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▼このミステリーが良かった:セレクト商品

牙をむく都会(下) (講談社文庫)牙をむく都会(下) (講談社文庫) (詳細)
逢坂 剛(著)


シリウスの道〈下〉 (文春文庫)シリウスの道〈下〉 (文春文庫) (詳細)
藤原 伊織(著)

「一級の作品」「強い余韻を残すすぐれた小説」「男の理想像」「溜飲が下がらない」「藤原伊織ゆえ星4つ」


テロリストのパラソル (講談社文庫)テロリストのパラソル (講談社文庫) (詳細)
藤原 伊織(著)

「フィクションと様式美について愚考する」「絶対にお薦め出来る作品」「ハードボイルドの新時代」「素晴らしい」「純愛小説って言うと叱られる?」


私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA) (詳細)
原 りょう(著)

「絶妙なバランス感覚で書かれたハードボイルド小説」「ハードボイルド+逆転劇が絶妙!」「「私」とはいったい誰を指すのか?」「至高の傑作。次はこれを読もう。」「拾った宝くじが当たったような不運」


ボーン・コレクターボーン・コレクター (詳細)
ジェフリー ディーヴァー(著), Jeffery Deaver(原著), 池田 真紀子(翻訳)

「ロカールの相互交換原則」「「リンカーン・ライム シリーズ」の記念すべき第一作」「すべてのエンターテイメント要素をつめこんだ欲張りな 1 冊」「良質のサイコスリラー」「ロカールの相互交換原則」


エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫)エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫) (詳細)
ジェフリー ディーヴァー(著), Jeffery Deaver(原著), 池田 真紀子(翻訳)

「師弟対決」「安心感とサクサク感」「どんな猟奇殺人なんかよりも恐い事件」「繁栄する種は成長し、進化する」「“どんでん返し”の連続、ラスト100ページは目が離せない」


コフィン・ダンサー〈下〉 (文春文庫)コフィン・ダンサー〈下〉 (文春文庫) (詳細)
ジェフリー ディーヴァー(著), Jeffery Deaver(原著), 池田 真紀子(翻訳)

「絶対に後悔しない1作」「誰がDancerなのか、がポイント」「ダンサーは誰か当てられますか?」「プロ中のプロの殺し屋コフィン・ダンサー」「相次ぐどんでん返し-Bone Collector以上の面白さ」


百舌の叫ぶ夜 (集英社文庫)百舌の叫ぶ夜 (集英社文庫) (詳細)
逢坂 剛(著)

「二十世紀を代表するサスペンス」「色あせることのない迫真のサスペンス」「ぜひシリーズで!」「サスペンスのお手本のような極上エンターテイメント」「バカヤロウなぐらいハードボイルドな奴ら」


夜のフロスト (創元推理文庫)夜のフロスト (創元推理文庫) (詳細)
R・D・ウィングフィールド(著), 芹澤 恵(翻訳)

「フロスト・シリーズの人気の秘密」「計算しつくされた、ごった煮事件簿」「hardはいつ?」「何度読み返しても」「フロスト警部、今度の敵はインフルエンザ?」


邪悪の家 (クリスティー文庫)邪悪の家 (クリスティー文庫) (詳細)
アガサ・クリスティー(著), 田村 隆一(翻訳)

「ポアロがエンド・ハウスで演出・上演してみせるお芝居仕立ての結末が見事な、初期の傑作」「数多いクリスティのエポック・メーキング作品のひとつです。」「Peril at End House」「これは「エンド・ハウスの怪事件」です」「女性に優しいポアロ」


死亡推定時刻 (光文社文庫)死亡推定時刻 (光文社文庫) (詳細)
朔立木(著)

「悔恨の衝撃」「法律は人を守ってくれない」「まるでノンフィクションのような話」「冤罪は悪意から生まれるとは限らないんですね」「最高のリーガル・サスペンス!」


死体農場 (講談社文庫)死体農場 (講談社文庫) (詳細)
P.コーンウェル(著)

「5作目にして!」「The Body Farm」「おなじみの手法」


半落ち (講談社文庫)半落ち (講談社文庫) (詳細)
横山 秀夫(著)

「突っ込みどころはありますが」「事前情報なければ予断無く読むべき作品」「重い力を持ったミステリー」「秀作だが、「感動」「意外な結末」には同意できない」「警察小説+ミステリ+感動。三拍子揃った名作。」


▼クチコミ情報

シリウスの道〈下〉 (文春文庫)

・「一級の作品
2006年度版このミス10 6位。 2005年文春ミステリーベスト10 7位。

大手広告代理店の副部長、辰村がこの作品の主人公である。25年前の大阪で友人明子のためにおこした事件とそれに関連した脅迫事件を軸に、新規ネット証券会社のCM獲得のための活動、女性上司との恋、新入社員の成長をうまく絡めて、一級の作品に仕上げている。作者が広告業界出身のせいか、その内幕を読むだけでも十分に楽しめる作品である。一方、作品の前半部分では一般人にはなじみの薄い広告業界用語が登場人物の説明無くぽんぽん使われており、内容をつかむのがすこし難しかった(なぜか作品の途中からこの問題は解消する)作品のエンディングもありきたりの終わり方でないのがよい。

・「強い余韻を残すすぐれた小説
予算18億の競合と、掘り起こされた過去に関する脅迫がどんな決着をみるか、一時も気の抜けない下巻。両者が乖離することなく緊張を保った筆致で描かれ、終盤にむけて胸苦しさをおぼえるほどである。

・「男の理想像
テロリストのパラソルをはじめ、著者の書く主人公は格好いい。男がこうありたいと望む理想像だ。物語中の言葉にも考えさせられるものがある。・背筋を伸ばせ胸を張れ。・職業に貴賤はないがプロと素人はいる。・省略とは重要な能力。・満足に自己満足以外のものがあるか。・やっかいに利息はつきものだが複利のケースがある。広告業界を題材にしたビジネスのやり取りも、スピード感があって楽しめた。力作である。

・「溜飲が下がらない
冒頭シーンからラストにいたるまで、緊張感と疾走感を失わず一気に読ませる力作であると思う。主人公辰村の過去と広告業界の内幕の絡ませ方も、申し分なく面白かった。ただ、藤原作品を読んでいつも思うことだが、ラストを余韻ととるか後味と取るかで微妙に評価が分かれるのではないかと感じた。辰村の期待に、驚異的な努力で見事に応えて見せた戸塚青年の処遇に納得できない感が残ってしまったのが非情に残念だった。読み終わって、よかったとホッと感じられるものがあってこその余韻ではないのだろうか。今回に限らず、藤原作品のラストには微妙に溜飲が下がらない感がのこることが多い。この作品も評価は文句なく星5つとしたいところなのに、ラストの後味が今ひとつすっきりしないせいで一つ脱落してしまった。

・「藤原伊織ゆえ星4つ
作者が藤原伊織でなければ星5つとしたところだ。しかし、藤原伊織のクオリティはもっと高いはず。物語のいくつかの柱がもっと密に絡み合うことを期待したのは、厳しすぎるか。なんかあっさりしかもきれいにまとまりすぎたという気がする。とはいえ、エンターテイメントとしての出来は無論いい。人物が書けているから、多少の強引さもそんなに気にならない。非常に引き締まった小説である。老若男女を問わずおすすめの小説である。きっと楽しい時間となるはずである。

シリウスの道〈下〉 (文春文庫) (詳細)

テロリストのパラソル (講談社文庫)

・「フィクションと様式美について愚考する
 いろんな方々のレビューを読んでいて、なるほど、自分が感激した作品についても、人によって様々に意見が異なるんだなあと、今さらながら感心しています。今頃何言ってんだと言われれば、スミマセンと申し上げるほかありませんが。 ただ、娯楽ものとしてのフィクションに対し、リアリティがないだのご都合主義だのという批判は的外れではないのかなあ。SFだってミステリーだって、それを言い出したらそもそも娯楽ではなくなってしまうように思います。カッコよすぎる魅力的な登場人物が、スカしたキザなセリフを述べる。いいじゃないですか。歌舞伎だって、あの隈取り、衣装、セリフ回し、どれ一つとってもおよそリアリティとはかけ離れたものではありませんか。ファンは歌舞伎独特の様式美に酔いしれているのです。リアリティの追求なんて求めてはいないはず。 そう、様式美。藤原作品にも独特の様式美があって、一つの閉じた作品世界の中では、何もかもが美しい。登場人物の一人ひとりが、悪人も含めてすべて美しい。読んでいて気持ちがいい。ミステリーとしての完成度うんぬんについては批判があってしかるべきでしょうけれど、私などは少々の瑕疵などどうでもよろしい、この様式美のもたらしてくれる気持ちよさの前では何でも許しちゃう、という姿勢で楽しんでいます。 それにしても、あまりにも早く天に召されてしまいましたね。残念。残念です。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

・「絶対にお薦め出来る作品
96年度版このミス6位1995年文春ミステリーベスト10 1位週刊文春二十世紀傑作ミステリーベスト10 19位第41回江戸川乱歩賞第114回直木賞受賞

この作品を読まずに、日本のハードボイルドを語ることはできないであろう傑作。作品のテンポ、主人公や登場人物の造型、そしてmysteryの要素等、発表から10年以上たっても色あせることのない作品である。作者の他の作品にもいえることだが、特に会話文の使い方がうまく、全編を通じ、よく練り込まれたストーリーに緊迫感を与えており、読書をあきさせない。絶対にお薦め出来る作品である。

・「ハードボイルドの新時代
史上初の江戸川乱歩賞・直木賞のダブル受賞作品。輝かしい功績を残した作品だけに、さすがにすばらしい作品だと感じる。審査員の意見が全員一致で江戸川乱歩賞を受賞したことは、おおいにうなづける話である。

何よりもまず、文章センスのよさに驚かされる。読み出してすぐに作品の世界に引き込んでくる。本当に出だしの一行目は美しく魅力的だ。藤原伊織の文章は、本当にどの文を切り取っても名文だと思う。 藤原伊織の綺麗で流れるような文体を一度は体験してほしい。

ストーリーも魅力的である。詳しくは書けないが、新宿の街で起こった爆弾テロ事件が主人公の過去に上手く絡んでくる。伏線もなかなかよく働いている。また、登場人物がとても生き生きと描かれており、本当にそれぞれのキャラクターが作品の中で呼吸をしている。主人公以外の脇役にも手を抜かず、通行人一人ひとりが生きている。自分がまさに新宿の街に存在しているのではないかと思わされるほどだ。リアリティーとはこういうことなんだと感じさせられる。

全共闘時代を話題にしているため、拒否反応を示す読者も多いようだが、実際のところ全共闘は物語の芯や軸ではない。重要なのは『彼らが戦っていたものは結局何だったのか?』という一方的な問いである。もちろん、答えは提示されないままだが。

日本ハードボイルド界に新たな世界を拓いた作品だといえるだろう。

・「素晴らしい
私はこの本を5回は読んでいる。何度読んでも、感銘がこみ上げてくる。派手さはないけれど、主人公とヤクザの友情、亡くなった女性への愛情など、男の生き様を見せてくれます。セリフも抜群に良い。ミステリーファンならば絶対に避けては通れない。必ず読むべし。

・「純愛小説って言うと叱られる?
いくつかの賞をとった小説ですからその内容にはいくつかの側面があり、その理解は読み手によって違うのでしょうが、私は類いまれな恋愛小説と解釈しました。この小説の最終パラグラフにすべてが凝集されていると思います。

昔、愛し合っていた恋人(酔いどれ男)を“そっと見る事”或いは“一方的に会う事”ができる機会を偶然にも持てるなんて、陳腐な表現ですが、なんと嬉しく、そしてなんて悲しく切ない時間だったことでしょう(小説なんだから作家の自由、ともいえますが。それをいうのは無粋というものでしょう)。彼女のその楽しい時間はテロリストによって奪われ、しかもこの恋人達とテロリストは不思議な運命の糸(意図)で繋がっていた・・・・・。是非、じっくり堪能していただきたい小説のひとつです。

物語の終盤に来て、話しが発散してしまい収拾が困難になって、意味不明の大爆発にせざるを得ない作品、逆に、途中までは盛り上がっているのだが肝心の終盤で萎えてしまう作品はたくさんありますが、この作品は最初から最後まで抑制が利いており好ましく感じました。

いわゆる(純)文学の観点から、この種(ジャンル)の作品の弱点を挙げるのは簡単ですが、「それを言っちゃ・・・・・・」、と思います。

テロリストのパラソル (講談社文庫) (詳細)

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)

・「絶妙なバランス感覚で書かれたハードボイルド小説
探偵・沢崎シリーズの二作目です。沢崎が作家の娘でバイオリン奏者として将来を嘱望された真壁清香の誘拐事件に巻き込まれます。

実にハードボイルドらしいハードボイルドだと思います。探偵の設定、ワイズクラック、彼と「瞬間的な相互理解」ができる男の存在(沢木耕太郎曰くハードボイルド小説の構成条件の一つ)・・・・・etc。ストーリーも巧みです。

沢崎は基本的に優秀なので、淡々と調査を進めていきます。その手際が鮮やかなので、読者は読んでいくうちに彼を信頼していくような作りになっています。調査の進め方も大抵外堀から埋めていくような形で行われ、途中で警察の捜査とバッティングして、ここで調査と捜査のすり合わせが行われます。

様々な要素が絶妙なバランス感覚で配置されているのに驚かされます。バチグンの出来だと思います。原寮の小説は沢崎シリーズ以外出されていません。95年に5年ぶりに出された、長編第三作『さらば長き眠り』以来止まっているのですが、今年出版されるという話があります。前もあったのですが、今回は本当であることを期待します。

・「ハードボイルド+逆転劇が絶妙!
「102回直木賞」受賞作。文章の書き方にクセのある方なので、状況説明が長い小説が苦手な方には少しツライ作品かもしれませんが、前作の「そして夜は甦る」を読んで、気に入った方は本作を絶対に読むべき。あなたを裏切らない作品であることを保証します!

作品自体はハードボイルドです。主人公沢崎が寡黙な男で、それをとりまくヤクザ、刑事も渋いです。色気のある女性の登場は皆無で、主人公との絡みもゼロ。ここまで硬派な小説も最近珍しいのではないでしょうか。最後の最後には、筆者特有の「想像を越えた結末」が待っています。

・「「私」とはいったい誰を指すのか?
 第102回直木賞受賞作品。 「週間文春 傑作ミステリーベスト10」 1989年 第2位 「週間文春 1977年~1990年ベストミステリー」 第7位 「週間文春 二十世紀傑作ミステリーベスト10」 第14位 「宝島社 このミステリーがすごい!」 1989年版 第1位 「宝島社 『このミス』が選ぶ 過去10年のベスト20」 第4位 「宝島社 読者が選ぶ 過去10年のベスト20」 第6位 「宝島社 覆面座談会が選ぶ『過去10年間のベスト20』」 第4位

 本書では探偵・沢崎の動き回る場所が実名でかつ詳細に綴られています。都心に住んでいる方やある程度知っている方は実際にイメージが湧き、物凄くおもしろいと思います。

 題名に「私」とありますが、この「私」が誰を指すのかということを読み進める段階でちょくちょく考えました。 すると、不思議なことに考える度に「私」が違ってくるのです。 少女を殺した「私」とはいったい誰なのかということを考えながら読むのもおもしろいと思います。

 沢崎が乗り回す自動車は日産のブルーバード。この本が出版された頃は憧れの車の一つだったようです。 因みに、今現在私が乗り回しているのも偶然沢崎と同じブルーバードです。 私は彼に妙な親近感を持たずにはいられませんでした。

 ソレデハ…

・「至高の傑作。次はこれを読もう。
プロット、表現(レトリックは、チャンドラー的ではあるけれど)ともに卓絶。いまだにこれを超えるハードボイルドミステリーは日本に存在しません。

とにかく読んでみてください。

作者の想像物であって、絶対にいるはずもないのに、どこかいて欲しい、いつか会ってみたい。そんなリアルな思いを、つい抱いてしまうほど、主人公の探偵・沢崎が魅力的。それは、いまや失われた孤高の姿を、どこまでも気高く守っているからなのでしょうか。

すごく、クールでカッコよいのです。いいですよ。

・「拾った宝くじが当たったような不運
直木賞受賞作。タイトルからして鮮烈である。残念なことに、登場人物はあまり魅力的ではなく、前作「そして夜は甦る」のカギとなる諏訪雅之のような、原りょう作品の色と匂いを全身に纏った男は登場しない。

だがそんなマイナスポイントをカバーしてなお、釣りがくるほどに展開が良い。謎の設定が良い。幕切れが良い。何より沢崎が良い。

誘拐事件の概念を覆すというより裏返す設定が破綻なく活かされており、振り回され苦悩する沢崎の姿が声を殺した悲鳴のように描かれている。渡辺との白日夢のような再会も映画のラストシーンにも似たエンディングへと見事に繋がっていく。そう、「そして夜は甦る」の場合もそうだったが、作家の力量が最も問われる最後の数ページがこの作家は本当に巧い。名作と呼ばれる映画の幕切れのように、その余韻を思わず誰かと共有したくなる。

原りょうが寡作なのが残念でならない。既発表作をすぐにも読み尽くしてしまいそうで、それが何よりも惜しい。

私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA) (詳細)

ボーン・コレクター

・「ロカールの相互交換原則
1997年発表、邦訳1999年9月20日発売、ジェフリー・ディーヴァーを日本でも大ブレイクさせた傑作。多くのレビュアーがご指摘の通り、ベイセル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーというすばらしいキャストにもかかわらず、原作が1000倍は素晴らしい出来栄えである。

ディーヴァーの本作がブレイクした原因は明白だ。巻末463ページ以降にリンカーン・ライム著『証拠物件』第四版(ニューヨーク、フォレンジック・プレス刊、1994年)巻末用語解説より抜粋などという、とてもすばらしいユーモアとともに説明されている現在の科学的調査、たとえばガスクロマトグラフ質量分析計やロカールの相互交換原則といったものをミステリー・推理の世界の領域に持ち込んだ事である。

過去の優れたミステリー・推理作家達が!持ち出しようがない科学的調査にディーヴァー特有のジェットコースターの様なドライブ感ある文体と幾重にも用意された伏線とプロットが結びついた本作こそ、大ブレイクの原因だ。

併せて、リンカーン・ライムとアメリア・サックスという素晴らしいキャラクターが初めてクロスする瞬間が素晴らしい。僕はそこに人間と人間との宿命的なロカールの相互交換原則を感じてしまう。

もう一つ、翻訳者がここまでのディーヴァーの翻訳者より数段素晴らしい。池田真紀子氏はディーヴァーの持つスピード感を全く失わずに見事な日本語化をされたと思う。

100年に一冊の大傑作。

・「「リンカーン・ライム シリーズ」の記念すべき第一作
被害者の周囲に次の犯行予告(時刻・場所・殺害方法)をのこし、次々に犯行を重ねる「ボーンコレクター」。この殺人鬼を、世界最高の犯罪学者といわれた、リンカーン・ライムが追う。しかし、ライムはある事件の捜査時に負傷し、四肢麻痺の状態に陥っており、ふとしたきっけで、女巡査、サックスが彼の手足となって捜査を行うこととなる。最初は反発しあった二人でが、捜査を続ける内に徐々に信頼関係が芽生え、「ボーンコレクター」をおいつめる。

本作品だけでなく、作者の作品は、「時間をうまく使ったサスペンス性」「事件に関するアッと驚くどんでん返し」が詰まっており、優れた作品が多く、私自身はこの作品をきっかけに作者にはまった一人である。

本作品は「リンカーン・ライム シリーズ」の!記念すべき第一作であるが、邦訳版としては、「コフィン・ダンサー」「エンプティー・チェアー」が出版されており、それぞれ高い評価を得ている。また、シリーズ最新作「石の猿」が、2003年5月末出版予定である。

本作品「ボーン・コレクター」は1999文春で1位、2000年度版このミスで2位を獲得した。

・「すべてのエンターテイメント要素をつめこんだ欲張りな 1 冊
■ かつて「法医学の天才」「頭脳明晰の犯罪学者」 と勇名をはせた Lincoln Rhyme は、連続警官殺人事件に巻きこまれて負傷し、全身麻痺という悲劇に見舞われる。だが、絶望の中で死を選ぼうとした彼をこの世につなぎとめたのは、ニューヨークの街を獲物を求めて渉猟する殺人鬼 《ボーン・コレクター》だった。Rhyme は仕掛けられた残酷な殺人ゲームを阻止し、犯人を追い詰めることができるのか?

■ 心の成長物語としての面白さ、HowTo 本としての面白さ、そしてスリラー小説 & ミステリィ小説の面白さという 3 つの要素を楽しめる欲張りな 1 冊です。

女主人公 Amelia は、全身麻痺のために直接捜査できない Rhyme の代わりに顎でこき使われてしまう制服警官なのですが、この彼女も Rhyme 同様、少々過去に影があって素直に心をオープンにすることができない性格。意地をはって最初は反発しあっていたふたりが、協力しあって捜査を進めるするうちにお互いの弱い部分を見せあえるようになっていくその過程は、恋愛小説の切ない味わいがあります。なかでも、Rhyme の "When you move, they can't catch you." という決め台詞は印象的。

また、Rhyme が現場に残された微細な物的証拠から明晰な推理で犯人を絞りこんで行くその過程も書痴の知識欲を十分に満たしてくれる内容で、犯人のプロファイルを書きだしたリストがだんだん埋まっていく様子がなかなか壮観です。

これらの楽しみの上にさらにスリラー小説のスピーディな展開とミステリィの意外な結末が手ぐすねを引いて待っているとなれば、もう面白くなかろうはずがありません。タイトルのおどろおどろしい響きに反して、残虐なシーンは意外なほど少ないので、スプラッタが苦手なかたでも十分楽しめると思います。

そうそう、最後の著者からの注意書はぜひ忘れずにお読みください。「その本」を捜して図書館へ行っても無駄だそうです (すごく読みたかったので残念)。

・「良質のサイコスリラー
被害è€...のå'¨å›²ã«ã¤ãŽã®çŠ¯è¡Œäºˆå'Šï¼ˆæ™‚刻・å '所・殺害æ-¹æ³•)ã‚'残ã-、次ã€...に犯行ã‚'重ねる「ボーンコレクター」。ã"の殺人鬼ã‚'、å...ƒãƒ‹ãƒ¥ãƒ¼ãƒ¨ãƒ¼ã‚¯å¸‚警のç§'学捜査本部長、リンカーン・ライムが追う。ã-かã-、ライムはある事件の捜査時に負傷ã-、四肢麻ç-ºã®çжæ...‹ã«é™¥ã£ã¦ãŠã‚Šã€ãµã¨ã-たきっã'で、女巡査、サックスが彼の手足となって捜査ã‚'行うã"ととなる。ç§'学捜査のç' äººã§ã‚るサックスへの(イヤミに満ちた)レクチャーは、ç§'学捜査にé-¢ã™ã‚‹çŸ¥å·±ã«ã‚ふれており、ã"れだã'でも読むに値する。

本作å"ã‚'読み進める上で、ほとã‚"どの読è€...が「羊たちの沈黙」ã‚'思い起ã"すだろう。確かに猟奇性に満ちた犯罪、レクターとクラリスのé-¢ä¿‚など、相似する点はあるが、それが些ç'°ãªã"とに思えるほどã"の作å"ã¯é¢ç™½ã„。

本作å"ã! ã'でなく、作è€...の作å"ã¯ã€ã€Œæ™‚é-"ã‚'うまく使ったサスペンス性」「事件にé-¢ã™ã‚‹ã‚¢ãƒƒã¨é©šãã©ã‚"でã‚"è¿"ã-」が詰まっており、優れた作å"ãŒå¤šãã€ç§è‡ªèº«ã¯ã"の作å"ã‚'きっかã'に作è€...にはまった一人である。

本作å"ã¯1999æ-‡æ˜¥ã§1位、2000å¹'度版ã"のミスで2位ã‚'獲å¾-ã-た。

・「ロカールの相互交換原則
1997年発表、邦訳1999年9月20日発売、ジェフリー・ディーヴァーを日本でも大ブレイクさせた傑作。多くのレビュアーがご指摘の通り、ベイセル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーというすばらしいキャストにもかかわらず、原作が1000倍は素晴らしい出来栄えである。

ディーヴァーの本作がブレイクした原因は明白だ。巻末463ページ以降にリンカーン・ライム著『証拠物件』第四版(ニューヨーク、フォレンジック・プレス刊、1994年)巻末用語解説より抜粋などという、とてもすばらしいユーモアとともに説明されている現在の科学的調査、たとえばガスクロマトグラフ質量分析計やロカールの相互交換原則といったものをミステリー・推理の世界の領域に持ち込んだ事である。

過去の優れたミステリー・推理作家達が!持ち出しようがない科学的調査にディーヴァー特有のジェットコースターの様なドライブ感ある文体と幾重にも用意された伏線とプロットが結びついた本作こそ、大ブレイクの原因だ。

併せて、リンカーン・ライムとアメリア・サックスという素晴らしいキャラクターが初めてクロスする瞬間が素晴らしい。僕はそこに人間と人間との宿命的なロカールの相互交換原則を感じてしまう。

もう一つ、翻訳者がここまでのディーヴァーの翻訳者より数段素晴らしい。池田真紀子氏はディーヴァーの持つスピード感を全く失わずに見事な日本語化をされたと思う。

100年に一冊の大傑作。

ボーン・コレクター (詳細)

エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫)

・「師弟対決
2002年度版このミス10 11位。 2001年文春ミステリーベスト10 3位。

<リンカーン・ライム>シリーズの第3作の本作品の見所は、リンカーン・ライムとアメリア・サックスの師弟対決だろう。連続女子学生誘拐犯の容疑者の少年に純粋な心を見いだし、少年を逃がすアメリアと、リンカーンとの追跡劇は、なかなか面白かった。もちろん、作者の特徴である「どんでん返し」と「科学捜査」の面白さも随所にちりばめられた好作品である。また、他のシリーズ作品と比較して、アメリアの内面にフォーカスがあたっている部分が多い印象を受けた。

他の<リンカーン・ライム>シリーズは、「ボーン・コレクター」「コフィン・ダンサー」「石の猿」「魔術師」「12番目のカード」。シリーズ次回作は「The Cold Moon」。

・「安心感とサクサク感
3年前から、半身浴のお供に、どっぷりミステリーやサスペンスにはまった。とっかかりはP・コーンウェル、A・カーヴァなどの女性作家。

・「どんな猟奇殺人なんかよりも恐い事件
いやいやいや、とてもおもしろかったです。最後のページをめくるまで。こんなに最後の1ページをめくるまで(最後になるほどよりいっそう強く)楽しませてくれる本にはなかなか出会えない。毎回ラスト100ページあたりからぐわーっと盛り上がるもんだから、最初のほうがちょっと退屈に感じてしまうくらい。でも読み終えれば、その退屈に感じる前半部分にこれでもかと伏線がてんこもりなんだよなぁ…ボーンコレクターを手にしてから、このライムシリーズを次々に読んでます。猟奇殺人を扱うばかりでなく、毎回毛色の違う事件と背景で楽しませてもらえる。今回は自分には全くなじみのないアメリカ南部の湿地が主な舞台ともなり、想像するのも難しいんだけど勝手に映画「ニューワールド(コリン・ファレル主演)」なんかの開拓時代のイメージ?とにかく、圧倒的な自然って都会育ちには脅威です。そして排他的な田舎も。その小さな街を覆い尽くす影。どんな猟奇殺人なんかよりも恐い事件かも、なんて最後はかなりぞっとした。こういうの実際にあるんだろうなって映画「エリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ主演)」なんかを思い出したりもして。それでいてさわやかな読後感。うーん、お腹いっぱい。いったい次はどんな事件で楽しませてくれるのか…今作が最高傑作と呼ぶ声もあるのがちと心配ですが。笑

・「繁栄する種は成長し、進化する
 本シリーズはNYが舞台になっていますが、本作品ではライムの手術のためノースカロライナ州に訪れている設定になっています。動けないライムがNY以外で活躍するのはシリーズ初になりますが、さすがディーヴァー、ノースカロライナ州の歴史と本作品でキーのひとつとなる昆虫の生態に関しての綿密な取材を基にディテールが書き込まれています。本シリーズはノンスットプ・ジェットコースター・サスペンスと冠されますが、圧倒的なディテールがストーリーの奥行きをもたせています。ストーリーだけ追う分には読み飛ばして支障はないのですがシリーズ愛読者には各作品のディテールも楽しみの一つとなります。

 またライムとサックスの関係もシリーズを重ねるごとに変化しており、今回はサックスのある意味屈折したライムへの感情がシリーズに厚みをもたせています。タイトルの『エンプティ・チェア』とは容疑者に対する精神科医の心理的アプローチの手法(実在するかは不明)として描かれていますが、もうひとつライムのストーム・アローの電動車椅子にもかけられています。どう関わってくるかは読んでのお楽しみとしておきましょう。

・「“どんでん返し”の連続、ラスト100ページは目が離せない
<リンカーン・ライム>シリーズ第3弾。 ’01年、「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第3位、「このミステリーがすごい!」海外編第11位。

今回の事件は、脊髄再生手術のために、アメリカ東海岸南部のノースカロライナ州を訪れたライムが、地元保安官の要請を受けて、猛暑の中、町一番の問題児‘昆虫少年’が犯したとされる殺人事件と連続誘拐事件の捜査をおこなうというもの。付添いはアメリアと介護士のトムだけで、ライムは現地の保安官補たちや臨時の鑑識助手の協力の下、不十分な状況で取り組まなければならない。

それでもライムは、例によって、肉眼では見えないような微細証拠物件を手がかりにして、試行錯誤の末、被害者の女性ふたりの監禁場所に着実に迫ってゆく。その科学捜査の過程は本書の、いやこのシリーズの読みどころである。

そして、少年の無実を信じるアメリアがとった捨て身の行動から、思いがけず、“追う”リンカーン・ライムvs“追われる”アメリア・サックスという、師弟コンビの対決が起こってしまう。

さらに、アメリアが誤って保安官補を射殺したり、監禁された女性が何者かに襲われたり、衝撃的なエピソードがつぎつぎと続く。

物語の大半は逃避行と追跡行で占められているが、ラスト100ページを切ったあたりからは、がぜん目が離せなくなる。壮絶な銃撃戦、重傷を負うトム、ライムがたどり着いた真相、アメリアの裁判、そして何よりも最後にページを閉じるその時まで、「これでもか」と展開される“どんでん返し”の連続は、一気読み必至であり、読者に息つく暇を与えない。

本書は、前の2作とは趣が異なり、主役をも凌駕しかねない強大な敵との対決という構図ではない。しかし、スケールの大きさでは決して引けをとらない。ライムが暴いた真相は、町全体を揺るがしかねないほどのものだった。

エンプティー・チェア〈上〉 (文春文庫) (詳細)

コフィン・ダンサー〈下〉 (文春文庫)

・「絶対に後悔しない1作
前作に劣らぬスピード感溢れる展開で、500ページ近い長さをまったく感じさせない。結末の鮮やかさも前作同様。あまりに見事に投げられたので、何が起こったのかエンディングを前にしばし呆然とするほどだった。前作ボーンコレクターを火曜の夜にうっかり読み出したらそのまま朝になってしまったが、その夜に本作に取り掛かり、夜中の3時に読み終えるまで止められなかった。サラリーマンは平日に読んではならない。

・「誰がDancerなのか、がポイント
僕はリンカーン・ライムシリーズでは現時点ではこれが最高傑作だと思います。複雑にはられた複線と精密なストーリー展開、証拠を分析する機器の完璧なまでの描写、アメリアとライムの会話のひとつひとつどれをとっても最高です。何故、「ボーンコレクター」が映画化されてこれがされないのかホントに不思議です。どうやら次の映画化は「青い虚空」になりそうですが・・・。手に取って絶対損はありません。きっと3時間後には500ページを読破しているでしょう。

・「ダンサーは誰か当てられますか?
僕はリンカーン・ライムシリーズでは現時点ではこれが最高傑作だと思います。複雑にはられた複線と精密なストーリー展開、証拠を分析する機器の完璧なまでの描写、アメリアとライムの会話のひとつひとつどれをとっても最高です。何故、「ボーンコレクター」が映画化されてこれがされないのかホントに不思議です。どうやら次の映画化は「青い虚空」になりそうですが・・・。手に取って絶対損はありません。きっと3時間後には500ページを読破しているでしょう。

・「プロ中のプロの殺し屋コフィン・ダンサー
『ボーンコレクター』の主人公リンカーン・ライムが活躍するシリーズの第2弾です。 プロ中のプロの殺し屋コフィン・ダンサーとライムが知能の限りを尽くしてお互いを追い詰めていく話がメチャメチャおもしろいです。わたし的には、シリーズ第5弾の『The Vanished Man』まで読んだ中でのシリーズ最高作だと思います。

・「相次ぐどんでん返し-Bone Collector以上の面白さ
前作Bone CollectorですっかりDeaverのファンとなってしまった私だが、この作品は前作のさらに上を行く面白さである。マフィアの秘密をたまたま見てしまった小さな航空会社のオーナー兼パイロットはCoffin Dancerと呼ばれる刺客に命を狙われるはめに。刺客を追いつめる警察とその裏をかく犯人。速いテンポと相次ぐどんでん返しに、読者はすっかり著者に振り回されるが、しっかり伏線を張ってあるので、唐突さは感じられない。そして最後の最後まで本当の結末はわからない。四肢の動きがとれず、ベッド上から指示を出す主人公の科学捜査官がシャーロックホームズばりに賢すぎるのが少々嘘っぽいが、犯人の方も負けず劣らずずる賢いので、バランスはとれている。善悪の知恵比べという古典的手法に、法医学の最先端を織り交ぜている所に彼の作品の面白さがあると言えよう。同じジャンルに属するPatricia Cornwellの作品よりもずっと面白く、Bone Collectorを読んだ人にも、まだの人にも絶対お勧めの一品である。英語も難しくない。

コフィン・ダンサー〈下〉 (文春文庫) (詳細)

百舌の叫ぶ夜 (集英社文庫)

・「二十世紀を代表するサスペンス
本作品の後、「幻の翼」「砕かれた鍵」「よみがえる百舌」「のすりの巣」と5作に及ぶ「百舌シリーズ」の第一弾。

新宿の雑踏の中、爆発事件が起こる。被害者はバックを所持していた極左メンバーの筧と、偶然居合わせた公安部倉木警部の妻珠枝。筧を狙っていたテロリスト百舌だが、事件後記憶を失い、雇い主からも追われることになる。自らの記憶を追う百舌、そして、事件の真相を追う倉木・大杉・明星美希、それぞれが交錯し、やがて警察組織の暗部に踏み込むことになる。

数多くの代表作をもつ作者だが、私にとってこの作品に初めてであったときの衝撃は忘れることができない。15年以上たったいまでも、決して色あせることのない、迫真のサスペンスである。

本作品は1986年、週刊文春のベスト10で2位にランキングされたほか、同じく文春の「二十世紀傑作ミステリーベスト10」で11位にランキングされた。

・「色あせることのない迫真のサスペンス
新宿の雑踏の中、爆発事件が起こる。被害者はバックを所持していた極左メンバーの筧と、偶然居合わせた公安部倉木警部の妻珠枝。筧を狙っていたテロリスト百舌だが、事件後記憶を失い、雇い主からも追われることになる。自らの記憶を追う百舌、そして、事件の真相を追う倉木・大杉・明星美希、それぞれが交錯し、やがて警察組織の暗部に踏み込むことになる。

この後、「幻の翼」「砕かれた鍵」「よみがえる百舌」「のすりの巣」と5作に及ぶ「百舌シリーズ」の第一弾。数多くの代表作をもつ作者だが、私にとってこの作品に初めてであったときの衝撃は忘れることができない。15年以上たったいまでも、決して色あせることのない、迫真のサスペンスである。

本作品は1986年、週刊文春のベスト10で2位にランキングされたほか、同じく文春の「二十世紀傑作ミステリーベスト10」で11位にランキングされた。

・「ぜひシリーズで!
倉木vs百舌シリーズ?最初の物語です。 この一冊を偶然書店で見つけたのが始まり。最終冊?の‘よみがえる百舌’まで一週間、一気に読破してしまいました。さまざまな事件を通して多くの人物がうごめく様はハードボイルドの一言では片付けられない奥の深さです。春の夜、寝不足覚悟で挑戦してください。

・「サスペンスのお手本のような極上エンターテイメント
『修羅の終わり』『烙印』など、貫井徳郎のハードボイルドの作品群に近い印象でしたが、これは単に私がそういう作品を読んだことしかないからでしょう。

殺し屋“百舌”と、白昼で主婦を巻き込んで起きた爆弾爆発事件。刑事たちと右翼のメンバー、事件の被害者など、様々な角度から一人称形式で描かれるハードボイルド・サスペンスです。

さすがは逢坂剛だけあって、各章ごとに目まぐるしく人称が変わるのにも関わらず、抜群に読みやすく、しかもストーリー、謎ともに面白い!小さな謎が積み重なり、最後には思いも掛けない大きな謎が現れるという、このジャンルの王道を行く構成です。

○○○○など、ラストで明かしてもいいようなネタまで中盤で明かすなど、数々の謎が序盤から少しずつ明かされるので、最初からラストまで全く中だるみしないのが凄いです。

ハードボイルドやサスペンス好きだけでなく、ミステリマニアにも充分楽しめる傑作です。

・「バカヤロウなぐらいハードボイルドな奴ら
Wikipediaによると、ハードボイルド(hardboiled)とは、感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情な、(精神的・肉体的に)強靭な、妥協しない、などの人間の性格を表す言葉となる。文芸用語としては、反道徳的・暴力的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する手法・文体をいい、アーネスト・ヘミングウェイの作風などを指す。また、ミステリの分野のうち、従来の思索型の探偵に対して、行動的でハードボイルドな性格の探偵を登場させ、そういった探偵役の行動を描くことを主眼とした作風を表す用語として定着した。

この書はハードボイルドでいいのだろう。というより出てくる奴、出てくる奴皆ばかやろうなぐらいハードボイルドだ。

主人公は言うまでもない。百舌も然り、大杉も然り、明星も、都城もそうだろう。クールだ。

その個性が、著者の緻密なシナリオの中で自在に動き回る。著者の本を読むのはこれが始めてである。シナリオがしっかりしており、かつ、どんでん返しの連続、読むもののちょっこっと先を常に行く。あまり突飛だとついていけないのだが著者はそのさじ加減を知悉しているのだろう。そのためストーリーに委ねられながら、驚き、気付きが続く。

読んだ後自分が何かハードボイルドになった気がする。何か物事をクールで見ているような。それが優れたハードボイルドだと思う。

百舌の叫ぶ夜 (集英社文庫) (詳細)

夜のフロスト (創元推理文庫)

・「フロスト・シリーズの人気の秘密
実は芹澤恵氏の翻訳によるところが大きいのではないか。この人、田口俊樹氏のお弟子さんですよね。

ときどきこのシリーズを読み返してみるけど、自分自身の仕事振りが思った以上にフロストの影響を受けていることに気付き、驚きます。(机の上はめちゃくちゃ、書類をファイルしない、シビアな話でも笑いを混ぜないと気がすまない、直感に頼る、等々)

・「計算しつくされた、ごった煮事件簿
■ イギリス、11 月。月曜日付でデントン市警に異動になったギルモア巡査部長は、昇進の野望を胸に秘めつつ、マレット警視と上司であるアレン警部の待つデントン市警に到着した。ところがそこで彼が見たものは、えび茶色のよれよれのマフラーを巻き、ボタンの取れたテカテカのスーツに結びっぱなしの垢染みたネクタイをしめた、とても警部とは思いたくない警部、フロスト。そのフロストによると、ギルモア巡査部長の上司になる予定のアレン警部はデントン市を席巻するくそったれインフルエンザ ウィルスとただいまベッドイン中で、彼の担当事件はフロスト警部に廻されたという。悪い予感は的中し、ギルモアはこのどうしようもなくだらしない「警部」の下で働くことになってしまうのだった。だがデントン市警のマンパワーが手薄になったのを見はからったかのように、次から次へと凶悪事件が発生。フロストの強引なペースに巻き込まれながら、不眠不休の一週間をスタートさせたギルモアの運命やいかに――。■ 物語の一週間の間に起こった事件の多いこと多いこと。デントン市は相変わらずの犯罪多発地帯です。しかも、それが全てこの一週間たらずの間に解決されてしまうのだからフロスト警部の八面六臂の活躍には舌を巻くほかありません。とくに最後のシーン。「いったん読者をフロスト警部と一緒に恐怖のずんどこまで突き落とし、それを 180 度コンバートして『なるほど!!』の解決に導く」といういつもながらの見事な手腕です。どうやらこのシリーズは共通して、「一番重要な事件は一番最初に提示され、間の細かな事件を相互に連携させながら一番最後に解決される」という構成になっているようで、一見ごった煮的にみせかけておきながらその実、見事に緻密な計算が背後にあるのです。ううむ。毎回毎回同じような事件ばかりなのに、こうも面白いのは何故なのでしょう。不思議です。

・「hardはいつ?
次回作がまだ邦訳されないので、読み返しています。読み返すほどにおもしろさが増すのは、やはり同時進行させているドラマに破綻がないからでしょう。とてもごちゃごちゃしているのですが、収束し始めると、すとんとまとまります。デントンの町は事件の中でこそ光り輝くのかと思ってしまいます。テレビシリーズよりも活字の中のフロストが大好きです。

・「何度読み返しても
犯人も手口も知ってるはずなのに、フロストの世界にどっぷりはまりこみ、間を空けずに読み返しても面白さは増すばかり。1度読んだ本を、そう何回も読み返すことはないのですが、これは一気に何度も読んでしまうほどです。次の新刊を待ち望んで、毎日のように本屋に足を運んでいます。

・「フロスト警部、今度の敵はインフルエンザ?
 おなじみフロスト警部が、独特の洞察力とひらめき、行き当たりばったりの捜査で猪突猛進しながら、複数の事件を解決していきます。

 老婦人の連続殺人、新聞配達少女の誘拐殺人、いちゃいちゃ若夫婦への嫌がらせ、自殺者も出たブラックメール、ポルノの裏ビデオ…。 インフルエンザ大流行による人手不足のなか、出世意欲に燃える新人を従えて夜通し走り回るうち、別々の事件が思わぬところでつながっていきます。

いつもながらのプロットの巧みさは、Wingfieldの職人技ともいえるでしょう。最初から最後まで面白く、痛快です。

夜のフロスト (創元推理文庫) (詳細)

邪悪の家 (クリスティー文庫)

・「ポアロがエンド・ハウスで演出・上演してみせるお芝居仕立ての結末が見事な、初期の傑作
「邪悪の家」の原題は、「PERIL AT END HOUSE」であり、他社の文庫本、テレビ版「名探偵ポワロ」、NHKアニメ「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」では、全て「エンド・ハウス(の)怪事件」の邦題で発表されている作品である。余談だが、アガサには、原題そのままの「ねじれた家」という作品もあり、私などは、未だに、両者を混同してしまうのだ。こうした紛らわしい邦題の付け方は、何とかならないものだろうか。

さて、物語の方だが、イギリス南部海岸の観光地のホテルで夏の休暇を過ごすポアロは、エンド・ハウスの若く美しい女主人ニックと知り合う。ニックは、三日間に三度も命を狙われ、今また、ポアロの目の前で、狙撃されたのだ。ポアロは、五回目を警戒して、エンド・ハウスに乗り込むのだったが、ダンス・パーティの夜、遂に、悲劇が起きる。

終盤に、事件の真相を解明したポアロが、未知の犯人をあぶり出すため、関係者が一堂に会する中で、エンド・ハウスで演出・上演してみせるお芝居のシナリオは、どんでん返しの終幕付きで、見事の一語、アガサの卓越したストーリー・テラー振りの面目躍如といったところだ。

ちなみに、この作品が出版された頃は、アガサは、マックスとの二度目の結婚の直後で、日常生活を存分に楽しむとともに、フルスピードで相当数の作品を一気に書き上げていた時期であり、アガサはこの当時の作品の記憶があまりなく、この作品についても、「わたしの小説の中ではまるで印象が残っていないし、書いた記憶さえ思い出せない」と、さんざんな言い様なのだが、「ようやく自分の書くものに自信が持てるようになってきた」と言っている時期でもあり、初期の傑作の一つであることは確かだろう。

・「数多いクリスティのエポック・メーキング作品のひとつです。
みなさん書いていますが、一般には「エンドハウスの怪事件」というタイトルの方がメジャーかな?でも最後まで読んだら「邪悪の家」というタイトルの方が内容にふさわしいタイトルであるのかな…と思います。

ポワロが犯人を疑い始めるそのきっかけとか、見逃していたある小さな矛盾とか、このあたりなかなか説得力があって面白い。あと、動機もきちんと推測できるようになってるのはいいですね。これはクリスティ作品の大きな魅力だと思います。本作と同じ仕掛けを用いたミステリは山ほどあると思いますが、単なる一発アイデアのミステリで終わっていないところはさすがですね。

・「Peril at End House
Peril at End House is about charming Nick Buckley's many escapes from death, and the tragedy that befalls her sister. After many attemped murders, the murderer finally thinks they have killed Nick. The murderer, however, had killed her sister, who was wearing NIck's shawl.

This is one of Agatha Christie's best books. It is suspenseful and the psychological build-up of the story is wonderful. The reader cannot decide who did it, as each character has a different opinion on the matter. Although there are several characters, all are fully developed and have their own suspicious ways. Every character has a strong motive and the oppurtunity, but the ending is quite surprising. The solution is beleivable and complex, and lets the reader end on a high note. A must read for all mystery and crime novel lovers.

・「これは「エンド・ハウスの怪事件」です
創元推理文庫では『エンド・ハウスの怪事件』として翻訳されている作品です(間違えて両方買わないように!)。クリスティにしては地味な作品で、トリックは決して大仕掛けなものではありません。しかし、じつはかなり掟破りのことをやっています。何をやっているかを書いてしまうと興をそぐので書きませんが、読んでみると「なるほど、クリスティはこれをやりたかったのだな」とわかると思います。

もうひとつ面白いのは、登場人物たち(=容疑者たち)がみんな怪しい言動をしていることです。もちろん、殺人事件に直接関係あるのはごく一部の人なのですが、それでは他の人達はなぜそんな行動を取るのかということにポワロが頭を悩ませます。それらの謎の中の最後のひとつが明らかにされるところでこの物語は終わるのですが、その謎は事件に直接の関係はありません。それによって陰湿な事件にもかかわらず、読後感を微笑ましいものにすることに成功しています。

・「女性に優しいポアロ
命を狙われた美女ニックを守ろうと立ち上がった勇敢な騎士のようなポアロ!でもそこはクリスティ、どんどん謎が深まって…最後にやっぱりポアロの活躍で謎が解かれて爽快!

邪悪の家 (クリスティー文庫) (詳細)

死亡推定時刻 (光文社文庫)

・「悔恨の衝撃
心臓病の子を亡くした親、誘拐殺人により子を亡くした親、殺人容疑で子を亡くした親、留置中に親を亡くした子、従姉妹を亡くした子、姪を殺めた伯父、冤罪を立証できなかった弁護士。なんと次々と、やるせない無念さが集積された作品だろうか。この作品は、心が弱っているときには、決して読んではならない。恐るべき悔恨の衝撃を打ち付けてくる作品である。

・「法律は人を守ってくれない
TV放送を見て、放送されなかった闇の部分を覗いてみたくて原作を読んだ。俳優のイメージが強烈だったけど、それでも刻々と変わる誘拐事件の緊迫した前半部分。そして、なにより日本の「冤罪」はこうして作られるのかという取り調べ部分。誘拐殺人という事件の悲惨さより、警察組織の中で冤罪が作り上げられる過程、もちろん意図的ではないにしても、気づかないうちに「組織」として作られる過程があからさまに見せられて、さらに大きな闇を見た気がして怖かった。冤罪をはらすべく必死の弁護活動をする後半部分。若き弁護士の事件の解明は、法律に素人な読者にもわかりやすく書かれており、事件発生、逮捕、取り調べ、裁判、弁護活動そして判決に至る一連の動きがよく分かる。ただし、冤罪と分かっていながら、検察の矛盾点を次々にあばきながらも、それでも今の日本の裁判では「無罪」とならないところが、リアルすぎる。法律家が描いた本ということで興味を持って読んだが、こんなにも分かりやすいとは思わなかった。

・「まるでノンフィクションのような話
 何気なく手に取った本でしたが、先が気になり一気に読みました。本当は殺人犯ではない人間に対して警察は殺人を自白させてしまったり、また一度とった調書を無理やり改ざんしてしまったりと冤罪というのはこのようにして起こってしまうのかと納得してしまいました。最後に死刑判決が覆り、無罪になると思ったのですが、無期懲役になっただけで「なんで!?」って思いました。 この作品の著者は現役の法律家なので裁判の様子、鑑識の様子、取調べの展開などとても細かく描かれており大変わかりやすいです。 ノンフィクションと錯覚するほどきちんとできた話だなと思いました。おすすめの作品です。皆さんもぜひ読んでください。

・「冤罪は悪意から生まれるとは限らないんですね
やりきれない、の一言に尽きる。被害者の両親と伯父、無実の青年とその母、弁護士、自らの失態を誤魔化そうと証拠をでっち上げる刑事と、正義感の強い刑事・・・それらの人物の関係と司法制度とが悲しいほどに噛み合わず空回りを続ける様はほんとうにやりきれない。フィクションのはずなのに、現実のルポを見ているようで・・・、読んでいる途中で本気で憤りを感じた場面が何度もあった。

・「最高のリーガル・サスペンス!
ひょっとすると今年読んだ中では最高の掘り出し物かもしれない。無名の筆者だし、ひねりのないタイトル。期待せずに読み始めて、すぐに止められなくなった。

前半は、ある事件で無実の青年が誤認逮捕され、警察・検察の執拗な取り調べで強引な自白調書が作られ、なかったはずの犯罪事実が明確に構築されていく模様が丹念に綴られる。そして一番面白いのはやはり後半。青年自身ももはや諦めている冤罪事件の解明に、1人の弁護士が乗り出す。粘り強く証拠を一つひとつ検討し、反論を組み立てていく様は、非常に理知的で気持ちいい。

筆者は現役の法律家だけに、描写が極めてリアル。フィクションとは思えないぐらいの精密さで、犯罪物のドキュメントを読んでいる気分にさえなる。しかも、難しい刑事訴訟法の世界を、素人の我々に楽しめるように小説化できるのは、かなりの力量だと思う。

そして、日本の司法制度について考えさせる極めて現実的なラストも秀逸だ。

日本のリーガル・サスペンスといえば、中嶋博行が第一人者だと思っていたけど、この筆者も今後はマークしておくべきだろう。

死亡推定時刻 (光文社文庫) (詳細)

死体農場 (講談社文庫)

・「5作目にして!
私は個人的に、この作品が結構好きだったりする。

タイトルと内容が、果たして合っているかどうかは別として、前作の続きでありつつ、ちょっと違う。

というのも、ケイは、リッチモンドの検死局にはほとんど行かず、出張のような感じで事件のなぞを解く。彼女がひらめいたとき、感覚としてよく分かる。いわゆる、「女の感」なのかもしれないが、ふとしたときに、一瞬ですべてが分かる(解明される)ような、とにかく、その描写が好きだ。しかも、答えを教えてくれず、少し時間が経ち、または犯人と思しき人物に、事実を突きつけていくときにすべてが解明される。そのスピード感が本当に楽しく感じれる。

今後、またもめることになるが、この作品で、ケイとベントンの付き合いが始まる。マリーノの嫉妬などで、3人の強力なチームワークに亀裂が生じる。また、ルーシーもすっかり成長し、いまやFBIアカデミーでプログラマーとして働く。一読者の私自身、ルーシーが成長していく様子は、本当に楽しみだ。「10歳の頃から、知っているんだぞ!」みたいな。

ボディー・ファームのシーンはごくわずかだが、このような研究所があることにより、今までに解明されなかった、人が死後、腐敗していく様子を観察し、その研究が、実際の事件解決の役割を担っているのであろう。また、この作品でこの施設を知ったのだが、割と、頻繁に取り上げられる施設だと改めて、いろいろなメディアを通して知った。自分が生きていくうえで、必要な知識ではないかもしれないけれど、知っていても、特に損はしない、トリビア的な情報が、コーンウェルの作品には多い。

・「The Body Farm
I've always loved Patricia Cornwell books and I liked this book as well. Though my favorite Cornwell book is Point of Origin, The Body Farm is a must read for all Patricia Cornwell fans!

・「おなじみの手法
このシリーズは、計3冊目読んでいるけれども、おなじみの手法。すなわち、Kayのプライベートな生活のトラブルによる不安を表現して、読者にその不安を感じさせて、読者の緊張感を持続させ、その不安やトラブルを本筋の事件に絡ませる。今回の不安の原因は、不倫や、姪が巻き込まれるトラブルだ。

ただ、以下の点により、評価を下げた。

1.謎が残った部分があり、その意味ですっきり解決とはいっていない。2.この人の手法がもう一つ気に食わない。ようするに、物語の筋(事件の謎や、展開の意外性)そのもので面白みを表現しているわけではなく、上にあげた、Kayの不安により、物語を盛り上げている。

最大の謎は、この本のタイトル。何故このタイトルを付けたのかが、分からない。"Body Farm"という場所が、主要な舞台ではないからだ。

まあ、それにしても、この人の小説は、計3冊目になるけれども、それなりに読ませてくれる。

死体農場 (講談社文庫) (詳細)

半落ち (講談社文庫)

・「突っ込みどころはありますが
刑事畑一直線の警官が警視だったり(ありえない)、キャリアでもないボンクラの警部が出てきたり(あれで昇進試験は通ったのか?)、司法試験合格組でロクに現場を知らない検事が妙に勘が冴えていたり(検事が捜査することは殆どない。言葉使いも威圧的で眼光鋭い検事など実際にはマズ居ないタイプ)だが・・・それらを度外視しても感情移入できるだけの文章力は流石だ。やはりプロだ!話自体は意外と言うほどのことはないが、小説は「結末よりも、その進行過程が大事」という見本のような作品だ。値段以上の価値を認める。

・「事前情報なければ予断無く読むべき作品
 本作は警察官による、妻の嘱託殺人から自首までの空白の二日間の謎を縦糸に、そしてこの殺人事件に関わる取調官、検事、弁護士等、関係者の心情の動きを横糸に構成されています。縦糸に関してのコメントはネタばれに成らざるを得ないので、本レビューでは横糸に関して紹介致します。

 とかく、縦糸の結末ばかりが注目されますが、ひとつの殺人事件が起こった後に如何に多くの人間が関わり、思いを持っているのか、それぞれ独立した短編と見る事ができるほど見事に描き込まれています。このあたり多くの短編を書かれている作者の真骨頂だと思いました。むしろ殺人事件発生から様々な局面を経て人が裁かれる過程で、関係した登場人物の心情を味わいながら読んでいったほうが、素直入っていけるように感じます。

 もう文庫本になっている事でもありますし、事前の情報なしに素のまま読んで頂くことをお薦めします。いろいろ話題になっただけに、予断を持って読んでもいいことはありません。質の高い作品である事は保障します。

・「重い力を持ったミステリー
視点がいくつも変わりながら展開していく構成がよく効いていました。梶の妻への愛・亡くなった息子への愛など、沈黙の中に滲み出て心を打たれました。読了後、「もう少し、別の生き方はなかったものか……」そんな思いにもかられました。しかし、どうにもならなかったのですよね。どうにもならない中で、だからこそ、どうしても行いたかった二日間の行動。切なく重い力を持ったミステリーだと思います。

・「秀作だが、「感動」「意外な結末」には同意できない
このミス2002年版、2001年文春傑作ミステリーベスト10ともに1位。作品としての話題性とともに、直木賞の選考を巡る一連の騒動でも注目された作品である。

文庫化をきっかけに再読してみた。作者の作品に共通する、「警察組織と個人のありかた」というテーマを、現職の刑事がアルツハイマーの妻を殺すという犯罪をベースにおいて、事件に関係する6人の視点から描いた作品である。やはり、うまいし、面白い作品だと思うが、この作品を語るときに頻用される「感動」「感涙」「意外な結末」という言葉には同意できない。妻を思う故、妻を殺したと言いながら、理由はともかく(というより、心神喪失という事態でないにもかかわらず)、2日間妻の遺体を放置したことを考えると、アルツハイマーという病気の難しさは感じるものの、感動はできなかった。また、「意外な結末」についても、かなり早い段階でキーワードが作品中に出現し、それが印象的である故、そもそも「謎」に感じなかった。

細かいことを書いたが、この作品が秀作であることは間違いない。一方、アベレージの高い横山氏の他の作品と比較してこの作品が取り立てて優れているかというと、決してそうは思わない。たとえば、翌年に発行された「クライマーズハイ」の方が、「感動」という点では数段上だと思う。他の作品を未読の方は、是非これをきっかけに手にしてもらいたい。

・「警察小説+ミステリ+感動。三拍子揃った名作。
 著者は地方県警を舞台とした警察小説を得意としており、捜査に関する記述は具体的でリアルです。現職警察官が妻を殺して自首、取調べでは動機も犯行手法もすべて語りつくし「完落ち」状態と思われたのに、犯行後自首するまでの空白2日間については頑として語ろうとしない「半落ち」状態。この事件にそれぞれの思いと立場で関わる同僚刑事、検察官、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官の視点で、捜査の経過は語られていきます。 県警と地検の対立と裏取引、事件記者たちの特ダネを目指す熾烈な争い、アルツハイマー患者介護の壮絶な現実。作者はこれら重いテーマを随所に織り込みつつ、妻を殺してからの空白の2日間に何をしていたのか?人生50年と書いたのは50歳での自殺を意図してなのか?というメインの謎に読者を引き込んでいきます。 最後に謎解きの答えが提示される場面は感動を誘います。仕掛けられた数々の謎がひとつの線でつながり、登場人物たちの事件と犯人に対する温かくしかし複雑な思いについての描写が、アルツハイマー患者である妻の殺人という一見救われない題材を扱いながらも、この小説を読後感すがすがしい作品にしています。 警察捜査に関する描写は興味深く、ミステリとしても秀逸、感動も約束されている。三拍子揃った名作です。

半落ち (講談社文庫) (詳細)
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