「ハレルヤ。」「新本格の意地を見せた力作」「閉じられた世界」「総決算」「良くも悪くも麻耶イズム」
学生街の殺人 (講談社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「あまりに切ないラスト」「精緻な構造を持った小説でしたが、一気に読めました」「完成度が高い」「若き東野の勝負」「二重三重のなぞ」
冒険の日々 (小学館文庫) (詳細)
熊谷 達也(著)
「「三丁目の夕日」も良いけど、私はこっち」「熊谷さんの小学生時代?」「著者の作風の原体験がここにある」
FUTON (講談社文庫) (詳細)
中島 京子(著)
「正しい小説の書き直し方」「「蒲団」はある程度普遍的真実を表現しているのでは?」
回廊亭殺人事件 (光文社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「2つのトリック」「犯人を狙う殺人計画者」「うーん 星3つ」
ブルータスの心臓―完全犯罪殺人リレー (光文社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「東野圭吾のサスペンスの中でも特にスリリングなストーリ展開」「さすがは理系出身の東野圭吾」「本格長編推理。3人がかりのトリックが思わぬ事態に...」「魅力的な殺人プランだが早々と崩壊」「真犯人は誰だ?」
追憶のかけら (ジョイ・ノベルス) (詳細)
貫井 徳郎(著)
「力作」「三転四転」「いつもながらのストーリー上手」「実はLoveLoveが主題ののろけ小説」「2つの物語」
王国への道―山田長政 (新潮文庫) (詳細)
遠藤 周作(著)
「遠藤周作の秀作歴史エンタテイメント」「日本人」「史実としてより、ストーリーの妙を楽しむ一冊」「遠藤お得意の手法による作品」「主人公に魅力があり、楽しめる。」
深い河 (講談社文庫) (詳細)
遠藤 周作(著)
「インドに行きたくなります。」「それぞれの想いを内包して……」「傑作『沈黙』を超えた,遠藤の集大成」「この混沌さが性に合う。」「何度も繰り返して読みたい一冊」
ZOO〈1〉 (集英社文庫) (詳細)
乙一(著)
「途中で吐きそうになった!」「白乙一??」「白と黒」「紅い本。」「頭を玄翁でぶっ叩かれた」
ZOO〈2〉 (集英社文庫) (詳細)
乙一(著)
「叙述へのこだわり」「不謹慎だけど…」「負けた〜」「二つで一つ」「分類不可能とは、確かに」
十字屋敷のピエロ (講談社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「見事と言うしかない作品」「ラストの言葉が・・」「久々にドキドキした作品でした!」「事件の現場には、必ずピエロがいる。」「新型の叙述トリック」
観覧車 (祥伝社文庫) (詳細)
柴田 よしき(著)
「オススメ」「続きはまだ?」「恋愛ミステリー」「えぇぇ!」
点と線 (新潮文庫) (詳細)
松本 清張(著)
「松本清張初挑戦。」「ミステリー作品の本質を知ることのできる優れた小説である!」「決して色褪せることのない社会派推理小説の原点がここにある!」「実はヒューマンドラマな清張作品」「風間完の挿画がすばらしい」
本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫) (詳細)
宮部 みゆき(著)
「時代小説とは」「読まなかったことを後悔」「人情に涙」「人情味溢れる宮部ワールド!」「宮部ファンならずとも・・・」
ダイバー漂流 極限の230キロ (新潮OH!文庫) (詳細)
小出 康太郎(著)
「稀有なパターン」「気まぐれな海の女神のいたずらだったのか・・・。」「漂流中の気の持ち方が素晴らしい」「ダイバー漂流…」「「性格」と「運」と「失敗しないこと」。」
「3丁目の夕日とは一味違う昭和の物語。」
怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道 (集英社文庫) (詳細)
高野 秀行(著)
「辺境作家未だ衰えず!!」「期待を壊さない素晴らしい一冊」「ウモッカは見つかるのか?」「こんな探検記は今まで読んだことがない!」「これぞ「ムベンベ」「三畳記」の正統なる続編だ!」
被害者は誰? (講談社文庫) (詳細)
貫井 徳郎(著)
「じっくり考えながら」「誰もが分かるようなトリック」
扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫) (詳細)
石持 浅海(著)
「手に汗握る心理戦・倒叙ミステリーの傑作」「鋭い推理に心理的に追い詰められていく描写は秀逸」「古畑任三郎が好きな方にお勧めです」「変則の密室(動機は伏せられたまま)」
イニシエーション・ラブ (文春文庫) (詳細)
乾 くるみ(著)
「ハッピーエンドを信じます」「確かに、レビューは難しい。」「決して壮大な仕掛けではない。けどおもしろい。」「乾くるみは天才かもしれない。」「混乱させられた」
「家族というもの」「つきはなされることも甘やかされることもない現実」「この作品を読まずに現代ミステリーは語れない」「ルポ的なタッチで描く」「競売小説としてはピカ一です。」
逃亡くそたわけ (講談社文庫) (詳細)
絲山 秋子(著)
「ロードノベル」「「亜麻布二十エレは上衣一着に値する」を超えて」「読まなきゃ、世の中、やってらんねぃぜい^^!」「「そいぎんた」への旅」「九州言葉のたくましさが印象に残ったロード・ノヴェル」
星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫) (詳細)
村山 由佳(著)
「力量があります」「数珠つながりの短編」「完成した未完成」「連作短編家族小説」「時間をかけて染みこんでくる作品」
黒笑小説 (集英社文庫) (詳細)
東野 圭吾(著)
「まさにブラックな笑い。」「新作は楽しみ!!」「もうひとつの大いなる助走」「シンデレラはとってもテクニシャンらしい」「いろんな種類の笑いを味わえた」
・「ハレルヤ。」
舞台設定の雰囲気がいい。地図にない異郷の村、どこかヒヤリとする感じ。純日本風の村と住人。そこで起こる事件の数々。そして銘探偵の登場(純日本風の舞台では特に異質。そこがまたいい)しかし本書の凄いところは別にある。それは酩酊を伴うカタストロフィ。
・「新本格の意地を見せた力作」
閉ざされた山村で起こる連続殺人とその村で信仰される"神"の謎。その村に偶然迷い込んだ若者がその謎に挑もうとするのだが...。メイン・トリックと並行して、叙述トリックが施されるといった凝った創りで、作者の本領発揮。一説によると当時「S.water for drink」等が新本格の旗手等ともてはやされている風潮に警告を発するために"模範"として書かれたそうな。タイトルの「鴉」はたやすくポー(の詩)を連想させるが、本格の醍醐味を堪能させてくれる作者の代表作。
・「閉じられた世界」
単行本(1997年)→新書版(1999年)→文庫(2000年)。 新書化、文庫化の速度が異常に早い。まあ、それだけの面白さがあるとは思うのだが、倫理的にはどうなのか。 けっこう大掛かりなトリックが仕掛けられており、さすがに感心させられた。ただ、こういうトリックは他の作家にやって欲しかったというのが、率直な感想。というのも、文章に魅力がなく、ストーリーもつまらないからだ。この人の話で500頁以上も読まされるのは、苦痛でしかない。といって、この物語には膨大な頁数が必要なのも事実だし。 アンチ・ミステリとしてもあまり評価しない。
・「総決算」
麻耶雄高の、本作品発表時点での手持ちの技術を総動員した作品。それゆえ出来は濃厚だが、麻耶作品を順番に読んでいる者には、単なる自己模倣にも映る。
・「良くも悪くも麻耶イズム」
非常に長い作品ですが、比較的その点は気になりませんでした。翼ある闇に比べて読みやすいせいもあるでしょうし、ノスタルジックな雰囲気や、謎に満ちた閉ざされた村、という舞台設定が効果的。一体誰が何の目的で殺しまわっているのか、しっくりこない違和感を感じつつ読み進めると意外な真相へ到達しますが、正直、カタルシスを得るまでには至りませんでした。トリックは想定外でしたが、そんな馬鹿なという気持ちが大きいですかね。リアリティを重要視されない方にはお勧め。
・「あまりに切ないラスト」
東野圭吾の4作目は、2作目の『卒業』の姉妹編のような作品です。『卒業』に出てきた大学の周辺が今作でも舞台になっています。大学の正門の位置が変わった為に旧来の学生街がさびれ、新たな正門の周囲に新学生街ができるのですが、『卒業』は新学生街を舞台としており、『学生街の殺人』は廃れつつある旧学生街を舞台にしています。主人公も、『卒業』では就職を控えた大学生だったのに対し、今作では卒業したものの定職につかずブラブラしているフリーターです。この2作の設定はまるでコインの裏表のようです。
これまでのところ、東野圭吾は4作連続で密室トリックを用いています。今作の密室はマンションのエレベーターを用いたもの。被害者はエレベーターの上昇中にその中で殺されたと思われます。犯人がそこから逃げるには階段で下りるしかないはずなのですが、目撃者が1階から最上階まで階段を上る最中だったにもかかわらず、すれ違わないという謎が描かれています。真相の発覚と共に、被害者の本当の気持ちが主人公にわかってしまうところがなんとも切ないですね。
・「精緻な構造を持った小説でしたが、一気に読めました」
東野圭吾のデビュー第4作です。まずタイトルがいいですね。『学生街の殺人 』という誰にも身近に感じる街をイメージできるわけで、その設定からしてワクワクします。推理小説に対するコメントはネタバレにならないように注意して少しだけ感想を・・・。
多くの登場人物が複雑に入り乱れ絡み合って物語の進行と共に新しい局面を次々と提示していきます。普通、推理小説といいますと犯人探しが主目的なのですが、本書はそれに加えて、背景の人間関係のからみを横糸に、殺意にいたる過程を縦糸に用いながらその構造を上手に描いています。キーワードともいえる、寂びれた「学生街」も重要な役回りが与えられていますので、この小説のモティーフは上手くいったと思います。
主人公の犯罪の解明への執念は、大切な人の思いを自分の中で咀嚼することにより最後までやり遂げられました。鮮やかなどんでん返しともいえるエンディングに辿りつくまで、殺意や犯人像が見えないように工夫されていたのは感心しました。
本書における殺人の動機というのも、なんとなく理解できますが、それ以上に複雑な人間関係に張り巡らされた複線の数々に関心を持ちました。理系出身である東野圭吾の頭の中身を垣間見たような精緻な構造を持った小説ですので、読み応えは十分です。飽きずに最後まで一気に読みましたね。
・「完成度が高い」
寂れつつある街に、何気なく生活している若者の友人と恋人が殺された。恋人のことを何も知らない自分に気づいた若者は、恋人の過去を辿り、恋人の性格と過去の事件から、今の事件の全貌をつかんでいく...。若者の悲しみと怒り、苦悩が伝わってくる作品で、最後まで興味を失うことなく、読後感も悪くない。完成度が高い作品だと思う。
・「若き東野の勝負」
密室、1回では解けない謎などを盛り込むなどかなりの力作です。なんといってもデビュー第4作。今でこそ押しも押されもしない作家それも「超」がつく売れっ子ですが、当時の文壇ではデビュー作は良かったけれど...という存在になりつつある頃。ぼちぼち勝負のしどころだったのでしょう。 肩が凝らない文体で、非常に楽しく読み進めることが出来る作品であると同時にひねり具合、人間描写など時々ほほーっと思わせるところがあります。 作者とは同じ大学で家も大学に近いのでかなり親近感を持てた作品でもあります。 東野ファンでなくとも、一読の価値ありです。
・「二重三重のなぞ」
事件は片付いたのかな、と思わせといてまだその裏に謎が隠されている。殺人のトリックより謎の解明にどう辿り着くのか気になって、1日で読み終えてしまった。
人間、知らない方がいいこともあるんだろうけど、その一部でも知ってしまったなら、やっぱり解決せずにはいられないんだろう。大きな過ちを犯してしまったとしても、そこから目をそらさずにつぐなう気持ちを宝にして。。。という主人公の父親の言葉が印象に残った。
・「「三丁目の夕日」も良いけど、私はこっち」
初版発行時から気になってはいた本なんですが、この度とうとう入手(遅いよ!)お話は、まだ日本全体に都市化の波というか、そういうものが無くて、田舎には昔から恐れられてるものや、伝説などが心に深く刻まれ大切にされていて、それがまだ当たり前としていくらか通用した時代、子供達が腕白に子供らしく日々を過ごす様子と、そんな子供世界の日常にちょっとした「異界への狭間」が味付けされた8編からなる短編と、その短編にリンクして最初と最後は2003年、大人になって再会する遊び仲間たちの話が挿入される形で構成されている。読むと、自分とはひと回り上の世代の子供の物語ではあるんですが、子供にしかわからない子供社会のしきたりや面子、子供の頃にしか味わえない心理描写に「そうだったよな〜」と、心の中で年寄りくさい頷きをしてしまうんですよね・・・そういうのは年代問わず共通のものなのか?それと自分も近所の男の子とばかり遊んでたから、取っ組み合いの喧嘩もしょっちゅうやったし、親も知らないような危険な遊びや悪戯もよくやったので、そういう部分も共感するんですよね。近所の公園だけでは飽き足らず、鬱蒼とした薮や神社、お寺の境内を遊び場所にしたりもしてました。ですから、個々の短編で語られる子供達の不思議体験も「畏れと慈しみ」みたいな感覚としてよくわかります。あれはやっぱり妖怪だったんじゃないかと、この本を読んで思い出した「体験」もあります。
物語中、時折子供達の当時の人気世相表現として登場する漫画やテレビドラマの話、流行語なんかは、やはり私よりも上の年代の人が親しんだものなので、ちょっと古いです(大体わかるけど)。
・「熊谷さんの小学生時代?」
直木賞の「邂逅の森」の前作であるマイホームタウンに2編の文庫版への書き下ろしを加えた作品。熊谷さんの小学生時代を若干脚色して描いているのであろう。年代がほぼ一緒なので時代背景が良くわかる。今の都会や街の子供が味わえない放課後の楽しさを思う存分描いているように思う。ただ、この本の作品は主人公とその同級生の物語なので、当時のガキ大将を頂点とするような上下関係の流れはない。少年時代の物語だと、つい阿部夏丸さんの作品を思い出してしまうのは僕だけだろうか?
・「著者の作風の原体験がここにある」
著者の小学生時代の冒険的思い出を綴った自伝的短編集。昭和40年代のこどもたちはみんなこうだった。野原をかけめぐり、陽が落ちるまで外で駆けずり回っていたものだ。同年代の人たちには本書を読むにつれ、懐かしさと郷愁で胸にくるものを感じるだろう。 『邂逅の森』や『山背郷』など、厳しくも豊かな自然に対峙する寡黙な人々をテーマにした佳作を次々に発表している著者の原体験が、ここにある。
・「正しい小説の書き直し方」
かの有名な田山花袋『蒲団』を「男の片想いの文学」と位置づけた小谷野敦を受けて、明治生まれの日本人と、アメリカの日本文学研究者の「片想い」が、妻視点の『蒲団』ともに描かれています。情けない男の恋の三重奏。逆に、女性は生き生きしています。明治生まれの男を介護する若い女は美術家を目指し、アメリカ人文学者の元カノの女子学生はちょっと頭が弱かったはずなのにマスコミを目指し、そして『蒲団』の女弟子は新しい女性を目指す。『蒲団』では名前も与えられていない妻を主人公にした「蒲団の打ち直し」という小説内小説の存在を考えても、「女性を主役に」というフェミニズムの文脈に忠実な、政治的に正しい「文学」の書き直しです。ただ、少し文章がくどいこと(同じことを繰返すこと)と、書き直すことによって「文学」が生き延びていくことへの無自覚が気になります。だって『蒲団』読まれてないですから。すべての女性がみんな自覚的に成長を遂げるというのもハッピーすぎるようです。おもしろいからいいですが。
・「「蒲団」はある程度普遍的真実を表現しているのでは?」
田山花袋「蒲団」は,名のみ有名で今となっては誰も読まないが・・・という文脈で語られている。が,文学全集的なものには必ず収録されており,私も,高校のころ読んだ記憶がある。中年の男が,若い女の子の前で格好をつけては見るが,実際にはあられもなく翻弄され,捨てられて泣く・・・という,非常に分かりやすいストーリーであり,読んでいて面白い作品だった。 こういう悲喜劇は,何も明治時代の自然主義者だけの身の上に起こることではなく,常にあり得る話なのではなかろうか。だからこそ,情けない竹中先生を妻の視点で描きなおした「蒲団の打ち直し」は決して古さを感じさせないし,その著者であるデイブ・マッコーリーやウメキチじいちゃんを巡る現代における「三角関係」も,リアリティを感じさせる内容に仕上がっている。
現代における事件進行と,挿話的に挿入される「蒲団の打ち直し」の関係が当初は読み取りにくいが,中盤からは全然違和感なくグイグイと読まされた。
・「2つのトリック」
この小説の舞台となるのはタイトル通り、特殊な構造の建物「回廊亭」。もちろん〝お約束〟の建物見取り図は巻頭に載せてあるし、復讐が目的の犯人は、それを遂げるために大胆不敵なトリックを使って作中の人物たちをだまし通す。ここまで書けば本作が、推理小説の〝定石〟を踏まえた型どおりの作品だと思われるかもしれない。が、それらの〝お約束〟を破る新機軸の作品を多数世に送り出したり、「名探偵の掟」では徹底的に推理小説をパロってみせた東野圭吾氏のこと。そんじょそこらのものとは、ひと味違う味付けを施している。
ところで。叙述トリックの古典、アガサ・クリスティの「アクロイド殺し」が発表された当時、そのトリックが「フェアか、はたまたアンフェアか」で!論争が巻き起こったという。密室、アリバイ工作や変装など、推理小説中で犯人が仕掛けるトリックは、「犯人が作中に登場する、他の人物をあざむくため」のものだ。ところが、叙述トリックは、「作者が読者をあざむくため」に仕掛けられる。
だからこそ、それに見事に引っかかった読者は「アクロイド殺し」の時のように、「恐れ入りました!」と賛辞を贈るか、「そりゃないだろ!」と怒り心頭に達するか、どちらか極端な反応を示す場合がある。
本作品にはその2つのトリックが、大胆にそして鮮やかに用いられている。作中の人物たちは、その犯人のトリックで見事にだまされる。
そしてそのことを知っている「神の視点」を持ち、ほくそ笑みながら読んでいた我々読者は、作者の仕掛ち?叙述トリックで見事に足下をすくわれる。どちらもクライマックスまで見破られることのない、完璧なトリックだ。(この叙述トリックを「見破った」という人がいたら、ぜひお目にかかりたい(^_^;))
しかし、尊敬する東野圭吾様>
あの叙述トリック・・・、ちょっとだけ「そりゃないよ」と思いましたよ!(笑)
・「犯人を狙う殺人計画者」
遺産相続の場を借りて復讐を近い老婆に化けた女性が主人公のお話。私は東野先生のこういった「どこかに何名か集められそこで殺人が起きる」系の話が結構好きで、今回こそは犯人を暴いてやる!と意気込んでいましたが、やはり騙されました。最後に明かされる伏線が多すぎて若干混乱はしましたが、まあ楽しめて読めました。
これは東野作品に全般に言えることなんですが、睡眠薬の効果はさほどないような気がします。大量に飲ませるならまだしも、一回分ですぐに落ちる人はいるのかどうなのか……
・「うーん 星3つ」
東野氏の作品は好きだ。人物の描写が細かくて、犯人の動機にも何だか納得させられてしまう。人を殺してしまうって大変なことだけど、それなりに理由があるんだな、と思わされてしまう。自分は出来れば一生そんな理由を持ちたくないし、他人にそんな理由を持たせる原因にもなりたくないな、と思います。
以前読んだ「白馬山荘殺人事件」と似たような錯覚を登場人物の名前に関して感じるところがありました。この人こんな名前で、周りのリアクションはこうなのに、実は…だったのね、みたいな。
そんな訳で星は3つです。
・「東野圭吾のサスペンスの中でも特にスリリングなストーリ展開」
将来を期待されているロボット開発者末永拓也は、職場の関係者と結託して愛人である康子を殺害しようとする。ところが、結託した仲間が逆に次々死んでいく。いったい誰が殺したのか・・・
東野圭吾のサスペンスの中でも特にスリリングなストーリ展開であり、ハラハラしっぱなしです。
本書は、一体犯人は誰なのだろう、と思いながらどんどんページをめくる、そんな興奮を味わいたい方にぜひお勧めです。
・「さすがは理系出身の東野圭吾」
主人公の拓也は産業ロボットの技術者である。 不幸な生い立ちの彼は専務の娘・星子の花婿候補になるが、恋人の康子が妊娠し、責任を取るように言われ、殺意を覚える。 そんな時、星子の異母兄弟の直樹から、同僚の橋本と共に康子殺害計画を持ちかれられ実行に移すが、直樹が何者かに殺されてしまい・・・。
・「本格長編推理。3人がかりのトリックが思わぬ事態に...」
本格長編推理である。大企業の美人社員に手を出した3人の男達はそれぞれのやりかたで、出世を狙い、邪魔になった女を排除しようとし、アリバイ工作のため殺人、移動、遺棄の3段リレーを計画するが、最後にバトンをとった男は、死体が殺人を担当するはずだった最初の男であることを知り、愕然とする...大企業を運営する仁科家の複雑な人間関係と、権力にもてあそばれる無力な工員と女子社員の純粋な恋愛の対比が、本格トリックに小説としてのおもしろさを添えている。小説の冒頭にロボット事故が唐突に描かれているが、その話は最後にならないとつながらない。星5つにしてもよいほどの東野の本格であるが、4つにしたのは、警察の捜査が、読者が知っている部分をトレースしているだけのように思え、どうも冗長に思えてしまったところ。主人公の末永拓也にもっと捜査させたほうが、物語にもっとテンポがついたのではないだろうか。
・「魅力的な殺人プランだが早々と崩壊」
この作品には「完全犯罪殺人リレー」という副題が付いています。これは主人公たちが考えだした、完全殺人のプランを意味しているのですが、このプランがとても魅力的です。しかし、このプランは前半で早くも狂ってしまいます。それ以降は、誰にも知られていないはずのそのプランに乗じて別の殺人を犯した人物は誰なのかというのが主眼になります。これによって、犯罪者の側から事件を描いた悪漢小説であるにもかかわらず、かつ犯人の正体や意図がわからない謎解き小説でもあるという魅力を狙ったのでしょうが、元々のプランが魅力的なだけに、それを早々と崩してしまったのは惜しいという気がしました。
ロボットと人間の関係という、元技術者の東野圭吾らしいテーマも設定されているのですが(ブルータスというのは主人公が作ったロボットの名前)、こちらはちょっと邪魔に感じました。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、作者自身の気持ちは主人公に近く、ラストに暗示されている機械文明に対する批判的なスタンスを作者はちっとも信じていないように感じました。
・「真犯人は誰だ?」
産業機器メーカーでロボットの開発を手がける末永拓也は、オーナーの末娘星子の婿養子候補になるが、恋人康子の妊娠を知り、困惑する。そんな時、星子の異母兄弟の直樹から、同僚の橋本と共に康子殺害計画を持ちかれられ実行に移すが、実は直樹が何者かに殺されたのである。もうこの段階で計画が破断しているのである。そのとき、真犯人は誰だ?ということがキーポイントになる。誰にも知られていないはずのそのプランに乗じて別の殺人を犯した人物は誰なのかというのが主眼になります。
私は最後まで真犯人がわかりませんでした。最後になってやっと、序とのつながりが出てくるのである。まあ、少なくとも機械よりも人間のほうが優れているとは限らないですね。
・「力作」
二転三転、、、五転六転、、、十転、、、。この物語は、いったい何転すれば、収拾がつくのだろう。当初から、この学者先生は、人が良くて、罠に陥れられている様にも感じる。
そして、挿入されている手記は、内容が壮絶で、大変読み応えがある。そして、手記に仕掛けられた罠は、巧妙に学者先生を、陥れてゆく。
この作品には、物語が巧みに練り上げられている点は、著者ならではであるが、これまでの著者の作品とは、少し読後感が異なる。
著者は、これまで、目を背けたくなる様な、嫌悪感を抱かせる対象に、度々焦点を当ててきた。この作品は、その点では異なり、読後に、温かいものが後遺する。
文句無しの力作だ。
・「三転四転」
交通事故で妻を亡くした国文学学者が入手した手記。その手記には五十年前に自殺した作家の自殺に至るまでの事件が克明に記されていた。手記の謎を解こうとする主人公に降りかかる悪意。三転四転する真相。途中で読むのが止まらない。寝不足必至。
手記単体でも短編を読み終えたような満足感。人間が描けている!
・「いつもながらのストーリー上手」
挿話の主人公佐脇依彦の話が長くて著者もドラマを書くようになったのかと思ったが後からちゃんと犯人探しが用意されていて期待を裏切らない。佐脇の話が終わってからぐいぐい読ませてくれる。大学講師の主人公松嶋先生は騙されっぱなしでいつ真実に辿り着くのだろうかとハラハラしてしまう。著者の今までの作品と同様に重苦しい雰囲気は踏襲しているが趣は異なっている。こういうのも好きだ。ようやく見つけた黒幕があっけらかんとしているのも好感が持てる。
・「実はLoveLoveが主題ののろけ小説」
貫井徳郎氏の作品には、時として頼りないヒーローが登場する。が、そのヒーローの存在意味は、その情けない男そのものではなく、対する「伴侶」を美しく描くための「黒子」としてなのだ!ということが、最後にわかる。 過去の話と現代の話とが錯綜しているが、ミステリーとしては「過去」の話の方が、尻切れトンボな分、完成度は高いと思う。「現代」のは、登場人物が多すぎて、実はそれらが何処かで繋がっていたりする不自然さと、実は繋がっていなかったのだなどという複雑さが、読者を混乱させてしまう。 ミステリーとしては今一歩共感出来ない部分もあるが、夫婦の悲しいLoveLoveドラマだと考えれば、男として焼きもち焼きたくなるくらい羨ましい話だと思う。
・「2つの物語」
主人公・松嶋は、久しぶりに会った友人と飲み、羽目をはずして風俗へ。それに激怒し、妻は子供をつれて実家に帰ったが、1週間後、謝罪をするまもなく、事故死。娘は義父母の元に置き、落ち込んだ生活を送っていたが、ふとしたことから戦後すぐに自殺した作家の最後の手記を手に入れた…
「手記」は、旧仮名遣いなので、ものすごく大変だが、慣れてくると面白くなってくる。この物語は、自殺した作家が書いた56年前のできごとと、現在の大学の国文学の講師の、2つの物語。
まったく接点のないはずの2人は、実は繋がっていた。
ただし!推理小説にしては、なんとも情けない主人公である。すべての点において騙されっぱなしだからである。謎解きなどはほとんどない。自身はついていないと書いてあったが、ここまでツキに見放され、自信がなく、どこまでも騙されている。
「二者択一」には、「今度こそ!」がないのである。自分に自信のない人もたくさんいるだろうし、自意識過剰すぎる人もいることであろう。しかし、あまりにもおどおどしすぎる人がいると、腹が立ってくる。これでは、咲都子も浮かばれない。
全体として面白いのだが、この主人公だけは好きになれない…
・「遠藤周作の秀作歴史エンタテイメント」
タイで豪快に活躍した山田長政を描いています。 知謀・政略・謀反・暗殺・・どろどろしたアユタヤ王朝を舞台に、山田長政が大活躍します。 ゼロから力を求めてのしあがってゆく山田長政の行く末は・・・。
遠藤周作の歴史物小説は、視点が独特で楽しめるものが多いのですが、エンタテイメント作品としては、これがイチオシです。めくるめく冒険活劇の中にも、遠藤周作らしい哲学的・宗教的な問題も盛り込まれていて、単に軽いだけの小説で終わっていないところも魅力です。
・「日本人」
遠藤氏の他の作品に比べ、キリスト教色が強くないので、読みやすかったのが率直な感想です。前半の「藤蔵」と表記されている時の主人公は豪快な泥臭い男なのですが、なぜか後半にはとても繊細で臆病な人間に見える。この感情の移り変わりが読者の私には非常に不思議な感覚を覚え、思わずハマッしまいました。私なりの解釈ですが、文庫本の裏表紙のあらすじにある「日本人とは何か〜」の答えは、武士の心や生き様などではなく、先ほど書いたような主人公の心の移り変わりに隠されているような気がします。
実際にあった話だそうですが、読み終わった後は、何やら映画を見ているような心境になっていました。実に壮大な映画でした。
・「史実としてより、ストーリーの妙を楽しむ一冊」
山田長政およびペトロ岐部についての情報が欲しくて、手にとってみた。その限りにおいては、史実性よりも物語性を重視している本書は、ちょっと求めているものと違ったと言える(もっとも、山田長政についての資料は極めて少ないらしいが)。
だが、そのストーリーの面白さにぐいぐい引き込まれ、一気に読んでしまった。
地上の権力を求め、アユタヤで成り上がっていく山田長政と、苦労してヨーロッパに渡りながら、天上の王国を求めるべく迫害の待つ日本に戻ろうとするペトロ岐部の対比が、鮮やかに決まっている。
本書で描かれるのは、分量的には圧倒的に山田長政についてだ。しかし、敬虔なるキリスト教徒である遠藤氏としては、山田長政という人物を通じてペトロ岐部の人物像を浮かび上がらせるのが本意だったのではないだろうか。
とはいえ、山田長政の人物描写も非常に魅力的であり、一大歴史絵巻として十分楽しめる。
何度も版を重ねているのがよくわかる名作だ。
・「遠藤お得意の手法による作品」
「地上の王国」と「天の王国」--異なる王国にたどり着くべく奮闘する実在した二人の日本人を描いています。前者・山田長政は日本での天下取りに見切りをつけ、タイに渡り外国人傭兵として活躍、権力をつけます。後者のペドロ岐部は、自分の足で遠くローマを目指し、神父となって帰国することを目指し、二人はタイで再会。
山田のタイでの天下取り合戦を軸に、物語は展開します。このようにタイプがまったく違う2人を主人公とし、際立たせる方法は、遠藤お得意のものです(Cf.『王妃マリーアントワネット』のマルグリットとアントワネット)が、対立の図式が明らか過ぎて、人間の感情が単純化されている気がしなくもないです。
・「主人公に魅力があり、楽しめる。」
密航でアユタヤに渡り、出世を重ねて日本兵部隊を率いて活躍した山田長政。苦労を重ねてローマで神父になったペドロ岐部。彼らが最後どうなったかは、この小説を読んで確認していただきたい。この魅力的な2人に着目した点では、遠藤氏は優れている。ただ、何度も同じ表現があるなど、書き流した感じ。内容が重い(ペドロ岐部の部分)割に、良くも悪くもあっさり読めてしまう。
・「インドに行きたくなります。」
遠藤周作は「沈黙」を呼んで以来久しくご無沙汰していたが、分量もすくなく読みやすく、しかも泣けます。かなりのオススメ。
物語は突然の妻の死で幕をあける。男は妻の突然の死を受け入れる事が出来ない、典型的な日本人の夫らしく妻をいたわり、愛する事をしてこなかった彼が気づいたものは「空気のようだ」と思っていた妻が、本当の空気のようになくてはならないものであったという事実であった。おとなしく、感情をあらわにすることのなかった妻が、乱れるようにして吐いた最後の言葉を追って彼はガンジス川へ旅立つ「必ず生まれ変わるから、この世のどこかに・・・。」
この本では五人の日本人がそれぞれの理由を背負ってインドへ行く。あるものは妻の「転生」というおよそありえない可能性を追って。あるものは太平洋戦争中ビルマで戦って死んでいった親友を弔うため。またあるものは、自分には信じられない「何か」を信じ、そのために「破門」の烙印さえ押された神父の友人を探しに。
私を含め、多くの日本人は無神論者であり基督教の言う神なるものの存在を信じない。しかし、本当に絶望的な時や何かにすがりたい時、誰しも一度は人間ではない物に祈った事があるのではないだろうか。テストの結果発表を見るとき、家族の危篤を伝えられたとき、罪から逃げようとしている時。どんな世界の、どんな階層の人間でも心に苦しみを持ち、その苦しみから逃れるために何かにすがり、祈る。その何かがこの本の中では「玉ねぎ」であり「深い河」ガンジス川なのだろう。
この本の一つのテーマは「転生」だが、物語から伝わってくるのはそれだけではない。
人間の感情には多くのグレーゾーンが存在し、誰もがその葛藤に悩まされている。人間の心が描き出す愛憎は水と油のようなものではない。たまらなく愛しい思いの中にも、深い憎しみが隠されているはず。様々な気づかなかった事に気づかせてくれる名作である。
・「それぞれの想いを内包して……」
「必ず生まれ変わるから」と言い残した妻の言葉のため。 大学時代、弄んだ男にもう一度会うため。 人生の節目で自分を救ってくれた九官鳥に恩返しするため。 ビルマで死んでいった戦友を弔うため。 それぞれの想いを抱えてインドへと向かう人々と、全てを包むガンジスの物語です。
宗教色が強いのかな、と始めは敬遠していたんですが、読み始めると面白くてちっとも気になりませんでした。 一方的に押し付ける感じもなく、人々が信じるものをそれぞれ真摯に見つめていて、読んでいて胸が熱くなります。 キャラクターや時代背景も綿密に計算されていてよかったです。 それぞれの想いをすべて飲み込んでゆったりと流れていくガンジス河。 見てみたい、と思いました。
・「傑作『沈黙』を超えた,遠藤の集大成」
人物描写が図式的との批判もありますが, 遠藤の生涯の宿題であった「日本人-愛-神」への
最終的な答えとなる作品です。彼が傾倒していたフランスのノーベル賞作家F.モーリヤックの影響も深く見られます。『沈黙』『死海のほとり』『哀歌』等,一連の作品で描いてきた,華々しい救世主としてのキリストではなく,旧約聖書『イザヤによる預言』にある通り,「みじめで
威厳のない」,人間の病を負ったキリストとしてイエスを見事に描いており,画期的です。神父や妻を失った夫,無神論を自負する女性などキリスト教とは無縁の世界に生きる人間と神との関わりを「愛」とはどうすることかを追求することによって描いています。遠藤の集大成ということもあり,この一冊を読んだだけでは彼独特のたとえ話にあるメッセージを見逃してしまうかもしれません。『深い河』!を読む前でも後でもいいので,彼の代表的作品群を読むことをお勧めします。一冊の中でメッセージを伝えきれない,という点では不完全な作品とも言うことができます。彼の作品のみならず,比較の対象とされ,遠藤が憧れを抱いていたグレアム・グリーンの小説も読んでみるのも一興だと思います。
・「この混沌さが性に合う。」
妻の臨終の言葉に導かれてインド訪問を決意した「磯部の場合」では「転生輪廻」を、若い頃の苦い思い出の対象である大津を心の端に求める「美津子の場合」では「心の充足」を、幼少期の心の痛みから妻にさえ苦しみや悲しみを打ち明けらることができない童話作家「沼田の場合」では「人生の孤独」を、第二次世界大戦中の出来事から苦悩の内に死んでいった戦友、塚田を思いやる「木口の場合」では「罪と許し」を、純粋な心の持ち主ゆえいかなる体制にも収まりきれない「大津の場合」では「無償の愛」を説いているが、決して説教くさくなく、それぞれの人生や気持ちが魅力的に描かれている。 私は若い頃は氏の「沈黙」が好きだったが、今は「深い河」の混沌というか歯切れの悪さのほうが性に合う。「人間のやる所業には絶対に正しいと言えることはない。逆にどんな悪行にも救いの種がひそんでいる。(仏教のことばでは善悪不二というそうである。)」という木口の言葉が含む自己に対する謙虚さと他に対する受容が胸に響く。生き方を法律や(宗教の)戒律で厳格に縛りつけることは決して、世の平和、心の平安にはつながらないと思う。 この小説では映画化されているが、小説と映画では大津の死ぬ理由も、何に満足して死んでいったかも異なる。私は小説のほうに軍配を上げたいが、少々、ストイックさを求めすぎるかな。
・「何度も繰り返して読みたい一冊」
幾人もの人生が語られている。それぞれが違うものを背負い、違う思いで河を見つめる。劇的な展開があるわけではないが、登場人物の誰かに貴方も共感できると思う
・「途中で吐きそうになった!」
1つ目の「カザリとヨーコ」は姉妹差別の話でなかなか面白いと思った。というか、悲しい話だ!
が、しかし次の「SEVEN ROOMS」はマジで気持ち悪かった。死体は流れてくるは、濁った水の中に潜るは、死ぬ死なない殺す殺さない、など表現が醜いものがいっぱい出てくる。ストーリーは、生か?死か?という圧倒的な緊張感が漂う、命の重みが伝わってくる。俺様は、あまりにも残酷なストーリーと表現に吐きそうになった。
だが、ここまでストーリーに夢中にさせる、乙一大先生の表現力はもはや天才と言うべきだろう。それが証明された作品が「SEVEN ROOMS」だ!読め!
・「白乙一??」
〔あらす〜じ〕 ・カザリとヨーコ…双子の姉妹の話。妹は母親に可愛がられるが姉は虐待の日々。。。
・SEVEN ROOMS…いきなり、見知らぬ男に部屋に閉じ込められた姉弟。部屋は7つあり一人ずつ順番に殺されては補充される。。。
・SO-far そ・ふぁー…あるきっかけを機に父は母がみえず、母は父が見えない。その間にはさまれた息子の話
・陽だまりの詩…世界に突然、病がはやりその病気になってしまった人は例外なく2ヶ月で死ぬ。彼は自分を死んだ後埋めてくれるロボットをつくった。
・ZOO…自分の彼女を殺した犯人を必死に探す彼。その犯人とは・・・??
〔感想〕 『カザリとヨーコ』はありがちだけど、展開読めてしまいそうだけど怖いです。『SEVEN ROOMS』はホントに後味悪い。『SO-far そ・ふぁー』は不思議な話。さほどホラーって感じではないかも。『陽だまりの詩』は温かい。。。ロボットが死を理解できるか否か?感情をもてるか?というテーマみたいなものに対する結末にジーンときた。『ZOO』は狂ってる。。。ただ単に狂ってるとしか言いようがない。
乙一はただ単に怖いというわけではなく、読んだ後その読後感がなんともいえない。。。物語は終わったはずなのに、何も解決してないじゃん!!みたいな。
・「白と黒」
両方の乙一を味わえる短編集。
その中で特に
白、陽だまりの詩。綺麗すぎる。余りの乙一の表現の美しさにやられます。
黒、sevenroom。あんなに澄んだ表現をした作家がサスペンスホラーを書くとここまで気持ち悪くなれるのか。心臓に突き刺さる展開に必ずや引き込まれちゃうことでしょう。オススメ。
グロいのに苦手な人は気分悪くなるかも。だけれど面白いから是非全て読んで白と黒の乙一ワールドを堪能してほしい。全ての話の読後において格別な余韻に浸れるでしょう。
ZOO2よりこっちのほうがオススメです。
・「紅い本。」
私が乙一さんの本を買ったのはこの[ZOO]が初めてです最初に面白い本はないかと本屋を歩いてたら前列に目立つ紅い本「めだつなあ」ぐらいの印象でした。いい本も無かったし、興味本位で表紙買いしましたさっそく家に帰って読んでみたらあっとゆう間に読み終わってしまった‥的なインパクトです笑
理由は短編だから読みやすいのと、ありきたりな内容じゃなくてどこか当たり前な設定に惹かれます後で分かったのですが乙一さんの作品はどれも(と言っても普通じゃないのもあります)普通の人達普通の家族普通の恋人普通な友達これに少しだけ不思議な事がおきるだけで世界も変わってしまいます悲しくて、哀しくて「そんなことしていいの?」なんて時々想ったりも‥それでも主人達の前向きな気持ちに励まされることもあります
本当に乙一氏は凄いです皆さんが5つ星出してるのが分かります。なので迷う方は一冊買ってみたらどうでしょう?値段もそんなに高くないし、短編で5も入ってるのでお得じゃないでしょうか心に残る話がほしい方は、是非お勧めします☆長文失礼しました。
・「頭を玄翁でぶっ叩かれた」
新進気鋭のホラー作家だと聞いて,ふっと鼻で笑った。 和製ホラーはみんな喜劇だと思っている。
で,乙一という若い作家の作品を今更ながら初めて読んでみたけど,頭を玄翁でぶっ叩かれたような気がした。 いや,すごかった。こんな恐ろしかった本は初めてかもしれない。 2時間で読み終えた。いや,すごい短編集だった。
なんとなく星新一にちょっと似てるかもしれないけど,あんなパステルカラーな内容ではない。すごく怖くて,もっと強烈だ。 もちろん怖い話ばかりでなく,すごくやさしく切ない話もある。
何ていおうか。 どの作品も, 『死』 というものをまざまざと見せつけられる。 生と死の対比を露骨に明瞭に上手に描いて,生きる喜びというのを上手に表現している。 そして愛と憎しみ。 最後にやってくる自由と開放のコントラストとして閉鎖感や束縛感を強烈に描いている。 生と死と愛が一体であることを,とても生々しくダイレクトに表現している。 文章も上手だ。
インパクトはおそらく誰もが 『Seven Rooms』 を筆頭に挙げるのだろう。 他の短編もなんだか悪い夢でもみているかのような話ばかり。
人は悪夢から覚めたとき現実世界に生きていることに安堵するけど,これらの短編を読み終えたときはまさにそういう感じだった。
・「叙述へのこだわり」
◆「Closet」
義弟に自分の過去の罪を知られてしまったミキは、 彼の死体を彼の部屋にあるクローゼットに隠すことにする。
《倒叙ミステリ》かと思わせてじつは……という趣向。 『GOTH』において、遺憾なく発揮された乙一の 叙述トリックが、本作でも抜群のキレを見せます。
カンのいい人は、すぐに真相に気づくかもしれませんが、 結末から遡って、犯人の人物像を想像していくと、 また違った感慨が浮かびます。
・「不謹慎だけど…」
結構笑ってしまいます。常識的に考えるとちょっとおかしいけど、なぜか納得。最後は少しせつなくなったり…。でもやっぱりみんな狂ってます。
・「負けた〜」
乙一作品はどれもハズレがない。意表を突かれすぎて、読むうちに「犯人はコイツかな?」とか「こういう結末になるんだろうな」等と乙一に挑戦するような気持ちで読み進むが、いつも私の想像外な展開になるため「乙一作品には負けた〜〜!」という敗北感に似た爽快感が残る。
・「二つで一つ」
1と比べて雰囲気は違うけど、漂う切なさは変わらないです。2は不思議で暗い感じの話が多いです。この人の文体はとにかく人を引き込ませる力があると思います。気付くとその物語の中に入ってる。特に良かったのは「落ちる飛行機の中で」。ハイジャックされているのに、その緊張感が全然なく、それぞれ悩みを抱えた3人が織り成す妙に和んだ雰囲気は新感覚でした。そうかと思うと一転、一気に緊迫した展開に。全部につながってこの人の話はテンポが良い。乙一さんらしさが伝わってきます。ただ、1も合わせて10篇全てで飛び抜けてるのは、「SEVEN ROOMS」。乙一ワールド全開! 乙一ファンの方はもちろん、そうでない人も十分に楽しめます。あの独特の切なさを再び味わうために、他の作品も読んでみたいです。
・「分類不可能とは、確かに」
1に続いて読みました。不思議な感覚の地獄の中で、最後は明るい光が見える1とは違い、2は推理小説的要素が多い気がします。短く、秀逸な推理短編集が読みたい形におすすめです。
・「見事と言うしかない作品」
ピエロの人形が殺人の現場を目撃しているという趣向の話です。東野圭吾はピエロの人形が好きらしくて、『卒業』にも登場させています。ピエロの人形を登場させると良い作品ができるというジンクスを持っているのだそうです。本作もそのジンクスにふさわしい傑作となりました。しかし、クライマックスに至るまでは極めて地味な話です。新本格風のタイトルが付いている割には極めて普通の推理小説という感じで、殺し方が特に奇抜なわけでもなく、怪しげな雰囲気も漂いません。
ところが、謎が解明され始めるあたりから、物語はにわかに活況を帯びて来ます。謎の裏にまた謎があるという作者お得意のパターンが繰り広げられ、じつは本作における作者の中心的な狙いはここにあったのだとわかった時には衝撃を受けました(私の予想が甘かっただけかも知れませんが)。そして、ラスト1ページでの意外な人物の意外な心境の吐露が、なんとも言えない読後感を残します。
・「ラストの言葉が・・」
最初はどこから面白くなってくるんだろう??と読んでいたら途中から展開が変わる変わる・・続きが気になってどんどん読めました。数々のトリックが明らかになっていくのが面白いです。また話の途中途中でピエロの目から見える、人々の会話や景色が盛り込まれていて話を面白くさせているなぁと思いました。
ただラストの佳織の言葉が気になって仕方ありません。
・「久々にドキドキした作品でした!」
私が読んできた推理小説の中ではかなり面白い部類に入る作品でした。ピエロが作中の端々に出てきて登場人物が知りえない事を淡々と述べているシーンは、こんな表現方法もあるんだと圧巻でした。本来なら星5つ付けたいところなのですが、トリックの中に本作品が出る以前に書かれた小説の中に似たトリックがあったのが唯一残念でした。
・「事件の現場には、必ずピエロがいる。」
本書は、推理小説ファンには楽しめる作品になっています。誰が犯人かを推理しながら読んでいくといいでしょう。
竹宮産業創始者の女婿である宗彦が何者かに殺害された。傍らには、愛人、三田理恵子の遺体も横たわっている。その前に、宗彦の妻である、頼子が亡くなっている。そのことと、何らかのつながりがあるのか。外部犯行なのか内部犯行なんだろうか。
事件の現場には、必ずピエロがいる。水穂や青江の主観的な分析とは対照的に、ピエロは客観的にありのままに現場の様子を伝えるのである。ピエロが悲劇を呼び寄せるのか?その答えは、よくわからないが、悲劇が起きる現場にピエロがいるんだろう。ピエロが全てを知っているということなんだろう。
「犯罪は割に合わない。」という言葉は真実なのであろう。自分の欲を通すために、辻褄あわせの殺人を繰り返すことになる。犯人は誰かに操られているならば、それは、もっと怖いことになるだろう。
この小説の肝は、最後の4ページなんだろう。直接的な表現はないのだが、そのことを考えてみると、ぞっとする感じを受ける。表面的な犯人とは違って、これによって真犯人が変わってしまうような気がする。
・「新型の叙述トリック」
作者がまだ本格ミステリの世界にいた頃の作品。題名が示す通り、ピエロ人形が重要な役割を果たす。
通常、一人称でミステリを語る時、読者は叙述トリックを警戒する。しかし、本作品で事件を目撃するのはピエロ人形なのだ。そして、ピエロ人形の視点から事件は語られ、当然人形は嘘をつかない...。
本作を読んで、作者は新しいタイプの叙述トリックを開拓したと感心した。「秘密」以降、普通小説に転向した作者だが、本格ミステリ時代にも構想力・人物造詣・ストーリー構成に充分な力量があったことを見せ付けてくれる一作。
・「オススメ」
失踪した夫の残した探偵事務所を続けながら夫が帰ってくるのを待つ主人公。一つ一つの依頼(事件)が短編になっているので気軽に読める半面、主人公唯の気持ちのせつなさや不安、夫の失踪の謎が魅力的で素敵。あっというまに読み終えてしまった。とにかく唯がせつなくてやるせなくて、だからといって決して可哀想なわけではなくて、だから余計に切なくて。恋愛かつミステリーでもあるというおいしい1冊でした。
・「続きはまだ?」
連作短編のような形になっていて、徐々に徐々に波がたってきて、最後には主人公がまるで嵐のような海にボートで漕ぎ出すことを決意するかのような終わり方で、続きが気になって仕方ありません!最初の方の章と後の章では、作家の飛躍的な成長を感じることができます。これ出版されてから結構経ってるし、この作家は初めて読んだので、もしかしたら続編はもう出ていたりするのかしら…。ああ、題名だけでは分からない!まだ出てないなら早く出して!
・「恋愛ミステリー」
1つ1つの事件を解決しながらも、少しずつ過去を振り返り、失踪した旦那のことに触れていく物語の展開がよかった。どれも不倫、浮気、過去の失恋など恋愛に絡むミステリーで読み応えがあった。ある事件で突然旦那を見かけたところから、今度は失踪事件が中心となって描かれるが、結末が分からなくて非常に残念だった。失踪事件の謎は別の作品で発表するとあとがきに書いてあったので期待したい。
・「えぇぇ!」
既にこの本について評価されている方のように、私も話にのめり込んでいきました。失踪した夫がやっていた探偵事務所を夫の帰りを待って続けているものの帰って来ない、っとゆう全体の軸となる話が進みつつ、探偵事務所に来た依頼者の短編集の形になっています。短編のミステリーなので、起承転結が早く、あっとゆう間に読んでしまいましたが、のめり込んで読んでいた分、結末にガッカリしました。えぇぇ!ここで終わりなの!?!? っといった感じです。その先は想像しろ、っとゆう事なのでしょうか。。。個人差はあると思いますが、私はハッキリとした結末が知りたかったです。消化不良な最後でした。
・「松本清張初挑戦。」
今まで「堅苦しい」と勝手に誤解していたけど、すげー読みやすかった。本人の写真がコワモテだったし、「大文豪」だったので、何となく避けていたんだけど。すらすら読めるわー。文体が柔らかいし、話も分かりやすい。長さも適当。動機から追いかけないで、犯罪の可能性をおいかけていくストーリー展開は、ややもすれば「ヒトが描けていない」と拒絶する対象になってしまいがちだけど、追いかける刑事の心理描写がうまく補っていて、時代の緩やかな流れと相まって、心地よく読めました。はい。
先入観から来る思いこみを巧みに利用したトリックと、凄くささいな事から捜査を展開して行く様が、妙にリアルで、いわゆる新本格とは一線を画していておもしろいっす。
昭和30年代ってのは、こーいう時代だったんだね。電報が電話を補う情報伝達手段として活躍し、東京-九州は特急で17時間。五右衛門風呂。なんか、不思議だ。
・「ミステリー作品の本質を知ることのできる優れた小説である!」
優れた作品は時代が変わろうとも優れている!この小説のすごいところは起承転結の起の部分ばかりを強調する最近の小説と違い、何気ない男女の無理心中の事件から始まり、汚職、人間関係、病気、女のプライド、刑事達の苦悩など、複雑な登場人物達の感情を中心に、人の先入観による盲点の恐ろしさなどを描いた心理描写がメインの作品である。
娯楽としてのミステリー作品とは一味違う!
・「決して色褪せることのない社会派推理小説の原点がここにある!」
1957〜58年にかけて、とある雑誌に連載された作品というから、本書は、ちょうど50年前に誕生したことになる。刑事の前に巨大な岩壁のごとく聳え立つアリバイを崩してゆく作風であるが、犯罪動機に<社会性>を盛り込んでおり、「解説」にあるように、いわゆる社会派推理小説の原点ともいうべき作品である。
1958年という年は日本が高度経済成長に突入した時期であるが、新幹線はまだ存在していない。東京・福岡間を20時間もかけて移動していた時代だ。本書から強い影響を受けたという森村誠一の『高層の死角』を読んでいたこともあり、鉄壁のアリバイトリック崩しという本書の作風にはさほどインパクトを感じなかったが(最後に真犯人とおぼしき意外な人物がキーパースンとなっている点は新鮮)、50年を経た今日においても本書は決して色褪せていない魅力を有している。本書を読まねば、『高層の死角』への絶大な影響度を知らないままでいたことになる(読む順序が逆であったことがかえって功を奏したか)。
いずれにせよ、われわれは本書が置かれた時代状況を意識して読む必要がある。<勝ち方>にはいろいろあるが、僅かな出張旅費を使って地道な捜査を続けた三原刑事のそれは、むろん<粘り勝ち>だ。決して屈せず、全身全霊を賭けてアリバイ崩しに挑む彼の姿勢は、刑事という職務上、当然といえば当然であるが、私はとても勇気付けられた(東京、福岡そして札幌という地点を結びつけるときに、列車ばかりに気をとられ、航空機の存在をすっかり忘れていたやや間抜けな人柄も記憶に残る。読んでいた私自身が、「飛行機がなかなか出てこないな?」と疑問をもったくらいだ)。
本書の小さなキズ(解説参照)に対して、著者はその後、どのような説明を行ったのか、大いに興味があるところだ。本書から<社会派推理小説>が本格化した以上、本書は必読の作品である。『ゼロの焦点』もいつか読んでみたい。
・「実はヒューマンドラマな清張作品」
人間心情の描写は相変わらず流石です。ストーリーの組立も非常に面白く読めます。しかし一つだけ気になるのはトリックの仕掛けが時代的にな技術やシステムについて依存しているため(当時は斬新だったはず)
現代の生活をしっているとネタばれが作者の意図より自分で分かってしまうので、せっかくなら書かれた当時に読んでみたかったなぁ、と叶わぬ希望を思ってしまったりします。
・「風間完の挿画がすばらしい」
松本清張の『点と線』といえば、時刻表を使ったトリックで知られる作品ですが、この2002年の文藝春秋版を薦める理由はひとえに風間完の絵のすばらしさにあります。大小とりまぜて20点以上、きちんと昭和32年当時に考証された絵がオールカラーで掲載されているのですから、なんとも贅沢な一冊です。当時の国鉄の駅に掲げられていた時計やバヤリースの空き瓶、ローマ字表記の新生(たばこ)のパッケージなど、細かいところまで再現してあって、当時を知る人にはほんとうに懐かしさだけで胸がいっぱいになってしまうでしょう。見開きで描かれた東京駅、あさかぜ(ブルートレインになる前)、東京駅15番線ホーム、桜田濠、東京国際空港、札幌駅頭、東京の町並み……。どの絵をとっても、写真よりも当時の空気を再現しているように思えます。もちろん、風間画伯らしい深い青色も存分に堪能できます。私は風間完の画集としてこの本を手に取りましたが、それは正解だったと思います。
・「時代小説とは」
親戚に薦められて, この本を読みました.宮部みゆきさんの作品は初めて読みました.
時代小説は前から読み辛いというイメージがあったのですが, この作品は読みやすく, すぐ物語に引き込まれてしまいました.短編なので, ちょっとした時間で読むことも出来ますし.7編それぞれ違った人情味があり, 心温まる話です.
これを機に, 宮部さんの作品を読んでみようと思います.
・「読まなかったことを後悔」
宮部小説は大好きなのですが、時代小説は避けていました。すごく後悔!なんで早く読まなかったんだろう。一章の「片葉の葦」を読み終って、「かー」と唸った。巧すぎる。もし私のように、時代小説はちょっと、と思ってる方がいたら、やっぱり読まないできたことを後悔するかも。
・「人情に涙」
最初、宮部みゆきが何故、江戸時代のお話しと、ちょっとわからなかったのですが、読んでみてびっくり。まるで時代劇を見ているように江戸に生きる人々が生き生きと描かれています。江戸っ子の人情話に、思わず涙が出ます。
この短編集は、O.ヘンリーのように良く練られたストーリーになっています。
・「人情味溢れる宮部ワールド!」
片葉の芦。読み終えた時思った。「1作目からこれですか!」と。
第1篇にして既に江戸情緒と人情味溢れる宮部ワールド炸裂。この後に続く6篇はどんな世界が待っているんだろう、と楽しみに読み進めた1冊だった。
宮部作品は時代物が好きだ。短編なら迷わずこの作品をイチオシにしよう。時代背景と人物の心情が丁寧に描かれておりあったかい気持ちになったり、寂しいような気持ちにさせられることもある。
時代物と敬遠せず、多くの人に読まれることを願ってやまない。
・「宮部ファンならずとも・・・」
私は時代小説は宮部さんの作品しか読んだことないので、他の作家さんと比べようがないのですが、その必要がないと思わせるほど、本当に素敵で上質な作品が多いです。決して読み疲れることなく、むしろ心地よい感覚に酔いながら、スススと読み進めることができますし、軽快なリズムの割には、心にいつまでもジン…と余韻を残して読者の心を離さない物語が、こうでもかというくらいに、この作品には詰まっています。人の思いというのは複雑で、決して綺麗なものばかりではなく、時として醜くもあるというのに、この作品で描かれるそういった思いは、風が吹くかのように、ごく自然に心の中を通り過ぎて行き、なんとも後味が良いのです。もちろん宮部さんの小技も随所に散りばめられおり、十分楽しんで読むこともできます。が、私にとっては、一種の癒しの手段として、いつまでも大切にしていきたい一冊なのです。
・「稀有なパターン」
自身、結構この手の書物。つまり、ノンフィクションの漂流記等所謂サバイバル本は結構読んでいる人間なのだが、この本が最初目に入った時ちょっと「おや?」と感じた。多くのサバイバル記は勿論極限状態の描写が多く、大抵1ヶ月程度の漂流パターンが多く(たか号漂流等がそれである。世界に目を向ければ3ヶ月以上というケースもざら)この本の場合1週間にも満たない。それでも「極限」と名を冠されていたので微妙に腑に落ちなかったのである。
しかし、本書を読んだ時その意味がようやく理解できた。つまり、この本の主人公であるダイバーは船等に搭乗して漂流したわけではなく、生身の体一本で大海洋を漂流していたのである。説明では大部分がこの漂流パターンだと3日以内に命を落とすと書かれていたが、その意味も明白になった。
まず物理的な面では、船での漂流と異なり生身の体が海水と直接接する訳で、体温調節が殆ど不可能になる事と全体的な体力の消耗。それと勿論ちょっとした時化があっても一貫の終わりであろう。更に重要なのが精神的な要因だ。まず本書にも触れられているが、陽が落ちて周囲が闇に囲まれた時の恐怖感と絶望感である。他書のサバイバル本でも夜に対する恐怖が良く語られていた。これらは人間の本能的感覚であり避けようも無かろうが、本書は特に身一つでぷかぷか浮いているわけでその恐怖は更に深まっただろう。そして深さ数百数千メートルの海洋に、つまり底無しの海面に足が接地できない恐怖も語られていた。客観的に見れば非体験者なら中々飲み込めない恐怖だと思うが、地に足を付けて立つという常識的な公式が当てはまらない不可思議なレベルでの恐怖と言えば理解してもらえるだろうか?そしてまた、鮫等の恐怖にも言及されていた。これもまた船での漂流ならまだしも体だけで漂っている訳で、当然の恐怖なのかもしれないが本書では常に鮫等の恐怖と戦っていたことが分かる。
これだけ書いても一般的な船での漂流とはまるで次元が違うという事がお分かりだろう。例えるなら積みこみ食料や水分によって運命はケースバイケースであろうが、このような体だけでの漂流1日の負荷は一般的な船上での5日分の負荷に相当するのでは?とまで思えてしまう。
・「気まぐれな海の女神のいたずらだったのか・・・。」
僕は長時間をかけて海で泳いだり、素潜りして遊ぶのが大好きだ。長い時間泳いでいると、徐々に身体が海水に溶け出していき、どこまでが自分の身体で、どこからが海なのかハッキリしないような不思議な感覚になるが、それがまた心地よいのだ。しかし、本書を読んだ後は「さすがにここまでの遠泳はしたくないな」とつくづく思った。 このノンフィクション物語の主人公は新島でのダイビング中に黒潮に流され、身一つで銚子沖まで230キロに及ぶ漂流をする。普通ならば死んでもおかしくない状況だが、主人公の楽天的な性格(何と漂流中に加山雄三さんの『光進丸』を歌っていたというから凄い!)、彼に生きる勇気を与えてくれたクジラや様々な海洋生物との出会い、そして幾つかの幸運な出来事に恵まれて、彼はマグロ漁船に救われる。 主人公が助かった背景には幾つもの小さな奇跡があったわけだが、それを呼び込んだのは彼の天性の明るさだったのかも知れない。あるいは、この遭難から救出に至るまでの一連の出来語事は、気まぐれな海の女神のいたずらだったのだろうか? いずれにせよ、海と関わる全ての人に教訓を与えてくれる一冊だ。
・「漂流中の気の持ち方が素晴らしい」
潮の動きが複雑な新島で、スキューバダイビングの基本とも言えるバディシステム(ペアで潜るルール)を無視し、バディとはぐれた事を気にもかけずに目的の魚を追って流されたのだから、この漂流は起こるべくして起こった事故だと断言できる。責められて当然の行為だが、彼の生還劇には見習うべき点も多々有った。
太平洋上に頭部のみを出した状態で56時間も漂流。普通は死への恐怖と不安が絶望感へと変わり、体力と共に気力もなくなり、幻影を見るなど精神に異常を来し発狂・自殺するという。しかし、沖縄出身の彼は驚くほど大らかで楽観的な性格を発揮し、常に前向きで決して諦めず、最後まで望みを持ち続けた。漂流中にも関わらず、海の生物との遭遇を楽しむ好奇心には正直驚いた。 ダイビングを知らない読者にも理解しやすいよう、過去の事故事例を多くあげながら、ダイビングの危険さを詳しく説明していたのは、ダイバーの間で有名な「ダイバーズバイブル」を書いた小出氏ならではだと思う。事実を淡々と書き記す文体も良かった。
・「ダイバー漂流…」
私はふだん潜水もしないしこの事件のことも知らなかったのですが、ふとしたきっかけからこの本を読みました。最初読んだときは、確かに物語の途中で筆者の説明がよく入るので臨場感にかけると思いましたが、何回か読み直すうちにあまり気にならなくなり、逆に説明が面白くありがたいと思うようになってきました。例えば海水は真水で薄めれば飲んでも支障はないことや、ホメリック号に関する人種差別に関する話など、考えさせられることもあり、読んでとてもよかったと思います。
私は、このような本は一種の教訓としてとらえています。漂流や遭難は、確率はかなり低いにせよ誰にでも起こり得ることであり、その時に生きる望みを捨てないということが、言うのは簡単かもしれませんがやはり大事だと思うのです。この本を読んで改めてそう実感しました。堅苦しいことを書いてしまいましたが、読み物としてふつうに楽しめたので星5つにしました。
・「「性格」と「運」と「失敗しないこと」。」
御蔵島で潮流に捕らえられたダイバーが、銚子沖で漁船に保護された。漂流時間3日、距離230km。彼はどうやってこの苦行に耐え、生き延びたのか、に興味を持った。海を職業にするのでこそないけれど、毎週海に入る生活なので、万が一の場合のサバイバル術には興味津々なのだ。
が、彼は存外に何もしていない。水を得る、食料を得る努力もしない。あまり心配もしない。太平洋に浮いてて、「漂流中、サメのことは思い出しもしなかった」というから大した心臓だ。夜光虫で遊んだり、カニを仲間にしたり、クジラに助けたもらおうと傍に泳ぎ寄ったり、結構呑気に漂流している。浮力体の浮力を手放す、体温を維持するためのウェットを脱ぐ、など「失敗」こそないが、彼が生きていたのは「性格」と「運」によるものらしい。
海のサバイバル、って努力してなんとかなるもんじゃないのかもしれない。流されちゃったら「なるようになるさ」って思うしかないんですかね。
・「3丁目の夕日とは一味違う昭和の物語。」
彼女は、道に立ち、カタコトの英語で男に自分を売り、生きていた。一生1度の本気の愛に出会うまで…という生活のために売春をしたたかに続けながら純愛に生きる女性などを描いた話などがおさまった短編集。学生運動、朝鮮戦争、集団就職先の職場が微妙だった…など3丁目の夕日などノスタルジア狙いのお話ではでは生々しくは描かれないであろう「昭和」の物語である。また、稲荷のキツネにと主婦のふれあいとか、海女がアワビ漁のために潜る海など、自然と人間のふれあいを描いた話もいい。お涙頂戴のしんみりした人情描写が一切ないので、なんだかドキュメンタリーを読んでいるよう。そのあっさりした筆致が逆に物語をくっきりと印象強くしている。
・「辺境作家未だ衰えず!!」
辺境作家として有名な高野秀行氏の新作です。
最近ではどちらかと言うと、ミャンマー関連で名をはせている氏ですが、今回は原点(?)に戻りUMA探しになっています。相変わらず、常識人が聞けば呆れる様な荒唐無稽な生物を、真剣に・情熱的に探しています(一応)。今回も、最初から最後まで色んな苦労がありますが、それは読んでのお楽しみで。
高野氏の本は、肩に力の入らないホッとした優しい感じと偏見のない性格、そして多彩な表現で読者を未知の世界に連れて行ってくれると言う最大の魅力で、老若男女問わずオススメできる作家であると言えます。
個人的には、十台位の少年少女に是非読んで欲しい作家さんです。
・「期待を壊さない素晴らしい一冊」
とっても面白い一冊です。相変わらずムチャなことを計画し、実行する著者ですが、相変わらず肩に力が入らずスルスル〜っと作品に入っていけます。この本も例に漏れず読み終えた後は思わず頬が緩んでしまいました。しかし、今回は高野本にしては珍しく(初めてかも)本人は事情があって現地には行けず、パートナーだけがインドに行っているという面白い展開となっています。それなのにそのパートナーキタがインドでどのような経験をしているのかが手に取るようにわかり、また、日本にいてパソコンの前で歯噛みをしながらキタの状況を見守っている著者の気持ち、状況も緊迫感を備えつつ面白おかしく書いているので全く飽きません。また、旅の段取りの部分から一部始終詳しく書いてくれているので一つの良い『旅の参考書』にもなるかと思います。
彼のUMA本は久しぶりですが彼の処女作『幻獣ムベンベを追え』のときとなんらスタイルの変化はありません。高野本は未だに健在です。
確かに老若男女問わず読めると思います。僕は10代なので同世代の人に特に勧めたいと思いますが、高野さんと同世代の中年の人々、老人、そして世の中に疲れてる人や気分転換したい人も読んでみるといいでしょう。この本も含めて高野本は人々に世界中の元気をあげ、そして夢を与えてくれます。
高野さんがなぜ最近有名になってきたのかわかりませんね。彼はミャンマーに行って世界的な知名度を上げたり、彼の日本での知名度を一気に上げた『早稲田三畳日記』よりもっとずっと前から売れっ子ライターになっていてもおかしく無かったと思うのです。まあ本人は気にせずまた世界(日本人西洋人にとって)の辺境に足を運んでまた読者に新たな知識を提供してくれるのでしょうが。
とにかく面白く参考になる一冊でした!
・「ウモッカは見つかるのか?」
おもしろかったの一言。 インドの漁村で現地を旅行中の日本人がたまたま見たウモッカに興味をそそられた作者が現地に飛び、ウモッカを見つけようとするドキュメンタリーです。念入りに下準備をしていざインドに向かったものの・・・。 結末は読んでのお楽しみということで・・・。
・「こんな探検記は今まで読んだことがない!」
冒頭から矛盾したことを申しますが、本書はできるだけ事前情報を遮断してからお読みいただきたい。その方が、そこで語られる前代未聞な展開を大いに楽しめるに違いないから。「一冊の本にまとまるぐらいなのだから・・・」という先入観というか固定観念が打破される様はまことに痛快であり爽快でもあった。ごくまれに「本の雑誌」風な叫びが混ざる以外は、淡々と真摯な文体で綴られるのが高野氏の本の特徴だが、今回はとくにその内容と文体のギャップがツボにはまる。インドのある漁村で奇妙な魚が打ち上げられた。たまたまその場に居合わせた日本人の旅人は後日インターネットの未知動物関連サイトに目撃談話を書き込む。残念なことに彼は撮影道具を持ち合わせていなかった。・・・。その魚は本当にいるのか? いるならぜひ私が最初に捕獲して世界に「どうだ!」と問いたい。と、高野氏が思ったところから物語が始まる。
・「これぞ「ムベンベ」「三畳記」の正統なる続編だ!」
この本に出てくるあの「お知らせ」を、作者本人のブログでリアルタイムに読んでいました。まさかあの記事の裏にこんな面白い事情があったとは。
デビュー作「ムベンベ」は未知の獣探しに挑んで何も見つからず帰ってくるというもので、結果失敗には終わったけれどそれはそれで作者も読者も悔いの残らない、まるで甲子園で全力で三振している球児を見ているような素敵な読後感が味わえる一冊でした。
「ウモッカ格闘記」は例えるならば、甲子園で雄叫びとともに第一球を投じようとしたら転んで退場になってしまう球児を見ているようなもので、もう常人の理解できる域を越えてます。
特に面白かったのがウモッカを保存するためのドライアイスを貰いに行くところと、長年悩まされていた腰痛の謎が判明するところ。2007年に読んだ本の中で一番くだらなくて一番面白かったです。
真面目に怪獣探しをしているのにこんな結末になってしまう高野さんも最高ですが、この内容に「いかにも正統派」冒険小説みたいなカバーをつけて出版してしまう集英社も最高です。
・「じっくり考えながら」
容姿端麗,頭脳明晰だけれど無茶苦茶な性格の探偵役と,この男の頼りない後輩のふたりがメインとわかりやすい設定.また全体的に軽めの文体なので読みやすい作品だと思います.
収録されている4本とも『○○は誰?』というタイトルになっていて,文字どおり,ある人を探す(読み当てる)感じのミステリです.
となると「犯人探しか?」と思うところですがこれが違っていて,『被害者』や『目撃者』などちょっと変わったところがターゲット.主人公たちのやり取りも軽妙で,ドロドロしたような感じもありません.
また作品すべてがミスリードになっていることがすぐにわかるので,最初から『引っ掛け』とわかっているぶん,パズルを解くようなおもしろさでした.中には「これを読んで当てて(探して)みろ」という作品までありますので.
とはいえそのミスリードに無理矢理感はなくむしろやさしめの印象です.いろいろと『裏読み』をし,じっくり考えながら読んでみてください.
・「誰もが分かるようなトリック」
どの話も丁寧で誰もが分かるようなトリックが仕掛けられていて読みやすかった。特に「被害者は誰」のトリックは全く分からなかったが、読み返してみるとなるほどと思うところがあった。それ以外の話もおもしろかったのだが、「目撃者は誰」と「名探偵は誰」に登場する美人について、彼女の美しさはかなり際立てているものの、その美人と付き合っている男やその経緯にはついても触れて欲しかった。
・「手に汗握る心理戦・倒叙ミステリーの傑作」
密室殺人を扱った本格ミステリーだが、探偵が密室トリックや犯人を暴くストーリーではなく、はじめから犯人と犯行方法が分かっている、TVドラマの「古畑任三郎」のような、いわゆる「倒叙もの」のスタイルをとっている。
「倒叙ミステリー」とはいえ、なぜ犯人は「密室状態」を構築してまで死体の発見を遅らせる必要があったのか、肝心の殺人の動機はなんだったのか、謎は、扉と同様に伏せられたままである。
物語は、犯人・伏見の犯行から始まり、中盤までは伏見の「事後」の成り行きを思惑通りに進めるための、臨場感あふれる心理描写中心に展開し、終盤、探偵役の女性・優佳(ゆか)と伏見との緊迫感のある「対話」へとなだれ込む。そして彼女によって事件の真相が暴かれ、最後に「密室の扉」が開かれる。
その場の皆が騙されるなか、ただひとり勘の鋭い優佳に疑問を抱かれ、伏見が焦る場面などは迫真で、おもわず手に汗握り、自分が犯人になったような気がしたほどである。
著者の石持浅海の作品は’02年のデビュー作『アイルランドの薔薇』をはじめ、’03年、各社のミステリーランキングの上位に選ばれた佳作『月の扉』、’04年、水族館を舞台にした話題作『水の迷宮』を読んできたが、いずれも程よい長さで、展開がスピーディで緊迫感にあふれていて面白かった。
本書もその例に漏れず、いやそれ以上に最後まで緊張感を持って、一気読みをしてしまった。さすが’05年のいろんなミステリー・ベストテンで上位にランクインされたミステリーである。
・「鋭い推理に心理的に追い詰められていく描写は秀逸」
著者は九州大学理学部卒だそうで、なるほど理系らしい非常に理論的な犯罪計画と推理の応酬が展開され、最後まで読者を捉えて離さない。本書の面白い所は、事故死を装った密室を作り上げた主人公・伏見と事件に疑問を抱く優佳との息詰まる頭脳戦であり、若く美しい優佳の鋭い推理に心理的に追い詰められていく描写はなかなか秀逸。また、伏見と優佳はかつて恋愛関係に発展しそうになったエピソードもあり、二人の対決に恋愛の駆け引きも絡み、最後にはとんでもない取り引きが交わされるのだが、それまで石持浅海という作家は女性だと思っていたので、もしもそうならちょっと意外に感じてしまった。また、犯行の動機については賛否両論あると思う。ちょっと理解に苦しむ動機であり、しかも利害が絡んでいないため優佳の推理が動機について触れる所になると論理が飛躍してしまい、推理に無理がある様に感じてしまった。登場人物のメンバーは大学の研究員や翻訳家だったりするので、もう少し知的でペダンティックな会話があったらさらに面白かったのではないだろうか?(これは好みの問題ですが)
・「古畑任三郎が好きな方にお勧めです」
この本を選んだのは、近所の本屋さんでお勧めしていたためです。
石持さんと作者の本は初めてよんだのですが、殺人犯である伏見の心の動きが分かりやすく表現されていました。
盛り上がり部分が多彩とかいうよりも、気づいたらのめりこんで読んでいたという感じでしょうか。
「古畑任三郎」のように初めに犯人がわかっているので、ミステリーを徐々に紐解くストーリーが好きと言う人にはお勧めできません。
この小説に出てくる女版の古畑任三郎こと優佳(ゆか)が、冷静に伏見を追い詰めるところは、現実の女性にいたら、絶対に頭が上がらないだろうなぁという感じで読んでいました(笑)
また、読者の気を持たせた状態で物語が終わってしまうので、気になって仕方ないです(笑)
ワタシ的には、犯人の心理描写にドキドキ感を味わえたので、面白く読めましたよ。
・「変則の密室(動機は伏せられたまま)」
大学の同窓会で久々に揃って再会した旧友どうしの男女7人。宿泊先の洋館で密かに行われた一つの殺人。それは密室での事故死を装ったものだった。 作品の冒頭で犯行の場面が描かれる倒叙形式がとられていて、読者にはあらかじめ犯人とその手口が明らかになっている一方で、犯人の動機のほうは終盤まで伏せられたままストーリーは進んでいく。 鋭い洞察で事態の解明につとめる探偵役は、犯人のことを慕う後輩の女性。彼女と犯人との水面下のたたかいが静かな盛り上がりをみせる。 動機に対する批判は確かにあるだろうし、伏線やストーリー展開の点で少し迫力不足の感もあるけれど、密室状況が維持されたまま犯人と探偵役がある種、風変わりな対決を繰り広げる「変則の密室」作品として、一読の価値あるおもしろい内容になっている。 密室殺人を扱いながらも、“犯人はいかにしてこの犯行をやりおおせたのか”という不可能犯罪の謎に主眼を置くのではなく、密室殺人の理由それ自体を一つの謎としたところに、この作品の特長があると思います。
・「ハッピーエンドを信じます」
合コンで気の効いた冗談の一つも言えず、それでも場を壊すことだけはすまいと懸命に努める内気な夕樹(夕陽の夕をカタカナのタに見立ててたっくん)とそんな彼にも好意を示してくれる性格よさげな繭子、マユ。そんな二人の恋物語の部分は、辛口評価が多いですがぼくには魅力的なエピソードやガジェットが多く素直に感情移入できました。太陽に輝く彼女の水着姿、ズボンの折り目のおしゃれ、突き返されたプレゼントの哀しみ。そんな「普通すぎる」恋愛模様の一つひとつが、最後に壮大な仕掛けの伏線として蘇ります。じつは一読では え、ええ?なんじゃこりゃ、といった感じで、アンフェアだとすら思いました。わけがわからず、再読で(やっぱり不可避なんだな、これが)あちこち飛んで読みながら あ、ここもそうだったか、ありゃこれも、という感じの驚きと発見の連続。その後もう一度通して読み返して味わう、そんな感じでした。この物語には密室も不可能犯罪も出てきません。そういうミステリーではありません。言うなれば女心の奥深さ、強さというかしなやかなしたたかさといったものを描いた作品です。秀れた解説が付いており、その後半は時代背景の用語集ですが、かなりのネタバレでもありその先をめくるなという警告がちゃんとそのページの最後に書いてある構成もいいです。そんなことを含めて星5つ。解説者も書いてるように、いろいろな読み方ができるでしょうがぼくはハッピーエンドを信じます。
・「確かに、レビューは難しい。」
賛否両論あるようですが、自分は単純に「面白い」と思いました。少なくとも、好きな本を聞かれたらこの本の名前を出します。まず恋愛小説としてのクオリティが高いです。伏線に加えて、共感できるようなエピソードやセリフが随所に散りばめられています。最後の方で「イニシエーション・ラブ」の概念について説明する所なんか、思わず唸ってしまいました。肝心の謎ですが…分かる人にはすぐ分かるし、分からない人は全部読んでも分からないでしょう。これほど有名になるともう断る必要もないかもしれませんが、とにかく”あとがき”を先に読んじゃダメですね。特に何も考えず普通の恋愛小説として読み進め、最後に驚き、慌てて読み返す…という読み方をしてほしいです。結局のところ、それが一番楽しめる読み方だと思うので。というワケで、こういうトリック系(?)にあまり慣れていない人におススメします。
・「決して壮大な仕掛けではない。けどおもしろい。」
1:コレコレこういう物語、だと思って読んでいると、2:ラストで「騙されたー!!!」となり、3:その後、カクカクシカジカという物語と、あーそういうことだったのか、という納得感が来る。「ラスト二行で明かされる仕掛け」を先に読んでしまうと、「1」と「2」が味わえないことになる。
しかしその「1」と「2」は失うのが惜しいほどのものかというと、「1」が平凡でチープなのは作者自身も認める通り、「2」は感想が割れるところのようだが、自分は、何だそんなことかと拍子抜けした。この本がおもしろいのはオチを知った後で味わう「3」だ。
何度も反芻するうち、冗長としか思えなかった前半の描写も唐突な言い訳も、ああそういうことだったのかと、伏線がぴしりぴしりとハマって行く快感があり、とまで言うのは褒め過ぎかも知れないがなかなか奥深く、そのため解決されない伏線(意味ありげに登場するが結局なんだったんだろうと思わせる登場人物とか)も、作者の中ではそれぞれ何か意味があるのだろうと深読みしたくなり、しまいには書いてないエピソードまでいろいろ勝手に妄想できる。
これを読んで「仕掛けが既出だからダメ」というのは、寿司屋に入って「酢飯にネタを載せて供するという仕掛けは既出だから評価に値しない」と言うようなもので、もったいない。肝心なのは仕掛けの優劣ではなく、トータルな出来だ。精緻なパズルという点では、映画「運命じゃない人」を思い出させる。素晴らしい。
・「乾くるみは天才かもしれない。」
メインの仕掛け自体は、ある程度読み込んでいたら気づくレベルかもしれない。
けれど、それを成立させるための伏線の数が半端じゃない。しかも単にミステリーとしてフェアプレイを守るための伏線ではなく、読者が伏線の意味に気付くことによってはじめて登場人物の真意が浮かび上がるつくりになっている。
作者は敢えてその真意を作中で解説していないので読者を選ぶ分、気付いたときの衝撃は大きい(わたしも実は、ネタバレ解説のあるブログを読むまで、本書の凄さが理解できませんでした)。
本作を詳細に分析したブログがけっこうあるので、「意味が分からなかった」「そんな大した仕掛けじゃなかった」という方も一度検索してみてほしいです。
・「混乱させられた」
噂は聞いていましたが、確かに読み終わったあと頭の中が?で埋め尽くされました。
本書は前後半でAパートとBパートの2つに分けられています。この時点でなにやらあやしい感じがしていますが、つつがなく主人公である鈴木の物語は進行していきます。そして辿りつく不思議な結末...
当然、随所にしかけの伏線がちりばめられているのですが、果たしてどれだけそれに気づけるでしょうか...個人的には、巻末の“再読のお供”が楽しかったです。あれを読んで急いで読み返したくなりました。
作者の本はそれぞれに独特のギミックが用意されているため、一味違った小説を読みたい方にオススメです。
・「家族というもの」
インタビュー形式のルポライターを使うという手法は決して珍しいものではないのですが、この本では文章にどこか他人事を冷静に観察しているような雰囲気があって、いつもの宮部作品を期待する読者を良くも悪くも裏切ってくれます。ミステリーではありますが、「家族」というものを本を通じて考えさせてくれます。
・「つきはなされることも甘やかされることもない現実」
直木賞受賞作宮部みゆきの作品にあるのは「やさしい現実」
残念だけど登場人物のすべてがハッピーエンドを迎えるわけではない。真面目で一生懸命で必死に生きてきた人たちがそれがゆえに幸福をつかむこともない。
アタマのよくない者 愛情に包まれずして育っ