クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫) (詳細)
貴志 祐介(著)
「ほんとにあるかも」「無駄のない面白さ」「手に汗握るゼロサムゲーム」「夜一人では眠れなくなる」「面白いからッ!!」
とげ (小学館文庫 や 2-6) (詳細)
山本 甲士(著)
「一気に読んだ」「医学関連ごった煮エンタテイメント」「テーマは常に高齢化社会」「読後背負う課題が残る本」「ある意味凄いよ」
シャトウルージュ (文春文庫) (詳細)
渡辺 淳一(著)
「最高に面白かったです」「まさにそのとおりなのよと叫ぶ人が多いのではないかしら」「調教をさせる男の立場で描いた渡辺淳一版「O嬢の物語」?」「妖艶で でも男女の気持ちのすれ違いが。。。」「男は愛する女のすべてを征服したい」
巷説百物語 (角川文庫) (詳細)
京極 夏彦(著)
「すげえ・・・!」「置いてけぼり」「非常に読みやすい作品です」「初心者向け短編集」「すいません、にわかファンですが・・・」
続巷説百物語 (角川文庫) (詳細)
京極 夏彦(著)
「そんなつもりで読み始めたわけじゃないのに」「人気シリーズ」「京極堂シリーズより好きです」「読みごたえあり」「質の高さにただただ驚き」
「読んでないとわかんないような批評になっちゃった・・・」「作者の長所がよくでた、社会派ミステリーの傑作」「もう何度読んだかわからない。だけどその度に引き込まれるゾ」「最高傑作!」「登場人物たちが生きている」
青葉繁れる 新装版 (文春文庫 い 3-27) (詳細)
井上 ひさし(著)
「心の底から「笑える」」「訛りがたまらない」「青春小説の佳作」
QED―百人一首の呪 (講談社文庫) (詳細)
高田 崇史(著)
「パ・ズ・ル」「なかなか」「平安時代に興味が湧きます。」「謎学好きにお薦めします。」「この本だけ読んだ読者は評価を誤る」
占星術殺人事件 (講談社文庫) (詳細)
島田 荘司(著)
「こんな小説があったとは。」「これから『占星術殺人事件』を読めるシアワセ」「あまりに濃厚なカタルシス」「正統派ミステリー」「まぎれもない傑作、近年まれに見る本格派」
笹まくら (新潮文庫) (詳細)
丸谷 才一(著)
「日本を代表する長編小説の一つで、言うまでもなく傑作です!!」「文句ない傑作です」「市民と臣民(=兵隊)、内的倫理と世間、日本の支配の配電盤の不変性」「考えの及ばなかった世界を生きいきと描く」「悪夢」
「未完、だが」「心理描写の奥行きの深さ」「あの世で問い詰める」「際立つ人間模様」「最高の近代小説」
悲の器 (新潮文庫 (た-13-1)) (詳細)
高橋 和巳(著)
「「悲の器」文庫版」
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>か行の著者>貴志祐介
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>か行の著者>その他
文学・評論>SF・ホラー・ファンタジー>日本の著者>か行の著者>その他
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>ま行の著者>その他
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>た行の著者>その他
文学・評論>ミステリー・サスペンス・ハードボイルド>日本の著者>さ行の著者>島田荘司
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・「ほんとにあるかも」
「火星」と姿の分からない主催者が呼ぶ場所に集められた数名の男女が出口を目指して競い合う人間が人食い鬼に変わっていく様がリアルでしたなぜこんな大掛かりな仕掛けがされていたのかという理由も明らかになり実際に起こってもおかしくない、と思えるのは作者の技量によるところでしょう続きが気になって一気に読んでしまいました
・「無駄のない面白さ」
「バトルロワイアル」、ホラー映画「CUBE」、「ソウ」上記3作品を足したような小説。これらが好きな方はきっと楽しめると思います。
面白い小説は多いけれど、これほど先が気になって気になってしょうがない!早くこの話の謎(結末)が知りたい!という気持ちになったのは久し振りでした。
・「手に汗握るゼロサムゲーム」
「ゲームは開始された」見知らぬ土地(火星?)で始まった生き残りをかけたサバイバルゲーム。良くありがちな設定かと思いきや、その圧倒的な描写力でぐいぐいストーリーに引き込まれ、「次はいったいどんな展開が・・・」と手に汗を握りながら、ページをめくり続けた。 最後の結末は賛否両論あると思うが、私自身は十分満足できた。それにしてもグールの描き方や、恐怖の煽り方は天下一品。
・「夜一人では眠れなくなる」
「黒い家」を読んだあとに読みました。だいぶストーリーのタイプが違うなと思い、こんなことあるわけないと思いながらも、自分も藤木という主人公と一緒になってグールから逃げているような気になり、一気に読んでしまいました。夜中に読み終わったあと、恐怖感と興奮が冷めず、眠れなくなってしまいました。 一人でいる時には読まないほうがいいかもしれません。 知らず知らずのうちに、作者の意図にはまってしまいます。
・「面白いからッ!!」
タイトルも惹かれるし、読んでいっても苦にならないテンポの良さ!基本的に小説を原価で購入しない自分が、本屋できちんと新書を購入した一冊!一読目はラストに物凄くがっかりしましたが、二読目はそんなにイヤじゃなかった。ただ、主人公が『ゲーム』に参加する事になってしまった経緯だけが未だに分からない。(分からないままなのが面白いのは分かってるケド)
だんだんと追い詰められていく人々の心理状態、凶暴性が露になっていく過程、所詮人間も『知能を持つ獣』だという感覚に、読み手は引き込まれます。 ・・・とりあえず、未読の方は読んでみてください。損はないです!
●破裂
・「一気に読んだ」
2段組で450ページもある。買おうかどうしようか、書店で手に取った時、ためらった。でも、いったん、読み始めたら、止められなくなった。面白い。とにかく、面白い。ぐいぐい、ストーリーに引き込まれ、ラストまでたどり着いた時、我々は、来たるべき高齢化社会に対して、切実な問題をつきつけられる。読後、心の中に、ザラリとした感触を残す未来図は、絵空事ではないのだ。
・「医学関連ごった煮エンタテイメント」
医療裁判、高齢化社会、尊厳死問題に大学病院の教授戦を絡めて、ぐいぐいストーリーを展開させていく。暗殺、薬物乱用、恋愛もあって、エンタテイメントとして飽きさせない。 焦点ボケと感じる読者もいるだろうが、作者のサービス精神と割り切って、身を任せて読んでいくと気持ちいい。最新医療技術も散りばめられ、センスがいい。 ずいぶん前から気になっていた小説だが、読んで損のない面白さだった。
・「テーマは常に高齢化社会」
「廃用身」から引き続く、高齢化問題を問い掛ける力作。だれもが頭のどこかで考えてはいるが、とりあえず見ないふりをしている問題に、こういう方法はどう?と提案してくるのだが、方法が怖すぎます、久坂部さん。だが、ずっと提案し続けていってほしい気もする。最後に、それは悪いヤツだけど、佐久間の扱い、あそこまですることはないのでは…。別の意味、働き過ぎへの警鐘でもあるのかもしれないが。
・「読後背負う課題が残る本」
平成版『白い巨塔』かと錯覚するような医療ミスから始まる主人公を5人に設定し、それぞれの立場からの感情を含ませながら医療裁判へ物語りは傾斜してゆくが・・・・一見医師会への告発的小説に見えるが、読後視点は老齢化社会へ変化する日本社会が抱える高齢化の将来国家は破綻せざるを得ないかのような高齢者が増加するその原因とも言えるのが、進歩した医療であり生きながらにして、寝たきりの生活を余儀なく強いられる老後でいいのか?その問題に個人的見解で老人を天寿させようとプロジェクトを組む厚生労働省の佐久間医療ミスを犯し裁判に持ち込まれた香村2人が迎えるラストは強引ではあるがこの小説は読後に背負う感が否めない高齢化をどうしますか?と問いかけられて終わるからだと思う
・「ある意味凄いよ」
医療関係者です。小説としては、「白い巨塔」の二番煎じの感を否めず、物語や登場人物の煮詰め具合も「白い巨塔」を越えられなかったのでは、と思います。しかし、医師、看護師、官僚の心情や行動、また医局、医学部、医師会といった組織の実態は、「白い巨塔」を含め他の医療モノを凌駕するリアルさで描かれており、凄みさえ感じました。医師でもある作者の面目躍如といったところでしょう。医療を取り巻く法曹界やマスコミの実情はどうなんでしょうか。業界筋の感想を聞きたいです。佐久間のプロジェクトも現実味を帯びていて不気味です。基本的な方向性は、現実に役所が描いているロードマップと同じですから。
・「最高に面白かったです」
お見合い結婚したエリート医師とお高くとまったお嬢様はセックレスであった。そこで医師は、妻・月子となんとしてでも性生活をしようと考え100万フラン支払ってフランスのあるお城に入れて3ヵ月間、調教を依頼する。はじめ拒否していた月子だが、エステのようなマッサージから始まり、全身を羽で優しく撫でられ徐々に女性の悦びを知り自ら身を任せるようになる。フランス人の女性を口説く言葉には数多くあり、読んでいる方も月子が羨ましくなりうっとりしてしまう。果たしてこの二人の結末がハッピーエンドなのか否かは読んでからのお楽しみだが、個人的には、月子の選択は当然と思われる。特に夫に送った長々としたメールには、同性としてしみじみと共感できた。
・「まさにそのとおりなのよと叫ぶ人が多いのではないかしら」
なかなか鋭い現代社会への批判となっていてとっても面白かったです。性に冷淡な妻を調教してもらうべく、ある組織に委ね、毎日その組織から送られてくる映像に日々驚愕と怒りと恐れを感じる若き優秀な医者である夫は、女に目覚めた妻に対して、自分の性の稚拙さを思い知らされるのです。
・「調教をさせる男の立場で描いた渡辺淳一版「O嬢の物語」?」
フランスの洋館で行われる女性の調教というと、レアージュの「O嬢の物語」を想起させられる。レアージュの作品が調教される女性の視点で描かれていたが、本作は妻を調教に委ねる夫が主人公。ストーリーは夫の視点に終始する。この夫は妻がなぜセックスを拒絶するのか理解できない。性格は、かなり自己中心的だ。分り合えない妻の心情を思いやることなく、自分の好みの女性に変えようと、他人に妻の身を委ねる・・・。著者は解剖実験の腑分けのように怜悧に夫の心情を分解していく。夫がガラス越しにこっそり眺めるしかない男たちの妻への調教シーンも科学実験のように怜悧に描かれる。一歩間違えば通俗小説へ簡単に堕してしまう設定とストーリーがバランスをとっているのは、こうした冷めた描写のせいと言っていいのかもしれない。が、一方でいかようでも妖艶になるストーリーを、独り善がりな男の独白物語にしてしまっているのもこうした著述のせい。読者として感情移入できない主人公への嫌悪感がこの作品の評価を低くしているように思うが、夫婦間でさえコミュニケーションをうまくとれない現代の家庭事情を思いやると、この夫のとった行動はまったくの他人事とは思えなかったこともあげておきたい。
・「妖艶で でも男女の気持ちのすれ違いが。。。」
渡辺淳一著作のこの本 本屋で目にして、立ち読みした瞬間、いい感じにHで妖艶だったので、衝動買いしてしまいました。
主人公の医師が持つ“妻を征服したい”という欲望。それに対峙する妻の心理状況。理解できます。“昼間は貞淑で楚々とした妻を調教し、夜は自分だけの性の奴隷にしたい”というくだりに首根っこをつかまれ、調教シーンの生々しい表現に五臓六腑をかき乱され、面白かったです。
二人の心理描写を一般的な男女の形に置き換え、性に対する考え方、愛に対する考え方、夫婦のあり方、そして… 作者らしく淡々と、しかし艶っぽく描かれていて、最高に気に入りました。
・「男は愛する女のすべてを征服したい」
だけど他人に委ねてしまっては・・・主人公は完全なM男君でしたね。
著者独特の冷静な文体でフィクションとしては面白かった。
知識だけの頭でっかちな男が増えているのは事実・・・
男と女の性の違いを考えさせられる内容でした、性にタブーはないけれど愛する妻を他人に委ねる事にはどうも付いて行けません。
・「すげえ・・・!」
「仕事が忙しくてなかなか文庫本も読めなくて・・・」などと本離れをしていた今日この頃、久しぶりに頭をぶん殴られたような衝撃を受けました。 巧みな語り口、計算されたストーリー、読み終えても再度読み直してしまうこの魅力・・!
業、欲、妬み、絶望・・・さまざまな人間の感情を百物語をモチーフにし又市(これがまたかっこいいんだな)という狂言回しから露にしていく小気味よさが理屈ではなく心に響きます。
とりあえず本を読みましょうよ。そう思えた作品のひとつでした。
「嗤う伊右衛門」もね!すごいんだな、これがまた。
・「置いてけぼり」
京極堂シリーズと同様に主人公は活躍しない、というより何時の間にかずるずると巻き込まれてしまう。はて、物語の中心になったかと錯覚するが終わってみれば結局自分は凡人でございましたと痛烈に再確認させられる。事件が終わった後の喪失感。
それは主人公だけではなく読む側にも訪れる感情である。読んでいるうちにあれよあれよと引き込まれ事件の中核にいるような錯覚に陥れられるが終わってみれば、主人公同様、「あんたはこの世界の人間じゃねえよ」とぽん、と突き放されている自分に気付く。
それでも、置いてけぼりにされてしまった寂しさよりもう一度、その世界に入り込みたい。と不思議に魅きつけられてしまう京極作品の「イジワルな魅力」に嵌れる一冊です。結局また、置いてけぼりにされちゃうのは分かってるんだけど、やめられないんだよな。
・「非常に読みやすい作品です」
一話完結型形式で続けられる物語。始めは「百物語」の題名の通り、妖怪たちが出てくるストーリーが展開されるかと思って読めば、一話目で見事に裏切られました。次から次へとテンポ良く続いていくストーリーに簡単に引き込まれ、最終的には予想も付かないオチで「あっ!」と言わされました。
物語の中核を成すのが人の中に宿る「心」
憎しみ、悲しみ、怒り、など人の不の感情を巧みにあやつり展開される物語に、読み終えた後も興奮と人の心について何か考えてしまうほど重厚にできています。私は最後の帷子辻が個人的に気に入りました。興味を持った人はぜひ読んでみてください!!
・「初心者向け短編集」
京極夏彦氏が妖怪機関誌「怪」にて連載していた短編集。京極作品は分厚くて入りにくい、という先入観がある方にこそおすすめしたい一作です。一作が70ページ前後とわりかし読みやすく、かつ内容はきっちりと書き込まれている。たたみかけられるような話の展開に、毎回にやりとしてしまいます。
・「すいません、にわかファンですが・・・」
直木賞受賞で彼を知ったにわかファン(名前は知ってたが読むのは初めて)の若造なので前からの読者には怒られそうですが・・・初めて読んだのがこの作品でした。単純に面白かった!!最初は時代物っぽい作品は読まず嫌いでしたがこの作品で払拭できた。
妖怪とかそうゆうファンタジーちっくなものは苦手だったけど読んでみると実は・・・まだ読んでない人もいると思うのであまり内容に触れるようなことは言わないほうがいいと思いますが(って言っても他のとこで大体の内容は知れると思うが)本当の問題は人間の情というか人の罪というか・・・
様々な悪人が妖怪になぞられて最後には予想外の結末とストーリーが明かされる。1話1話で完結しているので読みやすいと思う。その1話1話の中で様々な伏線が隠されており最後にはびっくり!!みたいな感じ。漢字に疎い自分にはなにやら難しい漢字が出てくるがそれも気にならずすらすらと読める。
まさに和製スティーヴンキングと思うのは自分だけ??(作風は異なるが)読書自体するようになったのは最近ですがこれからも彼の作品は読んでいきたいと思う。
・「そんなつもりで読み始めたわけじゃないのに」
前作に「巷説百物語」があります。絶対にそちらから読むべきでしょう。順番を間違えると趣が激減します。
前作を受けての作品ですが、どんどん仕掛けが大掛りになってきます。仕掛け側の登場人物の来歴が事件に絡み始め、個人的な行きがかりを清算するための仕掛けが始まって行きます。前作ほど軽く読めません。重いです。読者が感情移入するはずの百介も、同様に覚悟を求められるからでしょうか。生半可な覚悟で後ろ暗い世界にかかわってはいけないと。ただ、百介の覚悟とは無関係に又市たちは又市たちで別のレベルで覚悟を決めて、仕掛けを進めていきます。「勝負」「善悪」とは異なる軸で事件が終わるので、爽快感がありません。とても大きな喪失感が読後にやってきました。ぽつんとひとり「どうしたらいいんだよ?」という状態で取り残された感じでしょうか。一作目は軽く面白く読み始めたのに...。「どうしてくれる!!」百介もそんな気分になったんだろうなと思ってしまいます。「最初は面白くてかかわったし、役にも立ったじゃないか!!これから先心にあいた穴をどうしてくれる!!」と。
ここまで感情移入させて読ませるなんて、やっぱり京極氏の豪腕としか言いようがありません。このシリーズの中では、読み物としての面白さは一番です。ただ、一作目に感じた爽快感でとめておきたいなら、本作には進まない方が良いでしょう。喪失感、飢餓感が植えつけられてしまいますし、続編「後巷説百物語」でもこの喪失感は癒されないのですから。
・「人気シリーズ」
作家志望で怪談が大好きな山岡百介と、小股潜りの異名を持つ仕事師、又市らが織り成す人気の「巷説」シリーズ2作目。
悪党なのにどこか憎めない又市が、受けた難題を解決します。全編にどこか悲しい感じが漂っていて、読後感がよかったです。オススメ。
・「京極堂シリーズより好きです」
表立っては解決できない闇に紛れた事件を、あたかも妖怪の仕業のように見せかけて解決する小悪党又市一味の活躍を描いた第2作目です。彼らの入念で奇抜な仕掛けに毎話ワクワクしながらあっという間に読むことが出来ました。決して正義の味方を気取るわけでもなく悪と戦う彼らの姿が最高にカッコいいです。登場人物たちの性格をよく反映した話し口調がとても読みやすく、この物語全般に漂う独特な雰囲気にすっかりハマってしまいました。続編の後巷説百物語もおすすめです。
・「読みごたえあり」
~京極堂シリーズとはまた違った面白さがあり、読ませます。本来なら無頼の無宿人、小悪党な人々が登場人物なのですが、彼等が皆個性的で、魅力があります。毎回小股潜りがどんな仕掛けをかけてくるのか、その意表をつく結末にはらはら、どきどき。読みごたえがあって、楽しめます。
また文庫になると表紙に色々な張り子が使われて、それも毎回楽しみ~~です。~
・「質の高さにただただ驚き」
2001年5月リリース。『嗤う伊右衛門』に登場した御行の又市を中心に据えた『怪』シリーズ第2弾。今月文庫化されたこの続編で第130回直木賞を受賞した『後巷説百物語』には付録として詳細な『巷説百物語シリーズ解説書』が添付されていて好事家には必須アイテムとなっている。
6編の短編で構成されているのだが5番目の『死神』へと向かう伏線のような構成になっていて、6番目の『老人火』はその後日談にもなり長編として捉えることも可能な『仕掛』になっている。問わず語りのように物語る京極節は絶好調で、変にトリックまで考えねばならない京極堂シリーズよりもむしろ無理なくストーリーを紡ぎ出している。その質の高さにただただ驚きである。京極夏彦は京極堂よりもきっとこっちが書きたいのだろう。
妖怪仕立てで御行奉為(おんぎょうしたてまつる)ってしまいたい巨悪は現代にもやたら眼につく。そんな時又市の鈴の音が鳴り、キレイにしてもらいたいなぁ、と読書と音楽にあけくれる若隠居百介のような僕も思う。『前巷説百物語』もリリースされたが、一番読みたいのは『巷説百物語』と『続巷説百物語』の間あたりの『中巷説百物語』かもしれない。出して欲しいなぁ。
・「読んでないとわかんないような批評になっちゃった・・・」
親戚の青年から突然失踪した婚約者捜索を頼まれたことから始まる長い長い人探しサスペンスです。
他の方が言ってるように、カードによる多重債務⇒自己破産のスパイラルが背後にあります。それは、この本の語り口だけで見ると少し古めに感じるけれども今の時代でも、十分当てはまる大きな社会の闇です。
途中から、探し人の『彰子』は一人の女性というよりもその闇をまとった時代の象徴のようになっていきます。
ラストで彼女がその実体を、本当にいるんだということをさらけ出したところでその象徴性が失われて、急速に一人の女性を形作っていきます。
するとどうでしょう。何百ページも費やして、主人公と読者とが探し出した『犯人』に対する感情がとても不思議なものに変わっていることに気づくはずです。そこが気持ちの最高潮。だからラストはアレでよかったんだと思います。
すごく、不思議な犯人を仕立て上げることのできる作家さんだな、と思いました。
・「作者の長所がよくでた、社会派ミステリーの傑作」
93年度版 このミス 2位1992文春ベスト10 1位文春二十世紀傑作ミステリーベスト10 国内部門 2位
「カード破産」をいち早くあつかった、社会派ミステリーの傑作である。
いろいろ意見はあると思うが、個人的には本作と「理由」「模倣犯」が作者のベスト3と考えている。この中でも本作は作者らしい、やさしく穏やかな文体で描かれており、作品の長さも適切で、もっとも作者らしい作品といえるのではないだろうか。最終章のすごさ、これだけでも一読の価値ではある。
「この作品を読まずして、現代ミステリーは語れない。」というレベルの作品である。
・「もう何度読んだかわからない。だけどその度に引き込まれるゾ」
はじめてこの小説を読んだのは、かれこれ8年前。友人に薦められまあ読んでみるか程度のかるーいノリだった。そしてみごとにはまってしまった。幸福を求めてやまない女性たち、なかでも犯人の凄まじいまでの執念!だけどその彼女を見つめる作者の目の温かさ。決して許されない罪を犯しているのに、私には最後まで彼女を憎むことができなかった。クレジットカード、ローン地獄、戸籍問題、個人情報の流出、質的にこれだけの小説はもう読めないかなと思わせる一冊。推理小説というよりは、社会派小説といった方がぴったりくるが、何年たってものテーマが色あせない。もう何度読んだかわからないが、その度にいやおうなく引きずり込んでくれる作者の力量に本当に参りました。
・「最高傑作!」
名作の多い宮部作品のなかでも、私はこの「火車」が最高傑作だと思います。物語の進め方、一つ謎が解けていくたびにはっきりとしてくる事件の輪郭。そしてなによりあのラストシーン!・・・流石宮部みゆき、と言ったところでしょうか。
犯人の人を殺す理由がとても切なく、思いっきり非難できないのも良いと思います。私は一度も姿を現さない犯人の女性に、とても感情移入してしまいました。
・「登場人物たちが生きている」
休職中の刑事、その息子、家政夫を職業とする男性とその妻など、独特のテンポをもった登場人物たちが、作品の中で生きている。冒頭で、主人公の置かれている状況を地の文で説明するのでは無く、自然な描写で読者に伝えたり、実際には物語りに登場していない、失踪した女性の心理や行動を、女性の過去を調査する過程で描いているのは、上手いとしか言いようが無い。謎の女性が最後まで正体を現さないのもサスペンスを盛り上げる。この作品で直木賞あげても良かったのではないかと思う。秀作です。
・「心の底から「笑える」」
背景などからみて、時は昭和30年代だろうか?新制の仙台の男子高校生の5人グループが、騒動の数々を巻き起こす。この高校は、名門校らしいが、グループの成績は、全員下から数えた方が早い。
稔を筆頭に、グループの行動は、いかにもボンクラ高校生らしい。東京からの転校生の俊介が、格好は付けているが、色々とボロが出る。
物語には「笑い」がぎっしりと詰まっている。その笑いとは、直接的な意味のものから、深い意味のものまで多彩だ。とにかく本書には、吹き出しそうになる場面が度々あり、電車の中などで読むには要注意だ。
幕切れ部分の校長の行動には、ちょっとしんみりとさせられる。
高校生らしい喜怒哀楽がぎっしりと詰まっている本書。心の底から、笑わずには、いられない。
・「訛りがたまらない」
仲良し五人組はみな名門校にいるにも関わらず、やりたいことをやっていて、それを温かく見守る周囲の大人達の優しさが胸をうった。笑いの要素が多いなかでちょいちょい出てくる感動的な場面が、面白さをより引き立てていた。この作品は井上靖の「しろばんば」と並ぶ素晴らしい作品だった。
・「青春小説の佳作」
第二次大戦敗戦後の仙台を舞台にする青春小説。以前から読もう読もうと思っていたのだが、新装版が出たのを機にようやく完読。特に、第6章の松島小旅行の挿話では大笑させられた(久しぶりのカタルシス)。また、チョロ松校長の行動には、古き良き時代の理想的教育者の姿をみる。(エリート校だから許された点も大であろうが・・・)軽石先生の講話のシーン(184頁以下)も印象深し。私もこんな学校にいたかった。お勧めです。
・「パ・ズ・ル」
圧巻! まさに圧巻! この小説は「ミステリ」…いわゆる謎解き・探偵ものの部類に入るのですが。 これだけ雑学が満載の上に、百人一首の並べ替えに、殺人事件の謎解きまで入ってこのページ数でおさまるのも…神業としかいえない。 そしてなによりもかによりも……「百人一首」と「百人秀歌」の配列の見事さ!!! これだけでも読む価値は大有りです。 もう十数年前に「絢爛たる暗号」(織田正吉/著)を読んだときもすごいとは思いましたよ。「百人一首が一枚の絵になるか」と。 でもでもでも…これを読んでしまったら、あの説なんか、ただの色塗り間違えた失敗作の絵のように見えてしまう(織田先生には悪いのですが)! この並べ方ならすっきりする。この配列にするだけの理屈も通ってるし、何より美しい。 まずはご一読を。 歴史嫌いの方でも大丈夫! そういう方の為にきっちり「タタル」さんが一から説明してくれます。
・「なかなか」
高田崇史の本はこの本しか読んだことがないが情報小説というか教養小説というか、京極夏彦の流れといっていいのではないのだろうか。京極作品に比べると、解体具合は大雑把だし、比喩やコトバ選びが弱い気がするが、これは主人公の性格付けの問題なのだろうか?慣れれば気にならない。
百人一首の謎を初めて知ったのだが、
それを主人公が解いてゆくのはとても面白い。はっきり言ってそれがあってるのか合ってないのか全くもって検証する知識も意欲もないのだがなんとなく「すげー」という感じで百人一首に対する作者の勢い・熱意で読まされてしまう。
殺人事件そのものも、京極作品を非常に乱暴にした感じ。解説されても、理解は出来るが納得行かない、というレベル。
だが、解説にもあるように、作者が書きたかったのは百人一首の謎であって、探偵推理小説ではないのだ。そういわれると、非常に面白い作品だと思う。
・「平安時代に興味が湧きます。」
この本を読むまで、百人一首や、それが生まれた時代のことなど、あまり興味がありませんでしたが、読んだ後は、すごく興味が湧きました。推理も面白いのですが、推理に至るまでの主人公タタル君のお話が興味深いです。
・「謎学好きにお薦めします。」
QEDシリーズは殺人事というスパイスを使って「百人一首の謎」のような「謎学ミステリー」を作者の視点で解明してゆきます。殺人の凄惨さを競う作品が多い昨今、謎学好きにとっては上質な知的ミステリーと言えるでしょう。百人一首の背景などを説明する手法として「作者が読者に説明する形」と「主人公が会話の中で説明する形」がありますが、本書は後者をとっているため、主人公は怒濤の攻撃でウンチクを披露し続けます。雑学や謎学好きはあまり気にならないと思いますが、殺人事件をメインに楽しみたい方には、あまりお薦めしません。(殺人事件はカレーに付いている福神漬け的な存在です)メインはあくまで「謎学ミステリーに対しての作者の謎解きの披露」なのです。謎解きがが面白いと思えれば十分満足できるでしょう。それについては、このシリーズが11作まで連作されている事を見ればQEDと言えると思います。
・「この本だけ読んだ読者は評価を誤る」
百人一首に何らかの隠された編者の意図があることは間違いないだろう。それを初めて指摘した織田正吉氏の功績は大きい。しかし残念ながら彼は札配置を完成させていない。その後の林直道氏の後鳥羽上皇鎮魂説も札配置のマトリックスを曲りなりにも埋めたということでは興味深い。しかし2種類の選歌集の謎が解けていない。高田氏の真価は2種類の選歌集の謎と札配置の両方を満たそうと試みたことにある。この本は織田氏の本、林氏の本、そしてそれに対する織田氏の反論本を読んでいて初めて価値がわかる。星4つとした理由はこの本の真価がくだらない推理小説仕立てにより半減していることにある。
・「こんな小説があったとは。」
こんな面白い本、どうしていままで読まなかったんだろう。作者が有名なのも、この作品が有名なのも知っていたのに。と思うと同時に、御手洗潔という探偵に(本業は占星術師なのだけど)出会えてほんとによかったと、読んだあとになんだか幸せな気持ちになった。
梅沢平吉という画家の手記から始まるこの作品は、最初から最後まで読者を惹き付けて飽きさせない。これだけの長篇なのに。事件は40年間誰もその謎を解くことができなかったという難解なもの。梅沢平吉殺し(しかも密室)、長女一枝殺し、そして平吉の娘と姪の6人が殺されるという大量殺人。しかも、手記によると6人を殺す動機のある平吉は最初に死んでしまっている。残った関係者の中にも物理的にその殺人を成し遂げられるものはおらず。!。。途中に2度も読者への挑戦が挿入されているが、丁寧に読んだつもりなのに、まさかそんなトリックだったとは、と嬉しい驚き。
そしてこの小説の何といっても一番の魅力は探偵・御手洗潔でしょう。他人の目なんて気にしない、ちょっと風変わりでくせのある男。だけどどこか愛嬌のようなものがあって憎めない。始終振り回され、憎まれ口をたたかれながらも彼から離れることのできない石岡くんの気持ちが分かるような気がする。
推理小説が好きで、まだこの本を読んでいない人、読まないと損ですよ。読んでみればわかる、きっといままで読んだ本の中で1、2を争う作品になるはずです。
・「これから『占星術殺人事件』を読めるシアワセ」
~言わずとしれた島田荘司のデビュー作。昭和56年、横溝正史の死の2週間後、氏は『占星術殺人事件』を引っさげ、本格の騎士として登場する。~~最近作の『「異邦」の扉に還る時』の中で、このプロットを思いついた時の状況を説明されているところが出てきてとても興味深かった。西荻窪のアパートの高い自作の二段ベッドの上で氏の上に天啓は舞い降りたそうだ。氏はほぼ半分書き終えていた『異邦の騎士』をストップして本作の完成をスタートする。
~~閑話休題。なんら解説の必要もなく本作は史上稀に見るミステリーの傑作なことに疑問の余地は全くない。後のミステリー界だけでなく、『金田一少年の事件簿』等マンガの推理物にも多大の影響を及ぼしている。
これからこの本を手に取る読者のみなさん。『占星術殺人事件』をまだ読んでいないシアワセは格別です。~
・「あまりに濃厚なカタルシス」
本格推理小説と呼ばれる作品の中で、最も「おいしい」パートが、論理構築によって犯罪の真相が導き出される、謎解きのシーンであろう。本作品が傑出しているのは、その謎解きシーンの「おいしさ」が全編にわたって展開されるという、絶妙の構成にある。
もちろん、それを可能にしたのは猟期的、幻想的な設定と、それをうけとめるだけの見事なトリックがあればこそだ。
これだけの卓越した要素が奇跡的な出会いを果たした事で、この作品は現代本格推理小説のファンにとって最高の宝になったのだ。古今を問わず、私は、エンタテイメント性、謎解きの意外性において
この作品以上の推理小説に無グリ合った事はない、と断言する。
・「正統派ミステリー」
ミステリー史上に残るこの作品、さすがにすばらしいです。メインの「アゾート殺人」のトリックは見事です。 しかも我々読者の前には、謎を解く鍵がすべて示されており、謎解き前に示されるヒントも秀逸です。まさに「ピン1本」のヒントで、すべてが分かったときの快感! また、トリックだけでなく、文章も巧みで読み物としても秀逸です。
ミステリーファンはもちろん、「何か面白い本ないかなぁ」と思っている方すべてに、自信をもっておすすめできます。
・「まぎれもない傑作、近年まれに見る本格派」
これだけトリックで読ませる作品は少ない。読後、なんだかだまされたような気分にさせられる推理小説も少なくないが、本作は素直に、してやられた、参った、と思えた。読者への挑戦も、この上なくフェアで大胆。主人公のキャラクターも魅力的(独特?)で、一気に楽しみつつ読める。陰惨な設定なのに、そう思わせないのは軽妙な文体と主人公のキャラクターによるのだろう。 なお、文壇から、文章が粗い、という批判が本作に対してあったと聞いた。確かにそういうところもあるが、荒削りな勢いにも満ちていて、ミステリー好きの一読者としては、少しも星を減ずる気にはならない。
・「日本を代表する長編小説の一つで、言うまでもなく傑作です!!」
この小説は、45歳の大学の事務職員の平凡な日常風景から始まります。どこから見ても、何の変哲もない中年男ですが、実は、かつて「徴兵忌避者」として、5年間日本中を逃げ回った過去を持つ人物だったのです。
小説は、徴兵忌避者として孤独で不安な逃亡の日々を送る青年の姿と、20年後の中年の日々とを交互に描いていきます。二つの時間のコントラストが鮮やかであればあるほど、過去の日々が鮮烈に浮かび上がるという手法です。
この手法は、うまくいっています。他にも、新聞記事の文体や、酔っぱらいのモノローグ(丸谷の独擅場!)など、文体の見本帳ともなっています。 ジョイスを読んだことのある人なら分かると思いますが、眠くなった人の独白は、平仮名が多くなっていき、句読点も少なくなっていきます。そのへんの文章効果をじっくり楽しんでください。
なお、この作品で最も見事なのは、最後の数頁です。倒叙法の記述により、哀切で叙情的な文章が、かつて例がないほど複雑な味わいを生む効果を出しています。 やはり、これは傑作です。
・「文句ない傑作です」
米原万里さんの絶賛評を読んで買いましたが、予想を大きく超える大傑作でした。ごくごく平凡な大学職員である主人公。。。。しかし、過去と現在が同時にフラッシュバックする独特の文体が、主人公の脳裏を再現するかのような非常な緊迫感を生み出しています。あの暗い時代の息が詰まるような苦しさ、、、戦争とか徴兵の重みを、戦争の悲惨さを伝える類書とは違う、まさに、自分の身の上に迫る内面の恐怖として、ひしひしと感じることができました。そして、安寧かに見えた主人公の現在の生活にもラストで予想外の亀裂が。。。これだけの深みある内容に加え、ミステリのような醍醐味まであります。これだけの傑作なのに、米原さんが紹介してくれるまで聞いたことがありませんでした。おすすめです。
・「市民と臣民(=兵隊)、内的倫理と世間、日本の支配の配電盤の不変性」
数年前のイラク人質事件の三人とこの主人公の境遇は似ている。もっとも事件については表面的な事実しか知らないのだが、怒り狂っていた大多数の日本人も同じだろう。この十年間あれほど憎まれた人達もいない、そして私には彼等への憎悪が不可解だった。この主人公への周囲の軽蔑にも同質の不可解さを感じた。憎まれたのは、彼等の行為が古代日本で不均衡に重罪とされた田を壊す罪と同質だからだ。日本社会の暗黙の掟を破ったからなのだ。日本人の人生は今も昔も権力者の為に立派な建造物とおコメを皆で作ることだけであり、掟はその際決して文句を言ったり石を運ぶ列を乱したり物を考えたりしないこと。列を乱すこと自体が重大なのであり主観や倫理はどうでもよい。責任などという観念とは勿論無関係。たんに生存と安全が脅かされるから掟破りとされるのだ。この相互我慢義務型奴隷倫理と相互監視義務が掟の正体。常に「兵隊であること。」が日本人の義務なのだ。「世間」を乱すこと自体が掟破りなのであり、一生消えぬ反日的不可触民の烙印が押される。権力者に対する問答無用の平身低頭義務の欠落した規範感覚と人格の持ち主と看做され、体制や主流思想、戦争評価が変わっても一生許されない。この点、主人公と人質三人は似ている。主人公は臣民の列に入れてもらおうと必死だ。で、彼女の元へは行けない。ところが心の底では、自分が一生許されぬこと、そして戦後も心の中の恋人だけに庇護され続けてきたことを知っている。だから彼女の訃報に接した瞬間から、見当識を欠く自己喪失者になってしまう。救済は日本人(兵隊)になることを諦める以外にはない。再び逃亡奴隷になることを決意し漸く精神の均衡を得ることができたのだと思う。
・「考えの及ばなかった世界を生きいきと描く」
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・「悪夢」
まず、第二次大戦中に、徴兵拒否が、この日本で現実にあったらしい事を初めてしり驚いた。そして、その徴兵忌避をした男性の平凡な日常が、20年もたって、徴兵忌避という過去の事実からじりじりと壊れていく、という話である。 なにか一つの事から逃げた時、どこまでもその事に追いかけられる、それには、正面から立ち向かわないといけないというメッセージなのだろうか。たとえ、その事が絶対悪である戦争であっても、逃げた事は、その代償をはらい続けないといけないのだろうか?立ち向かわなかったものは、一生、笹枕なのだろうか? 文体の面白さを味わいつつ、メッセージをよみとりぞーっとした。
・「未完、だが」
濃いです。文体が、描写が。漱石のそれまでのどれとも違う、コクのある内容、心理描写。それまでの総大成、と言う人がいるのも分かる。作者の死により未完に終わっている、ということで手を出しにくい人が多いかもしれないけれど、漱石が好きなら読むべきです。それだけの価値はある。
・「心理描写の奥行きの深さ」
つい半歳ほど前に結婚したばかりの津田。新妻お延とはどこかしっくり行っていない。京都の実家からは援助を打ち切られ、金策に奔走しつつ、痔の手術で入院する羽目にもなる。そんな津田にはお延の前に愛した女性がいた・・・。
その巧みな心理描写が素晴らしい漱石ですが、この「明暗」とそれまでの小説と決定的に違うのは、その心理描写が主人公だけでなく、脇を固めるキャラクターにも徹底されていることだと思います。妻お延、妹お秀、津田の世話を焼く吉川夫人、津田の友人小林など、さまざまな登場人物の心理が書きこまれ、人と人のあいだに生じる誤解、思惑の違い、駆け引き、そうしたものの存在と、それが人間関係に与える影響が、浮き彫りになっていきます。結果として、どちらかと言うと主人公自身の心理に焦点を当てた、漱石のそれまでの小説とは、まったく違った深みを持つ結果となっているように思います。人間は他人を、自分の行動パターンに照らして分析しがちだが、実は自分とはまったく違う利害関係でもって思考し行動している、そしてそのズレは埋めあわせがつかないくらい決定的だ、そんなことを考えてしまいました。この小説が未完で終わっているのは、何ともなんとも残念なことです。だからこそ想像力をかき立てられる部分もあるのでしょうが・・・。
・「あの世で問い詰める」
未完を承知で手に取ったが、どーにも津田チャンの行く末が気になって仕方がありません。しかーしっ! たとえ不完全燃焼が予定調和だったとしても一読に値する傑作です。
日常的には他愛のない?(小説的にネ)物語なんだけど、何故こうも全編を通じて緊張感を孕んでいるのか。とにかく、「神かアンタは?」と、問い詰めたくなるほどの心理描写は、他の追随を許さない。是非とも、続きはあの世で拝聴させてもらいます。そして、対峙した漱石さんが口を開きかけた瞬間、ボクは・・・。-未完-
・「際立つ人間模様」
私の自覚する自分、そして他人の認識する自分、自分の実家での自分、連れ合いの実家での自分。幾通りもの人間関係の中で、人物が浮かび上がってくる。それは小さな世界の中でも見栄を張り、少しでも自分を大きく見せようと、少しでも上手く立ち回ろうとして駆け引きをする人間達。ときには自分では太刀打ちできない相手の力を感じて、仮面を剥がされるような気分を読者も一緒に味わう。漱石の手腕により、各登場人物のキャラクターが際立っている。ともすれば矮小な小賢しい印象を与えかねないが、そうはならないのが、我々の近くにいる等身大の人物が、彼らの論理なりに一生懸命に生きている様が描かれているからだろう。
これが新聞に連載されていたとは、当時の読者はさぞかし毎日が待ち遠しかったに違いない。また、文豪の死を悼むと同時に、この物語が突然、そして永遠に止まってしまったことを嘆き悲しんだに違いない。
・「最高の近代小説」
漱石未完の大作。約90年前に書かれた小説ですが、現代人が読んでももの凄くリアルに思えます。漱石の後期の他の作品との最大の相違点は、主人公の脇をかためる女性の心理が男性と同格に描写されているということです。主人公一人の視点ではなく、他の登場人物の視点も描かれています。また、所謂近代知識人は登場しません。こころや行人も傑作だと思いますがテーマが近代知識人の自我の苦悩というものなので、謎の部分もあります。(特に僕ら中学生や高校生には)それに対して明暗は描くのは市井の人間ですのでそういう意味では分かりやすいと言えます。(但し人間のエゴを描くのは共通しています。)全体としては異様なまでに緊迫した人間関係や心理の機微を巧みな文章で描写して、誰もが持つエゴを直視しています。漱石の小説は勿論、日本の近代小説の中でも最高傑作のひとつだと思います。
・「「悲の器」文庫版」
私は「悲の器」を現代日本文学の最高峰の1つと評価しています。粗筋などは河出文庫版のレビューに書きましたので、興味のある方はそちらを参考にして下さい。この新潮文庫版は、河出版よりも昔から出ている版で、活字が小さく、今ではかなり読み難いのが難点です。しかし、河出版は「解説」と称するわけのわからない駄文が載っていて不快になります。まあ、文庫本の解説など読まなくていいようなものですが、編集者が本の価値を全然わかっていないのが露顕するので不快なわけです。そこにいくと、さすがに新潮版の解説はちゃんとしています。価格も河出版よりは安価です。
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