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▼読みたい本:セレクト商品

空白の叫び 上空白の叫び 上 (詳細)
貫井 徳郎(著)

「すべての少年が殺人を犯す可能性」「つらい現実。」「瘴気」「境目のあざとさ」「少年」


空白の叫び 下空白の叫び 下 (詳細)
貫井 徳郎(著)

「重い結末。」「誘引力」「少年犯罪を考える」「愚かな大人と、幼すぎる子どもたち」「生きる事が贖罪」


邪魔〈上〉 (講談社文庫)邪魔〈上〉 (講談社文庫) (詳細)
奥田 英朗(著)

「モデルの事件をよくここまで膨らました!」「奥田流」「一級のクライムノベル」「説得力がある日常との連続性」「下巻を買わずに入られない」


邪魔〈下〉 (講談社文庫)邪魔〈下〉 (講談社文庫) (詳細)
奥田 英朗(著)

「一級のクライムノベル」「複雑化した単純な事件」「今年読んだ中で一番の面白さ!」「下巻は、読むのを止められないくらい面白い」「落ちていく」


青の炎 (角川文庫)青の炎 (角川文庫) (詳細)
貴志 祐介(著)

「秀一の消えた青春」「純粋に面白かった。」「サスペンス、悲劇の傑作です。」「今まで読んだ中で最も感動した小説。」「綺麗な作品」


カシオペアの丘で(上)カシオペアの丘で(上) (詳細)
重松 清(著)

「許し、成長そして浄化 澄んだ心を取り戻すために」「これは恋愛小説ですね。」「同世代の人達には特に薦めたい一冊」「自分を許せるか」「素晴らしい!」


カシオペアの丘で(下)カシオペアの丘で(下) (詳細)
重松 清(著)

「最後まで、泣かせます。」「幼き日の輝き」「木馬と観音と星々の紡ぐ物語」「下巻は一日で読了」「北海道の雪」


孤独の賭け 上 (1) (幻冬舎文庫 こ 19-1)孤独の賭け 上 (1) (幻冬舎文庫 こ 19-1) (詳細)
五味川 純平(著)


孤独の賭け 中 (2) (幻冬舎文庫 こ 19-2)孤独の賭け 中 (2) (幻冬舎文庫 こ 19-2) (詳細)
五味川 純平(著)


孤独の賭け 下 (3) (幻冬舎文庫 こ 19-3)孤独の賭け 下 (3) (幻冬舎文庫 こ 19-3) (詳細)
五味川 純平(著)


疾走 上 (角川文庫)疾走 上 (角川文庫) (詳細)
重松 清(著)

「心にたくさんのガラスが突き刺さる」「思春期の子を持つ親に読んでほしい」「過酷な人生にも救いはある,と感じさせてくれる好著」「運命」「過酷すぎる」


疾走 下 (角川文庫)疾走 下 (角川文庫) (詳細)
重松 清(著)

「「ひとり」と「ひとつ」」「疾走の果てにたどり着いた場所は……」「希望」「疾走下by重松清」「走った15年」


楽園 上 (1)楽園 上 (1) (詳細)
宮部 みゆき(著)

「上巻は星5つつけたが・・・・・」「「模倣犯」から9年、「楽園」という題名の意味はやはり最後にわかる」「やっぱり宮部みゆきはすごい!!!」「職人仕事」「底無し沼」


楽園 下楽園 下 (詳細)
宮部 みゆき(著)

「宮部みゆきが下した結論」「展開の大きなうねり」「決意の下巻」「やはり巨匠!」「久しぶりに読書中、「ぞくり」とした」


名もなき毒名もなき毒 (詳細)
宮部 みゆき(著)

「もの悲しい読後感」「久しぶりです」「宮部さんの書きたいこと」「毒!」「あ〜やっと納得!」


魔術はささやく (新潮文庫)魔術はささやく (新潮文庫) (詳細)
宮部 みゆき(著)

「トリック重視では無いミステリ。」「最後までドキドキ」「大好きな作品です」「宮部みゆきを知るならここから」「道具立てを気にしなければ」


▼クチコミ情報

空白の叫び 上

・「すべての少年が殺人を犯す可能性
 三少年の意図的な人物造詣が、たくみである。すべての家庭環境を象徴していてるのだ。整理すると次のようになる。1 一人は、何も特徴を持たない凡庸な少年。平均的な家庭で、両親から平均的な愛情と干渉 を受けている。唯一の特徴は、女の子ともとれるような凝った実名。2 もう一人は、実の母から養育放棄された、貧しい環境。愛情に飢えた、何も持たざる少  年。でも、心の通う幼馴染はいる。経済的に最下層である。3 全てを持つ少年。親の経済力と知力と美貌を兼ね備えている。ただ、身勝手な父親が次々 と妻を取り替える。

 この三様の少年達が、そろって人を殺してしまうのだ。つまり、ある共通の条件が殺人という極限の罪を犯させるのではなく、どの少年にだってあり得ることだという状況を描いているわけだ。本作の寒々しい読後感の根元は、おそらくそこにある。

・「つらい現実。
最初はメインの登場人物三人をとても丁寧に描いています。全く似通った所のない三人がいったいどこでつながるのか、とても想像が付きませんでした。まさか、少年院でであうとは。そしてそこでの生活がなんと悲惨なことか。下巻がこのまま少年院での様子を描いていたら、きっと最後まで読む事は出来なかった思います。そのぐらいつらいストーリーでした。

・「瘴気
作品全体を貫く大きなテーマは「瘴気(しょうき)」だ。瘴気とは、ここでは、得体の知れない鬱屈とした気分、という意味で使われている。

作品は、三人の少年の内面を深くえぐる。その内容と文体は、非常に粘着質で、これでもかこれでもかという具合に。そして、突き詰めると、彼らの瘴気に行き着く。当然、それらを平常心では読めない。

ところで、少年のうち一人の存在意義の象徴が、精密なガンダムのプラモデルだという下りは、たかがプラモデルが、と思ってしまう反面、共感出来る部分もある。この部分は特に興味深かった。

作品は、上巻では事件、少年院、下巻ではその後を描く。一貫している事は、少年院を出ても、三人とも事件を反省していない。こんなに苛酷かつ壮絶な少年院を出ても、だ。

つまり、瘴気が少年達の心からは消えていない。この部分に少年犯罪の一端を見る。

下巻では、少年達に、容赦ない世間の洗礼が待っている。

・「境目のあざとさ
決して心根が捻じ曲がっているわけではない登場人物が、堪え切れぬ一線を超えた時に、この世界のしきりから転落してしまう、この転落するか否かの境目のあざとさを、なんと微妙に、繰り返し、さまざまに、描いていることだろうか。どちらに転ぶか、どこで転ぶか、当然ながら読者は、その世界から、一歩さがって俯瞰して達観した世界で読んでいるがゆえに、味わえる感覚を呼び起こしてくれる。犯罪小説は数あれど、その端境にフォーカスした数少ない作品と言える。

・「少年
本書では、三人の人物を主人公にして物語を展開している。

第一章では、三人の生活について淡々と書かれている。しかし、後半になると三人の少年が思いがけない事件を勃発させる。あまりの急展開に驚きを隠せなかった。しかも、三人の少年について、パラパラと書かれているのに、第一章の最後の方で、三少年が事件を起こしたことが書かれているので、読者はこの場面でいっきに、小説の世界にグッ引き込まれる。

第二章では、この三少年が少年院で一緒になるのだからさらに驚いた。特に、先のことを考えることなく読んでいたからか、驚きを隠せなかった。

このように、文章、物語の一部分をどこに配置するかで、読者に与えるインパクトはかなり変わるということが分かった。

運動能力強化運動は午前中に実施されるが、本当にこういった生活習慣なのか?と、疑問に思ったりもしたが、腹筋をする場面では、ある少年が優しさを見せる場面もあったりして、人の心のすべてが廃頽しているわけでもないと感じた。

本小説での少年院での生活は過酷である。運動能力強化運動もそうではあるが、「精神的な苦痛」は計り知れない。院内での罵倒であったり、無視だったり。こういった、下劣なやりとりは見るに耐え難い。と、同時に「心」の在り方を考える契機ともなった。

少年が事件を起こすと、法により処罰されるのではあるが、更生は難しそうである。14歳の少年が、罪を犯した場合、14年間の生活、その他諸々の積み重ねが事件を引き起こしたと思われるので、更生にも14年、もしくはそれ以上の年月がかかるのではないかと思う。少年がどのように事件を引き起こすのか、こういった経緯を経て犯罪を犯す可能性はじゅうぶんにあり得ると感じた。

空白の叫び 上 (詳細)

空白の叫び 下

・「重い結末。
少年院から出た一見平和な日常から始まる下巻ですが、殺人を犯した少年たちは、静かに生活させてもらえないのですね。追われるようにまた、重大な犯罪を犯してしまいます。そこまでの描写は、少し長くてテンポが遅いように感じましたが、最後の謎解き部分は思いも寄らない内容で、一気に読み終えました。特に被害者の父の独白部分は、残されたものの悲しみがにじみ出ていて秀逸です。ところどころ少年の心の声が挟まれているのですが、両者の深い溝を埋めることのできないもどかしさを感じてつらかったです。

どの登場人物に感情移入するかでいろいろな見方の出来る小説だと思います。いろいろな世代の方にオススメしたいです。

・「誘引力
読後感は、爽快ではない。誰もが持つ、罪の世界へ転落しそうになった記憶や、罪を犯した経験の記憶が押し寄せてくるからだろうか。心が捻じ曲がっているわけではない人々が罪を犯したことによる境遇が、あまりに悲惨であるからだろうか。この作者の作品は、読んでいる最中には、ひきつけて離さない、強烈な誘引力があるが、この読後感だけは、なんともやりきれない。しかし、そのおどろおどろしさを、また味わいたくて、また作品が世に出る度に、読まずにいられない。

・「少年犯罪を考える
久藤、神原、葛城。この三人を主人公に物語が展開されるが、その他多くの人物が出現し、それらすべての人たちが、強く関わっている。ストーリーを読み進めれば、これらの関係が分かるが精読しなければ、相関関係を見失いそうである。しかし、関係を無視することはできないので、思わず確認するために読み返してしまう。それだけ本書は、読書を惹きつけている、と考えられる。また、「物語の順序」がよく考えられていることも、前述したようになる理由であろう。

「生き続けること」が、罪を償うことになるという点はなるほどと感じた。人を殺すことが、どれだけ重いことなのか知ってもらうことは悪くない。そういったことを葛城自身が、何らかの方法で本当に伝えることができるのであれば、「罪を償う」ことが、できたと言えるかもしれない。「罪を償う」ことの一部だと言えるかもしれない。

葛城、神原は幼少の頃から心の傷を負っていたと言えよう。やはり、生育環境が彼らが罪を犯した根っ子の原因だと考えられる。また、本書を通して、少年が非行に走るには、私たちが理解できないくらい、深い深い根底があると感じた。

黒沢が、更生できそうな場面があったが、結局銀行強盗に荷担した。更生しようと思っても、うまくいかない状況に直面するという現実も理解できた。黒沢のような方法で社会からはじき出され、再犯するというケースも十分考えられ、立ち直ろうと本気で思っていても、できないこともあると感じた。

昨今では少年法も改正され、多くの注目を浴びた。いまや、少年犯罪は多くの人から目を向けられることである。少年犯罪を考えるために読み、一つの観点として読むことも可能だろう。

・「愚かな大人と、幼すぎる子どもたち
 これでもかと悲惨な話を展開させながら、最後まで読者を引っ張っていく力は、さすがだ。もう年齢的に入ることのできない(笑)少年院の内情など、なかなか興味深いし、一度罪を犯した者への社会の厳しさも、十分に描けていると思う。 私自身がそうだったから思うのだが、偏りのある愚かな大人のもとで育った子どもは、大人びて見えて、実は例外なく年齢より幼い。主人公の3人、あるいは被害者もそういう育てられ方の犠牲者であり、そのあたりを知り尽くして書かれた本だ。いつもながら人間観察力の鋭さには脱帽する。 読後感が悪いと定評のある著者だが、無意識であっても自分自身の偏りを自覚していればこその後味の悪さなのだから、それで正解なのではないか。

・「生きる事が贖罪
三人にとって、殺人は衝動的に生じたものではなく、「必然」だったのかも知れない。殺人は絶対に許される事ではないが、一度目の犯罪である殺人は、定められた道だったという風に描かれている様に感じる。

当然、少年院を退院した少年達に対する、世間の風圧は強い。しかし、三人は少年院でいったい何を学習してきたのか?全く反省の色が無いのが、特に問題だと思う。

罪を深く受け止めて、真っ当に生きる事が贖罪につながると思う。あろう事か、三人は新たな犯罪へと突き進んでゆく。それは、ほとんど捨て鉢とも見なされる。

金への執着が強い程、贖罪の道は遠のくという印象だ。罪は犯していないが、彩の夢は、ハワイに別荘を持つ様な金持ちになりたい、という下りがあるが、これは、いくつかの点を象徴している。

金は、艱難辛苦を伴う努力の結果として、後から少しだけ付いてくる。金持ちになる事が夢なんて、目的と手段が逆転した、おかしな夢だ。

三人の金に対する執着の程度が、贖罪に対する意志を語っている。死ぬ事は卑怯と言われ、生きて贖罪する事を要求される下りは、特に印象的だ。

物語は綿密に練られていて、大変興味深いが、三人の人格面での特殊性が強過ぎるという印象は持った。その点で、少年犯罪の本質に迫る社会派作品というよりも、全体に、三人を題材にした意外性のある物語という印象だった。

空白の叫び 下 (詳細)

邪魔〈上〉 (講談社文庫)

・「モデルの事件をよくここまで膨らました!
 この本では放火になっていますが、実はモデルになった事件が存在します。それは1998年の「ザイエンス新潟支店毒物混入事件」。 動機もまるっきりこの本と同じですので、作者はこの事件にインスパイアされてこの作品をものにしたと思われます。 しかし、犯人の妻の疑心暗鬼と直感から追い詰めていく刑事の心の動きを柱に据えたため物語に一気に厚みと深みが生まれました。 現実の事件では半年後に逮捕されましたが、実際逮捕されるまで家庭内でこんな暗闘があったんじゃないかな、などと思わずゲスな想像をしてしまいました。

・「奥田流
とにかく話の展開が早くて面白いですよ。奥田英朗さんのよさは同時進行で起こる事件の展開の早さにあると思います。飽きずに最後まで読めます。現代作家として最高です。

・「一級のクライムノベル
徹夜度    ★★★★★    話題性    ★★★☆☆着想     ★★★★☆    作品の重さ  ★☆☆☆テンポ    ★★★★★    読みやすさ  ★★★★★謎解き    ★★★★☆    感動     ★☆☆☆☆読後感    すごいおすすめ度  ★★★★★

「最悪」と並ぶ、作者の代表作。

2002年度版 このミスで模倣犯に続く2位。文春 2001 傑作ミステリーベスト10で6位。

本作品には三人の主要人物が登場する。妻を交通事故でなくしたトラウマから立ち直れないでいる警部補 九野家族4人で平凡に暮らす主婦 恭子将来に目標もなく、ワルにもなりきれない高校生 祐輔

一見関係ない彼らの人生が、小都市で起こった放火事件をきっかけに、交錯していくという、クライムノベル。些細な事件を、一級のサスペンスに仕上げ、一気に読ませる筆力はすばらしいの一語に尽きる。是非おすすめの一冊である。

余談であるが、この作品以降、作者の作品がミステリーファンにとっては物足りないものとなっている。もう一度、この作品で得た驚きを味わいたい。

・「説得力がある日常との連続性
私が評価を☆5つとしたこの著者の作品『最悪』と同じく、本書も主な登場人物の日常の描写から始まる。そして、その登場人物たちの日常に起こった小さな出来事が、やがてある大きな事件に絡んでいく。日常との連続性に説得力がある、この過程の描写が非常に見事で、作品中の出来事が日常と乖離した非現実的なものとしては描かれておらず現実感が増す。また、日常の些細な出来事を通して、登場人物のキャラクターも見事に描き出されているので、作品の中にぐいぐいと引き込まれていく。「ミステリー」として分類される作品でもあるが、謎解きを楽しむ性格のものではない。人間描写とストーリー展開がすばらしい、極上のエンタテインメントである。(下巻のレビューに続く)

・「下巻を買わずに入られない
文句なしのエンターテイメントです。

いくつかのエピソードが平行して進みますが、それぞれが興味深く、引き込まれてゆきます。上巻を読破したときに、下巻がないとイライラすること間違いなしでしょう。友人ふたりに上巻を貸したら二人とも自分で下巻を買いに走ったということからもお判りいただけるでしょう。

淡々と書かれたそれぞれのエピソードは下巻でいかに統合され、あっと驚くような結末につながるのか!?

邪魔〈上〉 (講談社文庫) (詳細)

邪魔〈下〉 (講談社文庫)

・「一級のクライムノベル
徹夜度    ★★★★★    話題性    ★★★☆☆着想     ★★★★☆    作品の重さ  ★☆☆☆テンポ    ★★★★★    読みやすさ  ★★★★★謎解き    ★★★★☆    感動     ★☆☆☆☆読後感    すごいおすすめ度  ★★★★★

「最悪」と並ぶ、作者の代表作。

2002年度版 このミスで模倣犯に続く2位。文春 2001 傑作ミステリーベスト10で6位。

本作品には三人の主要人物が登場する。妻を交通事故でなくしたトラウマから立ち直れないでいる警部補・九野家族4人で平凡に暮らす主婦・恭子将来に目標もなく、ワルにもなりきれない高校生・祐輔

一見関係ない彼らの人生が、小都市で起こった放火事件をきっかけに、交錯していくという、クライムノベル。些細な事件を、一級のサスペンスに仕上げ、一気に読ませる筆力はすばらしいの一語に尽きる。是非おすすめの一冊である。

余談であるが、この作品以降、作者の作品がミステリーファンにとっては物足りないものとなっている。もう一度、この作品で得た驚きを味わいたい。

・「複雑化した単純な事件
(上巻のレビューの続き)■スーパーにパート勤務する平凡な四人家族の主婦・及川恭子■恭子の夫が被害にあった放火事件を担当する刑事・九野薫■オヤジ狩りを九野薫にしてしまった不良高校生・渡辺裕輔

以上が主な登場人物である。九野薫が中心となるストーリー展開ではあるが、私は及川恭子こそがこの作品の主人公だと思う。ホームドラマの主役にしか思えなかった彼女が、日常の中の小さな出来事を経るうちに変貌していく様が見事である。また、事件としては単純な、及川恭子の夫が被害にあった放火事件が簡単に解決しない様を通して、人間社会の複雑さも見事に描き出している。テクニックに走らないオーソドックスな手法で書き上げられた、すばらしいエンタテインメント作品である。

・「今年読んだ中で一番の面白さ!
 とにかく面白かった!一息に読了です!

 新興住宅地に念願のマイホームを購入し、平凡ながらも幸せを噛み締めつつ生活している主婦恭子。恭子の夫は会社の宿直をしていた夜、放火騒ぎが起こり、火傷を追う。当初は以前会社が因縁をつけられていた暴力団の仕業とみられていたが、久野たち刑事たちの調べにより犯行は恭子の夫が会社からの横領を隠すための狂言であることがわかってくる。夫を信じていた恭子は過去に生じた金銭トラブルなども脳裏によぎり、次第に夫への疑念を膨らませる。なおかつパート先での人間関係、マスコミや警察がうろつく恭子宅を見る近所の目などから徐々に精神的に追い詰められてゆく。どんなことがあっても今の幸せを失いたくない、せめて子供には惨めな思いをさせたくない、と必死になるほど逃げ場のないところへと追い詰められてゆく恭子。そしてついに恭子は自ら一線を越してしまう。

 作者は小説を描く上でディテイルが重要、と考えていると解説で触れられている。その言葉どおり、主婦恭子の日常が細やかに描かれておりリアリティにあふれている。パート先での主婦どうしの軋轢、市民運動家たちのエゴなどに翻弄されるあたりの恭子の心情も実に細やかに描かれ共感できる。こういった細やかな情景描写や心理描写がスリリングな展開を一層盛り上げている。 個人的に今年読んだ中でいまのところナンバー1!!

・「下巻は、読むのを止められないくらい面白い
普通の主婦のたくましさに拍手。夫の起こした放火事件がきっかけで、なりふりかまわず、こんなにも強く変われるのかと驚いた。新居や子ども、平凡な暮らしを必死で守る母親の行動力には、すごいものがあると思った。上巻は、警察組織の内情を興味深く読んでいたけど、下巻になったら急展開。ええ〜っという、驚きの連続。書いている作家も、面白くて筆を止められなかったんじゃないだろうか。

・「落ちていく
下巻は結末が知りたくてイッキに読んでしまいました。人にはどんなにがんばってもうまく行かない時があります。その落ちていく様子がおもしろく描かれていました。また、それに反した行動をしだすのも成る程とうなづけました。事件そのものよりも、主婦恭子、刑事九野の内に秘められた心理がよくあらわれていて納得の本です。

邪魔〈下〉 (講談社文庫) (詳細)

青の炎 (角川文庫)

・「秀一の消えた青春
映画の後、すぐに原作を読みました。どちらのほうがということもなく、どちらもすばらしかった。ただ、原作の方が長いだけあって、秀一の青春が書き込まれていて、そのはかなさ、切なさが読後に蘇り、さらに辛い思いをしました。人生には思い通りにならないことはたくさんあり、そういう時の選択肢はさまざまあるであろうに、秀一の人生はなぜ、こんな結果にしかならなかったのか。家族も友人も周囲には味方がたくさんいたのに、どうして彼一人こんな重責を背負うことになってしまったのか。若かったからこその行動と言われるであろうけれど、17歳という年齢のもつべき以上の責務を果たそうとした、秀一。その責任感と正義感は賞賛に値するものであろうが、その犯してしまった罪は、自分でも許しがたいものであったと思われ、彼のとった最後の選択は、彼の家族に対する愛そのものでした。読後に何日も何日も秀一のことを考える日が続きました。それほど私に影響を与えた1冊です。

・「純粋に面白かった。
私はもともと、罪を犯した側が主人公となる物語が好きなのですが、その中でもこの話は非常に読み応えがあったように思います。

主人公の櫛森秀一は、何でもこなせる優等生。母と妹と3人で幸せな生活を送るも、母が以前結婚していた曽根という男が突然現れ、家に居座り、我が物顔で傍若無人な態度をとります。

警察も法律も助けてはくれない状況で、いつ終わるとも分からないこの悪夢のような現状に絶望した櫛森少年は、完全犯罪を決行することで家族を助けようと思い立ちます。。

最初から最後まで息を抜けない展開で、終盤などの警察とのやり取りはかなり緊張します。

福原紀子とのラブストーリーも良い息抜きになっていると感じます。

貴志祐介さんの作品は初めて読んだのですが、読みやすいし心理描写もうまい。他の作品も読んでみようと思いました。ぜひ読んでみてください!!

・「サスペンス、悲劇の傑作です。
私はこの本を読んでいる途中で、何度も本の中に飛び込んでいって、殺意に突っ走る主人公を諌めたい衝動に駆られました。まるで弟か後輩が過ちを犯していくのを見守っているようでした。でももっと哀れなのは、女友達の紀子です。彼女の切ない気持ちも、絶妙に表現されています。

・「今まで読んだ中で最も感動した小説。
いかなる理由があろうとも、殺人は厳罰をもって裁かれるべき罪であることは疑いがありません。しかし家族を救うためにそれを犯した秀一がその報いを受けることが哀れでならず、なんとか都合良くハッピーエンドにならないものかと思いつつ頁を繰りました。秀一が重要参考人として警察に尋問されるシーンは、息詰まる緊張感があります。

大人の私の目から見れば、未熟な青年ならではの秀一の身勝手さも目に付きます。ある重要なアイテムを託された紀子は今後良心の呵責に苛まれはしないでしょうか。大型トラックのドライバーは人生に重い十字架を背負うことになるでしょう。そして秀一を信用した山本警部補は、職責を問われることになるのは間違いないでしょう。しかし青春時代とはきっとこんなふうに身勝手で、やたらめったら周りに迷惑をかけるものなのでしょう。

この小説の最終章は、最後の一行までほんとうに美しいです。

・「綺麗な作品
正直、変だと思われるかもしれないが、凄く綺麗な作品に感じた。殺人ながら全くそう言うグロいシーンも無く、主人公の葛藤と心情を繊細ながらも大胆に書かれていたと思う。でも、何処か複雑で、謎めいた所もあった。活字では書ききれない物語。枠に納まらない。優しさ故に、彼は人を殺めることになった。それは一体、どの様な気持ちだったのだろうか。そしてその殺人がバレたから、過ちがあったから、またその過ちが繰り返されてゆく。そして自らの人生を、家族の人生をぶち壊しにしてしまった。自分が良かれとした事が、逆に最悪の結果となってしまった。

あぁ、何て切ないのだろう。思わず涙が溢れた。その後は私の愛読として一ヶ月に一回は読んでいます。

青の炎 (角川文庫) (詳細)

カシオペアの丘で(上)

・「許し、成長そして浄化 澄んだ心を取り戻すために
真綿で包まれるよな、やさしい空気を持った文章で淡々と語られる。ある事件が元で故郷を離れてしまった男性。東京で出会ってしまい、ともに人生の何分の1かを共有した女性家族のすべてを失ってしまった男性。自分の不注意で間接的に人の人生を奪ってしまった女性。

大きな十字架を背負ってしまった人々が丘に集まり、許しと癒し、再生と成熟の日々を共有する。

重松氏の作品を手に取るとき、私は無意識のうちに癒しを求めていると思う。死を真正面から取り組み、人生の負の部分ともいえる背負ってしまった十字架を題材にした決して軽い作品ではないにもかかわらず、私は癒されている。

一人の男の死に向かう心の変化、死への準備ともいえる行動が登場人物の十字架を取り払ってゆき、癒しと成長を周りの人々にもたらす。

読む人がどの登場人物に感情移入するかによって、いろいろな感想が生まれると思う。しかしながら、どんな人もなぜか読後は、なにかを背中からおろしたような開放感を感じると思う。

涙が心を浄化してくれる。そんな作品です

・「これは恋愛小説ですね。
一年の約半分は雪のせいで予定が狂いっぱなし。隣の町までは何キロもあって、交流の機会はほとんどない。幼稚園から高校までまわりのメンバーは同じ。友達のお父さんが担任の先生だし、その奥さんは音楽の先生だったり。これがごく普通の北海道の田舎町です。

・「同世代の人達には特に薦めたい一冊
子供の頃仲のよかった男の子と女の子がやがて大人になり故郷を離れて今はそれぞれの人生を生きている。そして何かのきっかけで何十年ぶりに出会い、物語は過去と現在を行き来しながら主人公たちの新たなドラマが動き始める…。確かにこのパターンで最初から最後まで淡々と綴られるのですが、この物語は冒頭でいきなり主人公の一人に死が宣告されます。読み進むうちに病状はどんどん進行していきます。登場人物のいろんな過去の贖罪が明るみにでてくるのですが、私は40歳のシュンが妻と小学生の子供と再会した友達とともに必死で生きながら人生を終えていく姿に胸をうたれました。これは間違いなく映像化されるでしょうね。オーソドックスな物語ですが、特に同世代の人達には読んでみる価値があると思います。

・「自分を許せるか
余命わずかとなった父親が、子供と、妻と、かつての恋人と、兄と、祖父と、どう対峙していくか、読む者の涙を誘いながら、描いている。相手を許せるか、自分を許せるか、その過程の葛藤は、共感を呼ぶ。これは、スパイダーマンシリーズのテーマと共通するものがある。

・「素晴らしい!
いいですよ、簡単な内容は他のレビューを見ていただければわかるかと思います。テレビドラマ向きな感じがしますね、少年/少女時代−学生時代−40歳 と心の動きを重松さんらしく上手に表現して、読者のこころに触れ合います。許されること、許すこと…、人間は生きていくうえで皆色々なものを背負って、そして死んでいくんだな。

カシオペアの丘で(上) (詳細)

カシオペアの丘で(下)

・「最後まで、泣かせます。
あっという間に読んでしまいます。そして、いつの間にか自分も幼い頃カシオペアの丘で星を見つめていた幼馴染の一人になってしまいます。それぞれのもう帰れない場所とこれからの人生とそして一番きらめいていた時間を取り戻しながら、号泣します。

・「幼き日の輝き
ずっと涙がとまらないまま読み終えました。単に病にかかった男の話だったら、こんなに泣けなかったと思う。主人公含め、幼なじみ4人が星空の下に約束を交わしてからその後の、それぞれの人生を丹念に描いているからこそ深みがあるんです。その中で倉田千太郎が関わった過去の炭鉱事件でのエピソードが最も重要な物語の核となり、運命はトシと母親の〈倉田〉との因縁、シュンとミッチョの秘められた過去、北都観音での過去への清算…とメリーゴーラウンドの如く回り続ける。私はそんな中で雄司の存在に一番癒された。おちゃらけているようで実は自分を道化にしながら周囲の暗くなりがちな雰囲気を和らげるユウちゃんの優しい思いやりが最高に胸に響いた。下巻の〈東京〉の章で“俺が語る。北都に帰ってきたアークトゥールスと、東京に帰ってきたスピカの物語を、俺が語る…”では、アポロ12号にまつわる話を含め彼特有のユーモラスな語り口に笑ったり泣かせられた。誰かを憎んだり、自らの罪を背負って過去と断絶してきた者たちの贖罪の物語を読んで、人の弱さや強さを愛おしく見つめる作者の優しい視点が伝わってくる。空から降る雪を、雪は星だよ、わたしたちの街に降りそそぐ白いものは星なんだよ、という言葉に心から涙が出ました。大人のための上質な夢物語ですね。絶対にハンカチをお忘れなく!

・「木馬と観音と星々の紡ぐ物語
仲良し4人組がこっそり登る夜の丘からみた星空に始まる物語。

キーワードは「メリーゴーラウンド」ですが、700ページに及ぶ長編は読み始めるとジェットコースターのように一気に読めてしまいます、というか読まずにいられません。

特に下巻で様々なひとの思いが集約されていくに連れ、もう星が出ようが雪になろうが、目を離すことはできないでしょう。

そして読後……必ず身近にいる大切なひとのことを、もっともっと、いとおしく思うようになることでしょう。

章ごとに語り手がバトンタッチして進んでいく手法も見事です。まるで星の点つなぎをしながら、最後に一枚の絵ができあがるような…まあとにかく読んでみてください。悪いことはいわないから。

・「下巻は一日で読了
久しぶりに、一日で読破できた本に巡りあえた。ハリーポッターの第1巻以来のことだ。55歳をまもなく迎える。この年になって音楽はHIP HOP系R&Bが好きになった。音楽が、今、一番の癒しだが、読書は、涙がたまって次の行に進むことができなくても、癒されるものなのかもしれない。作者は私よりも10歳も若い。なのに私よりも長く生きてきたひとにしか知りえないこの世界の癒しを知っているようだ。読んだほうがいい。どうにもならない、どうにもできない共感という癒しがある。

・「北海道の雪
これまで発表された著者の作品では、許す許されるという関係が、度々テーマとされている。しかしながら、許す許されるという言葉自体は、ほとんど使われなかった様に思う。この作品では、言葉上も、ダイレクトにその事が、主要な骨格を形成している。

クライマックスは、第十六章「楽園」だ。許しを乞う数名は、北都観音のスロープを登る。この時に、本質的な意味で、皆が許されたのだろうか?

ここで垣間見える、雑多な宗教観には、宇宙的な広がりすら感じる。生命の輝きをもってして、宇宙までをも表現しようとしていると見ると、深読みし過ぎか?

北海道の雪は、東京のそれとは、随分異なるらしい。主人公一家が、それに触れる事が出来て、本当に良かった。

カシオペアの丘で(下) (詳細)

疾走 上 (角川文庫)

・「心にたくさんのガラスが突き刺さる
ものすごい小説だった。内容の全てを受け入れきれてない自分がいる。

・「思春期の子を持つ親に読んでほしい
なぜおまえは疾走しなければならないのか?なぜ、そんなに生き急がなければならないのか?じわじわと壊れていく家庭に、何もできず、目をそむけるだけの無責任な親。壊れていく家庭のアリ地獄の中でなんとか生き延びようと、もろい砂にしがみつく主人公のシュウジ。正直言って、悲しくて、どうしようもなくつらい作品だった。けれど、ページをめくる手を止められず、一気に読んだ。「誰か、いっしょに生きてくれませんか?」これは、思春期の子供たちの悲鳴のように聞こえた。誰か、堕ちてゆくシュウジを救ってやれなかったのか?まわりの大人は手を差し伸べてやれなかったのか?(特に、「おまえ」と呼びかけ続ける神父の無力さが私には歯がゆくてたまらなかった)未成年の悲しい事件が頻発する現代社会において、本作はフィクションでありながら、フィクションとして見過ごすことのできない、胸に迫る切実なものがあった。私は、読みながら、白夜行のリョウジとユキホをふと思い出したが、彼らの内面は(小説の中では)よく見えなかったのに対し、シュウジの思いは手に取るようにわかる。それだけに、よけい悲しい。

主人公は中学生だが、中学生に読んでほしいかどうかは微妙。むしろ、中学生を持つ親には、ぜひぜひ読んでもらいたいと私は思った。彼らの鬱々とした思い、苦しみ、葛藤、あたりまえの性衝動を少しでも理解してもらえるように。重松清はスゴイと唸らせる作品だった。

・「過酷な人生にも救いはある,と感じさせてくれる好著
 主人公シュウジを「おまえ」と呼ぶ語り口に違和感を感じて,感情移入にちょっと時間がかかったが,読み出してみると本当に止まらない。上下とも,休む時間すら惜しくて,あっという間に読み終えてしまった。 シュウジを取り巻く状況は,本当にシビアだ。家庭崩壊,自殺一歩手前まで追い込まれるイジメ,暴力的セックス(読んでいて,これほど辛い性描写は初めてだった)と殺人,孤独。 本当に救いのない状況だし,その救いのない状況を本当に誰も救ってはくれないのだけど,ラストで,「シュウジ」と語りかけられる部分ではボロボロと泣かされ,ああ,「おまえ」という語り口はそういうことだったのか,とも納得させられた。 読んでいて居ても立ってもいられないほどの辛さと,一転しての心地よい涙と……やっぱり,重松清はうまいなぁと思う。

・「運命
こんなに本の世界に入り込んだことは無い、というぐらい、夢中になって読みました。『誰か一緒に生きてください』私と同じ中学生の少年が疾走した15年の生涯。凄くリアルな表現もしてあって、読むのに抵抗がある部分もあったけど、共感できる部分もたくさんありました。ラストの部分は思わず泣いてしまうほど感動しました。物語が大きく動くまで、『普通の少年の話だなぁ〜』と思いながら読んでいましたが、主人公の兄の犯した行動から、周りの環境も変わっていき、自分の人生まで狂ってしまう。同世代の読者として、ここまで共感できた作品は過去にありません。是非、読んでください。読んでみる価値はあります。

・「過酷すぎる
どこからどう歯車が違ってしまって、こんな過酷な人生を送らなくてはならなくなったのか。物語の間中どんどん落ちていく「シュウジ」をなんとかしてあげたい!という思いで読みました。「これはフィクションなんだから、」と時に思い返さないと、どんどん引き込まれていつか「シュウジ」の人生を背負い込んでいる自分がいました。「ひとり」「言葉」「つながり」、人生を支えるいろいろなキーワードが出てきます。作者は私達が通常はそこまで降りていくことのない深いところにまで引き摺り下ろし、絶望の中になにかを伝えようとしているようです。上下巻で800ページ近いボリュームですが、私は2日で読み終えました。読み終わった後、かなり引きずります。忘れられない1冊になりました。

疾走 上 (角川文庫) (詳細)

疾走 下 (角川文庫)

・「「ひとり」と「ひとつ」
中学生の多感な時期のシュウジに次々と襲いかかる不幸。読んでいて気持ちが悪くなるくらいの不幸にもシュウジは「ひとり」で受け止め、でも心の底では誰かと「ひとつ」になりたくて、あがく。読み進みながら、何故に人はこんなにも残酷で、無慈悲で、そして無力なのだろうと悲しくなってしまう。そして、衝撃のラストシーン。しかし、最後にはシュウジが残した希望が、「ひとり」だった人たちを「ひとつ」にした。同じく多感な時期を過した男性としてシュウジの気持ちにとても共感でき、そしていつか多感な時期を迎えるであろう息子を持つ親として現代の中学生の悩みや苦しみを十二分に理解できた。重松氏の著書のなかでも最高傑作と言えると思う。読んでいる途中は本当に読むのが辛くなるくらい切なく苦しい物語だが、読破後は心に光が射すがごとく幸福感が得られる。

・「疾走の果てにたどり着いた場所は……
「穴ぼこのような目」になってしまったシュウジに残っているのは不思議な縁でつながれたヤクザの情婦「アカネ」と元クラスメートの「エリ」だけだった。故郷を捨てたシュウジはアカネを訪ねて行くが、ダンナであるヤクザにアカネとの関係を見破られ、追い詰められて事件を起こしてしまう。逃亡したシュウジはエリに会いに行くが、エリもまた心に闇を抱えていた。結果的にシュウジはエリを救ったが、過酷な運命を疾走し続けたシュウジのゴールは、あまりにも哀しいものだった。

巻頭から一貫してシュウジのことを「おまえは……」と語っているのは誰なのか確信が持てなかったが、ラストで納得した。

中3の息子に読ませようか、刺激が強すぎるか真剣に迷っている。

・「希望
凄まじい孤独、読んでいて痛みさえ感じました。物語が進むにつれて、追い詰められ文字通り疾走しながら暗闇に落ちて行く少年。その彼が最後に、何に代えても守りたかったものは、彼の前を走る希望だったのではないでしょうか。

・「疾走下by重松清
一気に読めた。深夜に読み終えて胸を突く結末に声をあげて泣いた。何故?何故?と自問を繰り返す。子供の問題は大人への問題提起。大人だって子供の時代があった。少年の心の動きがよく書かれていて男の子の成長の過程が少し理解できた。性的な成長も少しわかったように思えた。自分を含めた世の多くの母親は、男の子の成長について本当に知らないんだなぁと実感した。物語の中で起きるさまざま事柄といろんな登場人物がさまざまに連鎖していく。皆んな、母親の胎内で育ち愛されて生まれてきたはずなのにと思うのは、甘いのだろうか?父親は、母親は、何故に少年を守ってやれなかったんだろう?少年を守ってやりたかった。

・「走った15年
 重松清といえば「青春小説」「少年小説」あるいはニュータウンを舞台にした「家族小説」というイメージがありますが、この作品はそれらとは一線を画した別物であると思います。異質なものを感じます。 とにかく負の要素が強いです。青春の輝き、少年の清々しさのようなものがまったくないです。 主人公のシュウジの背負っていたものの大きさはシュウジ一人では手に負えないものです。それが神父さんの言葉を借りれば「宿命」だとしたら、なんて悲しい物語なのでしょうか。 鬼ケンが感じさせた「スピード感」 エリが見せた孤高の「ひとり」 シュウジが頼れるのはそれだけでした。そして、それだけを胸に、皆が歩く中、「ひとり」で走りました。 15歳でゴールしたマラソンに果たしてどんな意味があったのでしょうか?それとも人間が、元々人生に意味を求めるなんてことは無意味なのでしょうか? 色々なことを考えさせられる小説でした。

疾走 下 (角川文庫) (詳細)

楽園 上 (1)

・「上巻は星5つつけたが・・・・・
9年前の事件−『模倣犯』−に関わったライター前畑滋子のもとに奇妙な依頼が持ち込まれる。12歳で事故死した少年・萩谷等に超能力があったのではないか。彼は隠蔽されてきた少女殺害事件を、発覚前に「絵」の形で予知していたという。彼は他にも多くの不思議な「絵」を残していた。彼の死後それに気づき驚いた母親・敏子が、息子の能力の真偽を調べてほしいと頼み込んできたのだ。

9年前の事件で大きなダメージを受けた前畑の再起、等の超能力の謎、息子を失い大きな悲しみを背負った敏子の「喪の仕事」、そして少女殺害の真相・・・などの要素が絡む。

(以下、内容にふれています)上巻は、まるまる一冊等の「絵」、能力の謎に費やされるから驚く。宮部作品にはすでに超能力を扱った著作があるが(『龍は眠る』『クロスファイア』など)、超能力の検証にここまでページを割くような作品ではない。『模倣犯』での暴走を悔いる前畑の慎重ぶりが伝わり、徐々に謎に迫っていく過程にぞくぞくさせられ怖いような迫力があった。特殊能力を持つ人間(しかももう彼はこの世にはいない・・・)の悲哀が溢れ、前半のクライマックスとしてずっしり重い。だが少女殺害事件に重きを置いて読むならば、とんでもないスロースタートだ。少女殺害事件の核心になかなか近づかないのは、前畑と敏子の心の機微、敏子の家の歴史などもかなり突っ込んで書かれているせいもある。なんとまあ今回も丁寧すぎる程に細かいことを書き込んでいているなあ、と感じる。このあたりは好みが分かれるだろうが、後でじわじわ効いてくるのでこらえて読んでいただくとよいと思う。・・・とは書いたものの、事件の方がぼやけてしまった感はあり、なんだかもやもやするんだなあ・・・(下巻のレビューに書きます)

・「「模倣犯」から9年、「楽園」という題名の意味はやはり最後にわかる
「模倣犯」から9年後。「あの事件」の呪縛から逃れようとしている、フリーライター前畑滋子を描くスピンオフ作品。

いつもタイトルが秀逸な宮部作品だが、「模倣犯」と同じく「楽園」というタイトルの奥深い意味は最後にわかる。ここで書くとネタばれになるが、その部分の宮部氏の文章は、呼んでいて鳥肌がたつほどの迫力だ。こうした宮部節は作品の随所にいつもある。人間に対する鋭い洞察力、対象をその瞬間だけ遠くに突き放した結果得る残酷なほどの人間の持つ現実の姿。編集者は本の帯に書くキャッチコピーに困らないだろうなといつも思う。

宮部氏の作品の例にもれず、冒頭の数行を読んだだけで虜になってしまった。とうとう深夜までかかって上下巻読了。

ストーリー展開と人物描写のうまさもさることながら、陰惨な事件の中でも作者の暖かな目線が読んでいてホッとする。

先日お話した、ひとり息子を亡くした53歳の女性が、愚直すぎるほどの人生の中で掴み取ったものを最後に昇華させる展開は本当に見事。人間の持つ、はかりしれない可能性、強さやかしこさは、学歴ではなく、どう人生を生きてきたかで決まるのだと痛感する。

そして、最後に本当に爽やかなエピソードが残されている。 これはこの作品に、奥行きを与えていると思う。

「模倣犯」を呼んだ人も、読んでいない人も、「楽園」は楽しめると思う。しかしこの本を読んだら「模倣犯」を読まずにはいられなくなることは確か。

お奨めです。

・「やっぱり宮部みゆきはすごい!!!
冒頭の数行を読んだだけで、読者を惹きつけ小説の世界に入れてしまう。話の先が読めず、読み出したら止まらない。彼女のストーリー展開と人物描写のうまさには、毎度のことながら脱帽です。陰惨な事件でありながら、下巻の最後にホロリとさせられ爽やかな読後感にも満足しました。事件ものからほのぼの系、超能力、時代ものまで幅広い世界を描く彼女ですが、やはり真骨頂は、長編事件ものですね。『模倣犯』を読んでいると、【前畑滋子】の人物像等がよくわかるけれど、読んでいなくても問題のない内容立てになっています。宮部みゆきは、才能が豊かに湧き出るすごい作家と改めて実感しました。

・「職人仕事
さすが宮部みゆきの仕事という他ありません。導入部はややスローなものの、次々とギアチェンジしていって気がついたら小説の世界に引きこまれています。

「模倣犯」から9年後の前畑滋子はトラウマを引きずり、ライターとしてはリハビリ中という風情なのですが、不思議な能力を持っていたという亡き少年の母からの依頼に次第に持ち前の突進力を取り戻していきます。その過程にまたもからんでくる「網川浩一」の影…。次第に浮かび上がる新たな事件の謎…。

少年の母や周辺人物の造型も「いるんだよね、こういう人」と親しみすら湧いて来るのも宮部作品ならでは。上下巻の長さを全く感じない、一気読み必至作品です。

・「底無し沼
時を忘れて、引き込まれてしまった。事件、超能力、それを調べる女性ライターという筋書き。次々に、想像もしていなかった方向に物語りは展開し、一刻も早く、先を読みたくなる。

内容は非常に重いものであるにも関わらず、著者の文体は、比較的軽妙だ。そのため、すいすいと先へ先へと、読み進みやすい。

物語主導で作品が進んでゆき、心理描写は細緻だが、内容があまり寸断される事はない。文中のいたる所で、登場人物の性格や気質などを、定型化しながら分析している。これは、著者の作品では、割合よく見掛ける事だ。

下巻では、想像もしなかった展開に驚いた。ただ、あるところまでは、少しばかり、平板な印象も受けた。読み進むにしたがって、この作品は、全体として、何を描こうとしているのだろう?という疑問が、脳裏をよぎる。

その答えは、下巻の最終章「楽園」にある。このまとめ方は、見事と言う他ない。著者の才覚に、思わず身震いした。

一度読み始めると、容易には抜け出す事が出来ない。つまり、この作品は、底なし沼だ。

楽園 上 (1) (詳細)

楽園 下

・「宮部みゆきが下した結論
16年前に両親によって殺された少女土井崎茜は、何故殺されたのか。下巻では時効を向えるまでに何があったのかが少しずつ明らかになり、読むのを止められない。加えてラストぬ向けて、挿入されていた断章が持つ意味も明るみになり、とにかく一気に読ませる。全て読み終えて感じたのは、宮部みゆきが『模倣犯』では迷っていた結論が出たこと。それは、更正しない人間はいる。今回はキイワードとなる三和明夫が三十歳を過ぎても治らない人間として描いた。更ににラスト叫ぶかのように、問いかけるかのように、前畑が受ける言葉「身内にどうしようもない者がいたら、切り捨ててしまえばいいのか」という詰問は、この数年間宮部みゆきが考えていた問題だったように思えた。だからこそ350頁で「人々が求める楽園は常にあらかじめ失われているのだ」と結論ずけた。大御所宮部みゆきだけに、上下巻一気に読ませ、夢中にさせるが、1つだけ残念なのは、等が描いたあの山荘がどういう経緯で見たのか最後まで不明だったこと。知りたかった。

・「展開の大きなうねり
物語の展開の大きなうねりが、どうも伺えない。点と点が細切れの中でかろうじてつながっているあやうさがある。それが妙味と言えば、妙味だが、読むものの心を大きく動かすかと言えば、否であると言わざるをえない。

・「決意の下巻
 前畑がうろうろ迷っていた上巻から、一気に覚悟を決めて鋭く切り込んでいく。世の中には、あいまいにしたまま放って置いたほうがいいことがあるのかもしれない。だが、前畑は真実をえぐりだす。理屈でも信条でもない。 彼女の猟犬のような本能が、あえて全てをさらしだした中でなければ、また次の闇を生む危険を察知してしまうのだ。結果として多くの人が、更に傷つく。だが、前畑はまっすぐ前を向く。これが私の生き方だと…。 これこそ、「摸倣犯」のときから変わらぬ前畑滋子なのだ。

・「やはり巨匠!
自分は「楽園」最高だった前畑滋子シリーズはいつでもグイグイ読ませる老眼鏡を使う、やはり子供には恵まれなかった、前畑滋子の義理の両親はすでに亡くなっている・・9年という年月の経過は、時の温情でもあるし同時に残酷だ前畑滋子は実在しないけど、これからもっともっと人間の心の暗闇をえぐるルポライターになって欲しいと思うそして彼女の続編を望むそれと同時に、とんでもない人間が家庭内にいた場合他の家族はどうしたらいいかというある意味どうしようもない問題、これが宮部みゆき自身が切に訴えているテーマだと思う

・「久しぶりに読書中、「ぞくり」とした
個人的には面白かったように思う。満足の出来でもある。が、厳しいレビューを多数見受け、正直驚いた。なるほど、生粋の宮部ファンには物足りなかったのだろうか。確かに「理由」「火車」よりかはセンセーショナル的なものは無いかもしれない。当初ああまた「クロスファイア」等の超能力モノなのだ、と思って危惧したが超能力で解決、という訳ではないのですんなり飲み込めた。それにしても、宮部氏は諦めに近いような優しさで作中の被害者・加害者を書き上げている気がする。こういう事の出来る作者は中々いない、客観的すぎるくらいに登場人物を書いているなあと思う。それが作品の人物をよりリアルに描写していることに繋がっているのだろう。読む人の環境/心情によって、土井崎一家をどう思うかは千差万別だろう。やはり凄い小説家だと改めて思った。

楽園 下 (詳細)

名もなき毒

・「もの悲しい読後感
この、もの悲しい読後感は、何なんだろうかと思う。正直で全うな生き方をする人間が不幸に見舞われることか、権力・地位・財力を得てもなお無力感を感ずることか。どうやら、ここで描かれている登場人物は、正直で素朴な主人公も、権力や財力を得ているその義父も、また犯罪を犯した人々も、皆、満たされぬ思いを持っているからかもしれぬ。その満たされる思いを、解消するすべをもっているか否かで、犯罪者になるか否かが決まる。犯罪者、異常者と、ここで描かれている良い人々との、実は差異があまりないことに、もの悲しさを感ずるような気がする。

・「久しぶりです
最近の宮部さんの現代モノは後味の悪いのが多かった(いや悪いのはこのご時世のほうですが)ので警戒しつつ買ったが、これは久しぶりに気持ちよく読めました。犯罪がかち合うなど筋としては甘いような気もするがその甘さが必要だと自分でつくづく思うこのごろの疲れっぷり。物語に癒していただいた気がします。ありがとうありがとう。お金を出して買ってよかった。自分の毒も薄まった気がします。

・「宮部さんの書きたいこと
読みました。一気に。傑作というしかありません。とても悲しくなります。涙がこぼれます。確かに、昔の宮部さんとは違いますね。模倣犯以降かな、こういうテーマが多くなりました。読者の中には、物足りない人もいるかもしれません。でも、なにか、自分の日常と照らし合わせて、重く響いてくるような気がします。「自己実現」から今、人は「何か」にならなくてはいけない錯覚に陥り、人は皆苦しんでいるのですね。「ダイエット」、「スポーツ」、「受験」etc。「そのままでいい」とは思わなくなってしまい、その「何か」になれずに苦しみ、「毒」が生まれる。まさに、自分もそうです。この本を読んで心に何かが残った人は、みな、自分の毒が分かっているので、心を揺さぶられるのでしょう。

・「毒!
本屋でさんざまよった挙句購入。(ハードカバーはめったに買わないので)しかし買ってよかった。通勤中に読もうと思っていたけれどとまらず、最後は結局会社のトイレでこそこそ読みきってしまった。ごめんなさい、会社。

・「あ〜やっと納得!
新聞連載では「毒は何だ!」みたいな感じで終わってしまい、え?と思いました(まさか北海道だけそこで連載終わった?)。が、本では後日譚も書いてあり、「あ、毒ってなるほどね」と思いました。ここでこうまとまるか!と納得納得。小憎らしい奴だけがとうとう○○しないのが宮部さんらしいです。やっぱり犯罪を犯す人間ってそうだよね、簡単には治らないか・・・と思うむなしさもありますが、でも、やっぱり納得できるラストです。

名もなき毒 (詳細)

魔術はささやく (新潮文庫)

・「トリック重視では無いミステリ。
ミステリファンには二種類いる。トリック重視な物を好むか、人間の心理描写が巧みな物を好むかだ。そして宮部みゆきは、松本清張と同様、間違いなく後者のミステリ作家だと思う。

宮部は、この作品で催眠術というものを扱って、人の復讐心を問う。作品のラストに疑問を持っている方もいるようだが、

それは、事件解決があまりにも単純な物を読みすぎているのでは無いか。

主人公の守少年は、復讐が出来るチャンスを犯人から貰う。少年は、犯人に心を試されるのだ。この内面の戦いこそが、この小説の最大のクライマックスであり、

そういった主人公の抱えている葛藤を理解しなければ、宮部作品は何を読んでも理解出来ないかも知れない。彼女の書く、事件解決方法の多くは、内面の戦いの結果なのだ。そして、ラスト、守少年の選択に、私自身は胸を打たれた。

トリック重視の方には物足りなさもあるだろうが楽しめる、という点で星は最高点。

・「最後までドキドキ
いまでこそ「クロスファイア」や「模倣犯」の映画化で有名になりすぎた感のあるみゆき氏ですが、初期の頃のこの作品がマイベストです。主人公の少年の描き方がいいのと、どの作品にも共通しますが、読み終えたあとに残る印象が決して不快にならないところが魅力。ほか「レベル7」と「鳩笛草」も自身の5つ星!

・「大好きな作品です
僕は宮部さんのファンで、宮部さんの作品をいろいろと読んで楽しませてもらっていますが、ある意味ではこの作品が個人的には一番好きです。でも、この作品は他の代表作に比べて、読者の評価はそれほど高くないようなので、レビューを書きたくなりました。宮部さんの作品が良いのは、その見事なストーリー構成もさることながら、世の中の不条理、そこから生まれる怒りや苦しみなどの現実的で深刻な問題を正面から描きながらも、最後はなんらかの「答え」を出そうと努力し(その意味で少し理屈っぽいと言えば理屈っぽいけれど)、そして自分なりの答えを提示するのだけれど、その答えがとても暖かくて、前向きで、ほっとできるものになっていることも大きな原因なのかなと思っています(現実に押しつぶされて終わる作品もたまにありますが)。そういう意味での現実との格闘が、「魔術はささやく」では大成功をおさめているように思います。この作品は「憎しみ」という感情と格闘していますが、その視点は暖かく、答えは劇的にもたらされ、読後感は爽やかです。現実的で誠実だからこそ傷ついて、後ろ向きになってしまう。でもできることなら前を向いて、全てを受け入れて生きていきたい。正しい答えはこんなふうにぼんやりと分かっているのだけれど、割り切れない思いが胸から離れず、前に進めなかったことのある全ての人に、この本をおすすめしたいです。

・「宮部みゆきを知るならここから
単なる謎解きの推理小説だけではない。様々な謎が次から次へと迫ってくるそんな中ででも登場人物の人物描写がていねいに細かく表現されており,謎がとけなくても十分小説になっている。結末へ続く謎解きはこのミステリーをさらに深いものにしている。網の目のように複雑にからまる人間の生み出した暗い謎の奧にあったものが,これも人間らしい深い愛情であったというところが救われた気持ちになる。宮部みゆきを読むならまずここから読んで欲しい。

・「道具立てを気にしなければ
宮部作品を読みたくて読みたくて、さて何を読もうかと迷っていた時にたまたま古本屋で見つけたのがこれで、私の記念すべき宮部みゆき初体験(笑)の作品。まず驚いたのが、主人公とその回りを固める脇役におけるキャラクター設定の見事さ! 登場人物全ての性格設定に奥深さがあり、全ての人物にそれぞれの魅力がある。普通は読み終われば、おぼろげなストーリーは反芻できても細かなシーンなど忘れてしまうものだが、この作品は読後数ヶ月経っているにもかかわらず、次々と印象的なシーンが思い浮かぶ。特に好きなのは、意地悪な同級生に主人公が蜂の一刺しを返すシーン。ここでは主人公が、ある意図を持って行動を起こす。しかし、読者にはその意図が分からない。だが、経過と共に意図が明らかになってきて、その章の終わりで大きなカタルシスが訪れる。つまり、このシーンひとつとっても一級のミステリーなのだ。全体の構成では事件が解決しても、その後に主人公の精神的な「成長譚」がドキドキのサスペンスを伴って挿入される。物語の根幹をなす「催眠術」という道具立てが荒唐無稽過ぎるとの批判もあるようだが、それはあくまでも道具立て。「催眠術って、そんなに上手く行くの?」という疑問さえ差し挟まずに読むことができたなら、きっと面白く読めるはずだ。私的には、ストーリー構成、物語の奥行き、登場人物設定、どれもがハイレベルで素晴らしい作品だと、自信をもってお勧めできる。

魔術はささやく (新潮文庫) (詳細)
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