江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫) (詳細)
江戸川 乱歩(著)
「乱歩道の始まり」「赤いビロード」「衝撃」「素晴らしき作品たち」「傑作ばかり」
ドグラ・マグラ (上) (角川文庫) (詳細)
夢野 久作(著)
「いやー」「ただ圧倒。」「10年ぶりに再読しましたが,やっぱりすごい作品です.」「傑作です。」「これ翻訳できるんでしょうか?すごすぎます。」
金閣寺 (新潮文庫) (詳細)
三島 由紀夫(著)
「読者を悩ませる大傑作!」「日本文学の最高峰!」「読んでいる時は別世界にいるようです・・・。」「麻薬」「理解が深まるまで読みたい作品」
戻り川心中 (講談社文庫) (詳細)
連城 三紀彦(著)
「叙情派ミステリの極み」「あくまで主人公は花のつもりです(作者談)。」「「花」に託された人の想い」
異邦の騎士 (講談社文庫) (詳細)
島田 荘司(著)
「もっと後に読めばよかった…」「カズミストのバイブル★」「何度も読み直してみたくなる一冊」「若いころに読んだほうがよいです。」「まずまず!ピッピッ!」
クラインの壷 (新潮文庫) (詳細)
岡嶋 二人(著)
「岡嶋二人の最高傑作」「傑作」「この本がきっかけで自分は昔岡嶋二人にはまりました」「超名作です。オススメ!」「岡嶋二人にハマった。」
十角館の殺人 (講談社文庫) (詳細)
綾辻 行人(著)
「すべてはここから始まった」「私のロストバージン」「トリックの切れ味」「衝撃でした」「鮮やかなどんでん返し」
殺戮にいたる病 (講談社文庫) (詳細)
我孫子 武丸(著)
「我孫子武丸氏が見せた神技」「来るべき未来としての現在」「二度読まねばなりません」「巧妙な騙しのテクニック」「驚異の作品」
「だまされたと思って」「そういうオチか!!」「衝撃のラスト1行」「とにかく読んでみればいい・・・と、思うよ。」「ラスト一行」
海と毒薬 (新潮文庫) (詳細)
遠藤 周作(著)
「暗い、暗い海」「読み応え充分!!」「良心の模索」「良心とは?神とは?医療倫理とは?」「黒い海に押し流される破片」
幽霊刑事(デカ) (講談社文庫) (詳細)
有栖川 有栖(著)
「ミステリ&恋愛小説」「涙です。」「楽しいユーモアと推理の興奮、そして感動」「涙です。」「愛すべきおバカミステリ」
「暖かく、優しく、ちょっと寂しい「匂い」」「人間ってけっこう凄いじゃん」「すごい(・∀・)」
13階段 (講談社文庫) (詳細)
高野 和明(著)
「理想から乖離した現実に打ちのめされることになる」「「死刑」についていろいろ考えさせられた作品」「罪を背負って生きること、罪を背負って死ぬこと」「やられた・・・」「もっと早く読めばよかった」
ハサミ男 (講談社文庫) (詳細)
殊能 将之(著)
「新人離れした卓越した手腕」「『シリアル・キラーが探偵役の謎ときミステリ』」「納得しちゃあいけない。もっと怖いんだから。」「日常」「どうやって映画化すの?」
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>さ行の著者>島田荘司
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>あ行の著者>綾辻行人
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>あ行の著者>我孫子武丸
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>あ行の著者>その他
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>あ行の著者>井上夢人
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>た行の著者>その他
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>さ行の著者>殊能将之
新書・文庫>著者別>日本の著者>あ行>う・え・お>江戸川乱歩
・「乱歩道の始まり」
■収録作品 二銭銅貨 二癈人 D坂の殺人事件 心理試験 赤い部屋 屋根裏の散歩者 人間椅子 鏡地獄 芋虫
傑作選だけあって,乱歩らしい作品を収めた一冊です。乱歩が得意とする各ジャンルの作品をいいとこ取りしたような本なので,乱歩を読んだことがないという方は,まずこの本をご参考に。
「鏡地獄」が好きなら,次は「虫」がオススメだ,とか。「人間椅子」なら,「人でなしの恋」がいい,とか。「芋虫」がいいなら,「淫獣」も好きなんじゃ,とか。いろいろ思ってしまいます。ここから,乱歩道に入ってください。
僕のお気に入りは「鏡地獄」。
・「赤いビロード」
有名では有りますが、実際に氏の作品を読んだことのない人も意外に多いのではないでしょうか。そんな人に非常にオススメの一冊。「D坂の殺人事件」にややメリハリがないものの、収められた短編の数々はピリッとした名作ばかりで普段読書の習慣がない人にも勧められるものです。芸術的な怪奇短編集であり、妖しく、奇妙な世界は本当に心を惹きつけます。目次のタイトルを見て、たったの一編にも読む衝動を起こさないことがあるだろうか!?私も作品に接する以前は「推理小説か何かでしょ?」と思っていましたが、手に取るなり、まさにむさぼり読んでしまいました。もしかしたら、その後の読書のきっかけになってしまうような一冊かも。
・「衝撃」
「芋虫」が一番好きです。唯グロテスクなだけの作品だと思われがちだが、真に誰かを愛する心が描かれている美しい作品だと思う。個人的に「鏡地獄」の方がグロテスクだと感じた。
・「素晴らしき作品たち」
「心理試験」「芋虫」が特に素晴らしかった。「芋虫」は、描写のグロテスクさにワクワクさせられ、読み進めるうちに、不完全な須永中尉が可愛らしくさえ思えてくる。この短篇集は、探偵小説を含んでいるけれど、結末が分かった後でまた読み返してもちゃんと面白い。
・「傑作ばかり」
「二銭銅貨」「二廃人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」「芋虫」の9編を収めている。 1960年に新潮文庫として出たもので、乱歩の傑作選としては決定的なものだろう。有名作品ばかりで、誰が読んでも満足できるのではないか。 トリックに凝ったミステリ、奇怪な思いつきを小説にしたもの、グロテスクな話と分野的にも取り揃えられ、バランスが良い。 ただ、あまりにもいいとこどりという感じがしないでもない。
・「いやー」
賛否両論あるようだがかなり面白かった。確かにあらゆる視点や考えからすると頭がおかしくなりそうなほど混乱をきたす。と言うわけで私は此れをおおまかに進めていって理解していったわけです。しかしここまで面白いことを考えれる作者はそうそういないと思う。まさに夢想家。まさに夢野久作である。
表現がそして面白い。これは文で表現しきれないので是非読んで欲しい
後半は少々グロイ表現もあるので、そういうのが苦手だと言う人にはお勧めしない。
・「ただ圧倒。」
「胎児よ 胎児よ 何故踊る 母親の心がわかって 恐ろしいのか」
1ページ目をめくると、「冒頭歌」と称して上の一文が載っている。この一文を読んだだけで、この小説の神秘性に引きずり込まれるだろう。
全編を通して異様な雰囲気の中、不気味なまでに軽快な語り口。推理小説などというジャンルにはめ込む事のできない、圧倒的なスケール。夢野久作が10年間推敲に推敲を重ねて完成した作品で、怪奇小説の中でも異端児と言っていいと思う。
「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来す」とまで評されている。しかし、たとえ精神に異常をきたしたとしても、一生に一度は読んでおきたい作品であることは疑いない。
途中まで読むのがしんどくても、後半はスイスイ読める。そしてその結末には、誰もが必ず圧倒されるだろう。クセはあるが、ハマると何度でも読み返したくなる、麻薬的一作。普通の小説には飽きたという人は、是非ご一読あれ。
・「10年ぶりに再読しましたが,やっぱりすごい作品です.」
真夜中,どこかから聞こえてくる時計の鐘の音で目が覚めた「私」は、すべての記憶を失くしてしまっていた. 隣の部屋には少女(どうやら自分の許婚らしい)がわめき散らしているのだが、自分には全く身に覚えがない。 もう一度眠りについた「私」は、やがて朝になり再度目を覚ますのだが,そこに九州帝国大学医学部長を名乗る紳士がやってきて(どうやら「私」は九州帝大病院の精神科病棟の一室にいるらしい)、その紳士に連れられて失くした記憶を取り戻しに出かけるのだが...。
人により評価が真っ二つに分かれる作品です。 分厚い上下二巻組の作品であり、途中に「胎児の夢」と題する論文などが挿入されているので、読んでいて辛くなるかもしれません。 しかし、それを我慢して読み進めていくと、私と同じようにその結末にきっとあなたも圧倒されることになるでしょう。
結末のインパクトが失われてしまいかねないので、深く突っ込んで書けず申し訳ないのですが、世界に誇れる作品に仕上がっているということだけは言っておきます。
あなたがこの作品について、少しでも気になったことがあるのなら、一度手にとってみることを強くお勧めします。 そしてその時に,途中で放り出してしまいたくなるかもしれませんが、ぜひ最後まで頑張って見てください。この作品の世界観は、きっとあなたを大きく変えてしまうでしょう。
それでは御健闘をお祈りします.
・「傑作です。」
絵でいうなら、だまし絵。音楽でいうなら、FAUST、COIL,NWW。フロイドのいう、夢の作用。作家はあえてつじつまを合わせようとせず、背後にある、読者の深層心理を刺激します。読む人によって、感想という以上に、何が論点になるかすらもはぐらかせられます。現実という足場を完全に踏み外した、正に異端の文学。しかし、途中でDNA的な記述は先端なのか、作家の先見なのか、無茶苦茶面白いです。
・「これ翻訳できるんでしょうか?すごすぎます。」
この上巻を読み終えるまで相当きつかったです。というのも、本当に気がおかしくなりそうで、読むのを何度やめようかと思ったことか。。。なんなんですかね、この本。夢野久作は狂っているか、天才かのどちらかです。しかし、なんとか上巻を読み終えたら、びっくりするくらい下巻も制覇できます。ミステリー小説としてもおもしろいんです。でも、この本を全巻読み終えたときには、今までとは違う脳の構造が出来上がっているような感覚です。正直、この本を読んで以来、ちょっと頭がおかしい感じです。。。(まじです)「胎児の夢」という考え方、妙に共感してしまいました。夢野氏は、真理をついている気がします。皆さん書かれてますが、80%の人は頭おかしくなるんじゃないか?というくらいの強烈作。この本読んで、頭がおかしくならない人に会ってみたいです。ヤバイヤバイ!まじやばいけど超オススメ!
・「読者を悩ませる大傑作!」
普段よりゆっくり時間をかけて読んだ一冊。主人公が金閣寺を放火するに至った動機を簡単に説明すれば、「金閣に象徴される美に対する反感」や「滅びの美学を実践する為の行為」といった事になると思うが、もちろんそんなに単純ではない。人に理解されない事を唯一の誇りとしていた主人公の思想はあまりにも理解し難く、またいくつかの矛盾もあり、破綻をきたした狂人の思想とも考えられる。動機を考える上で、私が最も興味をもったのは、主人公と老師(金閣寺の和尚)との微妙な関係であり、ほとんど表面化する事なく陰鬱に溝を深めていく様が、実に見事に描かれている。途中で老師を殺害することについての考えも語られているが、「殺人が対象の一回性を滅ぼすためならば、殺人とは永遠の誤算である」として、これを却下している。いずれにせよ金閣寺の放火は、老師に対する報復であるという側面もあると思う。読了後3日経ったが、解釈に苦しむ所が他にも沢山あり、読者を悩ませる大傑作である事は間違いない。
・「日本文学の最高峰!」
なんでこんなに精緻で美しい文章が書けるのだろうか!と驚愕を禁じ得ない。正直、読み進めるのは大変だった。難解な語句が頻出するし、仏教用語も多い。手元に国語辞典を用意しての読書だった。
軽い気持ちで読んでいるとすぐに文章についていけなくなった。集中して主体的に読み進めないと理解できなくなる。
テレビや音楽といった受動的なメディアと違い、活字は主体性が重視される媒体なのだと再認識させられた。昨今の活字離れを背景に、大衆に迎合した軽い文章、浅薄な内容の作品しか書かないで作家気取りの人達の作品とは大きな違いだ。
日本語の美しさ、奥深さ、読書の醍醐味を満喫させてくれる作品。中・高校生にも是非読んでほしい。一生の財産になるはず。おそらく一回読んだだけで理解するのは難しいだろう。2度、3度読んでほしい。一生読める本だと思う。不世出の鬼才・三島由紀夫が日本人に残した宝だと思う。
日本語を母国語として育った人間で本当に良かった。この作品は日本語で読んでこそ真髄が伝わる。
・「読んでいる時は別世界にいるようです・・・。」
この有名な小説を読んだのは、三島由紀夫の本を読み出してから割と後期のことだった。 その所為か、文章は読みやすく、登場人物の性格も他の三島作品のそれと比しては随分素直だなぁ、と思ったものだった。でも読みこなせているかどうかはまた別である。恥ずかしい事ですが・・・。
ごく始めの方に、主人公が有為子を需め、暁闇の村のはずれにさまよい出て行く箇所がある。新潮文庫で言えば、12ページの9~10行目の所と、次は最後のクライマックスで、火をつける直前の254ページ・5~6行目の描写が瓜二つなのである。自分を拒むことが自明の有為子を待つ行動。自分を拒み続けてきた金閣寺と対峙する行動。その二つをダブらせているのだとしたら、見事な伏線の張り方である。
このP.254の2行は、『金閣寺』の中でも屈指の名文である。それまでは割とゆっくりした流れで、丁寧に’説明’をしてきた文章が一気に跳躍する。たたみかけるようなスピード感。主人公の行動がそれまでとは打って変わったものであることを、そのたった2行であらわしている。おそるべし、だ。
以下私事になりますが、私が生まれ育ったのは、大谷大学のすぐそばだった。小学校の写生大会では、谷大(と呼んでいた)のキャンパスに入れてもらい、鬱蒼と茂る樹々の下でせっせと絵の具を塗りたくっていた。区民体育大会では、谷大のグラウンドで走り回った。文中に出てくる、西洋的な館・菓子店・薬局なんかも「もしかしてあそこのことかなぁ」と思い浮かべることができる。高校は金閣寺まで自転車で5分あまりのところだったりしたものだ。
市川昆監督の『炎上』は観ていないのですがもし映画化があるとすれば、有為子役は天海祐希さんがいいかなぁ(華道の先生と二役で)。溝口は?鶴川は?小市民丸出しの溝口の母は?など取り留めのないことを考えてたりもしてしまいます。
『春の雪』があまりにミスキャストなんですもの・・・。
・「麻薬」
三島の作品の中でも、最高傑作。
吃音(どもり)のせいで自閉的な主人公の抱える、屈折した願望・欲望、痛いくらいに切ない物語。
何度読んでも、そのたびに胸が苦しくなる。そしてまた読みたくなる。私にとって麻薬のような本です。絶対に読んでほしい一冊!
・「理解が深まるまで読みたい作品」
正直言って、難しい。 学僧が金閣を燃やすに至るまでの心理の変遷を描いた話であることは周知のとおりだが、その心理の変遷を追っていくのが大変なのだ。 三島は主人公の心理を、詳細すぎるぐらい詳細に説明してくれるので、きっと元来三島小説に合う人ならばすぐさまこの本の虜になることだろう。
しかし、そうでない人には少し慣れが必要だと思う。僕もそちらの部類である。だが、僕はこのような三島小説に他にはない魅力を見出すのだ。
それはひとつには現在このような、登場人物の心の琴線を、綿密に丁寧に描いた小説が存在しないと言うところから来ているのではないかと思われる。
曖昧なままごまかす…この本を読んでいて、同時に、そういう現在小説の動きにいささかの危機感を感じてしまった。
・「叙情派ミステリの極み」
今はなき探偵小説専門誌「幻影城」に連載された花葬シリーズを中心にまとめられた短編集。時代性の活写・情景描写の美しさと人間の情念の深さをみごとなまでに凝縮している。この作家の他の作品にありがちな極端なトリッキー性も薄く、直木賞受賞作「恋文」への道程を示す作品ともいえるだろう。
個人的には「六花の印」が一押し。思わず目頭があつくなる佳品である。
・「あくまで主人公は花のつもりです(作者談)。」
『恋文』などが最近だと有名で、もしかしたら恋愛小説の作家さんというイメージが強いかも知れません。多分ですが。でもこの作家さん、日本を代表する超一級ミステリ作家さんなのです。元々、伝説のミステリ誌『幻影城』でデビューなさってますし。で、日本ミステリ史上に輝く金字塔である、代表作がこちら。先述した事と矛盾するようですが、ミステリとか何とかを軽く超えて、文学作品として大変な高水準であると思います。ミステリのファンでも、そうでなくても、小説読みの方に是非お勧めしたい傑作。「花」にまつわる、耽美的で、詩情、叙情性溢れる名編が詰まってます。勿論、ミステリとしてハイパー。論理が背後であまねく支配しています。で、小説として面白いんですこれが。嗚呼、素晴らしき大正浪漫。
・「「花」に託された人の想い」
◆「桔梗の宿」
死体が握っていた一輪の白桔梗。 二つの殺人事件を繋ぐこの花は 〈ダイイング・メッセージ〉なのか、 あるいは何かの〈見立て〉なのか?
結末で浮かび上がるのは、犯人の巧緻な 策略ではなく、哀しくも切実な動機だった…。
人の行動が自分の想いとは裏腹に作用し、まったく 望まない構図に収斂させられてしまうという悲劇。
◆「桐の柩」
男と女の何重にも捩れた情念の交錯、そして 「柩」と「死体」の関係における逆説的な着想―。
やくざの世界という舞台設定と骨絡みの トリックの鮮烈さに眩暈すら覚えます。
◆「白蓮の寺」
幼少の記憶に焼き付けられた凄絶な母の姿。 果たして母は、父を殺したのか?
自らの「記憶」に翻弄された主人公が最後に直面するのは、寄って立つ 現実が崩れ去るが如き「真実」と愚かしくも美しい人の情念です。
◆「戻り川心中」
二度の心中未遂事件で、二人の女を死に追いやり、 その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。
彼が求めていたのは何だったのか?
我々は「作者」と「作品」の間に密接な 関連性を見出さないではいられません。
そんな思い込みこそが本作の犯行の不可欠な要素となっているのです。
犯人が狂おしい妄念を燃やして描き出した幻の花。 彼は自らの命を賭すことで、決して色褪せない永遠の花を手にしたのです。
・「もっと後に読めばよかった…」
御手洗シリーズを、出版された順に読むという企画を立てた自分ですが、なかなか本が届かないので、これを読みました。一日で読んでしまいました。「占星術」もよかったけど、これは心に響く作品でした。謎の主人公と一緒になって謎を探索していった後に辿りついたのは「石岡クンと御手洗の出会い」!ああ、そういうことだったのか!「占星術」を読んだだけの私でも感慨深いものだったのですから、何冊か御手洗シリーズを読んで、これが出版された時のファンの感動はもっとすごかったのではないかと思います。ある意味、もっと後のほうで読めばよかったなあと少し後悔したりもしていますが、「改訂完全版」もあるので、こちらを後のお楽しみにとっておきます。島田氏が書いたはじめての小説ということで、未熟さはあるかもしれませんが、それを補ってあまりある魅力があります。御手洗もカッコいい。感動の一冊でした。
・「カズミストのバイブル★」
名探偵・御手洗さんの永遠のワトソン、石岡和己の物語。石岡くんを心から愛するカズミストたちのバイブル!!!!島田氏の魅力が、はじめからおわりまで満載されてます。読むしかない!!
・「何度も読み直してみたくなる一冊」
推理小説というよりは、ラブストーリーみたいだったのに、無理やり推理小説的にしてしまった終わり方に矛盾を感じた。 綾辻行人が、この人に大きな影響を受けているのではないかと思った。
・「若いころに読んだほうがよいです。」
将来のことなんてよく分からない不安いっぱいの大学生のころ、なん度も読み返して勇気を与えてもらいました。作中で御手洗が愛聴しているチック・コリアの『浪漫の騎士』もぜひ。
・「まずまず!ピッピッ!」
評価が高いようで。。。いや、ふつうにおもろかったんですが、
なんだか、かなり無理があるんじゃないかと・・^^;
まず、はじめから記憶喪失の主役が、良子と同棲する過程が、あまりにワケワカメです・・
いったい、どういうことなんでしょ!?
良子はかなり可愛いコみたいで、そんなコが一緒に住もうよ!あんたに惚れえたよ!
なんて、あまりにも非現実ですんで、なんかアホみたいに感じた。
で、しばらく2人のお熱い同棲模様が描かれてますが、出会いがアホなんで
ぜんぶアホっぽく感じてしまいました。
主役が、工場の上司と酒飲むところでは、島田お馴染み「日本人論」が(^ω^) を出してますw
この作品、デビュー前に書いてお蔵にしてたということだが、
そんな時分から、日本人論となえてたんですね・・w
あと、犯人に言いたい!
おめえ、もっと効率いい事出来るだろ!頭イイんだから〜!!
御手洗に関しては、この作品のが一番好きです。
最近では海外行って、教授やら医者やらやってて、雲の上の人になってますので、
この頃は、バイク飛ばしたり、名前に劣等感いだいてたり、なんか庶民って感じなの!!
だから好き!!
作品自体は、あほな面が目立ったけど、まーフツウ
・「岡嶋二人の最高傑作」
もう10年以上前に読んだ本だが、佐藤藍子主演(TVデビュー作ではなかったか)でドラマ化されたせいもあり、細部まで良く覚えている本である。読後感はただ一言「怖い」だった。当時ダビスタにはまり、週末金曜に帰宅してから日曜に寝るまでダビスタをし、平日は仕事をサボっては読書という生活をしていたこともあり、本当に怖かった。私にとってはホラーとも言える作品である。
・「傑作」
この本は、ミステリというよりは、サスペンスと呼んだほうが合うかもしれません。たしかにミステリの要素はありますが、犯人が誰かを見つけ出すという物ではありません。ですが、ジャンル分けなんてどうでもいいことなのでしょう。決して短くはない量を、苦もなく読ませてくれる作者の文章力。綿密に調べられた情報を元に、練り上げられた構想。
そして、SFという特殊な設定にもかかわらず、完璧なまでの整合性もって驚愕のラストに読者を導いてくれます。文句なしに、おすすめできる一冊です。
コンビを解消してしまったことが、本当に悔やまれます。
・「この本がきっかけで自分は昔岡嶋二人にはまりました」
ラストが後を引く怖さ。似たような話は他にもあるがやはりこれはその深みにおいて他とは一線を画している。この本を見つけたときドラマ化されたという帯がついていた。多分小説より良い出来でないことは確かだと思うがそれでも観てみたい気がした。
・「超名作です。オススメ!」
まだこの本を読んだこと無い人は幸せです。なぜならばこれから読む事ができるからです。表と裏の区別ができない造形物の「クラインの壺」のタイトルそのままに、主人公が仮想現実ゲームにはまってしまいます。岡嶋二人らしさよりも、解散後の井上夢人ワールドの原点が垣間見えます。
・「岡嶋二人にハマった。」
私がはじめて読んだ岡嶋二人の作品です。今ネットでもなんでもバーチャルの世界が広がっていますが、それより数年も前にかかれたこの作品は素晴らしい。どんどんひきこまれるバーチャル世界。そして現実。その歪みに読者もひきこまれ、ラストまで一気に読めます。
・「すべてはここから始まった」
綾辻行人のデビュー作です。「綾辻以後」という言葉が生まれたほど、彼の登場は衝撃的でした。彼が失敗していれば、いまの本格ムーブメントがこれほど盛り上がりを見せていたかどうか、甚だ疑問であると同時に、その先駆者が綾辻行人であったということに何か宿命みたいなものを感じずにはいられません。
さて、この「十角館の殺人」ですが、数人の人間が孤島へ行き、そこでひとりまたひとりと殺されていき、最後には・・・・・・、というようにプロットはクリスティの「そして誰もいなくなった」です。読み始めてすぐに浮かんできた言葉が「青いな」でした。それは、登場人物が大学のミステリ研であるとか、ニックネームで呼び合うとか、そういうところが実生活の延長をただ著しているだけのように感じられて鼻についたのです。
が・・・・・・。
ネタバレになるといけないので深く触れませんが、私は、「青い」と思った時点で綾辻さんに負けていたのです。今もはっきりと覚えています。ラスト近くの例の一行を読んだときのあの衝撃を。頭が真っ白になり、しばらく呆然としてしまいました。大げさではなく、5分間ぐらい動けませんでした。それほどのショックでした。そして、「やられた! 騙された!」とひとりで叫んでいました。気持ちのいい敗北感でした。
すべてはここから始まったのだと、いま改めて思います。
・「私のロストバージン」
それまでも割と本は読んでいたのですが、探偵が出てきて賢しげにトリックを暴く、今で言う“コナン”的な、ミステリーというジャンルを正直軽蔑していました。
しかし、そんな私の軽蔑を180度転換させたのがこの作品です。
あの一文を読んだときの、自分だけ時間の流れから取り残されたような衝撃は、10年近く経った今でも忘れられません。それまで全く免疫が無かった事もあると思うのですが、あまりの衝撃に理解するのに相当時間がかかりました。理解したときには夜中だったにもかかわらず“何これ?”“嘘やん”“やられたわ~”と叫んでいました。
その後はすっかり中毒になってシリーズを買いあさり、他の作家の作品も物色したりで今に至っています。少し大げさかもしれませんが、あの夏休みが無ければ今の自分は無かったとさえ思える作品です。是非一度読んでみて下さい。
・「トリックの切れ味」
綾辻さんの本を読むのは、これが初めて。作者がこの小説の原型を書いたのが22歳、大学4年のときというのは驚く。おどろおどろしさが足りない、動機がいまひとつ納得できない、人物模写にやや不満がある…といった批判はあるだろうが、一行で、すべてを明かす、トリックの切れ味が、それらを上回り、このミステリーを傑作として歴史に残していると思う。クリスティーの「そして誰もいなくなった」を意識しているのは確かだが、孤島での殺人事件の合間に、陸上での探偵劇をいれて、謎の奥行きを深くし、最後のトリックの切れ味を磨いている。新本格派というと、論理重視のパズル的な作品群というイメージがあったが、それが間違いだったことがわかった。文庫版あとがきで、奥さんであり京都大学の推理小説研の仲間の作家・小野不由美さんに、お礼を述べているのが印象的。
・「衝撃でした」
綾辻氏の作品を呼んだのはこれが最初でした。ずいぶん前の話になってしまうのですが。とにかく、今まで「こんな本があったらいいな」と思っていたものが形になった!推理研究会のニックネーム付けなんて、内輪受けでしかない楽しみではあるが、このころの年代ってこういうつけ方がとても楽しかったりするのだよね。
綾辻氏は、ほかの作家と違って、トリックを「対読者」にむけて書いている。これも、本でしか味わえない醍醐味だろう。犯人を読者にわからせる演出の妙には恐れ入る。この演出のにくさは彼の真骨頂である。(「時計館」しかり)舞台の演出家っぽい見せ方なのだ。舞台にはできないけど・・・
設定、トリック、すべてに斬新で「本格」。海外推理ものを読んできた人だなあ、と思いました!!。小説にロマンティシズムがある。
クリスティの「そしてだれもいなくなった」に倣った作品ではあるが、日本でしか読めない小説だと思います。残酷な青春小説という気もする。
・「鮮やかなどんでん返し」
今まで、その存在は知っていた綾辻行人という作家。私は2005年になって初めて読みました。「十角館~」は1987年のデビュー作です。
実は私は、綾辻作品および「館」シリーズを読むのは「十角館~」が二つ目だったのですが、どんでん返しのあの1行にビックリしました。その切れ味の良さ!この作品から出会っていたならば、もっと鮮烈さを増していたかもしれません。
だから、これから綾辻作品の「館」シリーズを読まれる方はこの作品から順番通りに読むことを勧めます。
お互いのことを海外の文豪の名前から付けたニックネームで呼び合うミステリ研の仲間たち。この名前こそがこの作品のキーになってる事柄でありまた、海外の文豪をあまり知らない私には、その文豪達を知るキッカケにもなりました。
・「我孫子武丸氏が見せた神技」
我孫子武丸氏の現時点での最高傑作であるとともに、戦後の日本推理小説史上の一傑作である。我孫子氏がこの作品で、極めて鋭くえぐったものは、巻末の笠井潔氏が指摘する通り、確かに現代日本の病理である。
犯人の狂気は、作品中にみなぎっている。しかしこの作品のテーマはその描写、だけではない。
「原因を、自分ではない誰かに、とにかく押し付けようとする」
という現代日本そのものの狂気が、かいま見られたような気がする。
・「来るべき未来としての現在」
我孫子武丸の代表作と名高い一冊。連続猟奇殺人を巡る、元刑事、犯人、母親の3者の視点で語られる。絞られた登場人物、張り巡らされた伏線。トリックを一つに抑え、一文も全体も引き締まった印象を与える良書。グロテスク描写に注意。
まず、初出が1992年であることに驚く。作中で言及される、幼女連続殺人事件が起こった時は、まだこのような話は非日常の異常事態として捉えられたはずなのだ。現在では、良くある話として捉えられてしまう。犯人視点での幼稚な思考、病的な心理、家族崩壊、見つからない手がかりと並べると、まるで2007年現在に書かれたように感じられる。
犯人の心理がよく引き合いに出されるが、母親の異常心理も相当にリアルである。探偵役(名探偵ではない)の元刑事側が、周囲の人間との関わりからやがて活力を取り戻すのと反比例するように、犯人側の家族は壊れていく。この小説のような状況が15年も前に予言されていた。そして、その状況が当たり前のように受け入れられる現在こそ、真のホラーであろう。
・「二度読まねばなりません」
惨殺シーンは気分が悪くなるほど残酷、少し悪趣味かなと思った。しかし、読み易く想像を膨らませる見事な表現力はすごいです。読み始めに、エピローグで死んだ人は誰なんだろうと考えました。読み進める内にその人の像は頻繁に変わっていくと思います。
登場人物が少ないので、結末は限られるんじゃないかと考えてました。しかしラストに近づくにつれ、胃がキリキリと痛むような緊張感を味わいます。先の展開が全く読めない、躍動感を感じる怒涛の展開。そしてラストのページを読んで唖然としました。はぁ?どういう事だ、と。少し考えて、俺は騙されていたと気付きました。また読み返さねばと思わせる衝撃のラストです。
こんな騙しが用意されてるとは…。途中で気付いた人は天才です。全部読んでも混乱しています。なので、もう一度しっかり読み直さねばという気持ちにさせられます。確かに不快な描写もありますが、最後に読んで良かったと思える作品です。
・「巧妙な騙しのテクニック」
作者は、綾辻行人氏の成功により「新本格」派が台頭する中、その内の一人として出てきた作家。デビュー作は「8の殺人」であるが、これは一読未熟な出来だった。そのせいで作者の作品からは遠ざかっていたのだが、久々に手に取ったのが本作。
・「驚異の作品」
ミステリなどというものは往々にして惨劇ばかりが 強調されていたり,凝りに凝ったトリックで 読者を頷かせたり,といった代物ばかりだと思っていた. しかし,この作品はそういった私の固定観念を 見事に破壊し尽くしてくれた.
サイコキラーの話であるから,確かにそれ相応に 血生臭い描写が散見される.そういった意味では 優良図書とはいいがたいのだが,
この作品の本質はそうした表面部分にあるわけではない. 作者一流の,哲学の要素をふんだんに取り込んだ 冷静な思想がなかなかにおもしろい。 そして何より,最後まで読んで始めておとずれる 超弩級の驚き.内容をここに書けないのは 非常に残念ではあるが,読んだ者だけが味わえる 格別の世界がある.
保証します.文学史上屈指の作品です.
・「だまされたと思って」
渋谷の女子高生の間で広まっている都市伝説同様の事件が起こる…という単純な構成なのですが、本当にうまくつくられています。いわゆる本格モノではなくサイコサスペンスの系統ですが、人物造形や文章も読みやすく優れていると思います。特に(大量に登場する)女子高校生の描写がおもしろく、バンドの追っかけをしている少女の心理描写などはあまりにリアルなので「え?書いているの男の人だよね?」と確認してしまったほどです。そして、帯にもあるように、「最後の一行」でどしん、と落とされます。はらはらしたい人にオススメです。
・「そういうオチか!!」
いい意味で、最後に裏切られました。私的にはこういう「オチ」ありかなーと思いました。「やられたー!」って感じです。昔から「都市伝説」には興味がありましたが。それをストーリーの中で上手く使い、盛り上げていく様はさすが。いっきに読んでしまうストーリー展開でした。
・「衝撃のラスト1行」
荻原さんの作品とは「神様からひと言」で出会いました。「神様から〜」はユーモアあふれる作品で、楽しみながら読ませてもらいました。
そして私が接する初めての荻原ミステリーであるこの作品の売りは、「衝撃のラスト1行に瞠目!」です。いったいどんなことかと期待しながら読み進めていきました。都市伝説と絡んだ事件の展開も、登場人物の描写も見事で、一気に読んでしまいました。そして最後に事件が解決して一件落着かと思いきや…。一瞬何事か気付かなかったのですが、ちょっと考えてみると…。「おお〜」と思わずうなってしまいました。確かに「衝撃のラスト一行」でしたね。ぜひ皆さんも体験してみてください!
・「とにかく読んでみればいい・・・と、思うよ。」
俺個人としては萩原浩作品の中で一番好きです。
・「ラスト一行」
何か面白い本はないかと本屋をぶらついていたら気になる帯を発見!!「衝撃のラスト一行に瞠目!」ラスト一行に何が起こるんだ!?と思いながら心のどっかであまり期待していませんでした。【どうせ過剰表現だろう・・・】でも、読むうちに続きが気になり、一気に読み進めました。そして、とうとうラストまで読みました。衝撃でした。まさか、ラストにあんなことが・・・
萩原浩さんの作品は初めて読みましたが、すごく読みやすく、本の中に入り込め面白く最後まで読めました。友達にも勧めたいと思う一冊です。
・「暗い、暗い海」
暗くてどんよりとした海。流れてはひいて、ただ同じ営みを永遠に繰り返すような、その捕らえどころのない海・・・。捕らえどころのない日本人の罪の意識。確固とした神を持たないことで、はっきりと姿を現すことのない罪のかたち、その不気味さ。作者はそれをこの小説にて絶妙に描き出している。特に戸田の子供時代の独白には、本当にこずるい子供になら誰にでも起こりえるような無意識の演出・・・自分をよく見せよう、自分の人生をレールからはずれないようにしよう、他人からより多くの賞賛を得よう、として行う演技、ほんの少しの罪・・・が克明に描かれている。世間にそれらが露呈しない限り、戸田の罪は裁かれることがない。そして彼は何の障害もなく、「先生」と呼ばれあがめられる医者の職を得て、何食わぬ顔をして生活している。彼の罪は、寄せては返す漆黒の海に、ただ、呑まれてたゆたうのだ。
きっとそんな罪の埋没は、私のすぐ身近なところにも存在している。そして勿論、私の中にも・・・。それは、不気味なことであると同時に、とても興味深い。罪を埋没して、人を普通に生かす「黒い海」が、きっと私の心の中には確かに存在しているのだ。自分の精神の原点に立ち返り、今一度自分を見つめてみたとき、そこに知らない、底知れぬ黒い穴を見つけてしまったような、すっと背筋が冷たくなる不気味さがある。見知らぬ自分が、そこには居る。自分について、日本人について、深く考えざるを得ない、とても興味深い一冊。
・「読み応え充分!!」
数多く本を読んできましたが、深く印象に残る作品にはなかなかめぐり合えないもの。この「海と毒薬は」そんな数少ない本の一冊です。しかし読んだ後「良かった」という類の印象ではなく、とにかく考え込んでしまう。主人公「勝呂医師」の稀有な経験、その後の彼。もし自分も勝呂医師と同じ立場にいたら、やはり白人捕虜の生体実験に参加しただろうか?
初めて読んでから数年経ちますが、今だふとこの作品について考える事は多いです。そして「今まで読んだ本で良かったのは?」と聞かれると、真っ先にこれを挙げますね。割と薄めの本ですが、それでも得られるものはとても多いと思います。
・「良心の模索」
世界大戦下、戸田と勝呂という二人の医学生の、アメリカ人捕虜の人体実験という倫理的・人道的背反に対する対照的な態度を軸に医学に携わる者の良心のあり方を問う秀作。実話をもとにして人間の内面的葛藤を掘り下げていて、単なるスキャンダルの暴露ではなく、もともと存在していた医局の派閥争いに倫理的問題と登場人物の生育歴を絡めて複雑な心理描写がリアリティーを持って表現されている。戸田と勝呂は性格的には対照となるように書かれてはいるが、両者とも医者として、および人間としての良心の所在を模索しているという点で共通している。この作品に限らず、人間の弱さと苦悩に光を当て、心の深層を追求している著者のテーマの一貫性に惹きつけられているのは私だけではないと思う。短編ではあるが、深く重い1冊である。
・「良心とは?神とは?医療倫理とは?」
戦争の末期、大学病院でおこったという白人捕虜の生体解剖事件を題材とし、良心とは?神とは?を問いかける。著者の初期長編であり、その後の著作に繋がるいくつかの題材が含まれている作品である。
事件の当時研究生だった主人公。彼は助からない患者をそれでもなんとかしようと努力を続ける医師でもあったが、死に行くものをどうすることもできない虚しさも感じている。その周囲では教室間の競争で手術をさせられ、その失敗も隠される患者がある。そんな中で捕虜の解剖が「戦場での手術の基礎データ」のため、と計画される。 描かれた大学病院の教室間での競争は、どこか「白い巨塔」に通ずるものがある。しかし、事件に参加した医師自身は、逆らえない上司の命令に従ったというのとは少し違う思いを持っている。主人公は「断れば断れたのだ」がもうどうでもいい、と承諾してしまう。もう一人の研究生は、自分には良心がないのでは、と思い続けている。 戦時中という異常な状況のせいなのか、人間の持つなにかがそうさせてしまうのか。病院から臨める海が題名にも取り上げられているが、深く暗い題材がその海にうねりただよっているようである。「成果という大義名分」や「医の倫理」といった医療にも深く関係した問題提起を含むので、医学系の職業に携わる、あるいは携わろうとする人には、是非一度読んでもらいたい本である。ちなみに著者は、自身が結核で何度も手術を受けるなど、患者としての経験の中から医療問題にも積極的に意見を述べている作家であったことも記しておきたい。
提起された問題があまりも深く暗いこと、複数の関係者の視点から描いた手記風の体裁をとっているので一つの中心が見えにくいことなどから、小説としては一つの結論にむかって凝縮していくことはなく、まとまりきっていないような感が残るかもしれない。 著者自身もこの題材をもう少しなんとかしたかったのではないだろうか、この作品のおよそ20年余り後に書かれた「悲しい歌」では、この作品の主人公の医師が再び登場する。著者も年齢を重ね、人生の体験をさらに踏まえて書かれた「悲しい歌」も、合わせて読むとよいと思う。
・「黒い海に押し流される破片」
勝呂は米軍捕虜の生体実験に参加する。なにか大きな抗えぬ力に押し流されるように。
こうしたことは誰の人生でも幾度かは経験することではないでしょうか。友人や、会社がこうした「力」になることは間々あります。そのとき、わたしたちは抗うことができるんでしょうか。
好きな作家である遠藤周作作品の中でも好きな一冊です。
・「ミステリ&恋愛小説」
今までとはまったく違う面白い作品でした。主人公は刑事の幽霊。どうして自分が殺されることになったのか捜査を始めるが、ものには触れないし、ひとに話しかけても聞こえない。誰も自分を認めてくれない。結婚を考えていた恋人さえも。ものには触れないのにどうして椅子には座れるのか、とか、バスには乗れるのか、といった小さな疑問はさておき、その捜査の過程がおもしろい。自分を殺した犯人はわかっているが、動機が全くわからない。唯一自分と話すことの出来た同僚早川くんとともに真犯人に迫っていくが。。。
これまでのように、トリックに重きを置いた内容ではなく、恋愛小説としても読める、ひと味違った有栖川氏が楽しめます。登場人物(特に主人公の恋人須磨子)の心情がよく描けていると思います。有栖川氏の作品にはやっぱり早川君のようなちょっととぼけたようなキャラクターがかかせませんね。内容として結構ありきたりかなあ、なんて思いながら、しかし有栖川ファンとしては読まずにはいられない、と思って買いました。◎でしたよ~。不覚にも最後はうるうるしてしまいました。
・「涙です。」
有栖川さんの著書でここまで恋愛色の強い作品はないということもあって読んでみたんですが、すごくいい話でした・・・。もちろんミステリ小説としてもよくできてると思うのですが、ミステリ苦手な人にも是非薦めたい恋愛小説です。殺されて幽霊になってからも恋人を想いやる心。思い出しても胸がつまりそうです。だけど、初っ端から死んでいた主人公なんだから、ラストは当然想像がついていたけど・・・。ハッピーエンドではないと思います。でも、最善の終わり方だとは思ったかな。読み終えてから涙がちっとも止まらなかった。
・「楽しいユーモアと推理の興奮、そして感動」
「幽霊もの」ならではの哀切なラストは確かに感動的です。が、売りとしてそればかり強調されているので、湿っぽい話は苦手だなという方に一言。全体にユーモアの豊かなカラリとした作品です。特に主人公の幽霊と唯一コンタクトできる後輩刑事が青森のイタコの孫と設定されているあたりなど爆笑もの。この後輩が実に良く描けてますし、銀行強盗などのサブストーリー、怪盗(?)ドクターXなど脇役も光って、とにかくエンタテインメントとして魅力一杯なのです。謎解きはさすがこの人の本領だけあって伏線のバラマキと収集が実にテンポ良く鮮やか。唯一、第一の事件と第二の事件の心理的な結びつきが説明不足に感じましたが、大した問題ではありません。シリアスな視点で読めば、一部のキャラクターが類型的とかいう批判もできるのでしょうが、そのへんを割り切ったところも成功の原因だと思いました。読み終えたあと、最後まで明示も暗示もされないままの主人公の行き先が天国であることを強く願う気分にさせられます。
・「涙です。」
有栖川さんの著書でここまで恋愛色の強い作品はないということもあって読んでみたんですが、すごくいい話でした・・・。もちろんミステリ小説としてもよくできてると思うのですが、ミステリ苦手な人にも是非薦めたい恋愛小説です。殺されて幽霊になってからも恋人を想いやる心。思い出しても胸がつまりそうです。だけど、初っ端から死んでいた主人公なんだから、ラストは当然想像がついていたけど・・・。ハッピーエンドではないと思います。でも、最善の終わり方だとは思ったかな。読み終えてから涙がちっとも止まらなかった。
・「愛すべきおバカミステリ」
読んでいる途中で、何度か某・我孫子氏の作品ではないか、と思い込んでしまったくらいに、他の有栖川作品とはかけ離れた印象。読み始めの印象はそんなところでした。
が、読み進めてみると、これは娯楽小説でも恋愛小説でも刑事小説でもなく、紛れもない「推理小説」であると言う事がよく分った。
「幽霊」という不自由極まりない身分になってしまった主人公は、見方を変えれば「プチ嵐の山荘」状態であるし、二転三転する展開は、読んでいて飽きさせないものだ。もしかすると男性限定の感想なのかもしれないが、主人公に思わず感情移入してしまう部分もあり、エンターテイメントとしの部分もしっかり持ち合わせている所が、ニクい。
残念な点はと言えば、雑誌連載(?)だったためかエピソードがぶつぶつ切れていて、長編として読むと多少の違和感を感じる事か。が、そこの所は割り切ってしまえる所なので、個人的には減点にはならない。
重いミステリの合間に読むと、清涼剤のようになる作品
・「暖かく、優しく、ちょっと寂しい「匂い」」
女性ばかりを狙った猟期連続殺人事件-目を背けたくなるような酷い手口。と書くと流行のスカーペッタシリーズやレクター教授ものを思い浮かべるかもしれない。「オルファクトグラム」は、そこで起きる事件は両シリーズに劣らないくらい残酷で悲惨だが、いわゆる「猟期モノ」とは違う。この本から一貫して漂うのは暖かく、優しい、そして、少し寂しい「匂い」だ。
主人公は大好きな姉を狡猾な殺人者に殺されてしまう青年。愛する肉親を殺された彼は犯人を警察には出来ない方法で独自に追いつめていく。殺人者によってもたらされた彼の「鼻」の特殊機能-訓練された警察犬以上の嗅覚-を使って。
この本に描かれる「匂い」のイメージは美しい。身の回りの「匂い」がオレンジや赤や青の光る透明の結晶となって読む者を圧倒する。本の中ではそのイメージをCGで再現する試みが描かれているが、もしそんなソフトが本当にあったら絶対欲しい。「匂い」のイメージをここまで美しく視覚化したのは井上さんが文学史上初めてではないだろうか。
この特殊な設定に加えて、犯人を追いつめていく緊張感と危機の連続、頁を繰る間ももどかしいようなスピード感で500頁を越える長編なのにあっという間にラストにたどり着いてしまう。(アア、ナンテ、モッタイナイ!) そして迎えるエピローグは...ご自分の「目」でその「匂い」を確かめてください。
・「人間ってけっこう凄いじゃん」
週刊誌に連載されていた頃にぽつぽつと読んでいた。この作家のほかの作品をあいにく知らない。この小説がどんな風に分類されるのか、興味もないが、作家はよくぞ嗅覚や脳のことをここまで研究したものだと感心してしまう。そして、人間そのものの身体の機能のすばらしさ、また心のやさしい人間がまだまだいること・・・架空の物語なのだけれど、けっこう「人間ってまだまだ捨てたモンじゃない」と言う気にさせてくれた一冊だった。もちろん、殺人犯は別だけど・・・・。
・「すごい(・∀・)」
あらすじだけでは意味不明〜!でも読み始めると画が浮かんでくると言うか…想像力が刺激される!!ストーリーもイイ。おすすめ('∀` )
・「理想から乖離した現実に打ちのめされることになる」
たいへん面白かったです。 死刑囚が思い出した「記憶の断片」「階段の記憶」を無罪の証拠とするために、弁護士が取り次いだ篤志家の意向を受けて刑務官の南郷と仮釈放中の青年純一が調査をはじめます。 すると、その事件にはやはり、別の犯人がいる可能性がでてきて…。 死刑囚が判決を受けるにいたった事件のほか、刑務官南郷の今までの職務内容や純一の起こした事件など、たくさんの事柄が語られていてとても興味深い筋立てになっています。 そのうえ、それらが後に伏線だったことに気がつかされ、何度も驚かされます。 とても重いテーマを扱っているのに文が巧みでスラスラと先に読んでいけます。 登場人物が魅力的で、感情移入がしやすくその心理描写が丁寧に描かれているうえ、推理小説としての謎解きも申し分なく描かれています。 一気に読めて、とても読み応えのある小説。 私が今年読んだ小説のなかで一番に面白かった本です。
・「「死刑」についていろいろ考えさせられた作品」
死刑囚の冤罪を晴らすため、刑務官の南郷と前科を持つ三上が調査に乗り出す。
物語が進み、徐々に真実が明らかになる中で、登場人物のほとんどが真犯人に思えてくるほど、多くの伏線が張ってある。物語の後半から一気にストーリーが進み、真犯人は非常に意外な人物であった。作中、死刑制度の詳しい解説・死刑執行の方法が書かれており、読み手の知的好奇心を満足させてくれる。死刑執行の描写は非常に生々しく、サスペンスとしてもお勧め。罪を犯した人間を国によって殺す「死刑制度」の必要性についてや、国が発出する命令書のため現場で実際に死刑を執行せねばならない刑務官の苦悩など、普段あまり意識していなかった死刑について深く考えさせられた。
・「罪を背負って生きること、罪を背負って死ぬこと」
死刑。死刑制度は今、その有無が問題になっています。私はこの本を読むまで、罪を背負って死ぬ「死刑」について深く考えたことはありませんでした。正直、死刑制度についてどんなことが行われているのか…わかったのですが、あまりに衝撃的でした。読んでいただくとわかるのですが、死刑を執行するという仕事に関しては、まして考えたことなどありませんでした。「だれかがやらなくてはいけない。」そんな言葉が強く印象に残っています。死刑が良いか悪いのかは、はっきりとは言い切れませんが、罪や死と向き合う登場人物達は人間味がありました。だからこそ、深く考えさせられました。
内容としては、読み始めると続きが知りたくなるようなミステリーです。私は、夜読み始めて、止められなくて読み終わるころには朝方になっていました…
・「やられた・・・」
正確には4,5点くらいかな?ただ、素直に面白かった、というのは確か。犯罪者の社会復帰や、それにまつわる保護司という社会派のテーマでありながら、しっかりとトリックなども生きていて面白かった。乱歩賞作品はいくつか読んでいたのだが、どちらかと言うとアクションというかサスペンス的な要素が強く、ミステリとしては弱い部分が目立つ作品が多かっただけに、賞に対しても見なおした。
ただ、筋は通っているのだが多少トリックに無理があるような・・・。微妙にその辺りが気になってしまった。
・「もっと早く読めばよかった」
「13階段」。この題名がなんとなく好きになれなくて今まで読まなかったのだが、もっと早く読めばよかったと思う。まず、小説として面白かった。主人公の一人である元刑務官「南郷」を通して描かれるリアルな死刑執行の場面と優秀な刑務官であるが故の彼の苦悩。物語終盤での意外な展開。そしてラストシーン。この作品を発表する前は脚本家だった著者の文章は、読みながら頭の中にすぐ映像が浮かび視覚的で分かりやすい。ページを捲る指が止まらなかった。推理小説・エンターテインメントはこうでなくちゃ、と思う。
ただ、前科者の心理状態については、主人公の一人である三上と同じく殺人(三上は傷害致死となっているが)を犯した人物を扱った吉村昭の『仮釈放』の方が優れているような気がした(この作品は推理小説ではありませんが是非読んでみて下さい)。
死刑制度の是非、冤罪事件、刑罰は何の為にあるのか…犯罪者への報復であるとする応報刑思想と、犯罪者を教育改善して社会的脅威を取り除くという目的刑思想それぞれへの疑問。そして行刑制度のあり方。この重いテーマを多くの人に考えてもらうには、専門書的あるいは純文学?的小説ではなく、より多くの人に読まれる推理小説・エンタティンメントの形式で書かれた意義は大きいのではないかと思う。ただ、著者にその意図があったかどうかはわからないのだが…。
・「新人離れした卓越した手腕」
作者のデビュー作にしてメフィスト賞受賞作。凡作の多い同受賞作にしては出色の出来。サイコ・キラーの「ハサミ男」が自分の犯行手口を真似て殺された女性の死体を偶然発見するというギャグ的発端から始まって、目くるめく結末まで精緻な構成で読ませる。
自殺未遂を繰り返す「ハサミ男」の真の姿が徐々に明らかになっていく展開、「ハサミ男」が自分の犯した犯行のうち冤罪だけは晴らそうとするナンセンス、「ハサミ男」の冤罪事件の真犯人の意外な正体、"長さん"というデカがいる明らかにTVの刑事もののパロディの捜査陣。これらが渾然一体となって、とぼけたユーモアと乾いた文体で綴られていく。この作者の手腕は新人離れした卓越したものがある。
作者はこの後も、「美濃牛」、「黒い仏」など多彩な作品を発表しており、久々に期待の作家登場という感じがする。人間の深層心理を鋭く抉ったサイコ・キラーものの傑作。
・「『シリアル・キラーが探偵役の謎ときミステリ』」
「シンプル」かつ「巧妙」。精巧に作り上げられた秀作。一回読み終えた後、もう一度最初から読み返したくなる話。
・「納得しちゃあいけない。もっと怖いんだから。」
映画版は、ぜんぜん違う作品だった。ひどくどんよりしていたし、原作が「納得させまい」としているのに対し、映画は「納得できる理由」を用意してしまった。 事件の謎は解けるが、作中最大の謎は、最後まで解けない。そこが、実に不気味で、この小説の肝である。 ミステリを読み慣れている鋭い人なら、意外と簡単に、トリックが見破れるらしい。しかし、トリックが見破れたからといって喜んで、それだけでこの作品を“駄作”だと決めつけてはいけない。この小説は、もっと怖い。
「ハサミが切り裂くのはあなたの心の闇―」
というのは映画版のキャッチコピーだが、闇を切り裂いても、そこから光が射し込むわけではなく、むしろ、その裂け目から、内なる闇が染み出してくる怖さ。ハサミ男の闇と、そのハサミ男によって切り裂かれた、ある人物の心から染み出した闇とが、この小説の全篇を覆っている。それでいて、文章は妙にカラッとしていて、ユーモアがあって、軽い。それがよりいっそう、怖さを際立たせてもいる。
映画「模倣犯」が好きな人なら、この「ハサミ男」も気に入ると思う。報道に対するシニカルな見方とか、似ている。作中の言葉を借りるなら、「納得したい」人には、薦められない作品だ。「納得したい自分」をちょっと見直して、深みにはまってみることができる人なら、最高に刺激的な読み物だと思う。
・「日常」
殺人鬼の日常を描いた作品です。この殺人鬼は、何故殺人をするかなんて事を自問自答したりはしません。朝起きたら顔を洗うように、空気を吸うように、人を殺す事をごく当然のことだと思っています。
殺人鬼の視点から書いたパート、警察の視点から書いたパートが交互にでてくるんですが、私は、殺人鬼の視点から書いたパートが好きです。殺人の下調べの為にどの駅を使った、仕事場で上司にこんな仕事を頼まれた、喫茶店で何を頼んだかまで、細かく描写しています。そのおかげで、殺人や自殺といった非日常的なことをやってるのに妙な人間臭さ、現実感が漂ってます。そんな、非日常と日常の混ざり合った混沌とした空気がいい味出してます。
最後でひっくり返すミステリー的なトリックを使ってはいるんですが、そんな物おまけ・付けたし・飾りなんですよ。私は、トリックを知った上で二回目を読んでも充分楽しかった。これは、殺人鬼の日常を楽しむ作品です。
・「どうやって映画化すの?」
殊能ファンになった記念すべき一作目。小説読む時に小難しい理屈はいらないという私の持論は、殊能ワールドをすんなりと受け入れることが出来ました。どうもミステリー好きという方は何というか、格式やら文章力やら構成やらトリックやら、と言うのが常のようですが、殊能ワールドにそんなものは通用しません。論文じゃないのですから、面白いかそうでないか、そんな単純なものでよろしいかと思います。で「はさみ男」は面白い。映画も観に行きます。まぁ、難を言えば、どうも好きな時にしか作品を書かない素振りが見られ、早く新作を読みたい私にはじれったくて仕方ありません。
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