最初に手に取る作品としては、これ以降の作品にも見られる彼の魅力が詰まっている、このデビュー作「後宮小説」が良いと思う。

・「哀しさから生まれるユーモアを風通しの良い文章で描いた作品
文庫本解説に、本作品がファンタジーノベル賞をとった際の選考委員・高橋源一郎氏の選評が引用されていますが、全くその通りだと思います。………………………『後宮小説』にあって他の作品にないもの、それは淡い哀しみを帯びた「軽さ」である。この小説の「軽さ」は軽薄短小の「軽さ」ではなく、重力から逃れてあることの「軽さ」だ。『後宮小説』の世界では、登場人物、そこで起こる重要なあるいはどうでもいいような事件の数々も、それらを包み込んで流れる歴史も、そしてそのすべてを語る作者の声も、その一切が重力のくびきを逃れて浮遊している。この「軽さ」は内閉的な夢を語ることによってではなく、ついに重力から逃れることのできない我々というやっかいな存在の運命を直視することによってしか得られることのできない宝庫なのだ。われわれはこの稀な宝物のことを「ファンタジー」と呼んできたのだ。…………………………方々で「面白すぎ!」という噂を聞いましたが、実際読んでみると想像を遥かに超えて楽しむことができました。もちろん先を読ませる力=中毒性も高いのですが、なにより読後の爽快さと余韻の深さという普通どちらかといえば相反する二つの感覚を心地よく同時に喚起させてくれます。「人と人との葛藤」だけではなく「人と歴史または運命との葛藤」にまで目が届いて初めて生まれてくる本当のユーモアがこの風通しの良い傑作を作り上げたのだと思います。そしてこのスタイルは『陋巷に在り』という大作に受け継がれていきます。

・「意見は真っ二つ。私は面白いと思う
まず、アニメ「雲のように風のように」を見た人が、これを見たら驚くのでは?とおもうくらい、アニメと原作は違います。もちろんキャラの性格や台詞回しも。中国に似た架空の国を、面白おかしく歴史家として書く視点は、とても面白いのではとおもう。そのために、薀蓄が多い作品にはなっているが「それは歴史を語るエッセイスト」の視点であると思うと、書き手としては、変わっていて、その作品の個性を評価できる筈。アニメを評価するか、原作を評価するか、両方見た人間としては、両方星5つで評価したいとおもいます。

・「虚構の幸せ
「砂上の楼閣」という言葉がある。えてして(現在の和製)ファンタジーにはこの傾向が強い。カタカナの羅列でそれらしく飾り、「どこかで見たような…」存在感ではなく「どこかで読んだような…」既視感ばかりを与える。読後の満足感が乏しいのは、作品が不安定だからだ。

しかし、『後宮小説』は違う。何が違うかといえば、おそらく作者が真剣に大法螺を吹いているからだ。しかもその法螺は、自前の風呂敷に程良く収まる。

単行本初版に添えられていた、ファンタジーノベル大賞選評にもあったが、ファンタジーとは幻想であり無限なのだ。他者の世界をかい摘まむのではない、力技の嘘。これこそ『後宮小説』を「砂上の楼閣」ならぬ「浮遊宮殿」たらしめる原動力なのだ。

・「笑える!ありえる!?
末期の王朝。皇帝に新しく迎えられた妃は、どういうわけか、健康と元気だけがとりえの銀河でした。しかし、健康と元気も、ここまで突っ走ると、才能なのかもしれません・・・。

ファンタジーが、ありそうでなさそうに、なさそうでありそうに書くものだとしたら、これはまさしく「ファンタジー」そのものです。

古代中国に、本当にこんな歴史があったんじゃないかと、はっと我に返って世界史を確認するまで、本気で信じ込みそうです。荒唐無稽なエピソードが、たくさん、たくさん、入っているのにもかかわらず、です。そのくらい「もっともらしい」お話です。

荒唐無稽で笑えるのに、なぜか最後には感動までしてしまう。最高です。

最近文庫版も出たようです。

後宮小説 (新潮文庫) (詳細)

谷川俊太郎詩集

・「詩集たるもの、こうでありたい
重厚な装丁。素晴らしいとしか表現しようがない。私は全作品を買えないので、このシリーズで揃えようと決意しています。今は3冊出てますね。

谷川俊太郎詩集 (詳細)

新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

・「日本文学史上に残る傑作です。
銀河鉄道の夜。これは大人のための童話だ。もちろん、すべての人に読んでもらいたいけど。

なぜ、この作品が物悲しいのか?ジョバンニが自己覚醒する心の旅に賢治は、我々を誘う。他人のために死んだ者たちが次から次に列車に乗ってくる。ジョバンニは、人々を苦しみから救うために天より遣わされたことを悟る。

「僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」美しい話でありながら、壮絶な決意にいたる。ジョバンニにとって本当の幸いとは、「他人のために死ぬこと」だった・・・。

オブラートに包んだ語り口調の中に、賢治が達した精神の高みを是非受け止めてみて頂きたい。

・「永遠に。。。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう」

宮沢賢治の童話が大好きです。特に「銀河鉄道の夜」は何度も何度も読み返し、そのたびに、話の美しさと哀しさ、せつなさに心がギュッとつかまれた気がしてしまいます。

賢治が「銀河鉄道の夜」を書き始めたのは、実は妹のとしさんの死がきっかけだそうです。

弟妹の中でも1番気持ちが通じ合い、良き理解者だった妹との別れ。。。どんなにか辛かったことでしょう。その悲痛な気持ちは詩にも書いています。

たぶん「銀河鉄道の夜」を書くことで、賢治は自分の心を癒そうとしたのかもしれない。この話の中のジョバンニとカムパネルラは、まさしく妹としと賢治の関係としか思えません。

だからこそジョバンニの、どこまでも、どこまでも一緒に行きたかったという叫びが胸を打ちます。物語全般が透明な美しい表現だけに、このせりふが心に残ります。

心が乾いてしまったとき、そして大事な人との別れからどうしても立ち直れないとき、この物語はきっと癒してくれるでしょう。

・「循環と賢治の宇宙
「ほんたうのほんたうの神様」へとつながるレールが、銀河に架かっているのではないだろうか。地上で亡くなったものは、切符をもらい、そのかみさまの許へ旅立つのだ。

賢治のトシとの別れは、ジョバンニとカンパネルラとに託され、美しい「星めぐりの歌」に織り込まれる。

星の輝きは、いのちの燃焼に通じる。彼の思想の一端が、ここに顕れている。

・「本当に素晴らしいです。
僕は、この年になって、やっとまともに宮沢賢治に触れることができました。中学生の頃に夏休みの読書感想文の宿題のために「ポラーノの広場」を手に取ったことはあったのですが内容は丸っきり覚えていませんでした。多分、そのころの自分には少し難し過ぎたのかもしれません。

中学生の頃の自分に難しかった理由は、あまり句読点や漢字を使わない文章にあるのかもしれません。これは作者のオリジナルの文章を忠実に伝えるために、校正などを施していないからであると思います。これによっても彼の作品の素晴らしさが更に伝わってくると思います。

彼の作品の一つ一つは本当にきらびやかで彼の言葉を借りるならば「金剛石」のような作品の数々です。

どれも、ちょっと切なく、ちょっと悲しいような読後感を残す作品の数々ですが、本当に素晴らしいです。

彼の作品は「幸」という言葉を一般的に使われている「幸福」や「幸せ」といった言葉を用いるのではなく「幸い」として使います。「銀河鉄道の夜」の中で、「ジョバンニ」が「カムパネルラ」に決意表明する「本当に、みんなの幸いのためならば、僕の体なんか百ぺん灼いてもかまわない」という台詞には本当に感動しました。丁度タイミング良くTVで「銀河鉄道の夜」の劇団一座のドラマを放送していて、この台詞を「ジョバンニ」役の女の子が、声を高らかに話していたときには涙してしまったほどです。

彼は22歳のときに「あと15年ほどしか生きられないだろう」と言ったそうですが、その言葉通り37歳で短い生涯を終えてしまいました。僕は、もうすぐ、彼の生涯の年齢を超えてしまいます。でも本当に彼の作品に知り合えて良かったです。この作品を強く勧めてくれた友達に感謝しています。

・「「ほんとうの幸せとは何だろう」と考えさせる賢治の代表作
 思えば、子どもの頃に読んだときは「星座をかけめぐる幻想的でかなしい汽車旅物語」といった程度の印象だったような気がする。賢治の享年を過ぎた今、改めて読み返すと、この作品に込めた賢治の考えの深さに思わず背筋が伸びた。 賢治は、岩手県農民のくらしを何とか良くしようと様々な社会実践を試行した37歳の短い生涯の終着駅にむかう病床の中でこの童話を書いている。縦糸は生と死、横糸は宇宙とふるさと。うつくしさとかなしさが交差する風景の中を、様々な人との出会いが少年に影響を与えながら夜汽車が立体的に進む。 賢治の没後に出版されたこの童話は、「ほんとうの幸せとは何だろう」と考える世界中の人々の魂を揺さぶりつづけている、日本を代表する童話作家のまぎれもない最高傑作である。

新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫) (詳細)
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