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▼光の方へ手を翳しサギサワを想う・・・:セレクト商品

ウェルカム・ホーム!ウェルカム・ホーム! (詳細)
鷺沢 萠(著)

「いってらっしゃい」「生きる喜びを感じさせてくれる作品。なのに…」「とても嬉しくなりました。」「「おかえりなさい!」」「ひとそれぞれ」


少年たちの終わらない夜 (河出文庫―BUNGEI Collection)少年たちの終わらない夜 (河出文庫―BUNGEI Collection) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「ティーンエイジ・サマー」「最初に読んだ鷺沢作品です。」「でもね…。」「懐かしさを感じた」「終わらないと思ってた夜」


葉桜の日 (新潮文庫)葉桜の日 (新潮文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「鷺沢の最高傑作」「レベル高い。」「追悼」「ちょっと、せつない。」「自分を支えるものってなんだろう?」


夢を見ずにおやすみ (講談社文庫)夢を見ずにおやすみ (講談社文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「亡き父を夢見る萠の重いけどさわやかな表題作」「追悼」


過ぐる川、烟る橋 (新潮文庫)過ぐる川、烟る橋 (新潮文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「巧い、素晴らしい。」「またしてもやられた!!」「人生のあれやこれやを、運命という言葉で片付けない決意を物語の底に感じる」「<人工的二分>という問題」「今後の貧困の民のための出世譚」


失恋 (新潮文庫)失恋 (新潮文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「「鷺沢ワールド」健在」「人生は失恋の連続だ」「人の心とはかくも狡猾さと弱さに翻弄されるものなのか?」「美しい文章。文学的な作品。」「失恋前の女性におすすめ」


帰れぬ人びと (文春文庫)帰れぬ人びと (文春文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「満足感」「胸に残る。」「若い感性に触れる」「早熟な才能の開花を楽しむ」「青春って暗いものさ」


駆ける少年 (文春文庫)駆ける少年 (文春文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「駅で、ぼーぼー泣きました。」「息子にとって父を知るということの意味を問う作品」「読みにくくはない。」「生きることの本質」「なぜ少年は駆けるのか」


大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫)大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「映画と違います!」「「同じ方向を向いていない愛」は壊れるしかないのか」「真っ白な心で、まず読んでみてください。(先入観を持たずに)」「クリスマスが近くなると思い出す一冊です。」「「同じ方向を向いていない愛」は壊れるしかないのか」


海の鳥・空の魚 (角川文庫)海の鳥・空の魚 (角川文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「これは」「教科書に載せるべき」「グレイの層を読んで・・・」「ちょっと前に進めなくなった時に読む」「心温まります!」


愛してる (角川文庫)愛してる (角川文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「やさしいひとたち」「この作者のことは全然知らなかったのだが、」「この作家の、今後は気になる」


F―落第生 (角川文庫)F―落第生 (角川文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「救いのある作品」「元気になれる一冊」「落第生である自分のことかと思いました」「恋愛と仕事、両方は成功できないのがサダメ?」「F」


バイバイ (角川文庫)バイバイ (角川文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「心の底から傾倒してます!」「作者のやさしさが伝わってくる」「人を傷つけないように」「作者自身の超越のために渾身の力で書かれた」「追悼」


奇跡の島 (ロマン・ブック・コレクション)奇跡の島 (ロマン・ブック・コレクション) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「どうしようもないけど」「追悼」


さいはての二人 (角川文庫)さいはての二人 (角川文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「「生命」を問う」「純粋な恋の物語」「「家族」を描いてきた鷺沢萠らしい作品集」


スタイリッシュ・キッズ (河出文庫)スタイリッシュ・キッズ (河出文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「"I miss you"とはどういうことか」「訳も分からず読みふけったものです」「ありのままの視点で描かれた青春もの」「追悼」「光も影も、キラキラなんです。」


ハング・ルース (河出文庫―文芸コレクション)ハング・ルース (河出文庫―文芸コレクション) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「お気楽に出来ない人に…」「いい本です」「テキトーでいいかぁ」


イマージュイマージュ (詳細)
グールド(グレン)(アーティスト), バッハ(作曲), スクリャービン(作曲), モーツァルト(作曲), スカルラッティ(作曲), プロコフィエフ(作曲), ブラームス(作曲), ギボンズ(作曲), ハイドン(作曲), C.P.E.バッハ(作曲), ワーグナー(作曲)

「これからグールドをきかれるかたにお薦めです」「グールドのバッハ以外の曲の演奏への誘いとしてDISC2は好企画」「聴覚も視覚も満たされるCD」「至高の指先。」「グールドファン必聴!」


君はこの国を好きか (新潮文庫)君はこの国を好きか (新潮文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「韓国に溶け込めない在日の方へ」「考えさせられる青春小説」「この国は女神を前にしたような」


ビューティフル・ネーム (新潮文庫)ビューティフル・ネーム (新潮文庫) (詳細)
鷺沢 萠(著)

「鷺沢萠は文壇の山口百恵である」


愛しのろくでなし愛しのろくでなし (詳細)
パム ヒューストン(著), Pam Houston(原著), 鷺沢 萠(翻訳)


明日がいい日でありますように。 サギサワ@オフィスめめ明日がいい日でありますように。 サギサワ@オフィスめめ (詳細)
鷺沢 萠(著)

「いままでのHPのまとめとは違う構成」


▼クチコミ情報

ウェルカム・ホーム!

・「いってらっしゃい
突然の訃報に驚いた。最近ご無沙汰していた彼女の新作をあわてて手に入れた。「フツーの家族って、なに?」と帯に記されている。この時代、家族の形は様々。そんなことは情報として知ってはいても、キモチには響いてこない。何がフツーなのか。何がフツーじゃないのか。

実に彼女らしい作品です。全然器用ではなくてうまく立ち回れなくて壁にぶつかって底に沈みながらも、ふと光が射し込む瞬間。そんな一瞬をつかまえている。希望は絶望につながっているものかもしれないけれど、それでもたとえ一瞬でも希望が希望のまま光り輝いているその瞬間を。

泣き笑いみたいな顔をした登場人物の向こうにもまた、同じ表情をした作者の顔があるのだろう。

「おかえりなさい」の温かさを教えてくれるこの本をありがとう。いってらっしゃい。ご冥福をお祈りします。

・「生きる喜びを感じさせてくれる作品。なのに…
いわゆる普通の家族像から外れた「家族」についての2本の中編からなります。初期の「青春もの」を除くと、どちらかと言えば重苦しく切ない語り口が持ち味だった彼女が、明るく痛快な新しい路線を生み出したと言えるのではないでしょうか。読後、「この感じでもう数作読みたい!」と思いました。

なのに、彼女は帰らぬ人となってしまった。残念で、悔しくて、気持ちの持って行きどころがありません。この明るさを読んだ後だけに余計辛いです。

・「とても嬉しくなりました。
こんなに気持ちのいい家族の物語、久しぶりに読みました。形としては全然、フツーじゃないけれど、みんながお互いを素直に必要としている、2組の家族の物語。どちらかといえば、困難な状況が勝っているのですが、ここに登場する“渡辺毅”も“児島律子”も、実にそれを自分の血肉にしています。彼らが、始めからそうであったわけではなく、結婚に失敗して、即ちフツーのカタチの家族を作り上げることに失敗しているからこそ、得たもの。今はそれを素直に認めて、なお、家族への愛を捧げているところが気持ちいいのです。

会話もテンポよく、バブル以後の日本人の働き方や、ものの考え方を渡辺毅、児島律子に反映させて、現代社会のリアルさを描いています。また、どちらにも、子供が登場して、子供へのまなざしがとってもいいです。鷺沢さんの「子供は愛されるべき、守られるべき存在である」という想いが、伝わってきます。血の繋がりがなくとも、必要とする人とされる人がいて、双方が満足する関係って、なんていいのでしょう。読み終えたとき、思いました。「ワタナベタケシ、コジマリツコ、よかったね!そこに、いるべき人で在ることができてよかったね。おかえりなさいって大きな声で言ってね。」

・「「おかえりなさい!」
 あなたには、そう言ってくれる人がいますか? 帯に「ふつうとは少しカタチが違うけど、とっても温かいふたつの家族の情景を描いた心ぬくぬくの物語」とあります。いわゆる「ふつうの家族」を持ってはいない男性と女性が両編の主人公です。

 久しぶりの小説に期待して読みました。時々吹き出しながら、この作品に出てくる人々に私の心も本当にぬくぬくになりました。とくに、ノリ。 ぜひ、読んでみてください。

 レビューを投稿しようとした際に、彼女の訃報を知りました。この作品が最後の小説となったことが、残念でなりません。「フツー」というカテゴリーには当てはまらずその存在を無視されてしまいがちな人々の姿を普通の存在として、おもしろく、温かく描く物書きを彼女の他にほとんど知りません。一番好きな物書きさんでした。心から、ご冥福をお祈りします。

・「ひとそれぞれ
私はシングルマザーです。

最近は離婚する人も増えてシングルマザーなんてめずらしくない、と皆言いますが、子供の運動会、日曜日のショッピングセンター、卑屈になる理由はいくらでもあります。

でも、”ふつう”じゃなくたっていいじゃん!”ふつう”じゃなくたってあんた幸せじゃん!

そんな風に思わせてくれる本です。

鷺沢さんが大好きです。

もう二度と新しい彼女の文章は読めないのだ・・・と思うと泣けてきます。

ウェルカム・ホーム! (詳細)

少年たちの終わらない夜 (河出文庫―BUNGEI Collection)

・「ティーンエイジ・サマー
鷺沢萠の本が好きでよく読んでるけど、彼女の作品で初めて読んだのがこの本だった。収録されている作品は全部良かったけれど、特にティーンエイジ・サマーが気に入って何度も読み返した。自分が主人公と年齢が近いということもあり、10代最後の夏をテーマにしたこの作品には共感や憧れ、焦燥感などを抱いた。

彼女の描く世界はどこか屈折している印象を受ける。でもやはり人間とは屈折した生き物であることは間違いないし、そういったリアルな描写に魅力を感じる。

・「最初に読んだ鷺沢作品です。
僕は著者より3年上の世代なのですが、最初に表題作を読んで、東京にはこんな生活をしている高校生がいるのか、と世間知らずの僕は思ったものです。でも、作品全体を貫いている「食うか食われるか」といった、ピリピリした空気みたいなものは確かに自分にも経験があり、現実味というか、共感を覚えました。

以来、鷺沢作品を読み継いでいます。というよりも、僕が小説というものをまともに読むようになったきっかけのような本です。

・「でもね…。
4年くらい前?にタイトルにひかれて買いました。一気に読みました。共感できました。作者は青春時代に思い入れがあるのかな?と今読み返すと思います。でも、ガラスのような透明感のある感触は大好きです。この感触は、作者にしか出せないと思った小説でした。切ない気持ちも感じられる小説です。良いと思います。

・「懐かしさを感じた
4~5年前そのカバーの美しさに惹かれ購入した本書に出てくるその若者たちの世界観にひき込まれて一気に読んだと思い出しました小説の醍醐味はいかにその世界に入りこめるかその醍醐味が十分に堪能できる作品これはやはり十代の人たちに読んで欲しいと思います

・「終わらないと思ってた夜
あの頃は翼があると信じてた

いや、無くても飛べると思い込んでいた

いつまでも終わらないと思ってた

いつも拭い去れない不安が絶えずあった

銀河の拡がりを感じてた

少年たちの終わらない夜 (河出文庫―BUNGEI Collection) (詳細)

葉桜の日 (新潮文庫)

・「鷺沢の最高傑作
文句無く、鷺沢萠という作家の最高傑作。・・・に「なってしまった」。「葉桜の日」「果実の舟を川に流して」ともに完成度は高い。「川べりの道」から続く喪失感を、ナイーブな青年の目を通してポジティブに描いている。たくさんの、生きることを真摯に捉えた言葉たちで溢れています。

・「レベル高い。
 解説の通り、年齢を感じさせない作品である。この作品を当時二十一、二で書いたとはとても思えない。いや、老成しているとかじゃなくて。 表題作がとにかく素晴らしい。典型的な自分探しの話。自分の出生も、自分の親が誰かも知れない、自分が誰だか、何処から来たのかわからない少年が主人公。漠然とした不安、自分の過去、あるいは拠り所のようなものを失ってしまいそうになる不安感と闘いながら、過去を模索し始める主人公の姿を通して物語は進む。暫定的に与えらた答えや、真実のことは明らかにしないほうがいいだろうが、やけにすがすがしい。 

・「追悼
「新潮」に発表された二篇の中篇を収める。在日の話が登場する表題作を契機として、この鷺沢萠という作家は従来からの家族のモンダイに、出自のモンダイが加わり、作家としての円熟期に入っていく記念碑的作品集である。

先に発表された「果実の舟を川に流して」については主人公は母親の死により、一流大学から就職という道を絶たれ、

アウトローの集まる店のアルバイトに身をやつしている。引き続き他人との差別化の手段としての喪失感と、いわゆる「フツーの社会」からの疎外感は健在、情景の一つ一つは極めて鮮烈なイメージを残すが、ロシア人・米兵・華僑といった道具立てはややありきたりで弱い。

しかし第104回芥川賞候補作にもなった表題作「葉桜の日」については

作家として、一歩踏み込んだ感が強い。それは、それまでの彼女の創り出す主人公が、どちらかといえば自分から壁を作るタイプの人間だったのに対して、在日という要素は、生まれてきた時からの逃れ得ない宿命として原罪の如く、絶対的に壁を持たされている人物を産み出すからだ。その運命を受け入れる主人公のように、

花びらを散らせたのち、若葉を芽吹かせる葉桜は、何かしらの決意のようであり力強く、美しい。

・「ちょっと、せつない。
表題作『葉桜の日』と、『果実の舟を川に流して』の2編収録。

『葉桜の日』自分のアイデンティティーを探っていくことによって、意外な事実を知ってしまう青年の話。「僕は、ホント誰なんだろうね?」それを知ることの底なし感覚と、小さなしこりが大きくなっていく不安。知ってしまった後の、脱力感・・・。やりきれなくなるけれど、読後、清々しさが残る。

『果実の舟を川に流して』オカマバーでバーテンをしているケンケンが見つめる日向と日陰。なぜ、日陰で生きていくのか。日向って、どういうところなのか。漠然と、日常生活を送っていて引っ掛かるところを巧みに描いた小説。青春小説とあるけれど、全ての年代で各々受け止められる類のものだと思う。

・「自分を支えるものってなんだろう?
「葉桜の日」わが子は見守りたい、けれど我が身も守りたい。そんなとき母親は子どもにどんなことをするのだろうか。小説は、自分の人生の当初の記憶が定かでなくて、出生についてよくわからない、そんな青年を中心としたファミリーの物語だ。母親のことなんかあまりこだわらないようにしたいのだが、そういうわけにはいかない。一般的には出生の経緯などは親や親代わりの人が解決してくれるものだ。しかし、親代わりのような女性は出生の地を教えてくれはしたのだが、親らしい人はなかなか確定しない。青年は、母親は誰かなんてほのかな熱を抱いているだけで、それで終生通してもよかった。だが、出生の地に連れてこられ口火が切られると、もはやなにが何でも真実を究明せざるを得なくなった。「俺の母親は誰だ」もちろん、それが解決したら次の言葉は当然「俺の父親は誰だ」そして「俺の先祖にはどんなやつがいるのだ」こんな望みは当面ぜいたくなことだろう。まずもって自分の母親が知りたい。自分の子どもがこんな悩みを持つことになるのが分かってはいても、母親は正体を明かしたくないこともあるのだろうか。それはなぜだ?力の入った作品である。



「果実の船を川に流して」ただいま「キャリア教育」というものが世の中にはびこっている。クソくらえってな感じだが、自分の眼前に現れた男は大学をとにかく入って出たが、なにをしたらいいのか分からない。さしあたって東南アジアを一周してきた。これは小説ではなく現実なのだが、小説の主人公も同様で、帰国してからゲイバーのバーテンダーになった。そしてママの世代のファッションリーダーだった男の発狂を知って、ママはとてつもなくうちひしがれる。今どきの青年よ、ママみたいに、心の芯から支えてくれる人物はいるか? 簡単に怪しい教団のエロいカリスマにだまされないように、こんな人物を探求して見たらいかがであろうか?

葉桜の日 (新潮文庫) (詳細)

夢を見ずにおやすみ (講談社文庫)

・「亡き父を夢見る萠の重いけどさわやかな表題作
三篇所収。「今日も未明に電話は鳴った」は初期の名作「ハング・ルース」に近い時期の作品。「あなたがいちばん好きなもの」は「私はそれを我慢できない」という在日韓国人の目から見た韓国批判という重い作品の前に書かれたもの。いずれも軽い。韓国を行き来する狭間に書いた「書き流し」のようだ。父や夫の愛人がおもしろく描かれている連作のようなもの。ところがこの2編にオチをつけるような「夢を見ずにおやすみ」は重い。美術館を作ろうとして家業を倒産させた夢多き父が描かれているが、同時に許せないような身勝手な夫を受け入れられるようになる。それは夢見ることを捨てることによって自分が変わったからだ。夢見ることは楽しいが、現実を破綻させる原因でもある。夢を見るな。そうするとグッスリ眠れるぞ。そういっている表題作である。

・「追悼
自分が話すにふさわしくない相手と、何故か話すこととなってしまった人間をそれぞれ主人公とする3篇の連作短編集である。その相手とは、父親の若い愛人/夫の元愛人/死んだ父親の懇意にしていた店の女性/と一筋縄ではいかない。

3人ともいわゆる「フツーの」生活を営んでいる人たちだが、予期せぬ、異物とも言える他者の進入を受け、

築きあげてきた生活に少々の亀裂を感じる、という筋立て。世間で言えば「ズレ」ている人たちに対し、何らかの憧憬を抱きながらも、そこからその感情の発展性がなく、だからそれがどうしたの?と読後言いたくなる。

唯一、第一篇「今日も未明に電話は鳴った」に登場するハマジュンというタレントの卵が魅力的。

ストーリー的に後半やや破綻しながらも、ラスト、彼女の台詞だけで情景を立ち上がってくる様は言いようもなく魅力である。

夢を見ずにおやすみ (講談社文庫) (詳細)

過ぐる川、烟る橋 (新潮文庫)

・「巧い、素晴らしい。
現在と過去が交互に進行する形のストーリー。現在の方は、本の最初から終わりまでで、わずか数時間進むだけなのに対し、過去の方は、20年以上の時を急速に駆け抜けて、本の最後で見事に現在とシンクロする。すべての謎が最後に解ける瞬間は快感そのものだった。しかも、途中、少しの中だるみもなく、読み手を引っ張ってくれた。内容はもちろん楽しめましたが、著者の「技」にも感慨を覚えました。

・「またしてもやられた!!
どうして鷺沢さんはこんなに人を切なくさせるのがうまいんでしょうか?読み終えた後しばらく現実にもどれませんでした。

・「人生のあれやこれやを、運命という言葉で片付けない決意を物語の底に感じる
 中卒で上京し中華料理店で働く脇田篤志。同じ店で働く先輩の波多江勇。そして波多江と一緒に暮らすユキという女。大柄な体を持つ脇田は波多江の勧めでプロレス界入りを決める。そんなある日、波多江が脇田にユキをいっとき預かってほしいと頼み込んでくる…。

・「<人工的二分>という問題
 本書は明らかに良書の分類に入りますが、欠点が皆無というわけではありません。この著者は昔から人間を二つのタイプに分ける悪癖があるのですが(例えば「<大人>なのに恋を知らない<大人>」と「<大人>だから恋を知り尽くしている<大人>」の区別)、この手の区別はあまりにも不自然或いは人工的過ぎるのではないでしょうか。実際の世の中を生きている人間はこんな単純な二分にきれいに収まるはずがなく、本書で人工的に区分された人間たちは生き生きとしているというよりは、単に与えられた役割を完璧に演じているだけのように見えてしまうのです。従って、この点が本書(或いはこの著者の作品)の難点だと思います。

・「今後の貧困の民のための出世譚
 冒頭、博多の繁華街の描写。無数のネオンが天井の暗闇を押し退け、ドームのように輝いている。そのネオンの中でも特段に輝いて目立つのが「雪印乳業」。 まさか、近い将来、読者のために注釈が必要なときが来るだろうなどと、作品が発表された時は作者も読者も想像がつかなかっただろう。 世界は固定されてはいないのだ。けれど文学として描かれた作品世界は決して古びない。 みんな勢ぞろいして富裕の民になるのかと思われた時代はあっというまに消え去り、台頭してきた格差社会によって、再び日本には大勢の貧困の民が現出してくるだろう。 こんな予感のする時代に本作品は予言の書のようにピッタリ当てはまる。格差社会になればなるほど、出世譚は輝き、読者を感動させてくれる。 本書はしかし、じつに渋い成功物語だ。ステージでヒーローとしての活躍が描かれているシーンはほとんどないのだ。すべてステージの外のことばかり。ひょっとしてこれはほんとうに出世譚なのか? 主人公が金持ちになったんだからそれは間違いない。けれど出世譚には影とともに光がなくてはならない。普通、影の部分が忘れられる浮薄な物語になりやすいが、本作品は光の部分を忘れて影の世界ばかりが引き出されている。 言いたいことがいっぱいあって、それに頭の回転もいいからだろうが、どうもリード文や要約文を読んでいるような文体なのだ。おかげで、重たさ、粘っこさがなく、後味の悪さがかもし出されないのはもっけの幸いか。 珍しく「(在日)韓国人」が登場しない。鷺沢文学の新境地ということだろう。

過ぐる川、烟る橋 (新潮文庫) (詳細)

失恋 (新潮文庫)

・「「鷺沢ワールド」健在
しんどくってビリビリしました。「こんなはずじゃーなかったのになぁ。」と思いながら、毎日をぐだぐだと過ごしている私にとっては、もっと真剣でぴりぴりしていた自分を思い出し、とてもせつなくなりました。 多くの男性にも読んでいただきたい本です。誰かに傷つけられたと感じでいる人にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。

・「人生は失恋の連続だ
「失恋」とは、恋人だけにするものだろうか?自分の思いが相手に届かない、という意味で考えてみると、私達は、友人、家族、仕事相手、時には通りすがりの人にまで失恋をしている、と教えてくれる連作集。

「欲望」は、バブルに踊って流されて落ちていく男を救おうとする元妻と友人たちの物語。友情と愛情と自己保身の狭間で揺れ動く人間達の感情がリアルにえぐり出され、それだけでもさすがの筆力・・とうならされるが、圧巻はラスト。純粋に、誰かを救いたいと思いながら、時に無意識に人を踏みつけてしまう人間という生き物の矛盾をまっすぐに見据えている。誰のことを責めることもなく、喪失感と冷ややかな寂しさをかみ締める。失恋とは、相手の存在と現実をそのまま受け入れることだ、というやるせなさが伝わってくる。

鷺沢 萠は、人間の弱さやずるさに文句を言いながらも、結局はすべてを赦してしまう優しい人間を書くのがうまい。矛盾と喜怒哀楽を内包した人間という存在が好きなのだろう。もう彼女の新しい作品を読めないのが、本当に寂しい。

・「人の心とはかくも狡猾さと弱さに翻弄されるものなのか?
 恋とは畢竟、不条理である。小池真理子さんのあとがきの冒頭の言葉が身に染みる。 叶わぬ思いに身を焦がし、無償の愛を気取りながら、本当は恋焦がれた相手を激しく求めて止まない。  誰も他人どころか自分自身すら救うことは容易ではない。救いたいという欲望に翻弄され、願い叶わず、不可能であることを知ることの方がはるかに多い。 ひとときの慰めなら、どこにでもある。誰にでも見つかる...しかし...。 人の心とはかくも狡猾さと弱さに翻弄されるものなのかと...やっぱり思う。矛盾だらけだ。惚れた弱みなのだ。この弱さ、その矛盾こそ、きっと恋そのものなのだ。 齢を重ね、理解が深まる。ここに収められた4つの短編は人情話でもある。  鷺沢さんはこういうストーリーを書かせると実に切なく、うまい。早すぎる死が本当に惜しまれる。 情に流され、惚れた弱味を見せる主人公に感情移入しつつも、どこかで醒めた目で登場人物を見ている自分の恋心を確認している。  やはり恋とは畢竟、不条理なのだ。そこでまた、小池さんの言葉が再び身に染みる。

・「美しい文章。文学的な作品。
鷺沢萠(さぎさわめぐむ)さんの作品を読んだのはこれが初めてでしたが、一文読むたびに心に染み入ってくる日本語に、「ああなんて文章なんだろう」と、その感覚を一度一度確かめつつ丁寧に読みました。急いで読んでしまうのがもったいないくらい、詰まった文章。調べてみると、長編を得意とはしないようで短編の作品が数多くあります。気持ちをこめて一つ一つ作品を作り上げるために、行き詰って亡くなってしまったのでしょうか。とても残念です。書き出しがとても素敵です。

・「失恋前の女性におすすめ
恋愛中なんだけど、出逢った頃の情熱が失せ惰性に変わりつつある。そんな女性に読んでもらいたいです。惰性を吹っ切るきっかけになる1冊だと思います。

失恋 (新潮文庫) (詳細)

帰れぬ人びと (文春文庫)

・「満足感
町の色、におい、手触りなんかも感じてきそうなほどリアルで具体的な風景描写。そしてもちろん登場人物たちの一瞬ごとの感情にうなずいたり溜息をもらしたり、四作とも夢中で読んだ。あっという間に読んだのに、随分長い時間その世界に浸っていたような、そう、これは良い文芸映画を見終わった時のような満足感だろうか。

・「胸に残る。
 雨の日の町の匂い、砂埃が映し出す滲んだ夕日、コンクリートの階段・・・・。作中に出てくる風景が妙にリアルに頭に浮かんだ。「そこ」に確かにいる人たちの感情が一つの景色として浮かんでくるようだった。この本を読んでいて感じた多くは怒り、だった。苛立ちという方が近い。どうしてそんなことになってしまっているのか。登場人物に対するものか、それとも他の何かなのか、わからないままもやもやした気持ちで読み続けた。そして読み終わった後はどうしてこんなに人の背景や生活を描き出すのが巧いのだろうと息をもらした。複雑な感情の中で生きる人やその環境といったものを深く感じられ、素直にいい作品だと思った。

・「若い感性に触れる
鷺沢さんが亡くなってからもう3年も経つんですね。

本書は処女作にして文學界新人賞受賞作である「川べりの道」を収録した中編集。

本書の魅力はなんと言ってもその感性のみずみずしさと文体のすがすがしさですね。特に「川べりの道」は高校生の時に書かれた作品だけあって、やや若さが残るものの、イヤミの全くない気持ちの良い作品です。鷺沢さんの後期の作品しか知らない人には、かなり新鮮に感じられるでしょう。

ただ、夭折した彼女の一生を思うと、つい各作品に通底する人生に対する直感的な不安のようなものも感じずにはいられないのですが・・・。まあそれは深読みのしすぎというものでしょうか。

いずれにしても、しっかりした魅力的な中編集だと思います。

・「早熟な才能の開花を楽しむ
鷺沢萌の初期純文学短編集。1987~1989年に発表された4編が、発表順に並ぶ。最初の「川べりの道」は文章・構成・内容ともに細かいほころびが見えて、まるで名作文学のfakeみたいだと思っていたら、高校3年のときの作品であった。そう思うとこれは大した作品である。そして、その後次第に作者が腕を上げていく様子が、本書を読み進むにつれて実感できる。芥川賞候補になった表題作「帰れぬ人びと」(最後に収録)にも、結末の運びなどにまだ幼さが残るけれど、作者の成長を眺める読み方をすれば十分に楽しめる。若者群像を描くときの生き生きとした筆致はまだ完成していないけれど、彼女にはこれだけの基礎があったのだ。実力もないのに目新しさと勢いだけで登場する数多の若手文章屋とはモノが違うのだということを印象づける一冊であった。

・「青春って暗いものさ
「帰れぬ人びと」を読み終わってみれば、村井一家だけではない、帰れるところを持たない家族は多いと気づく。それが現代なのだろう。幸せだった家族を現代人は多く喪失して生きている。気を取り直して、新しい幸せを求めて生きていくしかないのだ。「村井」がやけに女性っぽい言葉遣いなのは意図したものか気になった。

本作品集はテレビドラマにでもなりそうな「かもめ家ものがたり」以外はみな暗い。その暗さは日本の小説の伝統の路線上にある正統な暗さだ。本作品集で自分の背負ってきた暗さをトコトン追求し決着をつけたのだ。以後の作品は、この正統性から脱皮して、新しい手法による新しい文学を作っていく。キャピキャピな夢多き女子高生を描いた作品を求めて本作品集を手にした人々には失望を与えるといっても過言ではない。けれど日本文学が明治以来のテーマとして俎上に載せてきた「家族」を真正面から切り込み、「帰れぬ人びと」というコンセプトを提示したのは大きな成果ではないだろうか。結局、芥川賞を受賞できなかったのは、正統性へ止めを刺したことへの驚愕と羨望による文壇からの復讐だったのかもしれない。

帰れぬ人びと (文春文庫) (詳細)

駆ける少年 (文春文庫)

・「駅で、ぼーぼー泣きました。
タイトルどおりです。いや、おはずかしい。通学の車中で読んでいたのですが、引き込まれてしまって、駅のホームで一気に読んでしまいました。それだけ力のある短編集です。(講義はブッチ・・・。それより重要な事が書かれている書なのです)

中でも、表題作の『駆ける少年』は鷺沢萠氏の代表作だと思います。

主人公が、亡父の足跡を辿り、自分と亡父の人生を重ね合わせ、亡父に疑問を抱いていたことへの答え(≒アイデンティティー)を模索していく内容。ミステリー仕立の構成で、これが絶妙。グイグイ物語に引き込む要素のひとつになっています。本作は、作者の私小説的要素が高く、鷺沢萠氏の父親を模索する様な内容になっています。

他にも、『帰れぬ人々』がその類で、そちらもあわせて読むと、より作品の彫が深く感じられると思います。

個人的には、狂気に満ちた『痩せた背中』にもドップリ魅せられました。

・「息子にとって父を知るということの意味を問う作品
 十年来、鷺沢萠のエッセイのファンでしたが、小説となると映画化された「大統領のクリスマス・ツリー」程度しか読んだことがありませんでした。今回改めて本書を手にしましたが、この短編集に収録された表題作はとても心に染み入る、読み応えのある作品でした。

 発表されたのは89年のことで、当時読んでいたらまた違う感慨を持ったかもしれませんが、社会人としてある程度の年月を過ごした今だからこそ、父親の人生について息子としてもっと知ってみたいというこの主人公の心が私にはとてもよくわかるのです。小説の中の世界に自分の気持ちがすっと入っていけました。 

 恵まれない家庭環境の中で孤独感にさいなまれていた父が、だからこそ「できる限りのことをまわりの人間にして」やろうと行動していたことを知り、息子の龍之は失った父の大きさを改めて感じます。一人の名もなき人間が生まれ、生き、そして逝く。そのわずかな時間の中で、何かを遂げようと努めていた父の中にあった孤独。それを誰にも気取られぬまま逝った父。 小説の終わりで、龍之が今また父の背を追うかのように町の人ごみの中に紛れて行く場面の描写は秀逸です。

 こうした味わい深い短編を読むというのはささやかな喜びです。誰かにこの喜びを知らせたくなる小説だとも言えます。 そしてその喜びを作者の生前に知ることが出来なかったことを悔やむ思いが今の私の心にはあります。 

・「読みにくくはない。
 収録されたどの話も、日々を生きていくしかない人たちの切羽詰まった感情が伝わってきた。正確には周囲の環境によって左右されていく生活。それでも読んでいて苛々することはなかった。その背景に夏という季節があるからだろうか、蒸し暑さに流す汗のような空気が全体に感じられる気がした。作者の環境・感情描写がよくできていて、どうしても諦めきれない事柄が鬱積されている人生の一つが、短い話の中に凝縮されている。鷺沢萌の力量を感じるのにも良い作品だと思う。

・「生きることの本質
ドラマティックな展開でもなく、また、華やかなお話でもなく、本作品収録の3編は、多くの人が生きていく上で感じる、やるせなさや、もやもやした気持ちが描かれいます。

特に、1作目の「銀河の町」では、生きている実感を過去に置き去りにしてきた人々の喪失感が、なんともうら寂しく、それだけに切実なリアリティをもって表現されており、普段脳天気に生きている僕でさえ、生きることの本質とは何か、と考えさせられました。

華やかな物語もよいですが、たまには寂しさや自分の中のもやもやした感情と向き合える本作品は読む価値が高い思います。

・「なぜ少年は駆けるのか
「駆ける少年」所収の作品群は、彼女自身の問題と向き合って結晶したものなのか。「あとがき」には、鷺沢は父の使っていたペンネームだと告白している。「駆ける少年」で出てくる公木という姓も父のもう一つのペンネームだという。父へのこだわり、出生の秘密への探求という自身の関心事が本作品群創作のモチベーションになっていると思える。 三作品とも場所も人物も全く違う設定で、やるせない状況が描かれているが、必ず気のおけない友人たちが登場する。この友人たちに主人公が囲まれて心のつっかえ棒としていることが鷺沢文学の大きな特徴かもしれない。 また、難解さを恐れない幻想的な描写が「駆ける少年」冒頭に配置されているが、それは、大空や草原を軽快に駆ける少年を想像して読み始めた読者の誤解を解くために前もってお断りしているような衝撃的なシーンだ。作者自身の心理状態でもあるのでは? と読み手まであらぬ方面へシンクロして心配してしまう描写である。 その少年は、浮き板が沈まぬ前に次々と乗り移らねばならない強迫的な状況に追い込まれて駆けているのである。この夢、作者自身の夢と見た!

駆ける少年 (文春文庫) (詳細)

大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫)

・「映画と違います!
私は原作を読んでから映画を見たのですが、全然違います。私は断然小説派です。好きな人を思う苦しい心と、好きな人も自分も大切だから、強く生きる心の二つに悩まされている主人公。ひしひしと心にせまってくる悲しさ。こういう結末しかなかったのか、と思うけど、でもこの主人公にはこの決心しかなかった、と最後にはせつないけれど納得しました。何度も読み返した作品です。

・「「同じ方向を向いていない愛」は壊れるしかないのか
映画化されたようですが、あらすじをネットで見たところずいぶんと小説の内容とは違ってるみたいですね。小説は派手なシーンが少ない分、純粋に香子の幸せやせつなさがよく伝わってきます。

香子と治貴のような「同じ方向を向いていない愛」は破局するしかないのか。破局しなくても、もはやときめいたりするような性格のものではなくなっているのか。かなり考えさせられました。

このツリーって実在するんでしょうか。今度散歩がてら確かめに行ってきます。

・「真っ白な心で、まず読んでみてください。(先入観を持たずに)
私は「原作は原作、映画(ドラマ)化したら別物」と割り切って見る人間ですが、映画、正直がっかりしました。同時にやっぱりな…とも思いました。なぜならば、鷺沢小説の醍醐味は「表現の巧みさ」にあると思うから。それゆえに、この話の本当の面白さは小説(本)でしか味わえない。そう思います。

        かけがえのない相手と出逢い             支えあい     「一枚の布を織り上げるように」作り上げてきた           二人の"今まで"。

私は、結末は別れだとしても【出発の物語】だと思います。結末ではなく、そこに至るプロセスを描いたのがこの作品なのです。

結婚生活の経験があったからこそ書けた小説ではないでしょうか。【未来はわからないから、今を大切にする。】そう思いました。いま結婚されている方・恋人がいる方はぜひ読んで下さい。相手をギュって抱きしめたくなります。

・「クリスマスが近くなると思い出す一冊です。
“どうしてこんな事になっちゃったんだろう”ってことはしょっちゅうあるけれど、本からやるせなさを受けるなんて驚きでした。鷺沢さんの本は全部読んでますが、私はこれが一番好きです。私もとことん何かに打ち込んでやるぞという気持ちになり、実物のワシントンのクリスマスイルミネーションを見てみたくなりました。

・「「同じ方向を向いていない愛」は壊れるしかないのか
映画化されたようですが、あらすじをネットで見たところずいぶんと小説の内容とは違ってるみたいですね。小説は派手なシーンが少ない分、純粋に香子の幸せやせつなさがよく伝わってきます。

香子と治貴のような「同じ方向を向いていない愛」は破局するしかないのか。破局しなくても、もはやときめいたりするような性格のものではなくなっているのか。かなり考えさせられました。

このツリーって実在するんでしょうか。今度散歩がてら確かめに行ってきます。

大統領のクリスマス・ツリー (講談社文庫) (詳細)

海の鳥・空の魚 (角川文庫)

・「これは
 素晴らしい短編集。ほんのちょっと世の中からずれてしまった(1ミリくらい)の心の痛みと、そんな人たちがぱっと一瞬輝く瞬間を切り取った短編小説。 それはタイトルがすべてを包括している。お勧めです。鷺沢さんが自殺してしまった今、あとがきと群ようこさんの解説を読むと異様に胸にしみます。

・「教科書に載せるべき
もう載ってたりしますけどね。高校生がみんなこの本を読んで、共感してくれたなら。優しい人間になろうと思ってくれたなら。世界はきっと素晴らしくなる。そんな事を夢見て生きています。鷺沢さんもそんな夢を見て生きていたんでしょうか?短編集で読みやすいから、読者経験の少ない低年齢層に読んでいただきたい本です。プレゼントとかにも適していると思います。

・「グレイの層を読んで・・・
私は結婚を決めました。確かにどこにでもありそうな話しです。でも、あらためて、「あ~そういうことかぁ・・・」と思わせてくれる様な・・・。気持ちがふらつく度に、何度も読み返しました。私が自分の人生を決めた一冊です。

・「ちょっと前に進めなくなった時に読む
 初めて読んだのは高校生のとき。 同じことをただ繰り返すだけの毎日に、それに抗えない自分に、やり場のない気持ちを抱えるだけだったまさにその時、出会いました。 この本の主人公たちは、ちょっと世間からずれている何かにひっかっかていて、前に素直に進めない。 だけど、ちょっとした視点を変えるだけで、いやだった日常が変わってくる。そんな印象を受けました。 今まで友人2人にプレゼントとして贈りましたが、今でも時折読んでいることが、なにより嬉しいですね。

・「心温まります!
鷺沢萌のなかで一番好きな本です。 20個の短編集なのですが、中でも「東京のフラニー」は お勧めです! 「ああっそんなことあったなー」とか「そうそう!」と共感できる部分や、「懐かしい」と思える部分がたくさんありました。 又、短編集ごとに様々な情景が描かれていますので、読み応えがあります。

海の鳥・空の魚 (角川文庫) (詳細)

愛してる (角川文庫)

・「やさしいひとたち
「ファッサード」という酒場に集う仲間たちの物語。いろんな男、いろんな女がいて、それぞれの物語がさらりとした湿度で描かれている。皆に共通しているのが「やさしさ」。喪失感を抱えながらも時に痛々しく、切なくなるほどのやさしさ。 日常でついやりきれなくて空を仰いでしまう人、自分の居場所を模索している人、世間との距離を感じてしまう人に読んでほしい本です。あったかくて、ホロリときますよ。

・「この作者のことは全然知らなかったのだが、
 いやいや、素晴らしい作品です。 ファっサードという名前の店とそこに集うものたちの人間模様を書いた連作短編。 ファッサードが人々の拠り所となっているて、そこに集う人たちはやっぱりどこか退廃的であるのだが、それでも前を向いて生きているというか、生きているその一瞬、突然に感じる苦い痛みだとか孤独だとかを絶妙な筆致で丁寧に書き出していくことに成功している。 お勧め。

・「この作家の、今後は気になる
 あとがきには1990年3月から2年間にわたって書き始めたとかかれている。16編の短編による連作小説集。 ステージはファッサードという若者向けのナイトクラブ。出演者はDJや従業員たち、常連の「わたし」や女の子たち。米軍基地が近くにあるためか、ハーフも多い。10ページくらいの長さで、とても読みやすい。 人間たちが雑然としていて、みだらな部分もありそうな感じがするが、まったくない。そこが鷺沢文学の大きな特徴だ。「白い紙をレイプする煙草の先を凝視した。(「Nothing Will Be It Was」)」というようなトゲのある表現もたまにはあるだけだ。ベッドシーンなどひとかけらもない。クラブの常連になって、一歩踏み込んで知り合いになった人たちのスケッチといえるのだろうか。なぜなら、「わたし」は登場人物たちの誰からも名前を呼びかけられないだ。どこまで読んでも「わたし」なのだ。つまりどこまでいってもお客としての一線が微妙に残っている。それがゆえにセックスの場面までは至らず、「知り合い」のスタンスから踏み込めていないのだろう。寂しいけれど、好奇心があるけれど、ベタつくようなのはウザイ、深入りして縛られるのはイヤ、だから程々のところにいる。その代わり、批評と比喩の巧みさで小説は構成される。 解説を北方謙三が請け負っているが、そのタイトルが「小説の言葉」。まさにレトリックで勝負しているという指摘だ。「無国籍の青年群像」を巧みに「小説の言葉」で構成する作家を「この作家の、今後は気になる」として「やりきれないほどの切なさを抱えたままほほえんでいる」「後姿の孤独」を見て取っている。踏み込めない青年たち、そして作家自身。彼らに北方は戸惑ってみせているが、作家の将来をこの時点ですでに予測し、案じたのではなかっただろうか。

愛してる (角川文庫) (詳細)

F―落第生 (角川文庫)

・「救いのある作品
救いのある作品が好きだ。

昨今の風潮なのか、それとも変わらぬアウトロー的なものへの憧れなのか、投げっぱなしで救いの無い不条理な物語へのニーズは大きい。そしてそれらは時として非常に大きな評価を得る。

よほどみんな不幸に飢えているのかなと思う。もしかしたら自分以上の不幸をそこに見出すことで安心しているのかもしれないとも思う。

いずれにせよ作品を作る側からすれば投げっぱなしは楽である。

だからと言ってやたらと現実離れした偶然のもたらす幸福を喜べるほど若くは無いしピュアでもない。

納得のいく不幸があってそこには何ら信じられないような幸運は降ってこなくてそれでも救われた気分になれる、そんな作品はすごいと思うし、大好きだ。

この作品集はそのとんでもなく難しい基準を軽々と満たしてくれている。

もうちょっと生きてやろう(私にはまるで自殺願望は無いが)と思わせてくれる作品集だ。

・「元気になれる一冊
「ポジティブに生きることだけが、決して正しい生き方じゃない。」前向きじゃなくたっていいんだよと教えてくれる短編集。落第してしまったのは友情だったり恋だったり仕事だったり。少しづつでいいから前に進んでいこうと勇気づけてくれる一冊。

・「落第生である自分のことかと思いました
短編集なので、どれも読みやすいです。麻雀の話が出てくる小説もありました。私は麻雀の知識はゼロでしたが、読んだ後自分の周りに風が吹いたような爽快感がありとても元気付けられました。

また、「重たい色のコートを脱いで」は仕事に励む編集者の主人公が、文学賞を受賞した作家から「賞がとれたのはあなたのおかげよ」という言葉をかけてもらう。ただ、それとは反対に彼女の激務によってすれ違ってしまった彼は彼女のもとを、離れていく。仕事と恋の両立はやはりかなわぬ定めなのか?と思い悲しくなった。せつな過ぎる作品です。リアリティーに溢れた作品ばかりです。ぜひ多くの人に読んでもらいたいです。

・「恋愛と仕事、両方は成功できないのがサダメ?
リアリティーのある、すばらしい作品がまとめられている短編集です。なかでも最後に収録されている「重たい色のコートを脱いで」は主人公に感情移入して読んでしまいました。

日々の激務により、つきあっている彼とどうしても時間が合わなくてすれちがってしまい、彼はついに、編集者である主人公のもとを

離れていく。けれども、仕事では努力が報われ最後は賞を受賞した作家に「あなたのおかげよ」という言葉をかけてもらえる。恋愛と仕事、両方を手に入れることはできないのがサダメなの? と思ってしまった。そこがとてもせつないが、すごく心に残る小説でした。

・「
 落第。シビアな言葉だ。進級するレベルじゃない、あんたは劣っていると宣言される。 この小説はそんなには暗い話ではない。登場人物の生い立ちや置かれた環境は不幸だ。だけど、彼女たちは明るい。最初のシコちゃんの話にあるとおり、ガッツがある。 駄目になって、ハタから見れば馬鹿みたいで、でもやめられない。それを落第と思って割り切ってしまうのは簡単だけど、悲しい。 落第の評価なんて他人が決めるものだ。あとがきにあるとおり、立ち止まることなく進んでいけば、落第なんてなんだろうが関係ない。輝いていける。 そういう話。

F―落第生 (角川文庫) (詳細)

バイバイ (角川文庫)

・「心の底から傾倒してます!
 鷺沢萌氏の本をよんだのは、これがはじめてなのですが、とにかく最初に素晴らしいといっておきましょう。 あらすじを読んだときは、大して期待してなかったのですが、ところがどっこい予想外、なかんじで、ある種の震えをかんじました。この人の存在を知ったというだけで心がウキウキしてきます。もちろん氏の作品は全て読み尽くすつもりです。 本なんてものは、よんでみないと、わからないものですよ。

・「作者のやさしさが伝わってくる
親の愛をあまり受けられずに育った。預けられる親戚の家では、嫌われないように行動した。「やさしい子」だと人に思われることが、自分を守る唯一の手段だったのかもしれない。それは女性とつきあうときも同じだった。だが、誰にでもやさしいということが、人を傷つけることもある。自分が寂しい人間だと分かったとき、そして人を信じないというよりも、もっと困難な信じるという道を選んだとき、勝利は自分にとって何が大切なのかに気づく。その描かれている過程がたまらなく素敵だ。作者のやさしい思いが伝わってくるような気がした。

・「人を傷つけないように
 傷つけないように生きた結果、その場その場で最適な行動をとってきた結果、人間関係が破綻する。人を信じることは狂気の沙汰と教えられて育って主人公が、三人の女性とのかかわりを持って、狂気の中で生きていく話。 展開の俗っぽさやラストのやや強引な解決に甘さの残る作品になっているが、巧みな心理描写と強いメッセージ性が印象的。

・「作者自身の超越のために渾身の力で書かれた
 女に「バイバイ」をいえないでズルズルと三人の女性とつきあう峰沢勝利と、その三人の女性の物語。 主人公はいちおう峰沢だが、佐野朱美、室井圭子、長山薫たちも充分に存在感がありほぼ対等だ。女性では朱美の描写がもっとも感情移入がなされ、人物の構築ができている。勝利の朱美分析はシビアである。圭子や薫はある程度好感のもてる人物になっているが、朱美には救いがない。ひょっとして作者自身をかなり対象にしており、苛ついていたのではないかと思ってしまう。 その原因も勝手ながら想像どころか空想なのだが、同年齢の柳美里に追い上げられて焦燥感があったのではないか、と読者なりに穿ってしまう。同年齢にしてかたや100パーセント韓国人、こちらちょっぴり韓国人、かたや芥川賞受賞作家、こちら諸賞受賞作家。しかし鷺沢は幼くして文壇デビュー。どちらも美人。不幸な生い立ち、裕福な生い立ち。 同基盤上で、生い立ちのまるで違う二人のライバル意識。柳は胸で書き、鷺沢は前頭葉で書く。そう、本作品は「在日」に触れていない他は、持てる技巧をすべて注ぎ込んで自己を超越すべく相似形の人物を出演させ、頭脳を振り絞って緻密に進行時間を再構成した作品だ。 二ヶ所ほど芥川龍之介の「羅生門」を髣髴させる言い回しがあったが、その主人公同様、勝利も圭子によって生き方のヒントを得て、自己を「論理」的に超越するのである。 結末をお楽しみに!

・「追悼
複雑な家庭事情により「人に嫌われない」ことを第一にして生きてきた男が「さよなら」が言い出せないがために、3人の女性と同時進行で付き合うこととなりやがて破綻していくというストーリー。

「人の寂しさ」に付け入ることで人との関係を構築してきた男が「人に嫌われないこと」こそが最も寂しい行為だと気付かされるまでの話運びは巧妙。

ラスト、結局一人目の女性が「それでも男を信じていく」ことを選択する。その「信じる」という選択を狂気の沙汰として片付けるのは良いがそれが寂しさとそれにまつわる人の営為を解釈する手段として適切なのかどうかは疑問が残る。

バイバイ (角川文庫) (詳細)

奇跡の島 (ロマン・ブック・コレクション)

・「どうしようもないけど
どうしようもない状況、動かしようのない哀しい現実。あそこで、ああしていなければ、、、痛くて、自分のココロがどこにあるのか、見つけられます。

・「追悼
寓話を紡ぐという行為は、作家にとって危険な刃である。どれだけ荒唐無稽な作り話でも、そこでは生き生きとした生命を与えられる一方、その作家の物語性そのものが、衣服によって隠しようなく、直に晒されてしまうからだ。

そういった意味でこの『奇跡の島』という作品も危険な小説のひとつである。「家族」や「血」に縛られたこの作家の物語性は

生命そのものが輪廻というメビウスの輪の中で美しく昇華されてしまう南海の楽園では、ただの執着と化してしまう危険性を孕んでいるからだ。

そう、残念ながら美しい写真によって彩られたこの物語は鷺沢萠という作家の根本を否定する方向に働く。主人公の自己犠牲も、秘めた想いも、カリブ海のカラフルな風土の前では

世俗の色褪せた執着にしか見えない。

唯ひとつ、この物語を有効に成り立たせているのは、「ホセ」という現地人の存在である。まるでカリブ海のように全てを「神さまの決めたこと」と飲み込む彼のスタンスはこの小説の題名、『奇跡の島』の体現者のように見える。

奇跡の島 (ロマン・ブック・コレクション) (詳細)

さいはての二人 (角川文庫)

・「「生命」を問う
 恋愛小説?いいえ、「人間」のための小説です。生命の尊さ、この世に自分が存在する意義を感じさせられます。無意味に生きているものなどない。自分に自信がなくなったとき、生きていることに空虚さを覚えたときに読むと胸につまされる気持ちがします。鷺沢作品の中で最も私が衝撃を受けた本でした。

・「純粋な恋の物語
鷺沢さんの作品はいつもどこかせつなく、ほろ苦くて読んでるこちら側までが胸が痛くなる。

それでも、次の作品を読みたいって思うのは、麻薬中毒みたいな効果があるせいかもしれない。

どうやっても結びつきそうにない二人が出会ってしまう表題作「さいはての二人」。

あまりにも純粋な気持ちで惹かれ合っていく二人を見ていると読んでいるこちらがひどく悲しい気持ちにさせられるんです。

・「「家族」を描いてきた鷺沢萠らしい作品集
 鷺沢萠の三作品をおさめた短編集。  表題作「さいはての二人」:美亜の父は米軍人、母親は日本人。その美亜は父親ほども年の違う朴さんと飲み屋のバイトで知り合う。朴さんは在日朝鮮人。そんな二人の短く切ない恋の行方は…。 「約束」:東京の美術専門学校に通う行雄。アパートの隣室の幼子サキと知り合って彼女の絵を描くのがいつの間にか日課となる。サキが行雄に対してお願いしたひとつの約束があった…。 「遮断機」:OL笑子は東京・下北沢にある小田急線の踏み切りの前で、幼い頃から自分を可愛がってくれたおじいと久しぶりの再会を果たす。笑子はその日、死んでしまいたいと思うほどの出来事に遭っていた…。

 鷺沢萠はエッセイ集「私の話」(河出書房新社)の中で「一般的な意味で使われる『家族』を作るのには失敗し」たと記しています。それでも彼女は、父がいて母がいて、そして子供がいて、という『家族』とは異なる、赤の他人同士の深い絆を描くことにこだわって小説を書いてきた作家です。家族とは「血のつながり」ではなくて、疲れたときに「帰る場所」。そのことを様々な物語で読者に提示してきました。 本書収録の三編はどれもまさに鷺沢萠らしい作風です。世間一般の家族以上に、互いを慈しみ、信頼し、手を携えていく他人たち。ことに「遮断機」は幻想的な展開を通して、親兄弟以上の『家族』の存在を静かに語りかけてきます。

 「生きてりゃさあ、誰にだって、そんな日の一日や二日、あるもんさあ」(164頁)と語りかけるおじいの言葉が胸に響きます。擬似家族ともいえる人々との温もりの間に流れる時間が、いつしか辛い日々を笑い話に変えてくれる。人生とはそんな粋なものです。

 本書の中で「人間は馬鹿な上に、毎日生きていかなければならない」(87頁)と綴る鷺沢が、その言葉を実行しなかったのは返す返す残念でなりません。

さいはての二人 (角川文庫) (詳細)

スタイリッシュ・キッズ (河出文庫)

・「"I miss you"とはどういうことか
「あたしたちカッコ良かったよね」・・・そう、確かに君たちはカッコ良かったよ。しかし、カッコ良さは一通りじゃない。それに、カッコ良さというものは、年齢とともに形を変えてゆく。君たちはこれからも、カッコ良くあり続けるべきだった。

バブル経済最盛期、経済的には何不自由ない若者たちの、青春のきらめきと儚さを描く一種の純愛物語。恋愛と喪失感とが表裏一体であることを思い出させてくれる、切ない作品である。当時の若者ことばをふんだんに取り込みながら、時代に流されない普遍性を獲得した傑作。自殺した作者の思いは、ひょっとするとこの時期すでに、主人公のひとりである理恵に投影されていたのではないかと考えたら、彼女の自暴自棄ともいえた生活に納得がいくように思える。もちろん、大きな誤解だと言われたらそれまでだけれど。

・「訳も分からず読みふけったものです
初めて自分で買った文学らしい文学です。若者の恋愛における心の揺れ方、その軌跡。そういう恋愛からはひどく遠ざかっているわけですが、こういうピュアな気持ちだけはいつまでも忘れたくないな。忘れた瞬間にめっちゃつまらない大人に成り下がってしまいそうだから。

・「ありのままの視点で描かれた青春もの
青春ものの本で、初めて良かったと思える作品でした。その年代にしか見えないもの、感じられないものの切なさ、美しさ。作者はバブリーな時代の人だそうで、その感性も随所に表れています。キレイ事で描かれていない所が、とても好きです。

・「追悼
1990年「文芸」に発表された、都会を舞台とした恋愛小説である。 量・質とも鷺沢萠の初期青春ものの代表作であろう。 初版は1990年6月29日に発行されている。

私はこの頃、同い年の鷺沢萠と同じ大学に通う学生だった。 その前は本書に登場する「バスケ部の吉留」という人物が、 通っていたとされる都内私立高校生だった。 だから当時、本書のページをめくりながら、 果たしてモデルは誰だろうか、などと考えながら 本書の表層だけをなぞっていた気がする。

本書では同じ青春ものの『少年たちの終わらない夜』において 既に現れている喪失感と疎外感が いっそう突き詰められ、ピュアに表現されている。

悪ふざけをしていれば済んだハイティーンを過ぎて、 20歳を跨ぐという微妙な時期に、徐々に社会というものとの妥協を強いられ、 何か大事なものを失っていくのを見送るしかない喪失感。 そしてバブル絶頂期の意匠が氾濫する都会の大学で、 そのことを通過儀礼として当たり前のように受け入れていく 非―スタイリッシュな学友たちの中で、 心の奥底の方で孤立していく疎外感。

この喪失感と疎外感に永遠に抗おうとしても尚、 非情に時は過ぎ、二人は別れることになる。 その頑なな態度と、今だから解る不器用な美しさを 青春と呼ばずしてなんと呼ぼうか。

・「光も影も、キラキラなんです。
キラキラしている時代を、切り取って貼り合わせたような感じで、恋愛のイイトコを『ぎゅーっ』と詰め込んであります。青春したい!恋したい!!という衝動に駆られる。笑。そして、人と向き合うことについて、考えさせられる・・・かも。

バブルな頃の作品なので、その気は多分にありますが、『カレッジ・ライフ!』という言葉が、ピタリとハマる雰囲気です。気分がニュートラルな時に、オススメ。

スタイリッシュ・キッズ (河出文庫) (詳細)

ハング・ルース (河出文庫―文芸コレクション)

・「お気楽に出来ない人に…
ユニとフェイスの二人の小さな恋のお話です。ドロップアウトな二人は寄り添わなきゃいけない生活を続けているんですが、基本はhanglooseで全て乗り越えようとしていきます。世の中の歪んだ部分も流して過ごそうとしていくスタイルにそれが出来ないもどがゆさがリアルに感じました。最後にhanglooseをかざして去っていくフェイスに鷺沢さんの秘めてる孤独とそれを見せない強さを感じました。僕は大好きな作品です。絶対お薦めです。

・「いい本です
手にとって「あっ」と思った。4月に作者の鷺沢萌さんが亡くなられたというスキャンダルなニュースが記憶に新しかったこともあって。温かみのあるしっかりとした紙と鮮やかな夕日がバックの表紙に惹かれ思わず文字を追い始めた。ちなみに初めて読んだ鷺沢作品でした。

居場所を失った主人公のユニが、職場であるバーの常連である

フェイスという男性に拾われ(るかたちになり)居を共にする。どうして二人が一緒に住まなければいけないのか、という背景にユニとフェイスが、スタイルこそ違うものの人生のどこか歪んだものを戻そうともがいているという事実が冷静に綴られていて興味深い。

最後の章はフェイスの目から見た構成になっていて

ユニ目線との書き分けが実に見事だと感じた。

どうしようもないユニとフェイスではあるが文体にも、作者からの愛着がにじみ出ている。あとがきを見ればよく分かります。

・「テキトーでいいかぁ
    フェイスが親指と小指だけピンとはねあげた。    「親指と小指くらいは遊ばせて、ゆったりつかまってればいいじゃん」

 作中にはこう述べられているから、ハングルース(Hang Loose)は「テキトーで行こう」ということでいいのかなあ。 けれどそんなにユルユルではないが、深刻でもない小説である。 三部立ての作りになっているが、あいかわらず不良少年たちの深夜徘徊の話ではある。フェイスはどうやらバイニンらしいし。「夜回り先生」の水谷先生なら「早く家にお帰り」と声をかけるところである。 それにしても、ここでもたくさんのエキストラが登場している。みんな、なにしに舞台に登場するのかというと、ユイが説明するには、みんなは「体温中毒症」らしいのだ。 体温中毒症とは自分なりに解釈するに、ひとりになる不安。それが嫌で友だちを求めて「パクパク」や「クラブ・ヌー」に毎晩集まってくる。 親や家族から離れたものの、やはり温もりがないと心細いのだ。そうして夜になるとお友だちを求めて徘徊したくなる、そんなお年頃なのだろう。二十歳の前後というものは。 1部2部と違って、第3部は保険証を借りに父と会うシーンがあるが、これがこの小説(集)では一番安心して読めた。父がリアルだった。若い娘としては、父の体温が一番欲しいところなのだろう。

ハング・ルース (河出文庫―文芸コレクション) (詳細)

イマージュ

・「これからグールドをきかれるかたにお薦めです
 このアルバムは二枚組みになっており、一枚目がグールドの代名詞たるバッハ演奏。二枚目が、モーツァルト、ハイドン等バッハ以外からの選曲で、ベスト的内容です。はっきり言って選曲に才能を感じます。私自身もこれを聞いてグールド入門を果たすことができました。その後彼のアルバムを50枚以上買いましたが、私が今彼の残した録音から初心者むけに選曲するなら、やはりこのイマージュに近いものになると思います。もちろんこれがグールドのすべてではありません。これを気に入ったら、ぜひ次にゴールドベルク変奏曲の55と81の聞き比べをお薦めします。

・「グールドのバッハ以外の曲の演奏への誘いとしてDISC2は好企画
グールドといえばバッハという評価があまりにも定着しているので、ではバッハ以外の演奏は何を聴いたらよいか、迷う人もいるのではないかと思います。そういう人への格好の誘いとしてDISC2はぴったりの好企画です。グールドのバッハ演奏のベスト盤としては他に「リトル・バッハ・ブック」という本作のDISC1と甲乙つけ難いアルバムがありますが、私の知る限り、グールドのバッハ以外の演奏を選りすぐったものは本作のDISC2しかなく、貴重と言えるでしょう。これを聴けば、グールドによるギボンズ、ハイドン、ベートーベン、ワーグナーの演奏をもっと聴きたくなること確実です。私が選ぶとすれば、ブラームスは間奏曲、ベートーベンは田園第一楽章になりますが、本作の選曲も決して悪いわけではありません。そして本作をさらに魅力的にしているのが、他のレビュアーも言及されている、グールドの筆跡も含めた豪華なブックレットの存在。彼の笑い顔を含めた写真等は、丁寧な解説とともに、愛すべき人間グールドの素顔に接する素敵な縁となるでしょう。

・「聴覚も視覚も満たされるCD
ベスト盤の名にふさわしい選曲。単に収録年の順に並べたのでなく、また、評判の演奏のみを網羅したのでもない。グールド入門にうってつけではあるが、聴きこんだファンにも満足がいくはず。そして、厚手のブックレットにたっぷりと収められた印象的な写真の数々。表紙込34ページの大半が写真ページ!目と耳との双方からグールドを堪能することのできる稀有のCDとしてお薦めしたい。

・「至高の指先。
緩急自在に、そして左右均衡に疾走する指先。「孤高のピアニスト」が存分に満喫できる名盤です。聴き込むほどに味わいが深まります。初めてグールドを聴くならこれがベストと思います。

・「グールドファン必聴!
どのアルバム、曲、演奏を聴いてもグールドはグールドだ。そしてそうでなければ彼のピアノではない。(どのアーティストにも言えることだが)彼の数々のアルバムの中でもグールドの一番心地良い演奏を集め、小気味良くグールドの世界に引き込まれる。選曲・曲の順番よく考えられた優れたオムニバス。

イマージュ (詳細)

君はこの国を好きか (新潮文庫)

・「韓国に溶け込めない在日の方へ
 著者は韓国留学経験もある在日韓国・朝鮮人の小説家だ。日本人はよく知らないかも知れないが、韓国国内において、在日は韓国人というよりは日本人に近いとして待遇され、場合によっては差別的待遇を受ける場合すらある。

 韓国人になろうとしてなりきれない在日は多い。その代表が若くして亡くなった芥川賞女性作家だ。だが、この小説は韓国に溶け込もうとする苦しい過程を描ききっている。主人公はおそらく著者自身の分身といえようか。

 この小説を理解するには、韓国に関するそれなりの予備知識が必要だろう。したがって韓国通の方、それに在日の方々にまずおすすめしたい。

・「考えさせられる青春小説
鷺沢さんはクォーターの在日韓国人でした。本書は「ハングルに感電した在日3世」である雅美という主人公を通して、在日韓国人のアイデンティティの問題を爽やかに描いた小説です。

雅美は予め引き裂かれた存在として生きていくなかで、自己帰属を無意識化することで本質的に曖昧な者となり、永遠に自己保持生への疑問を問い続けます。その疑問は単に個人のアイデンティティの問題を超え、より大きな構造を持って雅美の前に立ち現れます。そしてそれは韓国への留学・韓国での生活を通して、激しく自らを揺さぶる波へと姿を変えていきます。

日本と韓国という2つの国の間で自らを定義しようとする彼女の行為は、結局彼女自身を本質的に曖昧な存在として再定義することと同じだったのではないかと思います。

軽めの文体でサラッと読めてしまう小説ながら、不思議と深く考えさせられる一冊でもありました。

こうした「扱い難い」テーマをうまく青春小説として昇華させ、気持ちよく読ませる鷺沢さんの筆力には恐れ入ります。個人的な問題を小説の中に取り込みながら、過剰な思い入れを完全に排するというのはとても難しいことだと思います。

なお、併録されている「ほんとうの夏」も在日男子大学生を描いた秀作です。

・「この国は女神を前にしたような
 和田アキ子が50歳半にもなってから「自分は韓国人の血筋でした」と告白。親に教えてもらってびっくりしたと思うが、鷺沢も、文壇デビューしてからそんなことを知ったという。それで、韓国の大学にアイデンティティを求めて留学。しかし、ふるさとの韓国人たちは在日には一線を引いているらしい。両作品ともそのジレンマを、ときには愉快に、ときには深刻に表現していて嫌味なく小説として楽しめる。、 芥川賞候補作品となった「ほんとうの夏」では小道具に自動車とマージャンが出てくるが彼女の生涯の友であったようだ。 在日韓国人のふだんの生活上の微妙な心理の差異を描写していて楽しい。「ハング・ルース」などを不良少年ものとするなら、こちらは「ほおずきの花束」系統の良い子もので、私の好きな系統です。「君はこの国が好きか」は「ほんとうの夏」の芥川賞落選から立ち直り(憶測)、さらに延世大学留学体験を経て、自分のアイデンティティを渾身の力で追求した力作。主人公を通して作者自身がものすごいガリ勉くんだったのだと改めて感じ入る場面が2度ほど出てくる。 ネタばらしになるが、最後の最後には、在韓時にお世話になった年上の男性、鍾煕とどうなるのかなと期待させられていたが、はたして・・・彼の最後に問いかけた言葉は・・・「おれのこと、どう思う? 好きか? 好きやったら、日本に帰ったらおれといっしょになってくれへんか」 こんな言葉が出ると思ったのだが、なんと「君はこの国を好きか」だったのだ。 たぶん彼女雅美が「好き」といったら、それは「あなたが好き」と同じことだったろう。 しかし、この作品はそんな小さな恋愛を対象とするものではなかったのだ。なんだか女神を前にしたような喜びが広がりでそうな感じなのだ。

君はこの国を好きか (新潮文庫) (詳細)

ビューティフル・ネーム (新潮文庫)

・「鷺沢萠は文壇の山口百恵である
鷺沢萠は文壇の山口百恵である。美人というにはちょっぴりデコチンだが、十代で文壇デビューしてから読者の前でどんどん変身を遂げた。彼女の作品には季節感があまりない。そんなことより人間関係の描写に明け暮れたりする。人間描写といってもエロチシズムは根底から嫌っているようで、健全ではある。

「ビューティフル・ネーム」は名前をテーマにした作品集の総タイトルである。未完の作品も入っている。死後、彼女のパソコンに入っていた作品だそうだ。悲しい。「眼鏡越しの空」はビクつく在日韓国人への日本人の予想外の無邪気な無知ぶりが描かれている。朝鮮、満州、そして東南アジア支配の日本帝国が画策したアジアの盟主たる日本人の優秀性が戦後も長く尾を引いて、アジア人差別、とりわけなぜか朝鮮・韓国人への差別がなかでも根深い。そんな感情の山塊の中で生きている在日韓国人の気遣いが彼女の中期からの一貫したテーマである。けれど差別にあえぎ、のたうち回るという悲劇がない。エロチシズムも迫害によるうちひしがれた生き様がない。人生に疲れ、酒とマージャンと車の日々といった、けだるそうな晩年の顔つきとは対照的に、作品は根本から明るいのである。「春の居場所」には、かなり体験が盛り込まれているようだ。都立雪谷高校の教師と生徒たちがテレビドラマのように生き生きと描かれていて笑えるのである。ちなみにぼくもこんなふうな学校を出ました。

ビューティフル・ネーム (新潮文庫) (詳細)

明日がいい日でありますように。 サギサワ@オフィスめめ

・「いままでのHPのまとめとは違う構成
この本は著者のHPの日記をまとめた本の四作目だが、事情により管理人と秘書の入念で真摯な編集により発表されている。なので、今までの三作とは異なる部分がある。大きな違いは

・当然ハードカバーなので装丁と紙質が良い・縦書きでフォントも変更・期間が長いため、編集の都合上省かれている部分がある・著者の抱えているものに焦点を当てた構成 省かれている部分は、いささかローカルすぎるきらいのある部分や、この構成においては関係のない部分があるが、必要であったと思えるほどの整ったものである。この構成により(もしくは、この時期の著者の日記のトーンにより)”おもしろく楽しく”ということに集中していた部分とは異なる。

政治色が一番強いのは日記の四作の中でこの本だと言える。

著者の意見は実直すぎるきらいがある(そして、真に受け止めすぎるせいでたまに論が稚拙になってしまう)ので、眉を顰める人も少なくないと思うのだが、私はこの著者の”選挙権の無い友達の方が多い””ある国のことを肯定するようなことを公の場で言い続けていたら○○という攻撃を受けた”話など、現場で隠さず戦い考え続けてきた心からの言葉と考え、その字面上の意味をとらず、それを言う気持ちとアイデアとポリシーに焦点を置いて読んだ。

それだけではなく、いつもの応酬も健在である。

明日がいい日でありますように。 サギサワ@オフィスめめ (詳細)
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